二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.496 )
- 日時: 2014/03/08 01:31
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
夕陽と汐のデュエルは、一進一退、二転三転するようなデュエルとなっていた。
夕陽のシールドは四枚。バトルゾーンには《聖域の戦虎 ベルセルク》《ガンリキ・インディゴ・カイザー》《シンカイ・サーチャー》そして《無敵剣 カツキングMAX》の四体。
対する汐の場には《一撃奪取 ブラッドレイン》《豚魔槍 ブータン》《神豚 ブータンPOP》。《不退転の遺志 エルムストリート》のシールド・ゴーもあり、シールドは六枚ある。
大型クリーチャーを続けて呼び出し、汐の反撃も止めようとしている夕陽だったが、やはりアウトレイジやエグザイル・クリーチャーを用いた戦術では汐の方が上手だった。
「私のターン。呪文《ブータン両成敗》」
《ガンリキ・インディゴ・カイザー》で反撃を防いだ夕陽だが、《ガンリキ・インディゴ・カイザー》で防げる反撃は攻撃のみ。そして汐が、闇文明が得意とするのは、除去。
即ち汐の反撃とは、夕陽の逆転の目を摘むことだ。
「くっ……《シンカイ・サーチャー》を破壊」
「なら私は《ブータン》を破壊です。そしてドロン・ゴー《地獄魔槍 ブリティッシュ》。先輩の手札を一枚墓地へ」
クリーチャーが夕陽の手札から零れ落ちる。同時に、汐の手札のカードが入った。
「《ブリティッシュ》の能力で、クリーチャーが手札から墓地に落ちたため一枚ドロー。続けて呪文《デッドリー・ラブ》、《ブータンPOP》を破壊し、先輩の《カツキングMAX》を破壊です」
「っ、《カツキングMAX》!」
結局、大きな活躍もないまま《カツキングMAX》は破壊されてしまう。さらに、《ブータンPOP》が破壊されたので、
「こちらもドロン・ゴーです。《神豚槍 ブリティッシュROCK》」
「また《ブリティッシュ》二体が……!」
大型エグザイル二体に戦慄を覚える夕陽。このパターンはまずい、この前の二の舞だ。
しかも汐は、《カツキングMAX》を破壊する前に《ブータン両成敗》で、破壊するクリーチャーを夕陽に選ばせた。もし夕陽が《カツキングMAX》からドロン・ゴーできるエグザイル——《ドン・カツドン》や《カツキングMAX》など——を持っていれば、《カツキングMAX》を破壊していたはず。もしそうなれば、それを出させたうえで続く《デッドリー・ラブ》で破壊しただろう。
(カードを使う順番で、エグザイルを安全に除去するか……やっぱ、敵わないな……)
夕陽のデッキは【神格社界】界長、ルカ=ネロの特製だ。完成度は高いものの、その使い手は夕陽。一応、何回か動かして、このデッキの性質は理解したが、所詮は付け焼刃。
アウトレイジとエグザイルに関しては夕陽よりもずっと長い経験と知識を持つ汐には、どうしたって敵わない。
「さらに《血塗られた信徒 チリ》を二体召喚し、ターン終了です」
最後にブロッカーで守備を固め、ターンを終える汐。じりじりと夕陽を追い詰めて来る。
「くぅ……僕のターン! 呪文《伝説の秘法 超動》で《ブラッドレイン》を破壊! さらに《裂竜の鉄鎚 ヨルムンガルド》を召喚!」
裂竜の鉄槌(トール・ハンマー) ヨルムンガルド 自然文明 (8)
クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分の、エグザイルではないクリーチャーを2体選び、マナゾーンに置く。その後、相手はバトルゾーンにある自身の、エグザイルではないクリーチャーを2体選び、マナゾーンに置く。
W・ブレイカー
巨大な鉄槌を持つ無法者が現れる。《ヨルムンガルド》がその槌を一振りすると、夕陽と汐の地面——マナゾーンが鳴動した。
「《ヨルムンガルド》の能力で、互いのクリーチャーを二体、それぞれマナゾーンへ! 僕は《ヨルムンガルド》と《ベルセルク》をマナゾーンに!」
「……《ヨルムンガルド》がマナゾーンに送れるクリーチャーはエグザイル以外です。私は《チリ》を二体マナゾーンへ」
夕陽の《ヨルムンガルド》と《ベルセルク》汐の《チリ》二体が大地に飲み込まれ、マナとなる。
とりあえずできる限りクリーチャーは減らしたが、肝心の《ブリティッシュ》二体はどうにもできなかった。
「ターン終了……」
「それだけですか。お粗末なプレイングですね。では、私のターンです」
