二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.585 )
日時: 2014/07/11 13:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 一方その頃、カフェ『popple』では。
 チョコレートを冷やしている間、暇なのでとデュエマに興じている少女たち。なんだかんだでこうして女子だけで集まることは今までなかったので、思いのほか楽しくやっているのだが。
 その空気をぶち破る、無粋な男が一人——と、その他二名。
「おーい、邪魔するぞー」
「お邪魔するわ」
「お、お邪魔します……」
 カランカラン、と来店を知らせる鈴が鳴り、三人の男女が店内に入ってくる。
 真っ先に目についたのは、二人の少女を連れた男。その姿を見て、このみはガタッと立ち上がった。
「ルカにーさん! どうしたの? 今日はお店、お休みだよ?」
「お前に会いに来たんだよ。ほら、年明ける前にも来たけど、あの時は結局、御舟汐——じゃないか。今は月夜野? だったか。のことでバタバタしてたから、戦い損ねただろ」
「それで、仕事残ってるのに飽きずにここに来たってわけ。本当、迷惑甚だしいわ」
「ま、まあ、ささちゃん、それがかいちょーさんですから……」
 純粋にデュエルすることが好きだという点で波長が合うのか、、ルカはこのみのことをいたく気に入っている。以前にもまたデュエルするためにこの店を訪れたが、その時は夕陽と汐の関係に軋轢が生じていた時だったため、結局対戦はできなかった。
 なので今度こそ、このみとデュエルしようと気合が入っているようなのだが、
「——邪魔が入ったみたいだ」
「え? 邪魔?」
 このみたちが首を傾げている間に、ルカは閉めた店の扉を再び開け放つ。外の冷たい空気が店内に入って来ると同時に——ルカの姿が消えた——
「え……っ?」
「ルカにーさん!?」
「呼んだか?」
 ——と思ったら、次の瞬間には元に戻っていた。
 一体なにが起こったのかと一同が困惑する中、ルカはさっきまでは持っていなかった、一枚のカードをテーブルに置く。
「《節食類怪集目 アラクネザウラ》……?」
「俺が今さっき速攻で倒してきた」
「倒してきたって……」
 デュエルしてきたということだ。そして、それはつまり、

「——クリーチャーが実体化しているみたいだ」

 ルカの一言に、場の空気が一変する。
「クリーチャーが実体化してるって……な、なんで……?」
「それはあたしたちにも分からないわ
「で、ですが、なんらかの原因で、実体化したクリーチャーが、街中に出現しています……このまま放っておくわけには……」
「いかないよね」
 ささみによると、出現したクリーチャーの数は決して多くないが、誰が実体化させているのかは不明とのことだ。
「俺はこういう面倒なことはしたくないんだが……前にラトリが、身元不明のクリーチャーが出たら気を付けろって言ってたしなぁ……流石に放っておけないか」
「当たり前でしょ。仕事ほったらかした罰が当たったのよ」
「で、では、わたしたちは、先に出ますので……」
 そう言って、ルカとうさみ、ささみの三人は店内から出て行く。
「……わたしたちも、早く行った方がいいよね。実体化したクリーチャーを早くカードに戻さないと……」
「……それなら、手伝う」
「そうですね。そういうことなら、人手は多いに越したことはありませんし」
「え、でも……」
「遠慮はいらない。もう、こういうのには慣れたから」
 クロ、葵、仄の三人は、それぞれデッキを掲げながら言う。
 葵の言う通り、街中のクリーチャーを速やかに倒さなければいけないのなら、人手は多い方がいい。ここは、ありがたく手伝ってもらうべきだろう。
「よし……じゃあみんなで、町のクリーチャーを倒し——」
 と、その時。
「このみ、ちょっといい?」
「っ……お、お姉ちゃん? どうしたの……?」
 居住スペースとなっている店の上階から、このみの姉、木葉が降りて来る。
 神話空間が開いて一般人はいないと思ったが、ここはギリギリ範囲外だったのだろうか。
「急ぎの用があるんだけども、来てくれるかしら?」
「え、今から? 今は……」
「できれば、姫乃ちゃんもいて欲しいんだけど」
「わ、わたしもですか……?」
 酷いタイミングだ。さあ今からクリーチャーを倒しに行こう、というところで呼び止められてしまった。
 人手は多い方がいいということで三人にも手伝って貰うというのに、このみと姫乃がいなくては本末転倒だ。しかし、強引に木葉を振り切るのも難しいし、下手をすれば巻き込んでしまうかもしれない。
 このような状況に弱いこのみと姫乃は、機転を利かせることも出来ず、視線を彷徨わせながら困っていると——
「じゃあ、私たちは行ってきますね」
「え?」
「あおいん……?」
 唐突に、葵はそんなことを言いだした。
 さらに続けて仄とクロも、
「足りないのはメモにあったものだけだよね?」
「すぐに買ってくる……」
 まるで状況が読めない発言だったが、やがて理解する。
 三人は目で言っている。自分たちだけで行く、と。
 ここで無理やり木葉を振り切るのは危険だと判断し、もっともらしい理由をつけて外に出て、クリーチャーを倒して来ようというのだ。
 その考えを汲み取った二人は、申し訳なさも感じたが、それ以上に、
「……うん、ありがとう!」
「お、お願いするね」
 感謝した。
 ここは彼女たちに任せようと、そう思ったのだった。



