二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.532 )
- 日時: 2014/03/17 20:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ルカに言われた通り、ラトリを探すささみとうさみ。だがその道中、二人は不幸にも同じような境遇に当たる二人組と出会ってしまった。
「この子たち……」
「あー、なんか見たことあるなぁ。【神格社界】の……ルカ=ネロの手下、みたいな双子だよねぇ」
赤毛をツインテールにした少女と、軽そうな笑みを浮かべる金髪の少年。ささみもうさみも、この二人のことは知っている。同時に、自分たちでは敵わない相手であることも理解していた。
(ささちゃん、ど、どうしよう……)
(『炎精火滅』と『黄衣之天』、この二人相手じゃ、あたしたちだとどうしようもないわね……!)
互いに見つめ合い、アイコンタクトで意思疎通するささみとうさみ。だが、言葉を用いず意思が疎通できたからといって、どうにかなるものでもない。
(一応、あたしたちは界長の秘書で、“ゲーム”の世界だとそれなりに名の知れた存在だけど、どうにも実力が伴ってないのよね……有名無実っていうか)
(で、でも、だからこそ、ここで見逃しては……くれない、よね……?)
(そうね。そう考えるのが自然ね)
そしてそんなささみの予想の通り、クトゥグアとハスターはこんなことを言う。
「どうするクトゥ? 早く姫様見つけないといけないけど……【神格社界】のトップらへんが関わってるなら、放ってはおけないよね」
「うん……もしルカ=ネロがここにいて、ロッテちゃんを見つけたなら、最悪の事態……が、起こるかもしれない」
「その可能性を無視することはできないよね」
そう言ってから、双子を見遣るクトゥグア、そしてハスター。その視線だけでうさみはビクッと身体を震わせ、ささみの後ろに隠れるように後ずさった。ささみは行動にこそ出ていないが、その表情は険しい。
「そういうわけだから、ちょっと遊ぼうか。上手くいけば、師団長が大嫌いなルカ=ネロを無力化できるかもだし、お土産としては十分すぎるよね」
「……叩き潰す」
デッキを取り出し、臨戦態勢の二人。対する双子は、デッキケースに手をかけたまま、視線を交わす。
(う、うぅ……ささちゃん……)
(泣かないでよ、あたしだって泣きたいような状況なんだから)
(で、でも……このままじゃ、わたしたち、負けるだけじゃなくて、かいちょーさんに迷惑もかけちゃう……)
(界長は今まであたしたちに散々迷惑かけてきたんだから、少しくらいはって思うけど……そういう状況でもないわよね)
そこで一旦、ささみは視線を敵に向ける。一度息を吐き、目を瞑ると、意を決したように開眼。そしてうさみに視線を戻し、
(仕方ない、迎え撃つわ)
(え、で、でも……)
(どの道、もう戦闘は避けられない。だったら戦うしかないじゃない)
ささみの言う通り、この状態でまだ幼い少女二人が、戦闘放棄して逃げられるとは思えない。
だが、ささみはもっと前向きにことを考えていた。
(それにあたしたちだって、あのルカ=ネロの側近、決して弱いわけじゃない。逆に考えれば、ここで帝国四天王の二人を倒せれば、あたしたちの実力の証明にもなる。界長の役に立てるのよ)
(それは……そうかも、しれないけど……)
(だからあたしは戦うわ。別に、うさにまでこんなことを要求するつもりはないわ。むしろ、あたしがこの二人を引きつけておいて、その間にうさがラトリさんを探す方がいいかもしれない)
(だ、ダメだよっ! ささちゃん一人じゃ……)
一対一でも勝てる相手ではないのに、二対一になれば、絶望的どころではない。
それが分からないささみでもないだろう。だが、それでも彼女は戦おうとしている。ならば自分も、逃げ出すわけにはいかなかった。
(わかった。わたしも、戦う……)
(……うさならそう言ってくれると思ったわ。いくらなんでも、あたし一人でこの二人相手は、荷が重すぎる)
言葉のないやり取りが交わされた後、二人はそれぞれ手にかけたデッキケースから、デッキを取り出した。
「そっちもやる気になったんだ。ま、こっちは時間をかけてられないし、サクッと終わらせるよ」
「そうね、あたしたちもだらだらしていたくはないし、サクッと負けてもらうわ」
「……容赦はしない」
「あぅ……で、でも、わたしだって、負けません……!」
次の瞬間、二組の少年少女が、神話空間へと導かれた。
「……汐」
「……はい、です」
わらわらと湧いて来るクリーチャーを次々と薙ぎ倒している汐とアルテミスは、ふと何者かの視線を感じた。
いや、視線などという生易しいものではない。それは正に殺気。恐ろしくおぞましいまでの闇を内包した、汐を殺さんとする気配だった。
「誰ですか、そこにいるのは」
汐の呼びかけに応えた、というわけではないだろう。だが、近くの茂みから一人の人間が姿を現す。
「やっと見つけたわ、悪魔の小娘……!」
「あなたは……」
見覚えのある女だった。金髪碧眼に白い修道服。なにより、この狂気じみた空気感。忘れるはずがない。
「……誰。汐、この人間のこと知ってるの?」
「えぇ、まあ……確か、【師団】の小隊長とかいう……ルシエルさん、でしたか」
「悪魔に名前を覚えられるなんて、穢れるから勘弁願いたいところなのだけれど……火あぶりで灰も残らず魂ごと燃やし尽くすつもりだし、どの道同じことね……」
ゆらりゆらりと、ルシエルは汐へと近づいてくる。表情は、薄く笑みを浮かべているが、瞳の奥には闘争心や、気配として伝わってくる殺気、そして使命感のようなものが混沌と渦巻いており、非常に不気味だ。
「私のことは悪魔扱いですか……正直、今のあなたにそんなことを言われたくはないのですが」
全身から滲み出る空気は、ルシエルの方が圧倒的に人間離れに狂気染みている。汐の言いたいこともよく分かるというものだ。
「さぁ、今度こそあなたを滅するわ……浄化なんて生温いことは言わない。魂まで消し尽くす……!」
いつの間に取り出したのか、ルシエルの手中にはデッキが握られていた。
「汐」
「分かっているですよ」
それを見て汐もデッキケースに手をかける。
「なにやら狂人っぽい人に目を付けられてしまったようですが、私のすべきことはなにも変わらないです」
「そう。ならアタシも、あなたに力を貸してあげようかしら」
「ありがたいです」
アルテミスがカードに戻り、汐の手の内に収まる。同時にケースからデッキを取り出し、
「さあ……今度こそ消えなさい!」
「断る、です」
二人は、神話空間に飲み込まれた。