とはいえ、汐にも手札はない。《ガンリキ・インディゴ・カイザー》がいるのでなにもせず普通に攻撃してくることも考えられるが、
「……《邪魂創生》を発動。《ブリティッシュ》を破壊して三枚ドロー。ターン終了です」
汐が行うのはドローのみ。
序盤から墓地肥やしやドローを連打していた汐の山札は残り少ない。そろそろ勝負を決めに来てもいい様に思われたが、なにもせずにターンを終える。
「《ブリティッシュ》のドロン・ゴーもない……ドロン・ゴー先を引けなかったのか? まあいいや、こっちはこっちのすべきことをしないと……」
このターンは動かなかったが、そのまま動かない状態が続くわけがない。いずれ動き出すのなら、その前にこちらも体勢を立て直さなければならない。
もしくは、汐の攻めの体勢を整えさせないか。
「ここでこいつか……だったら攻める! 《暴走特急 マルドゥック》召喚!」
暴走特急(アンストッパブル) マルドゥック 火文明 (10)
クリーチャー:アウトレイジMAX 15000
スピードアタッカー
T・ブレイカー
このクリーチャーがブロックされた時、このクリーチャーをアンタップする。
マナが大量にある今の夕陽なら、ほぼすべての大型クリーチャーを、コスト軽減や踏み倒しを利用せずにそのまま召喚できる。召喚したのは、スピードアタッカーでTブレイカー、しかも実質的なアンブロッカブルを持つアウトレイジ《マルドゥック》。
「《ガンリキ・インディゴ・カイザー》で攻撃! Wブレイク!」
《ブリティッシュ》がいなくなったので、《ガンリキ・インディゴ・カイザー》が殴り返される心配はない。《ブリティッシュROCK》の能力で破壊される可能性はあるが、それにしたってこの二体のどちらか、同時に破壊することはできないし、能力発動のために攻撃しなくてはならない。つまり、シールドを割らなければならない。
(なにより手札がないのがきついし、ここはシールドを割らせて攻め込むしかない)
このデッキにはスピードアタッカーも結構な数投入されている。上手くそれらのカードを引ければ、攻め切れるはずだ。
そう、思っていたが、
「S・トリガー発動です。呪文《ブータン両成敗》」
「なに……っ!」
《ガンリキ・インディゴ・カイザー》が割った二枚のシールドのうち一枚から飛び出したS・トリガー。これでは夕陽の勢いが削がれてしまう上に、よりによって発動するのは、自分すらも破壊する《ブータン両成敗》だ。
「さあ先輩、クリーチャーを破壊してください」
「くっ……《ガンリキ・インディゴ・カイザー》を破壊……!」
夕陽の予想が正しければ、どちらを選んだところで両方破壊される。だが、その予想が当たっていない可能性に賭け、タップ状態の《ガンリキ・インディゴ・カイザー》を破壊する。
しかし、不幸だが、夕陽の予想は的中してしまう。
「私は《ブリティッシュROCK》を破壊です。そして……ドロン・ゴー」
《ブリティッシュROCK》は破壊された。しかしその魂は転生し、無法と神託の力を得た、偽りの神となる。
「支配せよ、神聖の国家。死した民たちは不滅の奴隷、神鎗の神の降臨です——《神聖牙 UK パンク》」
神をも殺す三叉の槍を携えた偽りの神、《神聖牙 UK パンク》。
汐の切り札が、遂に降臨してしまった。
「《UK パンク》がドロン・ゴーでバトルゾーンに出たので、能力発動です」
《UK パンク》の咆哮が墓地まで響き渡り、屍たちに新たな命を吹き込む。つまり、墓地に眠るコスト7以下のオラクル、アウトレイジ、デスパペットがすべてバトルゾーンへと蘇るのだ。
《特攻人形ジェニー》《一撃奪取 ブラッドレイン》《血塗られた信徒 チリ》《魔犬人形イヌタン》《闇噛のファミリア ミョウガ》《自壊のファミリア トリカブト》《冥界王 ブルースDEAD》《地獄魔槍 ブリティッシュ》——数こそ様々だが、総勢十三体のオラクル、アウトレイジ、デスパペットが復活してしまった。
「では、《トリカブト》の能力発動です。私は《トリカブト》自身を破壊、先輩もクリーチャーを破壊してください」
「……《マルドゥック》を破壊」
さらに墓地に沈んでいた《トリカブト》の能力で、残った《マルドゥック》も破壊されてしまい、夕陽の攻撃も止められてしまう。
この圧倒的な戦力差には、戦慄や絶望を超えた無力さを感じる。夕陽は手札もクリーチャーもない。なすすべなく、闇の軍勢に討ち取られるだけだ。
「それでは、私のターンです……このターンで終わりですよ、先輩」
汐の静かで重く、そして暗い声が、夕陽の脳裏に響き渡る。