二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.542 )
日時: 2014/03/21 03:16
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 汐とルシエルのデュエルは、まだどちらも準備段階だった。
「私のターン……《神門の精霊エールフリート》を召喚。山札の上から三枚を捲り、呪文の《コアクアンのおつかい》を手札に加え、ターンエンド」
 ルシエルのシールドは五枚。場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》《先導の精霊ヨサコイ》そして先ほど召喚した《神門の精霊エールフリート》の三体。《エナジー・ライト》で手札を増やしつつ、《ボーンおどり・チャージャー》でマナも伸ばしている。
「私のターンです。《コアクアンのおつかい》を発動し、山札の上から三枚を捲るですよ……《貴星虫ヤタイズナ》《猛菌恐皇ビューティシャン》《希望の親衛隊ファンク》を手札に加え、そのまま《ファンク》を召喚です」
 汐のシールドも五枚。場には《猛菌恐皇ビューティシャン》と、今しがた召喚した《希望の親衛隊ファンク》。こちらも《コアクアンのおつかい》で手札を、《ボーンおどり・チャージャー》でマナと墓地を増やしている。
 どちらも大型種族をメインとしたデッキなので、準備に時間がかかるのだ。果たして、どちらが先に切り札を呼び出すのか。
「前のターンに《エールフリート》で手に入れた《コアクアンのおつかい》を発動。山札の上三枚を捲り……《先導の精霊ヨサコイ》《乾杯の堕天カリイサビラ》《結杯の堕天カチャマサングン》を手札に。そして残った4マナで二体目の《ヨサコイ》を召喚」
 これで《ヨサコイ》が二体となり、次のターンにはルシエルの切り札である《ウェディング》を召喚されてしまう。
「手札にないことを祈りたいですが、《ウェディング》でなくとも大型アンノウンくらいは覚悟する必要がありそうですね……」
 ルシエルのマナは7マナあるので、最大で12マナのゼニス、アンノウンでも10マナまでは届く。《ウェディング・ゲート》に頼らず闇のエンジェル・コマンドを繰り出してくる可能性も十分に考えられた。
「手札も多いですし、危険な気配を感じるですが……ここは勝負です。《貴星虫ヤタイズナ》と《猛菌恐皇ビューティシャン》召喚し、ターン終了です」
 次のターン、切り札級の大型クリーチャーを出される可能性もあるが、汐も先に切り札を出せれば流れを引き寄せられる。今回は、その可能性に賭けた。
 しかし、切り札を先に出す、という点においては、残念ながらルシエルの勝利だった。
「ふふふ……愚かな悪魔の小娘。やはりどう足掻いても、あなたはここで裁かれる定めなのよ……!」
 ルシエルがニィッと口の端を釣り上げて微笑む。しかし瞳の奥は真っ暗で、そこだけは笑っていない。
 だが次に出されるクリーチャーを見れば、そんな不気味さなどに構ってはいられなくなる。
「私の場には《ヨサコイ》が二体……ゼニスの召喚コストは2ずつ下がり、合計で4下がる。つまり、6マナでこのクリーチャーを呼び出すわ……!」
 狂的な笑みを浮かべ、ルシエルは天頂の存在を呼び出す。

「《「俺」の頂 ライオネル》!」


「俺」の頂 ライオネル ≡V≡ 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
ブロッカー
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加える。その後、自分のシールドをひとつ、相手に選ばせる。そのシールドを自分の手札に加えてもよい。
自分の手札に加えるシールドカードはすべて「S・トリガー」を得る。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 現れたのは、直立した純白の獅子の如きゼニス。あらゆるクリーチャーの「自分こそが一番」という思いが募り、集合体となった存在。即ち「俺」という自我の頂点。それが《「俺」の頂 ライオネル》だ。
「《ライオネル》の能力発動! 《ライオネル》を召喚して呼び出した時、山札からシールドを一枚追加し、その後、相手に私のシールドを選ばせて手札に加える……そしてこのシールドは、S・トリガーを使うことができる」
 しかも《ライオネル》自身の能力で、ルシエルが手札に加えるシールドはすべてS・トリガーを得ている。どのカードを選ぼうが、トリガーで飛びこと必至だ。
「さあ、選びなさい。如何なる裁きを受けるのか、あなたに選択の余地を与えるわ……!」
「……なら、《ライオネル》で追加したシールドを選ぶですよ」
 不気味に笑うルシエルはなるべく見ないようにして、汐は追加されたばかりのシールドを選ぶ。ルシエルはシールドにカードを仕込んでいないのでどれを選んでも同じだが。
 しかし、どれを選んでも同じというのは、中身が分からないのだから最善の結果を故意に選択できないという意味であり、場合によっては最悪の結果を招くことになる。
 そしてこの時、汐は最悪に近いカードを選んでしまった。
「……ふふっ。やはり神は、あなたを許さないと仰っているわ……S・トリガー!」
 《ライオネル》の能力でS・トリガーとなったカードが発動する。そしてそれは、《ライオネル》に続く天頂の存在。それも、最後の《ライオネル》だった。

