二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.605 )
- 日時: 2014/10/26 19:08
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)
「最上階、到着、っと」
黒村がいないため、最近は崩れつつあるキャラ作りのための口調も気にしない。いや、気にしていられない、と言うべきか。
「なんか、凄いのいる……」
少し開けた最上階、ラトリの目の前には、妙な存在感を放つ、なにか。
それがなんなのかを説明することは、彼女の知識を持ってしても無理だった。凄まじい力を感じるなにか、としか言いようがない。強いて言うのであれば、謎の力の集合体、とでも言うのか。
「アテナ、あれ?」
「そのようです。途轍もない力を感じます」
「アテナはあれがなんなのか、知ってるの?」
「……覚えはない、と思います。他の十二神話がそうであるように、アテナの過去の記憶、本来いるべきであった世界での記憶は完璧ではありません。しかし、どこかで感じたことがあるようにも思えます。個人感覚によるものなので、非常に不明確かつ不確定な情報ではありますが。信頼性はゼロと言っても良いでしょう」
ならば、現状では未知の存在、と言っても差し支えないものであるようだ。
「でも……本当になんなのかな、これは。こんなよく分からないものじゃ調べようがないよ。持って帰るわけにもいかないし——」
と言いながらラトリが一歩を踏み出した、その瞬間。
目の前の力の集合体が、収縮していく。
「え、あ、ちょ、ちょっと……」
ぐんぐん萎んでいく集合体に手を伸ばすも、もはや手遅れ、もうすぐに消えてしまう。
しかし、
(……? なに……?)
完全に消え去る一瞬だけ、その力の裏に、なにかの影が見えた。本当に一瞬だけだったので、それがなんなのかまでは分からなかったが。
「今のは……」
「マスター」
「え、なに?」
「クリーチャーが来ます」
と、アテナが言い終えた瞬間。
遥か上空から、一体のクリーチャーが落下してきた。
「うわっと……危なっ!」
こんな高い場所で巨大なクリーチャーが落下して来たら、衝撃でバランスを崩す。下手したら建物が倒壊するレベルだが、なかなか耐久力のあるタワーだった。
ラトリは身体を起こしつつ、目の前で直立する、巨大なクリーチャーに目を向ける。
「あれは……」
「《「命」の頂 グレイテスト・グレート》……ゼニスですね」
「ゼニス級のクリーチャーが実体化するなんて、相当だね。やっぱさっきのあれのせいかな?」
まだ分からないことも多いが、そう考えるの自然だろう。
なぜ集合体は消えてしまったのか、あの集合体はなんなのか、急にこの場所に出現した理由はなんなのか……解明すべきことは多いが、集合体そのものが消えてしまっては、それも叶いそうにない。
「ならせめて、このクリーチャーと一戦交えてみようかな。これがあの力によるものなら、なにか分かるかもしれないし。アテナ、行ける?」
「はい。アテナも、いつまでも戦わないままではいられません」
「よし、じゃあ頼んだよ」
「了解しました、マスター」
アテナが光に包まれると、一枚のカードとなりラトリの手に収まる。ラトリはデッキケースからデッキを取り出した。
そして、彼女たちはグレイテスト・グレート共に、神話空間を展開する——
「《霞み妖精ジャスミン》召喚! 即破壊してマナを増やすよ!」
「《霞み妖精ジャスミン》を召喚。破壊し、マナを追加」
「呪文《ライフプラン・チャージャー》! 《雷鳴の守護者 ミスト・リエス》を手札に!」
「呪文《ライフプラン・チャージャー》を発動。《黒神龍オンバシ・ラオーン》を手札に加える」
ラトリとグレイテスト・グレートのデュエル。序盤はお互いにマナ加速とキーカードを手札に加えるという準備。双方ともまったく同じカードを使用していた。
「私のターン! 呪文《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》! 3マナ加速してさらに呪文《野生設計図》! 山札の上三枚を捲って、それぞれコストの違うクリーチャーを手札に加えるよ!」
捲られた三枚は、《蔵録の守護者カメンビー》《超過の守護者イカ・イカガ》《霞み妖精ジャスミン》。それぞれコストが2、3、2だ。
「《カメンビー》と《イカ・イカガ》を手札に加えて、ターン終了!」
「今回は二枚手に入りましたが、同コストカードが多いデッキでそのカードチョイスはどうなのでしょう」
「むー、うるさいなぁ。上手くいったならいいじゃん」
「今回は、です。不安定なデッキメイクでは生き残れません」
「分かってるよ。私がこういうのダメだってことくらい」
少し拗ねたような表情を見せるラトリ。しかし、すぐにいつもの表情に戻る。
