二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.547 )
日時: 2014/03/24 12:47
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 希野とクトゥルーのデュエルは、シールドがお互い五枚で、まだどちらも動き出していない。
 希野場にはなにもなし。クトゥルーの場には《セブ・コアクマン》が一体。
「呪文《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》! 3マナ加速して、呪文《ピクシー・ライフ》でさらにマナを追加!」
 クトゥルーも序盤にマナを加速させているが、希野はそれ以上だ。《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》で一気にマナを溜め、次のターンには11マナ。前のターンに《ライフプラン・チャージャー》で手に入れた《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》を出す準備を整える。
 しかし、
「……《早撃人形マグナム》を召喚」
「な……っ!」


早撃人形マグナム 火文明 (4)
クリーチャー:デスパペット/エイリアン 3000
スピードアタッカー
いずれかのプレイヤーが、マナゾーンのカードをタップせずに、クリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのクリーチャーを破壊する。


 これでもかというくらいにベストなタイミングで繰り出された《マグナム》。これでは、クリーチャーの踏み倒しができない。これでは《「刃鬼」》を召喚することができても、出て来たクリーチャーが片っ端から破壊されてしまう。
「私のターン……《アクア・インテリジェンス 3rd G》を召喚」
 マナは十分にあるため、多少重いクリーチャーでも難なく召喚できる。とりあえず今は《マグナム》をどうにかして除去しようと考える希野。
(《アクア・インテリジェンス》なら、ガチンコ・ジャッジに勝って《マグナム》を手札に戻せるけど、返しのターンにまた召喚されるし、殴ったら《「刃鬼」》の能力が使いづらくなる……)
 《「刃鬼」》は相手のシールドの枚数分ガチンコ・ジャッジを行うので、下手にシールド割ったらその力が減衰してしまうのだ。しかし《マグナム》がいては《「刃鬼」》を召喚しても意味はない。
 希野がそんなジレンマを抱えていると
「呪文《父なる大地》。《アクア・インテリジェンス 3rd G》をマナゾーンへ送り、マナゾーンから《アクア・インテリジェンス 3rd G》をバトルゾーンへ」
「っ!」
 《アクア・インテリジェンス》をマナゾーンに戻され、バトルゾーンに現れたのは同じ《アクア・インテリジェンス》。召喚ではないため能力は発動しないが、それ以上に厄介なのが、
「《マグナム》の効果で破壊」
 この《マグナム》だ。
 《父なる大地》の効果で呼び出されたクリーチャーは、マナコストを支払わずにバトルゾーンに出ているため、《マグナム》の効果が発動する。
 次の瞬間、現れた《アクア・インテリジェンス》は《マグナム》の弾丸に貫かれ、破壊されてしまった。
「くっ、厄介なコンボを……!」
 相手クリーチャーを入れ替えるだけのはずが、《マグナム》と組み合わせることで、たった3マナで実質的な確定除去に変貌するのだ。
「あたしのターン《不敗のダイハード・リュウセイ》を召喚!」
 手札が《「刃鬼」》しかない希野は、引いたカードをそのまま出すしかない。次に現れたのは《不敗のダイハード・リュウセイ》。
「……《セブ・コアクマン》進化」
 クトゥルーのターン。《セブ・コアクマン》が光に包まれ、進化する。

「浮上せよ、崇拝せよ、狂喜せよ。夢見るままに待ちいたりし異星の化身、ここに目覚める——《エンペラー・セブ・マルコ X》」


エンペラー・セブ・マルコ X(エックス) 水文明 (5)
進化クリーチャー:サイバーロード/エイリアン 6000
進化—自分のエイリアン1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
W・ブレイカー


 《セブ・コアクマン》が進化したのは、エイリアンと化した《エンペラー・マルコ》。元々恐ろしい容貌をしていたが、エイリアンと化すことでさらにグロテスクになり、非常にショッキングな見た目となった。
「効果で三枚ドロー」
「……なんか、大仰に出した割には地味ね……」
 小さく呟く希野。手札補充もデュエマにおいては重要で、強力な能力なのだが、些か地味であることは如何ともしがたい。
 が、そんなことを言っている場合でもなかった。
「呪文《スパイラル・ゲート》。《ダイハード・リュウセイ》を手札に戻す」
「また除去された……!」
 今度はバウンスだが、連続で除去され、クリーチャーが場に残せない。
 希野デッキはクリーチャーの平均コストが高い。だからこそガチンコ・ジャッジで勝てるようになっているのだが、それが今は裏目に出てしまっている。手数で攻めることができず、一体一体ちまちま出していては、すぐに除去されて対応されてしまう。
「……! なら、これよ! 《爆走鬼娘モエル・ゴー》を召喚! 効果で山札から《黄金龍 鬼丸「王牙」》を手札に!」
 《モエル・ゴー》から手札に持ってくるのは《鬼丸「王牙」》。これなら、クトゥルーのクリーチャーを一掃でき、そのまま一気に攻め込める。《マグナム》も墓地に叩き落とせるので、次のターンには《「刃鬼」》も召喚できる。
 そう、思っていたが、
「……《未知なる弾丸 リュウセイ》を召喚」


