二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.524 )
日時: 2014/03/13 00:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 流とナーガのデュエルは、まだシールド五枚とお互いに動きを見せていない。
 流の場にはなにもないが、《霞み妖精ジャスミン》と《フェアリー・シャワー》でマナを伸ばしている。
 しかしそのマナ加速も、ナーガの繰り出した《穿神兵ジェットドリル》に阻まれてしまう。さらにブロッカーの《フィスト・ブレーダー》もいた。


穿神兵ジェットドリル 火文明 (3)
クリーチャー:アーマロイド 2000
相手の山札または墓地から、カードがマナゾーンに置かれた時、相手は自身のマナゾーンからカードを1枚選んで山札の一番下に置く。


「マナ加速封じか……厄介だな」
 このターンで6マナとなる流だが、しかし彼の使うデッキは10マナ前後までマナを伸ばしてこそ真価を発揮するため、動きがかなり鈍ってしまう。
「ならば、呪文《ドンドン吸い込むナウ》」
 山札の上から五枚のカードが捲られ、そのうちの一枚を掴み取った。
「《グローバル・ナビゲーション》を手札に加える。自然のカードを手に入れたので、《ジェットドリル》をバウンスだ」
 時間稼ぎにしかならないが、ひとまず《ジェットドリル》を場から話す流。そして、
「呪文《フェアリー・ライフ》、マナを追加してターン終了」
 その隙にマナを追加する。しかも、返しのターンに《ジェットドリル》をまた出されても、手札に入れた《グローバル・ナビゲーション》で除去できるため、これ以上のマナ加速は妨害されないはずだ。
 しかし、
『私のターン《ギガバルザ》を召喚。効果で相手の手札を一枚墓地へ』
「っ」
 《ギガバルザ》から伸びる無数の魔手が流の手札へと襲い掛かり、先ほど手に入れたばかりの《グローバル・ナビゲーション》を叩き落としてしまう。
「マナを増やそうとすれば、今度は手札か……」
 デュエル・マスターズにおいて、マナと手札は切っても切り離せない存在。マナがあっても手札がなければカードは使えず、同じように手札がいくら多くても使うためのマナがなければ意味がない。
「だが、これで8マナ溜まった。《サイバー・G・ホーガン》を召喚、激流連鎖!」
 流の山札の上から二枚が捲られる。そしてその二枚が《ホーガン》よりコストの低いクリーチャーであれば、そのまま場に出せる。
「捲れたのは《青銅の鎧》と《シンカイ・サーチャー》だ。《シンカイ・サーチャー》の登場時能力で、山札から好きなカードを手札に加え、ターン終了」
『ならば私は、《穿神兵ジェットドリル》を召喚。さらに呪文《スパイラル・ゲート》、《シンカイ・サーチャー》を手札に』
 マナ加速を止められ、《シンカイ・サーチャー》もバウンスされる。《ホーガン》にしなかったのは、激流連鎖を使い回されないようにするためだろう。
「クリーチャーにしては意外と考えているな」
『あまり私たちを舐めないで。私たちは、選ばれし神々から生と力を授かったクリーチャー。影響を受けて実体化できるようになっただけのクリーチャーと一緒にしないで』
 どうやらクリーチャーの間でも、差別意識のようなものは存在しているらしい。半ばどうでもよいことだったので、気にせず流はターンを始める。
「……俺のターン。再び《シンカイ・サーチャー》を召喚。山札から好きなカードを手札に加え、《青銅の鎧》を召喚。マナを追加だ」
『無駄ね《ジェットドリル》の能力発動。相手が山札や墓地からマナゾーンにカードを置いた時、マナゾーンのカードを山札下に戻さなければならない』
 そんなことは分かっている。だが《青銅の鎧》の効果は強制なので、嫌でもマナは増やさなければならない。流はマナゾーンにあった《フェアリー・シャワー》を山札の底へと戻す。
「ターン終了だ」
 そしてターンを終える。その直後、ナーガは不敵な笑みを見せた。
『遂にこの時が来た……私のターン。《フェスト・ブレーダー》と《ギガバルザ》を、進化V!』
「来るか……!」
 マーフォークとキマイラ、それぞれの種族の、二体のクリーチャーが、一つの姿を成す。

