二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.598 )
- 日時: 2014/08/07 08:42
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「…………」
「どうしたの界長? 黙ってるなんて珍しいじゃない」
「いや、だるいなーと思って」
「いつものかいちょーさんでした……」
一足先に『popple』から出たルカとうさみ、ささみであったが、いまだクリーチャーとエンカウントはしていない。
それ自体はクリーチャーとの対戦が無駄だと考えるルカにとっては好都合なのだが、しかし同時に奇妙さも感じる。なにが奇妙なのかと言われても、上手く言語化はできないのだが。
「なんつーか、今までのクリーチャーとは違う感じがする」
「前にラトリさんが言ってたやつ?」
「かもな」
ルカは夕陽たちとの接触以前からラトリと交流があったのだが、接触以降はその頻度がさらに増した。つい数日前も連絡を取り合ったばかりで、その時に妙な情報を聞かされたのだ。
「身元不明のクリーチャーには注意しろ、だったか……なんだよ、身元不明のクリーチャーって。あんな獣どもに身元なんてあるのかよ」
「だれが放っているのか分からない、ってことではないでしょうか……?」
「でも、普通は特定されないように撒くものだし、なんか今更って感じもするわね」
「そこも含めて、妙なんだよなぁ……ったくよ、俺は“ゲーム”参加者と楽しいデュエルをしたいだけだってのに、こんな掃除をさせられるとか、納得いかねぇ」
「いつもあたしたちに雑用任せっきりのニート界長がなに言ってんのかしら」
「それに、ラトリさんの頼みなら、きかないわけにはいかないですよぅ……」
情報提供と同時に『そーゆークリーチャーをディスカバリーしたら、適当にデストロイよろ!』という発言もあったため、ルカはしたくもないクリーチャー掃除をしなければならない羽目に。ラトリの頼みを無視することもできたが、ルカとしては彼女に少なくない借りがあり、浅からぬ縁もあるため、そういうわけにもいかない。
「ん……? なんだ、急に空が曇って——」
などと思っていると、ふとルカたちに影が差す。雨でも降るのか、と視線を上にあげると、
「……なんだ、クリーチャーか。雨雲じゃなくて良かった」
「おっきいです……!」
「《白騎士の精霊アルドラ》ね。随分と大型のクリーチャーが出て来たけど……気配はなかったわ」
通常、カード状態のクリーチャーは実体化にそれなりの時間がかかる。その時間はマナコストの大きさに比例して長くなるのだが、コスト7〜9くらいまでならそれほどかからない。しかし10を超えると、その時間は一気に長くなる。
彼らも“ゲーム”に関わって長い。近くに実体化しようとするカードがあれば、なんとなく気配を察せる。しかし今回は、その気配を感じなかった。
「界長の言う通り、なにか妙ね、これ」
「ど、どうするんですか……?」
「俺が速攻で片づけてやる。お前らは下がってな」
うさみとささみを下げ、前に出るルカ。
そして次の瞬間には、アルドラと共に神話空間へと突入していた。
ルカとアルドラのデュエル。
互いにシールドはまだ五枚あるが、アルドラのシールドの一枚には《ローズ・キャッスル》が要塞化されており、場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》《解体人形ジェニー》《墓守の鐘ベルリン》の三体。
ルカの場にはなにもなし。《正々堂々 ホルモン》と《飛散する斧 プロメテウス》がさっきまではいたのだが、《ローズ・キャッスル》で一掃されてしまった。
「なかなかに面倒な奴だな。雑魚の掃除なんてただでさえ燃えないってのに、デッキも鬱陶しいとは……まあいい。俺のターン、《暴剣坊 アラシ》を召喚だ」
暴剣(クロス)坊(ボーイ) アラシ 水/火文明 (7)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚を墓地に置き、その後、その中から1枚を手札に戻す。それがエグザイル・クリーチャーであれば、そのターン、このクリーチャーは「スピードアタッカー」を得る。
W・ブレイカー
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《暴剣》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《暴剣》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
現れたのは、小さな少年のようなクリーチャー。小太刀を二振り構え、小さいながらも力に満ち溢れている。
