二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.572 )
日時: 2014/04/13 21:04
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「《「黒幕」》召喚! 《超神類 イズモ》のリンクを外し、《ロラパルーザ&ラウドパーク》とゴッド・リンク! 互いのシールドをすべてブレイク!」
「S・トリガー発動《無法のレイジクリスタル》! 三体リンクした《「黒幕」》をバウンスし、《逆襲の神類 イズモ R》を破壊!」
「だからどうした! 《ラウドパーク》とリンクした《「黒幕」》でダイレクトアタックだ!」
 神話空間が閉じ、ジークフリートとルカが現実の空間へと引き戻される。
 この数十分間だけで、幾度となく戦いを重ねている二人。ルカの方は戦うたびにに歓喜と興奮も積み重なっていくが、逆にジークフリートはげんなりしていた。
「短時間でこんだけ戦ってると、流石の俺も参って来るな……」
「そうか? 俺はお前と戦えて楽しいけどな。いつもは一回できるかどうかってくらいだし」
「誰がお前なんかと好き好んで戦うかよ馬鹿。今回は事情が事情だ、仕方なく相手してやってんだっつーの」
 そうでもなければ、今頃ジークフリートはルカに背を向けている。ジークフリートが参っているのは、なにも連戦だからというだけでなく、相手がルカだからというのもあるだろう。
 むしろ、そちらの理由の方が大きいかもしれない。
「しかし、野郎共はロッテ探すのにどんだけ時間かかってんだよ……」
 ぼやくように呟くジークフリート。とはいえ、ハスターとクトゥグアが最初に捜索を始めてから、かなりの時間が経過している。四天王や他三名の小隊長まで連れてきているのに、今だ発見できていないとなると、流石に不安になる。
「ガキんちょ一人に手間取ってんじゃねぇ、とっとと見つけやがれってんだ……!」



「——《妖精左神パールジャム》《戦攻右神マッシヴ・アタック》《聖霊左神ジャスティス》《悪魔右神ダフトパンク》《イズモ》……うん、これでかんせい!」
 シャルロッテは手元に集まった四十枚のカードを握り、満面の亜実を浮かべた。
「じかんかかちゃったけど、これでロッテもサンセットとあそべるね。よーし、じゃあさっそく——」
「見つけた! 姫様!」
 後方から叫ぶような声が響く。振り返れば、そこには息を荒げた金髪少年、ハスターの姿があった。
「ハス? どーしたの?」
「どーしたのじゃないですよ。姫様が『神話カード』を勝手に持ち出したりするから、師団長が激おこなんですよ。そうでなくとも、勝手にぼくらから離れないでくださいよ」
「そんなのしらないもん。それに、ジークばっかりあそんでてずるい。ロッテもあそびたい」
「遊びじゃないんだけどな……いいから、もう帰りますよ」
 ハスターが強引にシャルロッテを持ち上げると、シャルロッテは両手両足をばたつかせて暴れ始めた。
「いーやーだー! はーなーせー!」
「って、ちょっ、暴れないで……落ちるから、マジで落ちるから!」
 ここは古びた高い塔の上。そんなところで暴れられては、ハスターも本気で身の危険を感じる。彼は決して体格がいいわけではないのだ。
「ああ、もう、こうなったら仕方ない……」
 ハスターはポケットから一枚のカードを取り出すと、大きく息を吸う。次の瞬間、カードが光を発し、ハスターの声がありえない声量で木霊する。

『姫様確保ッ!』



「っ、見つかったか……!」
 ジークフリートは《超神類 イズモ》でルカにとどめを刺し、神話空間から出ると、すぐさま踵を返した。
「おい、どこ行くんだよジーク。まだ終わってねえだろ」
「もう終わりだ! いつまでもてめえと遊んでらんねえんだよ!」
 そんなことを叫びながら走り去るジークフリートの姿は、すぐに見えなくなった。そんなジークフリートを引き留めようとするルカだが、伸ばしかけた手をすぐに引っ込める。そして、
「……まあいいか。久しぶりに、たっぷり戦えたしな」
 ルカの表情はどこか満足げで、清々しかった。



「む……」
 神話空間から出た瞬間。どこからか発せられる轟音を聞くと、クトゥルーは九頭龍に背を向けた。そして、そのままどこかへと走り去ってしまう。
「……奴さん、どっか行っちゃったけど」
「そうね……」
「さっきのなんとか確保って声はなんだったの?」
「さあ……?」
 九頭龍としては、予想外の敗北を喫した直後の轟音からクトゥルーが逃走という三連コンボに戸惑わずにはいられなかった。
「……とりあえず、所長のところに行こうか」
「……そうね」



「ハスー、うるさいー!」
「仕方ないじゃないですか。姫がじったばった暴れるから、こうしてみんなを呼ばないと……お? あれは師団長とルーさん」
 ハスターの呼びかけにいち早く駆けつけたのは、ジークフリートとクトゥルーだった。凄まじい勢いで階段を駆け上がると、ジークフリートはハスターが取り押さえていたシャルロッテの首根っこを引っ張る。
「やっと捕まえたぜ、ロッテ! クトゥルー!」
「御意」
 呼ばれたクトゥルーは一枚のカードを取り出すと、それをジークフリートとシャルロッテに掲げる。
「呪文《テレポーテーション》」
 直後、二人が消えた。跡形もなく、一瞬にして完全にこの場から消え去った。
 さらにその後、クトゥルーがその場に膝をつく。呼気も荒くなっており、
「大丈夫ルーさん? 連戦の後に呪文詠唱だし、休んだ方がいいよ」
「……先に帰らせてもらう」
「あい、了解。クトゥとニャルにはこっちから言っとくよ」
「……助かる」
 クトゥルーはもう一枚のカードを取り出す。そのカードが光を発したかと思ったら、直後にはクトゥルーの姿が消えていた。
「ふぅ……とりあえず、最悪の事態は免れたって感じかな。あとはクトゥとニャルと小隊長の連中に声かけて……あーあ、事後処理面倒だなぁ……」



「……む」
「どしたの? アテナ?」
「呪文の気配を察知しました。同時に、この空間内の、クリーチャー以外の生体反応が三つ消失しました」
 バラモンとのデュエルを終えたラトリとささみ、うさみの三人は、神社に蔓延るクリーチャーたちを薙ぎ払っていた。
「呪文? へぇ、ジーくんか他の団員かは知らないけど、エネルギー消費の激しい呪文を使うほど、切羽詰まった状況だったんだね」
「使用された呪文は、恐らく転移系かと。《スパイラル・ゲート》のような呪文だと思われます」
「それを使っていち早く家に帰ったんだ。ってことは、私たちの役目はクリーチャー掃除で終わりかな」
「そのクリーチャーですが、十分ほど前から増加反応がありません。恐らく、これ以上増えることはないかと」
「それはラッキーだね。じゃあ、ちゃっちゃと終わらせようか」
「分かりました。頑張ってください」
「えー……分かってたけど、手伝おうって気概くらいは見せてよ」
「空間維持で手一杯なもので」
「ちぇ」



 一月一日、新年早々に起こった【師団】【ラボ】【神格社界】そして『昇天太陽』一味すべてを巻き込んだ騒動は、多くの者からすれば、わけがわからないうちに幕を下ろした。
 しかし、ミクロな視点で見れば、この騒動の中の一つの接触をきっかけとして、一人の少女に小さな変化が訪れた。
 そして、マクロな視点で見れば、この騒動を皮切りにして、一つの巨大な存在が動き始めるのだった。
 神話すらも飲み込む、大きな存在が——