二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.538 )
- 日時: 2014/03/19 18:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ささみが一気に攻め込んでいくところだったこのデュエル。
ささみのシールドは《魂と記憶の盾》と《パクリオ》によって七枚に増えており、場には《百仙閻魔 マジックマ瀧》《超絶合金 ロビンフッド》《錬金魔砲 ロビン・チャンプ》《サイバー・N・ワールド》《新世界 シューマッハ》《遥か寸前 ヴィブロ・ブレード》《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》。
対するハスターのシールドはゼロ。場には《アクア・サーファー》《パクリオ》《終末の時計 ザ・クロック》。
ささみが攻勢を整え一気に攻め込み、とどめまであと一歩と言うところで、《終末の時計 ザ・クロック》がトリガーし、その勢いは殺されてしまった。
だが、だからと言ってささみが圧倒的に不利かというと、そういうわけでもない。
(あたしのシールドは七枚もあるし、相手の場はクリーチャーも少ない。少なくとも、このターンでダイレクトアタックを受けることはないはず)
いくら凌がれても、バトルゾーンをリセットされたわけではないので、ささみの優勢は変わらない。
「じゃ、ぼくのターンだね。いやぁ、ここまで長かったなぁ……」
「……なんのこと?」
カードを引きながら、しみじみとそんなことを言うハスター。なにか嫌な予感がする。
「いやね、コンボデッキは基本的にハンデスとかの妨害に弱いんものなんだけど、特にこのデッキはカラーがカラーだから、妨害には滅法弱くてさ。だから相手を妨害しながらビートダウンする君みたいなデッキが相手だと、対応するのに手一杯で、コンボ完成まで時間がかかったよ」
コンボ完成? 嫌なワードがハスターの口から放たれた。嫌な予感はどんどん大きくなり、焦燥や不安という形でささみの中で膨張する。
「ともあれ、このターンがこのデュエルのファイナルターンね。まあ大丈夫だよ、少なくともこのデュエルで君が死ぬことはないし、コンボの勉強だとでも思いながら見てたら? 特に君の《ロビン・チャンプ》は、色々とコンボのし甲斐がありそうだしね。ぼくも今度なにか考えてみようかな」
言いながらハスターは手札とマナゾーンを確認。そして、カードを一枚、抜き取った。
「まずはこれだ。《転々のサトリ ラシャ》を召喚。無色以外をすべてタップ」
「《ラシャ》……? 無色クリーチャーなんて、いないじゃない……」
首を傾げるささみ。《ラシャ》は自身を含む無色でないクリーチャーをすべてタップする。それによりささみのクリーチャーは勿論、ハスターの場のクリーチャーもすべてタップされる。
本来は攻撃せずに《策士のイザナイ ゾロスター》や《神聖斬 アシッド》の生贄を用意したり、光臨を持つクリーチャーをタップさせるために使われるが、ハスターのデッキにそれらのクリーチャーが投入されているとは思えない。
「タップされたクリーチャーの使い道は、なにも《アシッド》や光臨だけじゃないんだよ。続けて呪文《母なる星域》! 《クロック》をマナゾーンに送って、マナゾーンから進化クリーチャーを呼び出すよ。《ラシャ》を進化!」
「マナゾーンから進化クリーチャー、そして、タップされた《ラシャ》……まさか……!」
ささみの予感は予想に、そして予想は予測となって、的中という結果を導き出す。
タップされた《ラシャ》が《母なる星域》に飲み込まれた。《クロック》を糧とし、《ラシャ》は異星の力を取り込んで進化する。
「神秘の力を暴発せよ! 《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》!」
聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ 光文明 (9)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/エイリアン 13000
進化—自分の光のクリーチャー1体の上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーがアンタップされた時、自分の山札を一番下の2枚を残してすべて引く。その後、「S・トリガー」付き呪文を好きな枚数コストを支払わずに唱え、「S・トリガー」付きクリーチャーを好きな数コストを支払わずに召喚してもよい。
現れたのは、最後の神秘を内包した異形にして異星の天使《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》。
《緑銅の鎧》でひっそりとマナに仕込まれていた《ガガ・ラスト・ミステリカ》だったが、《母なる星域》の力で唐突に出現する。その異質で強大な威圧感に、ささみは圧倒されていた。
「う……で、でも、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力はアンタップした時に発動する。次のターンには確実にとどめを——」
「なーに言ってんの。さっき言ったじゃん、このターンがこのデュエルの最後のターンだって。コンボだって公言してて、こんなコンボの塊みたいなクリーチャーが出たのに、そこでターン終了するわけないじゃん。なんのためにぼくがマナを溜めてたと思ってるのさ」
苦言を呈するように口を尖らせるハスター。
つまり、まだ彼のターンは終わらない。
「確かに君の言う通り、このターンで決めないとぼくの負けだよ。だからこれが、ぼくの逆転の一手だ。《逆転王女プリン》を召喚!」
続けて召喚されたのは、文字通り逆転を呼ぶ姫君《逆転王女プリン》だった。彼女の能力は、クリーチャーを一体タップ、またはアンタップすること。そして、タップ状態で進化したクリーチャーは、進化後もタップされた状態なのだ。
つまり、
「タップされている《ガガ・ラスト・ミステリカ》をアンタップ! そしてこの時、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力発動!」