「最近、『神話カード』以外のビッグなパワーが各地でディスカバリーされているんだよ」
 『和登栗須探偵事務所』にて、ラトリは一同にそう告げた。
「原因はアンノウン。ただフォウンドしいることは、そのパワーが確認されると、クリーチャーが大量発生するとか、ストレインジな現象がハップンするんだ」
「つまり、今回のクリーチャー大量発生も、その大きな力とやらが関わっている、ということですか」
「私はそうじゃないかとビリーブしてるよ」
 他にも、その力が確認されると、様々な異常現象が起きるらしい。
 データは少ないながらも、最も発現率が高いのがクリーチャーの大量発生。それに伴う神話空間の展開。他には、クリーチャーの変質や、離れた地域にも小規模の同じ現象が起こるなど、発生する現象に法則性はなく、一定していない。
「で、ラトリさんや黒村先生たちは、その異変を突き突き止めるためにここに……?」
「そういうことだ」
「この事務所を見つけたのは偶然だけどね。なにが起こるか分からないし、かの『深謀探偵シャーロキアン』さんに力を借りようかと思って」
 九頭龍(希道)の、どこか小馬鹿にしたような物言いに、栗須は少しばかり目を細めるが、
「……勝手に決めないでほしいものだが、確かにその現象には興味がある」
「あたしもだ。最近ずっと思っていたことだが、ここに来て明確に“ゲーム”に変化が訪れたわけだしな」
「……そういえば」
 ふと、夕陽は思い出す。今日この街に来る前の、電車の中。青崎記に言われたことを。
(最近、大きな力が確認されることがあるって……あいつはこのことを言っていたのか)
 ラトリと言っていることがほぼ同じなので、その情報は正しかったようだ。
「話をリバースするよ。とにかく私たちはその現象の原因を探っててね。たまたまディスカバリーしたこの事務所をホームベースにして、このタウンのハプニングがなんなのか、サーチしてたんだ」
「人の事務所を勝手に拠点にするな」
「でも、根本的な原因はいまだアンノウン。バット、アテナのお陰でこのタウンで確認されたビッグなパワーポイントは、いくつか割り出せたよ」
 そう言ってラトリはしゃがみ、足元のパソコンを操作する。
 その時、夕陽の携帯に着信があった。
「今、君たちのテルフォンに、割り出したパワーポイントの座標マップを送ったよ」
「どうやって人のアドレスを……」
 唸る夕陽。個人情報にまで介入してくるラトリの情報収集力が、少し怖くなった。
「確認されているパワーポイントはシックス。ここにいる人はエイトだから、数が半端になっちゃうけど……確認されているポイントにはばらつきがあるから、ツーマンセルで行こうか」
「なら空城、お前は月夜野汐とだ」
「そうね。見知った仲間と一緒の方が、こういう時はいいわね」
 真っ先に決められた夕陽と汐のペア。
「速攻で決まったな……」
 不満はないが、なんとなく釈然としない。
「仲間同士っていうなら、所属が同じ人同士の方がいいよね。『深謀探偵シャーロキアン』さんは、『炎上孤軍アーミーズ』さんとかな」
「なに……?」
「こいつと、だと……?」
 こちらは思い切り不満気だった。二人は犬猿の仲で、因縁もある。当然と言えば当然だ。
「待て、僕はこのような野蛮な女と行動するつもりは——」
「あたしもこんな胡散臭い探偵もどきと一緒になんて——」
「じゃあネクストペア、九頭龍君と希野ちゃんでいいかな」
 栗須と亜実の苦言はスルーされ、ラトリが次のペアを決めてしまうが、
「え……ちょっと、所長。流石にそれは冗談きついですよ……」
「? ジョークじゃないよ、マジだよ、マジ」
「……嘘、でしょ……」
 ガックリと項垂れる希野。しかしラトリには逆らえないのか、それ以上反発はしなかった。
「僕と一緒がそんなに嫌なの?」
「嫌に決まってるでしょ」
「おおぅ、ストレート……」
「じゃあ、俺は所長とですか」
 結果、夕陽&汐、亜実&栗須、九頭龍(希道)&希野、ラトリ&黒村というペアで決定したのであった。