オラクル教団の策略により、子供へと変えられてしまった《クロスファイア》の姿、それが《アラシ》だ。今はまだ大きな力こそないが、彼の存在はやがて巻き起こる嵐の予兆である。
「《アラシ》の能力で山札の上三枚を墓地に送るぞ」
墓地に落ちたのは《正々堂々 ホルモン》《武闘龍 カツドン》《終末の時計 ザ・クロック》。
「よし、《カツドン》を回収だ。エグザイルが手札に加えられたので、《アラシ》はスピードアタッカーになる。シールドを攻撃だ!」
「《ブラッディ・シャドウ》でブロック」
《アラシ》の一太刀によって、《ブラッディ・シャドウ》が切り裂かれる。
「私のターン。呪文《超次元リバイヴ・ホール》で《ブラッディ・シャドウ》を回収。そして開け、超次元の門! 《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》をバトルゾーンに! 《アラシ》を破壊!」
「おっと、ドロン・ゴー先がないのは見抜かれたか」
「さらにG・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》を召喚し、ターンエンド」
ルカのクリーチャーが次々と破壊されていくのに対し、アルドラはどんどん場数を並べていく。このままでは数で押し切られてしまいそうだが、
「その辺のクリーチャーにしてはやるなぁ……ほんの少しだけ、楽しくなってきやがった」
ニヤリとルカは微笑む。
「俺のターン! 《武闘龍 カツドン》召喚!」
武闘(カンフー)龍(ドラゴン) カツドン 火文明 (6)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 2000+
スピードアタッカー
パワーアタッカー+3000
このクリーチャーは、タップされていないクリーチャーを攻撃できる。
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に《武闘》とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に《武闘》とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
《アラシ》に呼び込まれて出て来たのは、寸胴のような小さい身体の赤い龍。手には身の丈以上もあるヌンチャクを持っている。
「さーて、こっからどうするか……」
ルカは手札に目を落とし、アルドラの場を眺める。
「……うっし。《カツドン》で《ブラッディ・シャドウ》を攻撃だ!」
《カツドン》はアンタップ状態のクリーチャーも殴れるスピードアタッカー。《ローズ・キャッスル》の影響でパワーは《ブラッディ・シャドウ》に及ばないが、バトルをすればどの道相手は破壊される。
なのでこの場合重要なのは、《カツドン》も破壊されるということだ。《ブラッディ・シャドウ》とバトルすれば、どちらのクリーチャーも破壊されるが、《カツドン》はエグザイル・クリーチャーで、破壊された時にドロン・ゴーが発動する。
それを狙ってのこの攻撃だが、
「《ベルリン》でブロック」
「……そう来たか。まあいい、ターン終了だ」
ルカの意図は読まれていたようで、普通に防がれた。しかし《カツドン》が除去しにくくなったことには違いなく、このまま軽量クリーチャーを殴り続けるだけで、ルカが有利になれる——はずだった。
「私のターン。まずは呪文《コアクアンのおつかい》。そしてそのまま手札に加えた《アンラッキーダーツ》を唱える。選ぶコストは8」
「げ……」
《アンラッキーダーツ》は、簡単に言えば軽量ハンデス呪文だ。だがそれだけでなく、唱える時に選んだコストのカードを捨てさせることができれば、カードを引くことができる。
ルカの手札の一枚が、漆黒のダーツに撃ち抜かれる。はらはらと墓地に落ちていくカードのコストは、アルドラが選んだ数字と同じ8。
「カードを一枚ドロー」
このドローはかなり地味だが、ハンデスしつつカードを引くということは、意外と重要だ。普通に《ゴースト・タッチ》や《特攻人形ジェニー》で手札を捨てさせても、そのためにこちらも手札を使用しているので、アドバンテージの差は±ゼロ。その差を広げられるのだから、地味ながらも厄介だ。
「G・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》を召喚し、《ブラック・ガンヴィート》で《カツドン》を攻撃!」
「ドロン・ゴー先もドロン・ゴー元もやられたか……」
ちまちまとしているが、クリーチャーにしてはなかなかのプレイングだ。
「だったらこいつでどうだ!」
ルカの気勢と共に、彼の背後から水流と爆炎が巻き起こる。そして、
「逆巻く剣戟と渦巻く砲撃! 無法の銃剣よ、守りの壁を薙ぎ払え! 《激流剣砲 カツ∞キング》!」