未知なる弾丸(エックス・リボルバー) リュウセイ 闇/火文明 (7)
クリーチャー:アウトレイジMAX 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを6枚自分のマナゾーンから選び、残りを墓地に置く。その後、相手はカードを6枚自身のマナゾーンから選び、残りを墓地に置く。
相手は、自身のマナゾーンにカードを置く時、タップして置く。
W・ブレイカー


 両腕にリボルバーを装着した、無法の《リュウセイ》が召喚された。
 刹那、《リュウセイ》の銃弾がクトゥルーと希野のマナゾーンに撃ち込まれる。
「互いにマナゾーンのカードを六枚選び、残りを墓地へ」
「そ、そんな……!」
 《リュウセイ》の能力は、互いのマナゾーンを六枚まで減らすというもの。クトゥルーは7マナしかなかったので一枚だけ墓地に送ったが、希野は11マナもあり、五枚ものカードをマナゾーンから墓地へと送らなければいけない。
(これじゃあ、次のターンに《鬼丸「王牙」》が出せない……!)
 完全に計画が狂った。《「刃鬼」》に続いて《鬼丸「王牙」》までもが封じられてしまうとは。
「あたしのターン……マナチャージして、ターン終了……」
 希野デッキは重い。このターン置いたマナはタップインされて使えず、たった6マナではどうしようもないので、そのままターンを終えた。
 そんな希野に、クトゥルーは追い打ちをかける。
「《穿神兵ジェットドリル》を召喚」
「また、そんなクリーチャー……!」
 《ジェットドリル》が出たことで、希野は山札と墓地からのマナ加速を封じられてしまう。マナを削られた直後にこれは痛い。
 どうにかこの状況を打開したいが、希野がこのターン引いたのは《偉大なる恵み》。削られたマナを一気に回復できるカードだ。《ジェットドリル》がいなければの話だが。
「……ターン、終了……」
 《偉大なる恵み》をマナに落とし、ターンを終える希野。これで2ターンもなにもできず、マナチャージだけで終えてしまった。
 その間にも、クトゥルーは次なる手を打ってくる。
「呪文《ザ・ストロング・スパイラル》。《マグナム》を手札に戻し、《超次元エナジー・ホール》。《アクア・アタック<BAGOON・パンツァー>》をバトルゾーンに」
 わざわざ自分の《マグナム》を手札に戻してから、《エナジー・ホール》でサイキックを呼び出すクトゥルー。そうしなければ《<BAGOOON・パンツァー>》は出た瞬間に破壊されてしまうので仕方ないのだが、やや面倒なことをしていると思わないでもない。
 だが、希野はそんなことを考えている暇もない。
「早く、なんとかしないと……」
 希野はクリーチャーを並べられず、対してクトゥルーは、攻撃こそ仕掛けて来ないが、かなりの数のクリーチャーを並べている。もう希野を倒せるだけの戦力を揃えているのだ。この状態で攻撃されれば、ひとたまりもない。
(用心深いのか……徹底的にこっちを潰して、反撃できないようにしてから、とどめを刺すつもり……?)
 現時点で手も足も出ない状況だが、さらに万全を期す、ということだろうか。ならばその間に、なんとか体勢を立て直さなくてはならない。
「……呪文《スクランブル・ターン》!」
 希野が苦しいのは、手札が枯渇している点もある。ここで一気にカードを引き、逆転手を探す。
「! ターン終了!」
 希望の光が見えた。希野は今しがた引いたカードを見遣る。
(《R.S.F.K.》……運頼みだけど、これで一気に突破する……!)
 ガチンコ・ジャッジで五連勝すれば、シールドを一気にブレイクしてそのままとどめを刺せる。
 幸いなことに、クトゥルーの場にブロッカーはいない。上手くいけば、次のターンには勝負を決められる。微かだが、光が見えてきた。
「…………」
 クトゥルーはそんな希野を、黙ったままジッと見据えている。相変わらず、まったく表情が変わらない。
「……《<BAGOOO・パンツァー>》の効果で、ターンの初めに二枚ドロー。《早撃人形マグナム》を召喚」
 前のターンに戻した《マグナム》を再び召喚するクトゥルー。さらに、
「《スベンガリィ・クロウラー》を召喚」
「なっ、ま、また……!?」
 今度は相手の召喚したクリーチャーをタップインする《スベンガリィ・クロウラー》を出される。これで《R.S.F.K.》を召喚したとしても、タップされるため攻撃できない。
 ことごとく戦術を潰されていく希野。ここまで行動を封じられると、流石に参ってくる。
(最初から感じてたけど、この閉塞感にも似た感じ……)
 この世のものではないような、なにかに束縛されているような感覚。
(なんだか、気持ち悪い……全身を縛られているような、なにかに取り囲まれているような……)
 とにかく、息苦しい。身動きが取れないまま、少しずつ海中に沈められているようだった。
(これが【師団】の四天王……『夢海星辰クトゥルー』なの……?)
 どこか問うように希野はクトゥルーへと視線を向ける。
 クトゥルーはただ、そんな希野をジッと見つめ返すだけだった——