二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.473 )
- 日時: 2014/05/19 02:10
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
神(シェン)聖牙(チュリー) UK(ウルトラナイト) パンク ≡V≡ 無色 (11)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX/オラクリオン 14000
このクリーチャーを召喚または「ドロン・ゴー」能力を使ってバトルゾーンに出した時、コスト7以下のオラクル、アウトレイジまたはデスパペットをすべて、自分の墓地からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《神》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《神》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
《神豚槍 ブリティッシュROCK》がドロン・ゴーした、《神豚 ブータンPOP》最後の姿——《神聖牙 UK パンク》。
ゼロの力を注ぎ込まれ、《不死帝 ブルース》の力を取り込み、オラクリオンと化した《ブリティッシュ》のなれの果て。しかしその力はオラクルとアウトレイジ、二つの種族を《ブルース》の不死の力で支配する、凶悪なものだ。
「《UK パンク》の能力発動。このクリーチャーが召喚、及びドロン・ゴーで現れた時、墓地に眠るコスト7以下のオラクル、アウトレイジ、デスパペットをすべてバトルゾーンへ」
次の瞬間、《UK パンク》が雄叫びを上げる。
その叫びで、汐の墓地が蠢動し——《一撃奪取 ブラッドレイン》《血塗られた信徒 チリ》《特攻人形ジェニー》《闇噛のファミリア ミョウガ》《代打の消耗 テンメンジャン》《魔犬人形イヌタン》《解体人形ジェニー》《自壊のファミリア トリカブト》——墓地に沈んでいたクリーチャーたちが、《UK パンク》の咆哮により一斉に目覚めた。
「……!」
声も上げられない夕陽。この状況は、まずい。
「とりあえず、先輩に手札はないので《ジェニー》や《ミョウガ》の能力は発動しないでおくですよ。ですが、こちらは発動です」
超巨大な切り札が登場したにもかかわらず、汐本人も至って冷静で、淡々と場を進めていく。
「《自壊のファミリア トリカブト》の能力発動です。私は《トリカブト》自身を破壊、先輩もクリーチャーを破壊してください」
「う……!」
『夕陽……』
夕陽が破壊出来るクリーチャーは《爆竜 GENJI・XX》か《太陽神話 サンライズ・アポロン》のどちらか。
とどめを刺すことを考えれば、このターンにまだ攻撃していない《GENJI》を残したいが、汐の場にブロッカーは二体。これでは《GENJI》一体だと突破することができない。
タップしているとはいえ、《アポロン》のパワーなら殴り返しはない。ここでブロッカーを減らしておきたいと思わなくもないが……夕陽には、自ら《アポロン》を破壊することはできなかった。
だが、その選択は最悪の結果を招く。夕陽がそれを目の当たりにする時は、既に一寸先まで迫っている。
「……《GENJI》を破壊するよ」
しかし、今ここで夕陽が、そのことを知る由もない。この絶望的状況からの逆転を試みるのは、それこそ絶望的。夕陽は《アポロン》を残し、《GENJI》を破壊した。
「では、ターン終了ですか」
「ああ……」
このターンはこれ以上動けない。夕陽は仕方なく、ターン終了を宣言する。
そして、汐のターンが訪れる。
「私のターンです。まずは呪文《邪魂創生》で《ジェニー》を破壊し、三枚ドローです」
この期に及んでカードをドローすることになんの意味があるのかと問いたくなるが、今の夕陽に、その権限はない。
今の夕陽は、誰がどう見ても、支配される側なのだから。
「もう一枚《邪魂創生》です。《ジェニー》を破壊し、三枚ドローです」
汐の山札が残り少ない。だが夕陽に残された時間の方が、それよりもずっと少ない。
マナを使い切り、後はとどめを刺すだけと言うその時、汐は、夕陽に問いかける。
「では、先輩……なにか言いたいことはないですか」
「え?」
遺言ということだろうか。
しかし汐は、間違えたです、と訂正した。
「私に、なにか言うことはないですか」
「君に、言うこと……」
「このデュエルの目的を見失わないでください。このデッキは今の私そのものです。先輩なら分かるでしょう、今の私がどうなっているか。正直な話、私も少しデュエルに熱中してしまったのですが、これがファイナルターンです。ですから、最後に先輩の答えを聞かせてください」
