二次創作小説(紙ほか)
- デュエル・マスターズ Mythology ( No.601 )
- 日時: 2014/10/20 20:55
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)
南西方面へと向かった九頭龍兄妹は、既に夕陽たちが発見した者と同じ現象を、見つけていた。
「どう見てもあれだよね」
「見るからに、そうね」
住宅街の路地裏にある、形容しがたいなにか。時空が歪んでいるような、その空間にだけなにかしらの力が働いているかのような、とにかく視覚で言い表すことが難しい現象染みたなにかが、そこにはあった。
「なんなんだろう、これは。見たことも聞いたこともない……なんなんだろう」
「なにかに例えて表現することもできないし、どうやってデータを取れば——」
と、その時。
二人は目の前で存在感を放つなにかとは違う気配を感じ取った。同時に、その気配の主が姿を現す。
「クリーチャー……出て来るかぁ、やっぱり。となるとあれは、そういった類の力なのかな?」
「《偽りの名 ハングリー・エレガンス》と《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》か。なんというか、いまいち整合性がないクリーチャーね……」
なんにせよ、この状況ではこのレベルで大型なクリーチャーを見過ごすこともできない。
「詮索は後回し。希道、あんたもやるのよ」
「せっかくの休日を黒村さんに潰されて、正直あんまり気乗りしないんだけど——」
「うるさい早くしろ」
「——可愛い妹の頼みだから仕方なく——」
「うるさい黙れ」
「——みんな僕に冷たいなぁ。まあいいや、僕とて職務怠慢な奴なんて思われたくないし、【ラボ】としての仕事くらいはこなすさ」
そう言って、それぞれがそれぞれの相手へと相対する。
そして、二人はそれぞれの相手と神話空間へ入るのだった。
九頭龍とハングリー・エレガンスのデュエル。
現在どちらもシールドは五枚。九頭龍の場には《エコ・アイニー》と《偽りの王 ヴァルトシュタイン》の二体で、墓地を溜めつつマナを大量に加速している。
一方ハングリー・エレガンスの場には《スペース・クロウラー》が一体。ただし《天頂計画》も利用し、こちらもマナを溜めている。
「オデのターン、行くでガンス! 《偽りの名 ハングリー・エレガンス》を召喚!」
偽りの名(コードネーム) ハングリー・エレガンス 自然文明 (8)
クリーチャー:ジャイアント/アンノウン 8000
相手がカードを引いた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
アンノウンを自分のマナゾーンから召喚してもよい。
W・ブレイカー
「出たかぁ……」
大型のアンノウンが出て来てしまった。早めに除去しなければ、自身のマナブースト性能と合わせてマナゾーンからさらにアンノウンが出て来てしまう。
「と言っても、いい感じに除去がないな。仕方ない、僕のターン」
『待ったガンス! オデの能力発動ガンス! 相手がドローした時、マナを増やすでガンスよ』
九頭龍がカードを引くと、《ハングリー・エレガンス》が大地を踏み鳴らしてマナ畑を耕す。これで9マナ。
「……まあいいさ。《偽りの王 カンタービレ》を召喚して、墓地のドラゴンをすべてマナに戻すよ」
《ヴァルトシュタイン》で増やした墓地をマナへと還元し、一気に加速する九頭龍。しかしこれはマナブーストだけでなく、墓地のドラゴンをマナに戻す役目もある。
(こっちも《カンタービレ》でマナゾーンから召喚させてもらおうか。《ヴィルヘルム》辺りを出せれば、マナゾーンのカードも消せるし、相手のマナにはこれといったアンノウンもいないし)
そんな算段を立て、九頭龍のターンは終わった。
そして《ハングリー・エレガンス》のターン。
『オデのターンでガンス! マナチャージして10マナ! 手札から《「俺」の頂 ライオネル》を召喚でガンス!』
「え? 手出し?」
マナゾーンからなにかしら呼び出すものと思っていたが、普通に手札から召喚された。
しかもそれは、ただのアンノウンではない。ゼロ文明の頂点に立つゼニスだ。
『《ライオネル》の効果でシールドを増やすでガンス! そして、オデのシールドを一枚、選ぶでガンスよ』
「S・トリガーでさらに増えるんだよねぇ……別にシールド追加とかはしてないし、どれでも同じか。左端のシールドにしようかな」
九頭龍が選んだのは、シールド展開時に最初に置かれる、一番左端のシールド。それが捲れ、
『S・トリガーでガンス! 《「祝」の頂 ウェディング》!』
「げ……」
よりにもよって二枚目のゼニスを引き当ててしまった九頭龍。最悪だ。
