二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.559 )
日時: 2014/03/30 03:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 《鬼セブン「勝」》の能力でS・トリガーとなり現れたのは、《偽りの王 カンタービレ》だった。
 このカード一枚で盤面をひっくり返すことはできない。なので以降のカードと言うには少々大げさな気もするが、こういうのはハッタリも重要だ。
 なにより、このカード一枚で、九頭龍は膨大なアドバンテージを得られるのだから、気分的には最高だろう。
「《カンタービレ》の能力で、僕の墓地のドラゴンはすべてマナゾーンへ!」
 九頭龍の墓地に眠っているドラゴンたちが、すべて大地に取り込まれていく。破壊やハンデスでやられたものは勿論、二度に渡る《未知なる弾丸 リュウセイ》の大量ランデスで墓地に叩き落とされたドラゴンたちも、マナゾーンへと還ってくる。
「まあ《マグナム》の能力でクリーチャーは破壊されるけど、いらない《エコ・アイニー》を破壊しておこうか。それにこれだけマナがあれば、すべてのドラゴンが手出し可能だ。さあ《鬼セブン「勝」》の攻撃だよ。どうする?」
「……《ユリア・マティーナ》でブロック」
 クトゥルーは《鬼セブン「勝」》の攻撃を《ユリア・マティーナ》でブロックし、シールドを追加する。
「ならターン終了だ」
 そして九頭龍は、《パーフェクト・マドンナ》でブロックしたら《ビバ・ラ・レヴォリューション》でも攻撃しようかと考えていたが、これ以上の攻撃は無意味と考え、ターンを終えた。
「…………」
 さてここで困ったのはクトゥルーだ。前のターンに《未知なる弾丸 リュウセイ》を出してしまったがゆえに、このターンに回収した《獰猛なる大地》が撃てなくなってしまった。自身の場を固めつつ、九頭龍のアタッカーを減らすことができない。
「……呪文《フェアリー・ミラクル》」
 クトゥルーのマナゾーンには五色すべての色が見えるので、2マナ追加する。
「《ダークネス・ガンヴィート》で《鬼セブン「勝」》を攻撃。能力発動。《カンタービレ》を破壊」
「そう来るよねぇ……だったら《ショパン》のガードマンで《鬼セブン「勝」》の身代わりになろう」
 《ダークネス・ガンヴィート》の刃で《カンタービレ》が破壊され、《鬼セブン「勝」》も切り裂かれそうになるが、《ショパン》が盾となって代わりに破壊された。
「これでターン終了かな?」
「…………」
「じゃ、僕のターンだ」
 これ以上は動かないクトゥルー。打点は足りているのだから、普通に九頭龍を狙えばいいようにも思えるが、彼はそうはしない。
(ま、僕のマナゾーンには一枚も《オドル・ニードル》が見えてないし、《ショパン》もまだ一枚しか出てないしね。警戒してもおかしくないか。ブロッカーがいるんだし、物量に任せて押し切っちゃえばいいような気もするけど……融通が利かないというか、柔軟性が足りないな)
 あるいは決断力か。
 このまま、また自分のペースに持って行く自信があるからこそ、こうして攻撃を行わないのかもしれないが、ここまで来れば九頭龍の独壇場だ。
 場は、龍が支配する。
「さあ、次の選択だ。呪文《運命》! カードを五枚引いて、その中から三枚を選ぶんだ」
 大量のマナを補充した次は、大量の手札。マナを使うための手札を補充した九頭龍は、さらに場を固めようとする。
 クトゥルーは、与えられた選択肢、五枚のカードから、三枚を選択する。そして、
「一枚目は……残念《コッコ・ルピア》だ。二枚目も《コッコ・ルピア》か、運がいいね。でも、三枚目はどうかな——」
 選ばれた三枚目のカードを、九頭龍は静かに解き放つ。

「刃向かう者に鉄槌を下し、そして服従させよ——《偽りの王 モーツァルト》」

 ドラゴン以外をすべて撲滅する龍《モーツァルト》。
 その咆哮で、クトゥルーの場にいたクリーチャーのほとんどは、消滅した。残ったのは《パーフェクト・マドンナ》が一体。
「…………」
 そんな状況でも、反応を示さないクトゥルー。無論、今更そんな彼に意を介すような九頭龍ではなく、
「僕のマナゾーンのドラゴンを七枚タップするよ。そしてこいつは、ドラゴンからは2マナ生み出せる」
 つまりは、合計14マナのクリーチャーが呼び出されるということだ。
 巨大な王龍が、またしても君臨する。

「刃向かう者を焼き払い、自らの道を突き進め——《偽りの王 ルードヴィヒ》」

 次に現れたのは《ルードヴィヒ》。
 《モーツァルト》がほとんどクリーチャーを根絶やしにしたので、アタックトリガーは今は意味をなさないが、この場合必要なのは打点だ。
 これで九頭龍の場には《ビバ・ラ・レヴォリューション》《鬼セブン「勝」》《ルードヴィヒ》と、三体の大型アタッカーが並んだことになる。《鬼セブン「勝」》の能力でもし《フォルテッシモ》や《リュウセイ・カイザー》が出て来たなら、そのまま押し切ってしまえる。
「ブロッカーも残り一体だし、一気に押し切らせてもらうよ。まずは《ルードヴィヒ》で攻撃だ!」
「《パーフェクト・マドンナ》でブロック」
 Tブレイカーの《ルードヴィヒ》の攻撃は、当然ブロックされる。だが、これで終わりではない。
「《鬼セブン「勝」》で攻撃! その時、能力発動だ。さ、僕のシールドを選んで」
 今の手札と残りの山札の枚数からして、シールドの中身がすべて《オドル・ニードル》だったとしても驚かないが、それならそれで構わない。このターンに決められなくても、次のターンに決めればいいのだ。
 そしてクトゥルーが選んだのは、一番右端のシールドだった。
「……あまり期待はしてなかったけど、まあいいか。S・トリガー《偽りの王 ヴァルトシュタイン》を召喚」