このデュエルの目的。それは、この戦いを通して、互いの主張をぶつけるというものだったはず。
汐は、先輩なら分かるでしょう、などと言っているが、過大評価しすぎだ。夕陽には汐の言わんとしていることが分からない。分かるとすれば、いつもの彼女とはまるで異なる、ということだけ。
「僕は……」
必死に言葉を探り出す。ここで汐の求める答えが導き出せれば、なにかが変わるかもしれない。
しかし、結局、夕陽にはその言葉が出なかった。
「……分からない」
夕陽は呟く。
心の底からの、本心を。
「君の言いたいことも、君になにがあったのかも、僕には、全然分からないよ」
「……そうですか」
残念です、と。
「《UK パンク》で攻撃——アタック・チャンス」
汐は手札からカードを四枚、公開する。
「呪文《トンギヌスの槍》」
トンギヌスの槍 無色 (6)
呪文
アタック・チャンス—名前に《神(シェン)》を持つクリーチャー
相手のカードを1枚、バトルゾーン、マナゾーン、またはシールドゾーンから選ぶ。バトルゾーンに自分の 《神聖牙 UK パンク》があれば、かわりにそれぞれのゾーンから1枚ずつ選ぶ。相手はその選んだカードを自身の山札の一番下に好きな順序で置く。
「《トンギヌスの槍》が、四枚……!?」
夕陽のシールドは残り一枚、手札がなく、汐の場には九体のクリーチャー。これだけで夕陽にとどめを刺せるだけの戦力が揃っている。そこに《トンギヌスの槍》が四枚も放たれるとなれば、用心を通り過ぎ、オーバーキルどころでもなくなる。
そこまでする必要はあるのかと問いただしたい夕陽だが、その答えは汐の方から明白にした。
「目的と言うのなら、このデュエルはアルテミスの目的も含まれているのです。アルテミスの目的は《アポロン》。しかしこのデュエルで私が勝っても、それは私に権利が移るだけ……獣を捕えるには、まずその獣を弱らせるところから始めなければならないのです」
突如、《UK パンク》の周囲に四本の槍が落ちて来る。《UK パンク》はその槍を一本、掴み取った。
「まずは一本」
《UK パンク》は《トンギヌスの槍》を投げ放つ。その槍は一直線に——《アポロン》へと向かっていった。
『ぐあぁ!』
「《アポロン》!」
《トンギヌスの槍》が《アポロン》の左翼を削ぐ。
「《ボルバルザーク・エクス》」
汐が呟く。そして《トンギヌスの槍》で山札の底へと埋められたのが、《ボルバルザーク・エクス》だった。
《トンギヌスの槍》は《デーモン・ハンド》のようにクリーチャーを指定して除去するのではなく、カードを指定して除去する。なので進化クリーチャーに対しては、そのクリーチャーが内包するカード全ての中から一枚を選んで山札の底へと送り込むのだ。
つまり汐は、四発の《トンギヌスの槍》で、《アポロン》を構成するカード全てを殺すつもりだ。
「続けて二本」
『がぁ……っ!』
二投げ目の《トンギヌスの槍》が、《アポロン》の右翼を剥ぐ。
両翼を失った《アポロン》は、地に落ちる。
「《セルリアン・ダガー・ドラゴン》」
「や、やめろ……!」
「そして三本」
夕陽の制止も聞かず、汐の令により《UK パンク》は三本目の《トンギヌスの槍》を放つ。
『ぐ、あ、あぁぁぁぁ!』
「《アポロン》……!」
三本目の《トンギヌスの槍》は、《アポロン》の胸を貫く。
「《コッコ・ルピア》」
進化元三体が消され、収縮する《アポロン》。そこにいたのは、デフォルメ化された、コンセンテス・ディー・ゼロと呼ばれる、弱々しい姿の彼だった。
「最後に四本」
「も、もう、やめろ……やめてくれ! 御舟!」
夕陽の悲痛の叫びも、彼女には届かない。
《UK パンク》が、最後の槍を掴む。
そして——放つ。
『う、く……夕陽……すま、ない……』
「アポロン——」
最後の《トンギヌスの槍》が、《アポロン》を——貫き殺した。
「あ、アポロン……そんな……」
「なにをよそ見しているのですか、先輩」
結果的にはクリーチャーを一体除去されただけ。だが、異端者を処刑するかのようにして消された《アポロン》の苦しみは、察するにあまりある。
だが夕陽も、《アポロン》のことばかりを気にしている場合ではない。
「先輩には、こちらで直接手を下して差し上げるですよ」
汐はわざと《UK パンク》で《アポロン》を攻撃し、攻撃を無効にした。
《UK パンク》の役割は、《アポロン》の処刑。代わりに夕陽を処する者は——《ブリティッシュ》だった。
地獄の魔槍を手に《ブリティッシュ》は、夕陽の処刑を、執行する。
「《地獄魔槍 ブリティッシュ》で、ダイレクトアタックです——」