二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.534 )
日時: 2014/03/19 04:44
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 ささみとハスターのデュエル。
 ささみのシールドは五枚。場には《命水百仙 しずく》が一体。
 一方ハスターのシールドは四枚。場には《青銅の鎧》《アクア・サーファー》。
「ぼくのターンだね。とりあえずマナチャージして……《ミスター・アクア》を召喚。ターン終了かな」
「…………」
 ハスターの行動を、ささみは訝しむように見つめる。
 【神聖帝国師団】帝国四天王が一人、ハスター。目の前にいる少年の情報は、四天王の中でも比較的多い。
 特徴として真っ先に挙げられるのは、性格面ならその軽薄さ、デッキ面なら複雑怪奇なコンボ性。
 まだ自分と同じくらいの年齢であろうハスターだが、しかし腹の中ではなにを考えているのか分からない。少年らしい悪戯染みた原理で行動することもあれば、少年らしからぬ悪魔染みた理屈で活動することもある。
 そんな底知れぬハスターの性格は、デッキににも表れているようだった。
 “ゲーム”の世界で戦うデュエリストの多くは、ポリシーのようなものを持って、自分の中にある確固としたルールに基づいてデッキを構築する。中にはあえて様々な戦術を操る者もいるが、大抵の参加者は自分の根本となる戦術を一つに固めている。
 個人におけるデッキ構築のルール、とでも言うのか。メタゲームを意識する公式大会では、頭が固い、などと言われてしまいそうなルールだ。だが“ゲーム”とは、ただただ効率や勝利だけを貪欲に目指すという側面と同時に、個人の発現や証明、アイデンティティの確立、自己表現のような側面もある。
 自分の性に合うデッキの方が回転や引きが良くなる、という非科学的かつ無根拠な理由もあるが、それ以上に自分自身というものをはっきりさせようとするものなのだ。
 ゆえに“ゲーム”参加者のデッキは概ね、個人によって根幹を成す者が不変である。
 そしてこのハスターにおいては、それがコンボ。彼は実用性を度外視する、むしろあまり実用的でないカードをコンボの中に組み込んで戦う変わり種だ。
 いくら戦術を一つに固めていても、私用するカードは強いに越したことはない。だがハスターは、あえて使いにくいカードをコンボに混ぜて使おうとしている。
(それが彼の性質なのかもしれないけど……あたしには、ちょっと理解できないわね……)
 見たところハスターのデッキは、光、水、自然の三色で組まれており、準備にはまだ時間がかかりそうだ。その挙動はどこか不気味で、一体なにをしでかすのかは分からないが、
「その前に決めれば問題ない……あたしのターン!」
 自分を奮い立たせるように言って、ささみはカードを引く。
「《遥か寸前 ヴィブロ・ブレード》を召喚! カードを一枚引いて、《一撃奪取 マイパッド》も召喚! 《しずく》でシールドブレイク!」
「おっと残念、またまたS・トリガー発動だよ。《光器ノーブル・アデル》を召喚だ」


光器ノーブル・アデル 光文明 (7)
クリーチャー:メカ・デル・ソル/エイリアン 2500
S・トリガー
このクリーチャーよりパワーが小さいクリーチャーは攻撃できない。


 自身よりパワーの低いクリーチャーの攻撃をシャットアウトする《光器ノーブル・アデル》。これ単体だと、基本的にパワー2000以下のクリーチャーがすべて攻撃できなくなる。つまり、クロスギアの《ノーブル・エンフォーサー》とほぼ同じだ。
 しかし、こちらはクリーチャーで、効果も微妙に差異がある。
「むぅ……でもそれじゃあ、あたしの《しずく》は止まらないわよ」
「じゃあこうしようか? 《ペイント・フラッペ》を召喚。これで《ノーブル・アデル》のパワーは3500だ」
 つまり、基本的にパワー3000以下のクリーチャーは攻撃できなくなる。
 《ノーブル・エンフォーサー》はクロスギアゆえに除去されにくいという利点があるが、《ノーブル・アデル》はクリーチャーで、効果対象も自身よりパワーの低いクリーチャーなので、パワーを上げれば止められる範囲も広くなる。
 本家同様に味方も攻撃ができなくなるが、しかし最初から攻撃しないつもりであれば、それもデメリットにはならなず、ハスターから攻めてくる気配は全く見られない。
「パワー3000以下が攻撃できないとなると、厳しい……どうする……?」
 ビートダウンでわりと軽いクリーチャーが多いささみのデッキは、パワーが3500を超えるクリーチャーは決して多くない。
 だが、
「……! グッドタイミング! 《超合金 ロビー》を召喚!」


