二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.632 )
日時: 2015/06/10 03:41
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: rGbn2kVL)

 このみと男のデュエル。
 序盤は互いにマナブーストから始まり、シールドは五枚ずつ。クリーチャーもまだいない。
 とりあえずこのみは、最初に《霞み妖精ジャスミン》でマナを伸ばしたが、
「でもこのデッキ、どうやって使うんだろう……」
 中身を確認する暇なんてなかったため、まったくデッキ内容が分からない。見た感じ、火、自然の連ドラっぽいが。
「とりあえず、今出せるカードは……《エコ・アイニー》を召喚。マナをさらに増やして、ターン終了だよ」
 これでこのみはさらに2マナブーストし、後攻でありながらマナ数では男を上回った。
 だが男は、今度は別のアプローチでアドバンテージの差を広げる。
「呪文《ストリーミング・チューター》。山札の上から五枚を捲るぞ」
 捲られたのは、《ガイアール・ベイビー》《セブンス・タワー》《ドンドン吸い込むナウ》《節食類怪集目 アラクネザウラ》《爆砕面 ジョニーウォーカー》の五枚。
「水単色の《ドンドン吸い込むナウ》以外の四枚を手札に加える」
「わ……手札一気に増やされちゃった……」
 男のデッキは、水、火、自然の三色の様子。かといって、ここまでの動きやカードを見るに、ビートダウンのように、積極的に序盤から攻めていくようなデッキではないようだ。この三色はビートダウンに秀でた組み合わせで、その手のデッキが有名なので、そうでない場合の動きが、このみにはよく分からない。
「なにをしてくるデッキなんだろう……あたしのターン。《母なる緑鬼龍ダイチノカイザー》を召喚!」


母なる緑鬼龍(りょっきりゅう)ダイチノカイザー 自然文明 (7)
クリーチャー:グリーン・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 7000
このクリーチャーが攻撃する時、相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、自分のマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストを持つ、進化ではないドラゴンを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー


 攻撃と同時にガチンコ・ジャッジを仕掛け、それに勝つことでマナゾーンからドラゴンを呼び出せるドラゴン、《ダイチノカイザー》。やや不安定で変則的だが、マナブーストを多用したり、デッキ全体の平均コストが高い連ドラでは、攻撃までのタイムラグに目を瞑れば有用なカードだと言えるだろう。
「《セブンス・タワー》、メタモーフで3マナ加速。そして《節食類怪集目 アラクネザウラ》を召喚だ」
「除去されなかった……やった」
 返しのターンに除去されてなにもできない可能性があるのがアタックトリガーの欠点だが、《ダイチノカイザー》は運よく生き残ることができた。これはチャンスだ。
「《養卵類 エッグザウラー》と《霞み妖精ジャスミン》を召喚! 《ジャスミン》は破壊してマナを増やすよ! そして《ダイチノカイザー》で攻撃!」
 その時、《ダイチノカイザー》が吠える。
「ガチンコ・ジャッジ!」
 このみが捲ったのは、コスト8《永遠のリュウセイ・カイザー》。かなり高コストのカードを捲ることができた。
「これなら行ける……!」
「……ふんっ」
 男は勝利を確信したようなこのみを見て、どこか呆れたように鼻を鳴らす。
 そして、男が捲ったカードは——《帝王類増殖目 トリプレックス》。
「っ……!? コスト9のカード!?」
「俺の勝ちだな。《ダイチノカイザー》の能力は不発だ」
「うぅ、で、でも! 攻撃は通るよ! 《ダイチノカイザー》でWブレイク!」
 《ダイチノカイザー》は男のシールドを粉砕する。その破片が飛び散り、男を切り裂くが、男は意に介さない。
 まるで、この程度の痛みは慣れている、とでも言わんばかりに不動であった。
「それで終わりか?」
「…………」
 このみからの返答はなかった。即ち、彼女のターンはこれで終わりだ。
「……《爆速 ココッチ》を召喚」
 今までつとめて静かに振舞っていた男だが、次の瞬間、溜め込んでいた力を解き放つかのように、すべてを爆発させる。

