二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.499 )
日時: 2014/03/08 13:20
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 夕陽と、汐に憑依したアルテミスのデュエル。
 シールドは互いに五枚。夕陽の場にはなにもないが、アルテミスの場には《猛菌恐皇ビューティシャン》と《希望の親衛隊ファンク》がいる。
「くっそ、《ファンク》は厄介だ……」
「パワーが1000下げられて《コッコ・ルピア》がやられちまった……どうすんだ夕陽! これじゃあドラゴンが召喚できねえぞ!」
 《コッコ・ルピア》はドラゴンをメインにしたデッキでは王道のキーカードだが、如何せんパワーが低く《希望の親衛隊ファンク》や《ローズ・キャッスル》など、パワーを恒久的に下げ続けるようなカードや、全体火力には弱いのだ。
「アルテミスは今までお兄様をずっと見てきました。ゆえに、お兄様の弱点は知りつくしています。お兄様は確かに強い、でもそれはお兄様だけの力ではない。お兄様は、小さき火の鳥の共にあるからこそ、その力を最大まで発揮できる」
 ならば、とアルテミスは続ける。
「その鳥を根絶やしにしてしまえば、お兄様はおろか、他の龍たちも、その力を存分に発揮することはできない。そうでしょう、お兄様」
「くそっ、悔しいがその通りだ……だがなアルテミス! オイラたちを助けてくれるファイアー・バードは、《コッコ・ルピア》だけじゃねえんだ!」
「その通りだよアポロン。《エコ・アイニー》を召喚、マナを追加だ!」
 《コッコ・ルピア》でコスト軽減ができないと見て、夕陽はマナを加速させて大型ドラゴンを出す方針に転換する。《エコ・アイニー》はパワー2000、《ファンク》一体では破壊できない。
「マナに落ちたのは《永遠のリュウセイ・カイザー》、ドラゴンだからもう1マナ追加! さらに呪文《メンデルスゾーン》だ!」
 捲った二枚は《無双竜鬼ミツルギブースト》と《爆竜トルネードシヴァXX》、二体ともドラゴンなのでマナへ。
 これで夕陽のターンは終了だが、たった1ターンで4マナも増やし8マナ。これだけあれば、大抵のドラゴンは普通に召喚できる。
「では、こういうのはどうでしょう、お兄様。《猛菌恐皇ビューティシャン》を召喚」
 アルテミスは二体目の《ビューティシャン》を召喚する。しかし今回は、一体目よりも重い《ビューティシャン》だ。
「水と闇のマナを追加で支払い、O・ドライブ発動! 私はカードを一枚引き、相手の手札を一枚墓地へ」
 自分はカードを引きつつ、相手の手札を捨てさせるアルテミス。さらに、
「呪文《ゴースト・タッチ》! 残る一枚の手札も墓地へ!」
「手札が……!」
 連続で放たれるハンデスに、夕陽の手札はゼロとなってしまう。いくらマナがあっても、手札がなければ意味がない。
「くっ、僕のターン……《ボルシャック・NEX》を召喚」
 いつもならここで《コッコ・ルピア》を呼び出すところだが、出しても《ファンク》で破壊されるだけなので、リクルートはしない。
「ターン終了……!」
「惨めね人間。せっかく増やしたマナも、手札がなければ不毛の地よ」
 夕陽を嘲笑するようなアルテミス、だがその姿は汐だ。普段は決して見ることのできない様々な汐の表情が見られるが、それはすべてアルテミスのもの。
 非常に複雑な気分だが、今はそれどころではない。
「私のターン。《コアクアンのおつかい》を発動よ」
 アルテミスの山札が捲られる。捲られたのは《ボーンおどり・チャージャー》《邪眼銃士ダーク・ルシファー》《インフェルノ・サイン》。
 すべて闇のカードなので、三枚ともアルテミスの手札に入る。
「さらに残った3マナで呪文《ボーンおどり・チャージャー》、山札の上二枚を墓地へ」
 マナ加速と同時に墓地も増やすアルテミス。やはり闇文明というだけあって、墓地を活用する戦術のようだ。
「早めに体勢を立て直さないとな……僕のターン!」
 この息苦しい状況から抜け出したい夕陽だが、引いたカードは《メンデルスゾーン》。夕陽はそれをマナへと落とすと、《ボルシャック・NEX》に手をかける。
「こうなったら攻めるしかない……《ボルシャック・NEX》で攻撃! Wブレイクだ!」
 アルテミスはその攻撃をブロックせず、二枚のシールドは割れたが、それだけだ。
 これ以上行動できない夕陽は、ターン終了を宣言する。
「哀れな人間……ドラゴンを引くこともできないなんて、そんなことでよくお兄様を縛れるものね」
「別にオイラは夕陽に縛られてるわけじゃねえ! ひまりとの約束もあるけど、夕陽と一緒にいるのはオイラの意志だ!」
「……ああ、そうだったわね。お兄様は人間の悪質な洗脳を受けているのでしたね……ご安心ください、お兄様。このアルテミスが、お兄様を解放して差し上げます」
 アポロンとアルテミスの会話が噛み合わない。というより、アルテミスの中でアポロンの発言が自分の都合のいいように解釈され、脚色されている。アポロンがアルテミスを説得するというのは無理そうだ。
 夕陽とて、温和に済ませられるとは思っていないが。
「私のターンよ。まずは呪文《ボーンおどり・チャージャー》で、墓地とマナを増やすわ。さらに《邪眼銃士ダーク・ルシファー》を召喚」