超(チョー)合金(アルケミー) ロビー 水文明 (5)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 4000
このクリーチャーが攻撃する時、カードを3枚引いてもよい。そうした場合、自分の手札を2枚捨てる。
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《合金》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《合金》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。


 現れたのは、光線銃を持った小さなロボットのようなクリーチャー《超合金 ロビー》だった。パワーが4000あるので、今の《ノーブル・アデル》に引っかからない。
「うーん……マナ溜めたいけど、あんまりシールドも割られたくはないし、《ロビー》も破壊したくないし……とりあえず《猛菌護聖ペル・ペレ》を召喚して、ターン終了」
「ならあたしのターンね。《新世界 シューマッハ》を召喚して、互いの手札をリセット!」
 ささみとハスターは一枚だけ残っていた手札を捨て、その後、五枚カードをドローする。
「そして《ロビー》で攻撃! その時《ロビー》の能力でカードを三枚ドロー!」
 山札を掘り進み、《ノーブル・アデル》に対応できるカードを探すささみ。そして引けたのが、
(《マジックマ瀧》……! よし、《しずく》をどうにかして破壊できれば、ドロン・ゴーできる!)
 切り札を引き当てたささみの表情が明るくなる。《ロビー》の能力で、引いた後は手札を二枚捨てなければならないが、どうせ召喚しても攻撃できないクリーチャーだ。数で押すこともできない今は不要なので、躊躇いなく墓地に落とす。
 そして《ロビー》の光線が、ハスターへと放たれた。
「《ペル・ペレ》でブロック」
 《ロビー》の光線を、《ペル・ペレ》が身体を張って防御。バトルに負けた《ペル・ペレ》は破壊されるが、墓地に行く代わりに手札へと舞い戻る。
「そんでもってぼくのターン。君が《シューマッハ》を出してくれたお陰で、こっちも色々できるようになったよ」
 言ってハスターは、手札から二枚のカードを抜き取る。
「まずは呪文《魂と記憶の盾》で《ロビー》をシールドに。次に《パクリオ》を召喚、手札を見せてね」
「っ!」
 強制的に手札を公開させられるささみ。ハスターはその手の内に隠していた切り札を見逃さなかった。
「おおぅ、《マジックマ瀧》かぁ。ぼくのデッキにハンデスはきついし、こいつをシールドに埋めるよ」
「やられた……!」
 シールドに埋められてしまっては、ささみのデッキでは回収できない。ハスターがシールドを割ってくれればその限りではないが、攻撃する気配はない。それ以前に《ノーブル・アデル》でハスターも攻撃でないのだ。
「……《散舞する世界 パシフィック R》を召喚。そして呪文《ヒラメキ・プログラム》! 《パシフィック R》を破壊!」
 《パシフィック R》のコストは5、つまりコスト6のクリーチャーが閃かれる。
「出てくるのは……《サイバー・N・ワールド》!」
 互いの墓地と手札をすべてリセットする《サイバー・N・ワールド》が現れた。これで逆転手を探すささみだが、あまり手札は芳しくない。
「《シューマッハ》で攻撃!」
「《ミスター・アクア》でブロック」
 そこから《シューマッハ》で攻撃するも、その攻撃は届かない。
「ぼくのターン《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》でマナを三枚追加! さらに《滅罪の使徒レミーラ》を召喚! これでぼくの水と自然のクリーチャーはすべてブロッカーだよ」
 さらに守りを固められてしまい、とうとうささみの攻撃が通らなくなってきた。
 このままでは攻められず、こちらがジリ貧になる。そう思った時だ。
「! これよ! 《ロビー》を召喚! 続けて呪文《ブータン転生》! 《ロビー》を破壊!」
 《ブータン転生》の効果で《ロビー》が破壊され、好きなクリーチャーを手札に加えられる。
 《ロビー》は唯一無二なる存在、エグザイル。破壊されてもその身と力は、より強力となり転生する。
「山札から好きなクリーチャーを手札に加えて……《ロビー》のドロン・ゴー発動!」
 この時ささみが手札に加えたカードは、《合金》の名を冠するクリーチャー。しかし《ロビー》ではない。そのさらに先にある、超絶的なエグザイルだ。
 破壊された《ロビー》の身体が転生し、新たな姿へと昇華する——

「——《超絶合金 ロビン・フッド》!」