S・トリガーで出たクリーチャーは召喚扱いになるので、当然この《ウェディング》の召喚時能力も発動し、
『さあ、クリーチャーと手札を合わせて四枚! シールドに置くでガンスよ!』
「全滅か……」
九頭龍のクリーチャーと手札は、合わせてきっかり四枚。シールドは増えたが、場も手札も空になってしまった。
『ターン終了でガンス』
しかも妙に慎重で、このターンは攻撃せず。手札を与えることを嫌ったのだろう。
「クリーチャーにしてはやるなぁ。僕のターン」
とりあえずマナは腐るほどあるので、なにか逆転に繋がるカードを引ければいいのだが、しかしこんな時に限って引くのは《メンデルスゾーン》。迷わずマナゾーンに直行する。
「今日はついてない。ターン終了」
『オデのターン! オデの能力で、マナゾーンから《「呪」の頂 サスペンス》を召喚でガンス! シールドを二枚、墓地送りでガンスよ!』
《サスペンス》の炎で、九頭龍のシールドが焼き尽くされる。しかも不運なことに、一枚は《「戦慄」の頂 ベートーベン》だったが、もう一枚が呪文の《ミステリー・キューブ》だった。
『山札をシャッフルし、その一番上を捲るでガンス! 《「勝利」の頂 バトル・ザ・クライマックス》でガンス!』
「またゼニス……今日は本当についてないな」
幸い、召喚ではないのでスピードアタッカーこそつかないが、今の《ハングリー・エレガンス》の場にはゼニスが四体。一方、九頭龍はクリーチャーも手札もない。
『《ウェディング》でTブレイク!』
「っ、く……!」
一気に三枚のシールドが焼き尽くされる。しかも不運は続き、三枚すべて《黒神龍オドル・ニードル》だった。マナゾーンに一枚あるので、これで九頭龍のデッキの《オドル・ニードル》は出尽くし、S・トリガーへの期待も薄まった。
『ターン終了でガンス』
「やっぱりこれ以上の攻撃はしないか。用心深いったらないね」
九頭龍のシールドはあと四枚。攻撃可能な《ライオネル》と《ハングリー・エレガンス》で殴ってもとどめまでは行けない。
手札を与えず、じっくりじわじわと攻め落とす気のようだ。場や見た目が豪快なわりに、プレイングは繊細だった。
「さて、そろそろどうにかしないと、押し切られちゃうな……」
カードを引きつつ、チラッと《ハングリー・エレガンス》を見遣る九頭龍。《ハングリー・エレガンス》は地面を踏み鳴らしており、自身の能力でマナを増やしていた。
(なんか変だなぁ。全力じゃないとはいえ、僕をこんなに追い詰められるクリーチャーなんてそうはいない。しかも、自身の能力と相性がいいからって、こんなに強力なクリーチャーを連打するっていうのも、今までのクリーチャーの傾向からして微妙に外れてる)
基本的に、実体化するクリーチャーが扱うデッキは、そのクリーチャーの力の範囲よりも少し大きい程度のカードしか積まれない。クリーチャー自身の力が大きければ、その分デッキのクリーチャーも強く、逆に小型クリーチャーが実体化しても、デッキ内に組み込まれるカードのカードパワーはそこまででもない。
(勿論、例外はあるけど……うーん、どうなのかな。僕の深読みかもしれないけど、今の状況とセットで考えると、そうでもない気がするんだよね)
などと考えていても、現状では推測の域を出ない。そもそもこのデュエルに勝たなくては推測もなにも意味をなさないので、対戦に戻る。
「さて、あんまり長々やってても仕方ないし、ここいらで終わらせようか」
引いてきたカードを見るなり、九頭龍はそんなことをのたまう。
しかし実際、九頭龍はそのカードだけで、この戦況をひっくり返しうる可能性がある。
そして彼は、それをゆっくりと捲った。
「——《運命》」
どこからともなく力強い旋律が響き渡り、九頭龍の手札が五枚に増える。これで手札不足は解消された。
「さっきは僕が君のシールドを選択したけど、今度は君の番。僕の手札を選択し、君自身の運命を決めるんだ」
『ウヌヌ……なら、これとこれと、これでガンス!』
三枚のカードを選んだ《ハングリー・エレガンス》。その三枚だけがその場に残り、他のカードは九頭龍の下へ。
「よし、じゃあ公開だ。これで君の運命が決定されるよ」
フッと笑う九頭龍。そして次の瞬間。パタリパタリと、三枚のカードが捲られていった。
捲られた三枚は——《偽りの王 モーツァルト》《龍世界 ドラゴ大王》《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》。
「赤き龍王よ、数多の種族を支配し、世界を龍のものとせよ——《龍世界 ドラゴ大王》!」
そして、
「古代の力に目覚めし龍王よ、その絶対の力で、今日の世界に君臨せよ——《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》!」