「仁義も大儀も必要ない。最後にすべてをねじ伏せるのは、は力だ。さぁ、あらゆる敵を古代の力でねじ伏せろ! 《仁義類鬼流目 ブラキオヤイバ》!」

 大地が鳴動し、砕け、割れ裂ける。そこから這い出るようにして現れたのは、鉤爪にも似た刃を剥き出しにした、凶暴な古代の龍。身体にはその怒りを抑えるかのような鎖が巻かれているが、それでもない、龍は怒るように吠えている。
「これなら、『神話カード』を出すまでもないかもな……《ココッチ》の能力で俺のコマンド・ドラゴンはすべてスピードアタッカーとなる。《ブラキオヤイバ》で《ダイチノカイザー》を攻撃だ!」
 その時《ブラキオヤイバ》が再び吠える。さらにそれに呼応するかのように、《アラクネザウラ》も甲高い声で叫び始めた。
「な、なに……!?」
 あまりの声量に思わず耳を塞ぐこのみ。一体なにが起こるのか、二体の古代龍がなにをしてくるのか。その答えは、すぐに明らかとなる。
「《ブラキオヤイバ》が攻撃する時、俺は手札から好きな自然クリーチャーを呼び出すことができる」



仁義類鬼流目 ブラキオヤイバ 自然文明 (8)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 12000
このクリーチャーが攻撃する時、進化ではない自然のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
相手のクリーチャーが攻撃する時、そのクリーチャーは可能であればこのクリーチャーを攻撃する。
T・ブレイカー



 コスト踏み倒しがどれだけ強力であるかは、今までの殿堂カードが物語っている。それだけでも強力な《ブラキオヤイバ》の能力であるが、しかし男は、さらにその上を行っていた。
「だが、俺はその能力を使う前に、《アラクネザウラ》の能力を発動させる」
「《アラクネザウラ》の能力……?」
「自分のドラゴンが攻撃するとき、マナからクリーチャーを手札に戻せるドラゴンだよ、このみー」
 このみが首をかしげていると、プロセルピナから解説が入った。幼いが、流石は自然のドラゴンと関わりの深い『神話カード』なだけあって、自然のクリーチャーには詳しいようだ。



節食類怪集目 アラクネザウラ 自然文明 (6)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 6000
自分のドラゴンが攻撃する時、クリーチャーを1体、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。そうした場合、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。
W・ブレイカー



「……あれ? っていうことは……」
 このみはそこで気付いた。
 手札からクリーチャーを呼び出せる《ブラキオヤイバ》。その能力を使う前に、《アラクネザウラ》の能力によってマナゾーンからクリーチャーを回収するということは、
「マナゾーンからも、好きなクリーチャーを出せるってこと……!?」
「その通りだ。マナゾーンの《ガイアール・ベイビー》を回収し、そのままバトルゾーンへ!」
 二体の古代龍によるコンボ、しかもそれが《ココッチ》のサポートを受けて、少ないラグで行っている。相手依存で不安定なこのみとはまったく違う。
 《ブラキオヤイバ》の一撃が《ダイチノカイザー》を引き裂き、破壊した。
「《ダイチノカイザー》が……」
「おい、これで終わりだと思うなよ。《ガイアール・ベイビー》で攻撃! その時にも《アラクネザウラ》の能力が発動する!」
 また《アラクネザウラ》が叫びを上げると、男のマナゾーンに眠っていたクリーチャーが目覚め、驚き逃げるように男の手札へと向かっていく。
「マナゾーンの《青銅の鎧》を回収だ。そして、そのままシールドをブレイク!」
 《ガイアール・ベイビー》がこのみのシールドを突き破る——前に、そのシールドは透明化する。
「な、今度はなに……!?」
「《ガイアール・ベイビー》がシールドをブレイクするとき、そのシールドを見れるんだよ」
 また、プロセルピナからの解説が入った。
「そしてそのシールドのカードよりコストの小さなクリーチャーを、手札から出せるの」


ガイアール・ベイビー 水/火/自然文明 (5)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
このクリーチャーが相手のシールドをブレイクする時、相手はかわりにそのシールドをすべてのプレイヤーに見せる。そのシールドの中のカード1枚よりコストが小さい、進化ではないクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。その後、このクリーチャーはそのシールドをブレイクする。