『この私を! 《蛇魂王ナーガ》を召喚!』


蛇魂王ナーガ 水/闇文明 (6)
進化クリーチャー:ナーガ 9000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化V—自分のマーフォーク1体とキマイラ1体を重ねた上に置く。
このクリーチャーはブロックされない。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、クリーチャーをすべて破壊する。


 下半身が蛇、上半身が女体という、異形の姿をしたクリーチャー《ナーガ》。かつて五体の王うち一体として崇められたこともある、蛇神だ。
「くっ……俺のターン」
 カードをドローする流は、鋭い視線で《ナーガ》を睨みつける。
「《ナーガ》が邪魔だな……」
 マナに目を落とす流。そこには、《シンカイ・サーチャー》で呼び込み、マナへと置いた《ネプトゥーヌス》が眠っている。手札には《母なる星域》もあった。
 流に限ったことではないが、『神話カード』を呼び出すためにはクリーチャーを展開することが必要だ。しかし《ナーガ》を場から離してしまえば、進化元にするために展開したクリーチャーは一掃される。
 かといって《ナーガ》を無視して《ネプトゥーヌス》を出すと、今度は《ネプトゥーヌス》自身の能力で《ナーガ》を場から離してしまい、《ネプトゥーヌス》諸共クリーチャーが一掃される。しかも相手は山札に残るため、また召喚される恐れもある。
(実質的に《ネプトゥーヌス》は封じられたか……デッキの水文明クリーチャーのコストを高くしたことが、裏目に出たな)
 流のデッキには、コストの低い水のクリーチャーはほとんどいない。というのも、流のデッキは《ネプトゥーヌス》を呼び出し、相手を一掃して逆転の芽も潰してからとどめを刺すデッキなので、CD12まで発動させられるようにデッキ内の水クリーチャーのコストを高くしているのだ。
 だが今は、それが裏目になってしまっている。コストが高いせいで、《ネプトゥーヌス》を召喚しようとしたらどうしてもCD12まで発動してしまい、《ナーガ》が場を離れてしまう。
「……なら、こうするか。まずは《キング・ケーレ》を召喚し、《ジェットドリル》をバウンス。そして《ホーガン》でシールドを攻撃! Wブレイク!」
 しばらく考えた流の出した結論。それは、《ナーガ》を無視することだった。
 《ネプトゥーヌス》は出さず、《ナーガ》も無視して、数に物を言わせ攻める戦術に切り替える。《ナーガ》は、いわば不発弾のようなもの。全体除去を放たれるのは厄介だが、なにもしなければその除去放たれない。《ネプトゥーヌス》を出すために展開したクリーチャーを、そのままアタッカーとして利用するのだ。
 途中からビートダウンのような戦術に切り替えて来た流。《ホーガン》の投げる砲丸が、《ナーガ》のシールドを二枚粉砕する。
「さらに《シンカイ・サーチャー》でシールドをブレイク! 《青銅の鎧》でもシールドをブレイクだ!」
 次々と割られていく《ナーガ》のシールド。もう残り一枚だ。
「最後に二体目の《青銅の鎧》でシールドを——」
『Sトリガー発動!』
 最後のシールドを割ろうとしたところで、四枚目のシールドが光の束となって収束する。そしてその光は、一体のクリーチャーとなってバトルゾーンに現れた。
『《空神兵ウィングライオス》を召喚! 互いのクリーチャーを一体破壊! 私は《ナーガ》を破壊』
「なに……っ」
 《ウィングライオス》の機銃を受け、《ナーガ》が破壊される。流もタップ状態の《青銅の鎧》を破壊するが、どれを選んでも同じことだ。
『私の能力発動! 私がバトルゾーンを離れた時、バトルゾーンのクリーチャーをすべて破壊する!』
 刹那、《ナーガ》が破裂し、その内側からドス黒い水が噴出する。その水は雨の如くバトルゾーンに降り注ぎ——クリーチャーをすべて、衰弱させてしまう。
『そして私のターン! 《ジェットドリル》と、《砕神兵ガッツンダー》そして《ギガザンダ》を召喚!』
 返しのターン、《ナーガ》はシールドブレイクで増えた手札から、一気にクリーチャーを並べて来る。
「俺のターン……!」
 カードを引く流。しかしドローしたのは、《母なる星域》。クリーチャーがいないこの状況では、意味がない。
「……終了だ」
『打つ手なし、ならばこのターンで終わりに! 二体目の《ガッツンダー》を召喚、そして進化! 《超機動幻獣ギガランデス》!』