「《「獅子」の頂 ライオネル・フィナーレ》!」


「獅子」の頂 ライオネル・フィナーレ 無色 (10)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン/ゼニス 12000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のシールドを好きな数、手札に加えてもよい。その後、自分の手札を5枚まで、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに裏向きにして加える。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


「っ、ここで《ライオネル・フィナーレ》ですか……」
 運が悪い。よりによってそのカードを引いてしまったか、と汐は嘆くが、嘆いてばかりもいられない。
 S・トリガーで出たクリーチャーは、コストを踏み倒してはいるが召喚扱いになる。つまり、ゼニスの召喚した時の能力が発動するのだ。
「《ライオネル・フィナーレ》の能力発動! 私のシールド五枚をすべて手札に加え、私の手札を五枚シールドへ!」
 この時、手札に加えられたシールドのS・トリガーも使うことができる。そして《ライオネル》の効果ですべてのシールドはS・トリガーを得ているので、
「五枚のシールドすべてがS・トリガーですか……」
 運頼りとはいえ、大型クリーチャーが大量に並ぶ可能性すらあり得る。凶悪な闇のエンジェル・コマンドが三体も四体も並ぶとなると、かなりまずい。
 だがこの時に現れるのは、より強大な、天頂の存在であった。
「S・トリガー! 《偽りの星夜 エンゲージ・リングXX》《超次元ドラヴィタ・ホール》《龍聖霊ウルフェウス》——」
 そして、

「——《「十尾」の頂 バック・トゥ・ザ・オレ》! 《「祝」の頂 ウェディング》!」


「十尾」の頂 バック・トゥ・ザ・オレ  無色 (10)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/ゼニス 11000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中からコスト6以下の呪文を2枚選び、相手に見せてもよい。その後、山札をシャッフルする。選んだ呪文のうち1枚を相手に選ばせて墓地に置く。もう1枚をコストを支払わずに唱える。
このクリーチャーが攻撃する時、コスト6以下の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。その後、その呪文を自分の山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
エターナル・Ω


 大型エンジェル・コマンドに加え、サイキック、そしてさらに二体のゼニスまでもが現れてしまう。
 そして何度も言うようだが、S・トリガーで出たクリーチャーは召喚だ。なので、正規召喚時の能力が発動するのだ。
「まずは《ドラヴィタ・ホール》で《エナジー・ライト》を回収し、開け、超次元の門。《時空の霊魔シュヴァル》をバトルゾーンに。そして!」
 《ライオネル・フィナーレ》でシールドに埋めてしまったのか、《ウルフェウス》の能力は不発だったようで、次に二体のゼニスの能力が発動する。
「《バック・トゥ・ザ・オレ》の能力発動! 召喚時に山札からコスト6以下の呪文を二枚選択……私が持ってくるのは《ウェディング・ゲート》二枚よ……!」
 どちらも《ウェディング・ゲート》。選んだ呪文のうち片方をタダで唱えられる《バック・トゥ・ザ・オレ》の能力は強力だが、選ぶ呪文は相手が選ぶのがネックだ。しかしこの選ぶカードを両方同じにすれば、確実に選んだ呪文を唱えられる。
 形式だけとはいえ、ルシエルは汐が片方の《ウェディング・ゲート》を選ぶ前に、さっさと祝福の門を開いてしまう。
「呪文《ウェディング・ゲート》! 手札から《結杯の堕天カチャマサングン》二体をバトルゾーンに! そして最後に《ウェディング》の能力発動! さあ、四枚のカードをシールドに埋めなさい!」
「……手札四枚をシールドにするですよ」
 ごっそりと手札を削られてしまった汐。とはいえ汐は手札が豊富なので、まだ一枚残っている。だがそれでも、ルシエルの場には大型クリーチャーが多く存在し、そのうち四体もがゼニスだ。
 圧倒的かつ絶望的状況。ルシエルが狂気的な高笑いを上げているほどだ。
 しかし対照的に汐は静かだった。だが、それは意気消沈しているからではない。

 勝利を確信しているからだ。

「……この程度ですか。ならば、私の勝ちですね」