刹那、《ガガ・ラスト・ミステリカ》が眩い光を放つ。しかしその光はどこか昏く、暗澹としたものであった。
《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力は、自身がアンタップした時に発動する。それは身を削る豪快にして異質な能力だ。
「ぼくの山札の下から二枚を残して、全部を手札に加える!」
つまり、山札のほとんどを手札にしてしまう大型ドロー、というわけだ。だが、これだけでは終わらない。ただカードを引くだけが《ガガ・ラスト・ミステリカ》ではないのだ。
「そしてその後、手札にあるS・トリガー呪文を好きなだけ唱えて、S・トリガークリーチャーを好きなだけ召喚できる!」
つまり要約するなら、《ガガ・ラスト・ミステリカ》は山札の中にあるS・トリガーを持つカードをすべて使用することのできる能力だ。加えて自分が手札に握っているS・トリガーも発動させることができる。
確かにこれはコンボ向きのカードだ。ハスターが嬉々として山札を鷲掴みにしている。
「さあ、ここからが本番だよ。まずはS・トリガーで呪文《緊急再誕》! 《逆転王女プリン》を破壊して、手札からマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストのクリーチャーをバトルゾーンに出すよ。さあ、再誕せよ——」
ハスターのマナは13マナもあるので、大抵のクリーチャーは呼び出せるだろう。加えて《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力で山札のカードをほとんど手札に入れているので、ここで一番出したいクリーチャーを手札に確保しているはずである。
ささみのその予想は当たっている。そしてこの時、ハスターが呼び出したのは、
「——《サイバー・J・イレブン》!」
サイバー・J・イレブン 水文明 (11)
クリーチャー:サイバー・コマンド 11000
M・ソウル
W・ブレイカー
バトルゾーンに自分の水のクリーチャーが11体以上あれば、自分はゲームに勝利する。
《緊急再誕》で呼び出されたのは、仲間の力を勝利に繋げるサイバー・コマンド《サイバー・J・イレブン》だった。
攻撃せずに勝利する特殊勝利、俗に言うエクストラウィンを達成することのできる能力を持った数少ないクリーチャーで、勝利条件はその名の通り水のクリーチャーを十一体並べること。
しかし普通のクリーチャーを十一体並べるだけでも至難の業だというのに、それが水文明限定となればますます難しくなる。だが、ささみは気付いてしまった。ハスターはこの時点で、クリーチャーを十一体並べる方法を見出していることに。
「言っとくけど、まだ終わらないよ。《ガガ・ラスト・ミステリカ》の能力の続きだ。次はS・トリガー付きクリーチャーをバトルゾーンに!」
「やっぱり、ってことは……!」
ハスターは山札に眠るS・トリガークリーチャーを一気に呼び出して、十一体の水のクリーチャーを揃えるつもりなのだ。どうりでS・トリガーを持つクリーチャーが多いわけだ、とささみは今更のようにハスターのデッキを理解する。
だが、理解してももう遅い。手遅れだ。
次の瞬間、《ガガ・ラスト・ミステリカ》の力で、手札に加えられたS・トリガー獣たちがバトルゾーンへと流れ込む。
「《アクア・サーファー》《猛菌護聖ペル・ペレ》《ミスター・アクア》《ルナ・ヘドウィグ》《光器ノーブル・アデル》《交錯のインガ キルト》《逆転王女プリン》……《ロビンフッド》で戻された《ペイント・フラッペ》もバトルゾーンに!」
山札から手札に加えられたS・トリガー獣たちが次々とバトルゾーンに現れる。《アクア・サーファー》が二体に《ルナ・ヘドウィグ》《ペイント・フラッペ》《パクリオ》《ミスター・アクア》、《猛菌護聖ペル・ペレ》が二体に《光器ノーブル・アデル》、《交錯のインガ キルト》と《逆転王女プリン》が二体ずつ、そこに《聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ》と《サイバー・J・イレブン》が加わり、元から場にいたクリーチャーも含めて、その数、総勢十五体。その中の水のクリーチャーは九体だ。
「……え? 九体?」
大量に呼び出されたクリーチャーに戦慄していたささみだが、そのクリーチャーの数を数えて、拍子抜けする。デュエルが長引いた上にマナ加速やドローでデッキが削られ、水のS・トリガークリーチャーがマナに行ってしまったためか、ハスターの水のクリーチャーは十一体には届いていなかった。
「それじゃあ《サイバー・J・イレブン》の勝利条件を満たしていないじゃない……」
「どうだろうね。確かに個々のカードを見るだけじゃあ、そう見えるかもしれないけど……ぼくは十一体の水のクリーチャーを、ちゃんと揃えてるよ」
「なにを言って……あ!」
また、気付いてしまった。
ハスターの言葉が真実であることを裏付ける、そのクリーチャーの存在を。
ペイント・フラッペ 水文明 (5)
クリーチャー:スプラッシュ・クイーン 1000
S・トリガー
バトルゾーンにある自分の光のクリーチャーと闇のクリーチャーはすべて、水のクリーチャーでもある。
バトルゾーンにある自分の他の水のクリーチャーすべてのパワーは+1000される。
「《ペイント・フラッペ》……!」
「そ、なにもこいつは《ノーブル・アデル》やブロッカーを組み合わせて足止めするだけじゃないんだよ。S・トリガーだから《ガガ・ラスト・ミステリカ》で出せるし……光のクリーチャーを水文明にするから《サイバー・J・イレブン》の勝利条件も満たしやすくなる。このデッキの隠れた主役さ」
つまりハスターの場にいる光のクリーチャーも水文明となり、イコール、ハスターのクリーチャーはすべて水文明である、ということになる。
となると、ハスターの水のクリーチャーの数は十五体。
《サイバー・J・イレブン》の勝利条件を、満たしている。
「っ、そんな、まさか……!」
「まーそういうわけだから、これで終わりね。ばいばい」
刹那、数多の仲間と共に《サイバー・J・イレブン》が襲い掛かる。
その圧倒的かつ理不尽な数の暴力に対して、ささみは為す術もなく飲み込まれるのだった——