超機動魔獣ギガランデス 闇/火文明 (5)
進化クリーチャー:キマイラ/アーマロイド 6000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分のキマイラまたはアーマロイド1体の上に置く。
バトルゾーンにある自分の他のキマイラとアーマロイドすべてのパワーは+2000される。
バトルゾーンにある自分のキマイラとアーマロイドはすべて「W・ブレイカー」を得る。


「進化Vに続きデュアル進化か……随分と古いカードを持ち出したものだ」
 とはいえ、この状況はまずい。
『《ギガランデス》の能力で、私のバトルゾーンにいるキマイラとアーマロイドはパワー+2000、そしてWブレイカーに! 《ジェットドリル》と《ガッツンダー》で、シールドをそれぞれWブレイク!』
「ぐぅ……!」
 一気に四枚のシールドが削り取られる流。S・トリガーが出なければ、残り一体のクリーチャーで最後のシールドを割られ、とどめを刺されてしまう。
『《ギガザンダ》で最後のシールドをブレイク! そして《ギガランデス》で——』
「少し待て、S・トリガー発動《アクア・サーファー》を召喚!《ギガランデス》をバウンス」
 最後のシールドから出て来た《アクア・サーファー》で難を逃れる流。しかし、
『1ターン生き延びたか。だが、次のターンで本当に終わりだ』 
 《ナーガ》の場には三体のクリーチャーがおり、シールドも一枚残っている。対して流の場にはなにもなく、クリーチャーも《アクア・サーファー》一体のみ。
 かなり苦しい状況。流はぽつりと呟く。
「……俺は流行とか、俗っぽいことには疎いんだがな。しかし零佑が言うには、巷ではそれを死亡フラグと言うらしい」
『はぁ?』
「俺はこの言葉の意味がいまいち分からなかったが、なるほど、こういうことか。理解した」
 だがナーガは、流の言葉が理解できないでいる。流はそんなナーガのことなど気にも留めず、
「その発言は、明らかにお前の敗北を悟らせる言葉だな。俺のターン、《飛散する斧 プロメテウス》を召喚し、山札から二枚をマナへ。マナゾーンから《ネプトゥーヌス》を回収だ。そして呪文《母なる星域》、《プロメテウス》をマナゾーンへ」
 わざわざ進化クリーチャーを手札に戻してから《母なる星域》を使う流。普通なら考えられないプレイングだが、どの道この状況では《ネプトゥーヌス》は出せない。ならば、別の使い方を《ネプトゥーヌス》を活用するまでだ。
「流、我を進化元とするがいい」
「分かっている、そのつもりでお前を回収したからな」
 流は“手札の”《ネプトゥーヌス》を種として、《母なる星域》でマナゾーンに存在する進化クリーチャーを呼び出す。
「《ネプトゥーヌス》を進化元に、マナゾーンから手札進化! 《レジェンダリー・デスペラード》!」
 マナゾーンから手札進化というのもおかしな言い方だが、流はマナゾーンに埋まっていたもう一体の進化クリーチャー《レジェンダリー・デスペラード》を《母なる星域》で引っ張り出す。進化元となるのは《プロメテウス》で回収した《ネプトゥーヌス》だ。
 これで流の場には、ナーガを倒せるだけのアタッカーが揃った。
「《アクア・サーファー》で最後のシールドをブレイク!」
『ぐ、まさか、この私が、そんな——』
 ナーガの最期の言葉は最後まで紡がれず、
「《レジェンダリー・デスペラード》で、ダイレクトアタック!」
 ——巨大な海の怪物に、飲み込まれるのだった。