三体の超大型ドラゴンが、一気に出揃う。
一体は偽りの力に魅せられ、戦慄の旋律に突き動かされる破壊の王《モーツァルト》。
一体は龍だけの世界を作り出し、龍以外は認めずにその頂点に君臨する《ドラゴ大王》。
一体は原始の力を呼び覚まされ、古代の力を宿し絶対の力を振りかざす《ワルド・ブラッキオ》。
この三体が並ぶ姿は、正に圧巻だ。ゼニス四体にも、負けていない。
「まず《モーツァルト》の能力で、ドラゴン以外はすべて破壊だ」
「オデまで……だ、だが、《バトル・ザ・クライマックス》は残ったでガンス!」
「どうかな? 《ドラゴ大王》の能力発動。《ドラゴ大王》と《バトル・ザ・クライマックス》をバトルだ」
龍世界 ドラゴ大王 ≡V≡ 火文明 (10)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン 13000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体と、相手のクリーチャーを1体、バトルゾーンから選んでもよい。その2体をバトルさせる。
ドラゴンではないクリーチャーがバトルゾーンに出る時、バトルゾーンに出るかわりに持ち主の墓地に置かれる。
T・ブレイカー
《ドラゴ大王》は咆哮し、《バトル・ザ・クライマックス》に突っ込む。《バトル・ザ・クライマックス》も剣を構えて迎え撃とうとするが、剣は折れ、鎧は砕け、その身は粉砕されてしまった。
「オデのクリーチャーが全滅……だけんど、まだ勝機は残ってるでガンスよ! オデのターン! 《「俺」の頂 ライオネル》を召喚——」
「残念だけど、それは許されないな。《ドラゴ大王》がいる限り、僕らはドラゴン以外を場に出すことはできない」
九頭龍のデッキは大半がドラゴンを占めているが、ハングリー・エレガンスはそうではない。《ライオネル》を出すことは叶わず、唸っていた。
「グヌヌ……な、なら、《バトル・ザ・クライマックス》を召喚! こいつはドラゴンだから召喚できるでガンス!」
「でも、僕の場には《ワルド・ブラッキオ》もいるよ」
界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ 自然文明 (11)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 27000
ワールド・ブレイカー
相手のクリーチャーがバトルゾーンに出て、そのクリーチャーの能力がトリガーする時、かわりにその能力はトリガーしない。(例えば、相手は「このクリーチャーをバトルゾーンに出した時」で始まる能力を使えない)
《界王類絶対目 ワルド・ブラッキオ》。パワーこそがすべてと謳うジュラシック・コマンド・ドラゴンの中でも破格のパワーと破壊力を備えているが、それだけではなく、他のクリーチャーのバトルゾーンに出た時にトリガーする能力を封殺してしまう、強力な能力も有している。
それにより、ゼニスの召喚時の能力も封じられてしまうのだ。
「ま、《モーツァルト》がいるからどの道、君は攻撃できないけどね。どうする?」
「タ、ターン終了で、ガンス……」
強力なロック能力を持つ三体のドラゴンに囲まれ、なにもできないハングリー・エレガンスは、そのままターンを終える。
「さて、僕のターンだ。再び《運命》を唱えるよ、カードを一枚だけ引いて、手札三枚を公開するよ」
九頭龍の手札は三枚しかないので、余計なカードを引かず、確実にクリーチャーを呼び出しにかかる。しかもこうして捲られた三枚は《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》《偽りの王 ナンバーナイン》《超天星バルガライゾウ》だった。
「《バルガライゾウ》以外の二体をバトルゾーンへ。これで君はなにもできなくなったね。ご愁傷様」
《ドラゴ大王》はドラゴンの登場を封じ、《VAN・ベートーベン》はドラゴンとコマンドの登場を封じる。この二体が並んだ時点で、相手は如何なるクリーチャーも場に出せない。仮にどうにかして場に出せたとしても《ワルド・ブラッキオ》で登場時の能力は封じられ、《モーツァルト》でドラゴンは攻撃できず、《ナンバーナイン》で呪文も唱えられない。
正に、ほぼ詰みの状態だった。
「《ワルド・ブラッキオ》でワールド・ブレイク」
刹那、ハングリー・エレガンスのシールドがすべて吹き飛んだ。召喚も呪文も封じられているので、S・トリガーも使えない。
そして、偽りの名を得た巨人に、同種の王なる龍が、鉄槌を下す——
「《偽りの王 モーツァルト》で、ダイレクトアタック」