偽りの王 ヴァルトシュタイン 火/闇文明 (7)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から5枚を墓地に置いてもよい。
自分のゼニスを召喚するコストを2少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。
W・ブレイカー


「効果で山札を……いや、やめとこう」
 《ヴァルトシュタイン》は登場時に山札を五枚墓地に送る能力があるが、今の九頭龍は山札が残り僅か。大量のマナ加速やドローで大きく削られてしまっている。
 ここで《ヴァルトシュタイン》が出たことで、このターンに決めることができなくなった。この状態で山札を五枚も削れば、次のターンには山札がなくなってしまう。
 なので能力は発動せず、攻撃を続けることにした。
「攻撃続行。《鬼セブン「勝」》でWブレイク! 《ビバ・ラ・レヴォリューション》でもWブレイクだ!」
 これでクトゥルーのシールドはゼロ。だが、クトゥルーの最後のシールドが、光の束となって収束していく。
「……S・トリガー発動。呪文《転生プログラム》」
 最後の最後でS・トリガーが出て少しだけ身構えてしまった九頭龍だが、出て来たのは《転生プログラム》だった。安心したが、拍子抜けだ。
「《鬼セブン「勝」》を破壊」
「え? 《マドンナ》じゃないの?」
 だが、すぐに疑念が付きまとう。場を離れない《マドンナ》に使って、そのまま場数を増やす使い方をするのかと思っていたが、破壊するのは《鬼セブン「勝」》だった。
「……なら、山札を捲るよ」
 山札の一番上をまず捲る。捲れたのは《黒神龍オドル・ニードル》。クリーチャーなのでそのままバトルゾーンへ。
(《鬼セブン「勝」》は使われたら厄介かもしれないけど、なんでここで……? スピードアタッカーが出たら、そのまま負けるのに……)
 相変わらず不気味なプレイングをするクトゥルーだったが、その意図は次のターンに判明する。
「……呪文《超次元リバイヴ・ホール》。墓地の《未知なる弾丸 リュウセイ》を回収」
 無駄なことだ。残りのマナでは《リュウセイ》は召喚できないし、今更マナを削っても、九頭龍の場にはクトゥルーを倒すだけの打点が揃っている。このターンで決着をつけようにも、《パーフェクト・マドンナ》一体ではどうしようもない。
 しかし、クトゥルーが狙う勝利は、《パーフェクト・マドンナ》など関係なかった。

「《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンに」

「……え」
 超次元ゾーンより現れたのは、《ヴォルグ・サンダー》。デーモン・コマンドのサイキック・セルで、その能力は、
「相手プレイヤーを選択。クリーチャー二体が出るまで、山札からカードを墓地へ」
「……これって、まさか」
 《ヴォルグ・サンダー》の能力は、クリーチャーが二体捲れるまで、どちらかのプレイヤーの山札を墓地に送るというもの。自分に使えば墓地肥やし、相手に使えば山札破壊となる。
 相手に使えば山札破壊。つまり、
「呪文《超次元リバイヴ・ホール》。墓地の《百発人形マグナム》を回収。超次元ゾーンより《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンへ」
「…………」
 今度は九頭龍が押し黙った。山札から捲られた二枚は、《黒神龍オドル・ニードル》と《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》。
 そして九頭龍の山札は、残り一枚。
「……ライブラリアウト狙い、だったんだ……」
 ライブラリアウト、日本語に言い換えれば、山札切れ。
 デュエル・マスターズは、山札最後の一枚を引いた時点で、ゲームに負けるというルールが存在する。相手のシールドをすべてブレイクしてとどめを刺すのが最もスタンダードな勝ち筋だが、相手に山札切れを起こさせて勝利を目指す、というデッキタイプもあるのだ。
 クトゥルーのデッキは、そのタイプだったのだ。いや、実際には普通に殴って勝つことも想定されていたのかもしれないが、ライブラリアウトが勝ち筋の一つとして、確実に存在していたのだろう。
 九頭龍のデッキは、デュエルが終盤までもつれこむと大量のマナ加速とドローで山札が残り少なくなることもざらにある。だからこそ、その残り少ない山札を削り取られると、敗北することもありうるのだ。いつもならそうなる前に押し切っているが、今回に限っては、押し切れなかった。前のターンに決められなかったことが九頭龍にとっては致命傷で、クトゥルーにとっては最大の好機だったのだ。
「前のターンの《転生プログラム》は、僕の山札を削るためだったんだね……」
 今更気づいても、もう遅い。九頭龍の山札は、もう一枚しか残っていないのだ。
 それはもう、死と直結している状態だった。
 クトゥルーは、そんな九頭龍に向けて、静かに告げる。

「……ターン終了」

 次の瞬間、このデュエルが終了した。