「《黒神龍オンバシ・ラオーン》を召喚。ターン終了」
「着々と揃ってるなぁ……なら、こっちも準備していこうか」
不気味に直立するグレイテスト・グレートに対し、陽気で朗らかなラトリは、勢いのままクリーチャーを並べ始める。
「《ミスト・リエス》を召喚! さらに《光器ペトローバ》も召喚! ガーディアンを指定して、《ミスト・リエス》の能力でで一枚ドロー! ターン終了!」
《ミスト・リエス》でドローソースの確保、《ペトローバ》でこれから展開する予定のガーディアンの強化と、次の展開のための基盤を固めるラトリ。
だが、それに対しアテナは、
「マスター、ブロッカーは出さなくて良かったのですか」
と意見する。
「え? なんで?」
「次でマスターの敗北が決まるかもしれないからです」
あっさりとのたまうアテナ。その言葉に対してなにかを言う前に、グレイテスト・グレートのターンが訪れた。
「《オンバシ・ラオーン》の能力により、アンノウンとゼニス、両方の種族を持つクリーチャーのコストを3軽減。7マナで召喚」
ゴゴゴゴ、と空気の震えを感じる。《オンバシ・ラオーン》がその身を捧げることで、あらゆる命を司る天頂の存在が、君臨する——
「——《「命」の頂 グレイテスト・グレート》」
「命」の頂 グレイテスト・グレート 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 21000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンまたは墓地から好きな数のクリーチャーをコストの合計が7になるように選び、バトルゾーンに出す。
Q・ブレイカー
エターナル・Ω
中世の戦争に使われたような甲冑を見に纏い、一本の長槍を携え、数多のトライストーンを浮かべた戦士が、場に現れる。
「あ……忘れてた」
「ここまでですか。早い終了ですね」
《グレイテスト・グレート》は他のゼニスとは違い、汎用性に欠けたり起爆しにくかったりと、扱いづらい部分が目立つが、しかし使い方を工夫すれば非常に強力なクリーチャーであることは違いない。
『召喚して《グレイテスト・グレート》を場に出したので能力発動。マナゾーンよりコスト7の《神聖麒 シューゲイザー》をバトルゾーンに』
《グレイテスト・グレート》の力で《シューゲイザー》の命あ呼び寄せられる。さらに今度は、《シューゲイザー》の能力が発動する。
『《シューゲイザー》の能力発動。手札よりコスト5の《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》をバトルゾーンに』
これで《グレイテスト・グレート》のクリーチャーはすべてスピードアタッカーとなる。《グレイテスト・グレート》はQブレイカーなので、《シューゲイザー》《キリュー・ジルヴェス》と合わせてすべてのシールドを突き破りつつ、とどめまで刺せるようになってしまった。
『《シューゲイザー》で攻撃、その時に能力発動。マナゾーンより《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》をバトルゾーンに。シールドをWブレイク』
「っ、くぅ……!」
《シューゲイザー》が操る光の杖がラトリのシールドを二枚粉砕する。砕かれたシールドの破片が、彼女を切り裂いた。
「マスター、大丈夫ですか」
「ちょっと痛い……っていうかそれどころじゃな——」
『《グレイテスト・グレート》で残りのシールドをブレイク』
長槍の一撃が、ラトリの残ったシールドを三枚砕く。まだ《グレイテスト・グレート》の場にはスピードアタッカーが二体いるので、片方を除去しても防ぎ切れない。二体を同時に止めなければならないのだ。
「っ、……来たよS・トリガー発動! 《DNA・スパーク》!」
三枚目のシールドが光の束となり収束していく。そしてそこから放たれる二重螺旋状の光が、《グレイテスト・グレート》の残ったアタッカー二体を封じ込めた。
「た、助かったぁ……」
「九死に一生を得ましたね」
「しかもシールド追加のおまけつき。これでなんとか……」
「シールド追加は無理ですね。《グレイテスト・グレート》はQブレイカー、先ほどブレイクしたシールドは三枚。残り一枚もブレイクされます」
アテナの言う通り、《グレイテスト・グレート》はシールドを四枚ブレイクできるが、まだ三枚しかブレイクされていないので、S・トリガーでブレイク中に増えたシールドもブレイクされるのだ。
「シールドゼロ、相手はアタッカー四体か……」
かなり厳しい状況。ここから巻き返すのは、ラトリの実力では難しいだろう。
だが、しかし、
「私にはアテナがいる。負けるわけない。それに——」
——こんなところでは、終われないから——
小さく呟くと、彼女は自らのデッキへと手を掛けた——