二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.548 )
日時: 2014/03/24 17:01
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 希野にとって非常に苦しい展開となった、クトゥルーとのデュエル。
 互いにシールドは五枚あるが、希野の場には《爆走鬼娘モエル・ゴー》が一体。対するクトゥルーは《早撃人形マグナム》《未知なる弾丸 リュウセイ》《穿神兵ジェットドリル》《スベンガリィ・クロウラー》と、ことごとく希野のプレイングを潰し、《エンペラー・セブ・マルコ X》《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》で手札を補充している。
(はっきり言って、この状態で一斉攻撃をかけられたらひとたまりもない……相手さんがそれをしてこないのは、恐らくS・トリガーまでも潰す手段があって、それを用意してから、万全を期して確実にあたしにとどめを刺すため)
 慎重すぎるほど慎重だ。だが、慎重であればあるほど良いなどということは、デュエマにおいてはありえない。
(慎重と言えば聞こえはいいけど、攻め時を見極められないデュエリストは三流……追い詰められてるあたしが言えたことじゃないなんてことは分かり切ってる。でも、相手がS・トリガーに怯えてるなら、その隙に付け込むしかない)
 相手が攻めないなら、それを隙と考えて、反撃の準備を進めるしかない。
 いくら潰されても、相手はこちらの動きに対応しているだけ。なら、対応できない状態で、逆に相手を潰せばいい。
「あたしのターン! 《国士無双カイザー 「勝×喝」》を召喚!」


国士無双カイザー「勝×喝」(ガッツ) 火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分のドラゴン1体につき1回、相手とガチンコ・ジャッジする。こうして自分が勝つたび、相手のコマンド1体または相手のパワー7000以下のクリーチャーを1体破壊する。
スピードアタッカー
W・ブレイカー


 現れたのは、国士無双と呼ばれるほどにまで成長した《鬼無双カイザー 「勝」》。その一騎討ちにおける力は、並ぶものなしである。
 しかしその能力は、味方のドラゴンが並んでいるほど強力だ。希野の場にドラゴンは《国士無双カイザー 「勝×喝」》のみ。なのでガチンコ・ジャッジは一度しか行えない。
 だが、その一度だけで、十分だった。
「ガチンコ・ジャッジ!」
 たった一度のガチンコ・ジャッジ。
 希野はコスト7《アクア・インテリジェンス 3rd G》、クトゥルーはコスト4《セブ・コアクマン》。
「ガチンコ・ジャッジに勝ったので、パワー7000以下の《マグナム》を破壊!」
「…………」
 《マグナム》を破壊されてしまうクトゥルー。これで、希野は踏み倒しができるようになった。
「……《クリスタル・メモリー》を発動。ターンエンド」
「ならあたしのターンね。呪文《ドンドン吸い込むナウ》! 山札の上五枚を見て《偉大なる恵み》を手札に加えるわ。自然のカードを手札に加えたので、《ジェットドリル》をバウンス! そして呪文《偉大なる恵み》!」
 墓地のカードが三枚マナゾーンへと戻ってくる。
 これで希野のマナは12マナ。次のターンには《「必勝」の頂 カイザー「刃鬼」》を出して、一気に大量のクリーチャーを展開できる。
(《マグナム》もいないし、これなら……!)
 相手が万全な状態でなければ攻撃できないというのであれば、それを利用するまで。相手が攻撃してこない間に、こちらは《「刃鬼」》を呼び出して一気に決める。
(《スベンガリィ・クロウラー》は邪魔だけど、それは適当な除去呪文か、マナゾーンの《国士無双カイザー 「勝×喝」》に破壊させればいい。ともかく、次で終わらせる)
 勿論、ここでクトゥルーが数にものを言わせて攻めてきたら別だが、恐らく彼はそうしないだろうと、希野は思っている。
 “ゲーム”の世界はサバイバル。状況に応じたフレキシブルな対応が求められるが、デュエルのスタイルというものは臨機応変にはなかなかなれない。特に強いプレイヤーであるからこそのこだわり、のようなものが生まれてしまう。あるいはジンクスか。
 『炎上孤軍アーミーズ』のように、臨機応変に対応し、プレイすることこそがこだわりのような者もいるが、クトゥルーはそうでないように見える。
(とはいえ完全にあたしの勘だけど……さあ、どう来る……?)
 希野がまだ手札に《「刃鬼」》を握っていることくらいなら、クトゥルーにも見抜けるだろう。だから問題は、彼がどう対応してくるかだ。
 除去か、ハンデスか、ブロッカーを並べるのか。
 結果を言うと、クトゥルーが取った行動はそのどれでもなかった。
 彼が行ったのは——自滅だ。