「ってことは、また《アラクネザウラ》回収したクリーチャーが出て来るの……!?」
 《ブラキオヤイバ》と違い、相手依存で比較的不安定ではあるものの、《アラクネザウラ》はどんなクリーチャーでも回収できるため、その不安定さをある程度は解消できる。
「どうした。早くシールドを見せろ」
「う……」
 このみは仕方なく、ブレイクされたシールドを公開する。見せたのは、《エコ・アイニー》。
「コスト4か。なら、さっき回収した《青銅の鎧》をバトルゾーンへ」
 《青銅の鎧》程度ならそこまで強力なクリーチャーではないが、クリーチャーを並べられてしまったことは多少なりとも痛手だ。確実にアドバンテージを稼がれてしまっている。
「続けて、《アラクネザウラ》でWブレイク!」
「っ、S・トリガー発動だよ!」
 《アラクネザウラ》が食い破るようにこのみのシールドを砕くが、その二つはすぐさま光の束となり収束した。
「《熱血龍 バトクロス・バトル》と《王龍ショパン》!」
 現れたのは、どちらもS・トリガー能力を持つドラゴン。そして、登場時に相手クリーチャーとバトルする能力を持っている。
「《バトクロス・バトル》で《アラクネザウラ》とバトル! 《ショパン》は《ココッチ》とバトルだよ!」
 二体の龍は、それぞれ男のクリーチャーへと向かって行く。《バトクロス・バトル》は熱血の拳で《アラクネザウラ》を殴り倒し、《ショパン》はその巨体で《ココッチ》を踏み潰した。さらに、
「《バトクロス・バトル》も《ショパン》もパワー5000以上だから、《エッグザウラー》の能力でカードをドロー!」
 手札を補充し、反撃の手を掴んでいくこのみ。運頼りではあったが、まだ立て直せる。
 しかし、S・トリガーで二体のクリーチャーを除去でき、展開していく男の勢いを削ぐことができたとはいえ、状況が不利であることに変わりはない。
 まだ男の場には、《ブラキオヤイバ》が存在するのだ。
「……あたしのターン」
 今のこのみの手札に、この状況を打破するカードは存在しない。
 なので、このドローにすべてがかかっているのだが、
「! これ……《偽りの王 ヴィルヘルム》を召喚!」
 果たして正解に近いカードを、引き当てることができた。
 すべてのマナを使い、このみは巨大なキング・コマンド・ドラゴンを呼び出す。
「《ヴィルヘルム》の能力で、《ブラキオヤイバ》を破壊!」
「っ、ちぃ……!」
「さらに《ショパン》で《ガイアール・ベイビー》を攻撃だよ!」
 立て続けにクリーチャーを破壊され、男の場は瞬く間に壊滅されてしまった。
 残っているのは、《青銅の鎧》一体のみ。
 しかしそんな危機的状況下にあっても、男は揺るがなかった。それは、まだ彼に見せていない力があるがゆえのこと。
 そして男は、この重要な局面にて、決断を下した。
「物量で押し切れると思った瞬間にこれか……やはり、ここはお前に頼らざるを得ないようだ、ケレス」
「お主が望むなら、儂はいつでも構わん」
「そうか、なら……《青銅の鎧》を召喚」
 男は、ここに来て小型クリーチャーを並べ、マナを増やす。
 ランデスされたとはいえ、たかが一枚。豊富なマナを持つ男には微々たる被害。今更マナをさらに伸ばしても、過剰なだけだ。
 しかし男がここでマナを増やし、《青銅の鎧》というクリーチャーを並べることには、大きな意味を持つ。
 それが分かるのは、そう遠い未来ではない。
「続けて、《ボルバルザーク・エクス》を召喚」
 禁じられた龍の一体、《無双竜機ボルバルザーク》が狩人の姿となって転生したクリーチャー、《ボルバルザーク・エクス》。
 その咆哮はマナに新たな活力を呼び戻す。再び自分の時間が訪れるかのように、マナが起き上がった。
「そして6マナをタップ、《サイバー・N・ワールド》を召喚」
 マナが起き上がると、今度は手札。
 世界が一度、新しく作り直される。世界が再構築され、男も、このみも、手札と墓地が初期状態にリセットされた。
(っていうかこれ、確かゆーくんや汐ちゃんが言ってた……Nエクス、だっけ……?)
 Nエクスとは、要するに《ボルバルザーク・エクス》と《サイバー・N・ワールド》の組み合わせだ。
 コンボと言えるようなコンボではなく、《ボルバルザーク・エクス》による豊富なマナの再復活と、《サイバー・N・ワールド》による手札補充で、大量のアドバンテージを叩き出そうという、かなり強引な荒業だ。
 しかし、そこから発生するアドバンテージは膨大なもの。
 そしてその膨大なアドバンテージによって現れる存在は、強大である。
 あらゆる生命の源を支配し、大いなる自然の力の象徴とも言える、恵みの化身。
 それは、すべての命に必要な活力を与える——神話の力だ。
「豊穣の女神よ! 世界の命の源泉たる者よ! 大いなる恵みを、生の活力を、我らが大地に流し込め!」
 大地が鳴動する。
 二体の《青銅の鎧》と、《ボルバルザーク・エクス》がその中に飲み込まれた。
 再び、大地が鳴動する。
 一度目の地響きは、儀式。
 二度目の地響きは、誕生。
 大地を讃頌する獣人と、偉大なる自然の力を大地に取り込み、その神話は顕現する。
「神々よ、調和せよ! 進化MV!」
 大自然に生を受けた命に、大地の力を注ぐべく——

「——《豊穣神話 グランズ・ケレス》!」