邪眼銃士ダーク・ルシファー 闇文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/ナイト 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚を墓地に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、好きな数の進化ダークロードを自分の墓地から手札に戻してもよい。


 《邪眼銃士ダーク・ルシファー》、その名前は能力はデーモン・コマンドの《暗黒導師ブラックルシファー》を彷彿とさせるが、能力の細部が異なる。
「山札の上三枚を墓地へ。ターン終了よ」
「墓地ばっか増やしやがって、なにをする気だ……?」
 しかも見たところ、アルテミスの墓地にはクリーチャーではなく、呪文が多い。
 汐の《UK パンク》のように、墓地のクリーチャーを一気に蘇らせるような戦術ではないようだ。
「なんか不気味だけど、こっちも動けない……!」
 やはり手札破壊が響いている。元々夕陽のデッキはハンデスに弱い面がある。ある程度はそこも補強しているとはいえ、すぐに立て直せない場合も多い。
「《コッコ・ルピア》か……こいつは出せないし、だったら《ボルシャック・NEX》で攻撃だ!」
「《ビューティシャン》でブロックよ」
 このターンの攻撃は《ビューティシャン》に防がれる。もう一体《ビューティシャン》は残っているので、《エコ・アイニー》では攻撃しないで、夕陽はターンを終える。
 そして、アルテミスのターン。
「ここでこれ……なら、こうしましょう。呪文《ホーガン・ブラスター》よ。なにが捲れるかしら」
 アルテミスの山札がシャッフルされ、その一番上のカードが表向きになる。捲られたのは《貴星虫ヤタイズナ》だ。
「いいカードが出たわね……なら、呪文《インフェルノ・サイン》。墓地から《邪眼皇ロマノフⅠ世》をバトルゾーンに!」
「《ロマノフ》かよ……!」
 墓地から蘇ったのは《ロマノフ》。アルテミスの墓地に呪文が多いのは、《ロマノフ》の能力で唱えるためのようだ。
(つっても、《ロマノフ》が唱えられるのはコスト6以下の闇の呪文だけ……それに該当しないカードも多いよな……)
 今さっき撃った《ホーガン・ブラスター》は水単色のカードで、墓地には《ロスト・ソウル》などのコスト7以上の闇のカードも落ちている。それらは手撃ちで唱えるのかもしれないが、どこか引っかかる。
「《ロマノフ》の能力で山札から闇のカードを一枚墓地へ。ターン終了よ」
「殴り返さない……? よく分かんないけど、まあいいか。僕のターン!」
 不可解なことは多いが、とにかくこのままアルテミスのペースで進められるのはまずい。そして夕陽は、ここに来て遂にドラゴンを引き当てた。
「《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚! 僕の場にはドラゴンが二体いるから、二枚ドローだ!」
 引いてきたのは《無双竜機フォーエバー・メテオ》と《不敗のダイハード・リュウセイ》。どちらも重いが、強力なドラゴンだ。
(いい感じだ。このまま攻めて、こいつらで後押しするのがいいかな)
 次のターンからこの二体のドラゴンを展開することを考えつつ、夕陽はさらに攻める。
「《ボルシャック・NEX》でWブレイク!」
「《ビューティシャン》でブロック」
「だったら《エコ・アイニー》でもシールドブレイク!」
 《ファンク》でパワーが下げられているので《ビューティシャン》に相打ちを取られてしまう《エコ・アイニー》は攻撃しづらかったが、ブロッカーが消えれば安全に攻められる。これでアルテミスのシールドは残り二枚だ。
「夕陽!」
「アポロン……大丈夫だ、上手くいけば、次のターンには勝負が——」
「違う! アルテミスの場と墓地をよく見ろ!」
「え……?」
 アルテミスの場には、《ファンク》《ダークルシファー》《ヤタイズナ》《ロマノフ》の四体。そして墓地には——
「っ! 《ロマノフ》で墓地に送ったのって……ってことは」
 どうせ《ロマノフ》で撃つための呪文でも落としたのだろうと思い、見落としていた。それよりも今の夕陽の息が詰まるような状況をなんとかする方が先だったので、そちらに気が回らなかった。
 しかしアルテミスが墓地の落としたカードは、呪文ではない。それは——
「私のターンね……愚かな人間。この盤面を見て、私の意図に気付かないなん。…ま、気付いたところで、あなたに止められるとは思わないけど」
 それはその通りだった。仮に気づいたところで、夕陽にはアルテミスを止めることはできない。
 そしてアルテミスのターン、彼女の仕掛けが発動する。
「私のターンの初め、《貴星虫ヤタイズナ》の能力発動」


貴星虫ヤタイズナ 闇文明 (6)
クリーチャー:パラサイトワーム/ダークロード/オリジン 5000
自分のターンのはじめに、進化クリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。


 墓地に眠る進化クリーチャーを呼び覚ます《ヤタイズナ》。アルテミスの墓地の進化クリーチャーは、《ロマノフ》で落とした一体だけ。
「《ヤタイズナ》《ダークルシファー》《ファンク》の三体を進化元に!」
 三体のダークロードが闇に包まれる。闇の中で三体のクリーチャーは一体のクリーチャーとなり、そして、
「我が力、月光の下に集え! 失われた死の魔術を今ここに解放する! 神々よ、調和せよ! 進化MV!」
 ——神話となる。

「《月影神話 ミッドナイト・アルテミス》!」