「《黒神龍ブライゼナーガ》を召喚」


黒神龍ブライゼナーガ 闇文明 (6)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 9000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のシールドをすべて自分の手札に加える。
W・ブレイカー


 次の瞬間、クトゥルーのシールドがすべて吹き飛んだ。
「《ブライゼナーガ》……!?」
 なぜそんなカードを、とでも言うかのように目を見開く希野。
(見たところ、相手のデッキはS・トリガーを多用するようなデッキではない。シールドにカードを仕込むこともしない。クラッチや、シールドが減って得するようなカードもないし、赤黒速攻のようにシールドから手札補充をするわけでも勿論ない。なにかしらのコンボ……いや、それもたぶんない)
 ならば、なぜ。
 クトゥルーの今見えているカードから見ても、《ブライゼナーガ》を投入する理由としては弱い。トリッキーかつリスキーなカードなので、入るデッキは限られる。基本的にはコンボを前提として使用するカードだが、クトゥルーのデッキにはそのコンボ性が見られない。
「《電流戦攻セブ・アルゴル》を召喚。効果で《アクア・カスケード<ZABUUUN・クルーザー>》をバトルゾーンに」
 実際、その後に彼が行ったことと言えば、ブロッカーを並べること。明らかにこちらの追い打ちを警戒している。追い打ちもなにも、シールドを吹き飛ばしたのは、他ならぬクトゥルー自身なのだが。
 クトゥルーの思惑が謎のまま、希野ターンが訪れる。確かにクトゥルーのプレイングは不気味だが、希野にはこのターンでクトゥルーを倒すことのできる切り札が——
(——! そうか……!)
 と、そこで希野は気付いた。
 クトゥルーが《ブライゼナーガ》で自らのシールドをすべて放棄したのは、自身のコンボのためではない。希野を妨害するためだ。
(相手のシールドがゼロってことは、《「刃鬼」》の能力が——)
 ——使えない。
 つまりは、そういうことだった。
(なんなの、それ……あたしの《「刃鬼」》を封じるためだけに《ブライゼナーガ》を入れて、しかも召喚するなんて、リスキーすぎるというか、ピンポイントすぎる……!)
 なにかのコンボで《ブライゼナーガ》を出し、それが結果的に《「刃鬼」》への妨害となるのなら分かる。
 だが、最初から《「刃鬼」》に対する対抗策ということだけを考えて《ブライゼナーガ》を繰り出す思考は、理解に苦しむ。
(なんなの、一体……こっちの手が透かされている……?)
 手の内どころか、すべてが見透かされているような気分だ。
 なにはともあれ、希野はこれで《「刃鬼」》を呼び出せなくなった。いや、呼び出すこと自体は可能だが、呼び出す意味はない。出たところで、ガチンコ・ジャッジは行えないのだから。
「なら、せめて……《R.S.F.K.》を召喚! 《国士無双カイザー 「勝×喝」》で攻撃!」
「ニンジャ・ストライク。《光牙忍ハヤブサマル》でブロック」
 もうクトゥルーのシールドはゼロなのだ。なら、ここは攻めるしかない。
 その攻めも、無為と化すのだが。
「呪文《超次元リバイヴ・ホール》。《ハヤブサマル》を回収、超次元ゾーンより《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》をバトルゾーンに。《国士無双カイザー 「勝×喝」》を破壊。《無双恐皇ガラムタ》を召喚」
「っ……!」
 詰んだ。希野の脳裏には、無意識のうちにそんな言葉が浮かんだ。


無双恐皇ガラムタ 闇/自然文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/アース・ドラゴン 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
シンパシー:デスパペットおよびビーストフォーク
このクリーチャーが攻撃する時、このターンの終わりまで、誰も「S・トリガー」を使うことはできない。


 以前、黒村と少しデュエルしたことがあるが、その時彼も使っていたカードだ。
 完全に逆転手を封じられた。希野は返しのターン、なにもできない。引いた《永遠のリュウセイ・カイザー》は、むしろ自分がタップインされ、攻撃した《R.S.F.K.》も、ブロッカーに阻まれる。
 そしてクトゥルーのターン。
 《ガラムタ》でS・トリガーを封じられ、逆転は完全完璧に不可能。《ガラムタ》の刀剣に二枚、《<BAGOOON・パンツァー>》の砲弾に二枚、《リュウセイ》の弾丸に一枚、突き破られる。
 そして最後にとどめを刺すのは、異形なる異星の怪物。蠢く邪神の如き、化け物だった。

「《センペラー・セブ・マルコ X》で、ダイレクトアタック——」