二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.633 )
日時: 2015/06/10 03:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: rGbn2kVL)

豊穣神話 グランズ・ケレス 自然文明 (7)
進化クリーチャー:メソロギィ/ビーストフォーク/ジャイアント 17000+
進化MV—自分のビーストフォーク1体と自然のクリーチャー2体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD4:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーの種族を数える。その後、山札またはマナゾーンから、その数以下のコストの自然クリーチャーを1体、バトルゾーンに出してもよい。山札から出した場合、山札をシャッフルする。
CD9:自分の自然クリーチャーをバトルゾーンに出した時、山札の上から2枚までマナゾーンに置く。その後、マナゾーンからカードを2枚まで手札に加える。
CD11:自分のクリーチャーはすべてパワー+3000される。それが自然クリーチャーであればシールドをさらに1枚ブレイクし、相手を攻撃しブロックされた時、相手のシールドを1枚ブレイクする。
T・ブレイカー



 大地の中から姿を現したのは、老人のような姿のクリーチャー。
 全身を走るように皺だらけの身体をしているが、老衰したような気配は微塵も見られず、むしろ生命感、活力に満ち溢れている。ここからでも、凄まじい覇気を感じる。
 彼女は襤褸のような古びた外套を、大木のような腕、足、胴体を隠すようにして纏い、杖の代わりとして、身の丈以上はあるだろう巨大な槌を握っていた。
「ちょーろー……」
『……プロセルピナ』
 ケレス——《豊穣神話 グランズ・ケレス》は、重苦しい静かな声で、言った。
『こうなった以上、儂は力ずくでお主を奪い取る。お主がいくら我儘を垂れようと、儂はもう——聞かぬぞ』
 覚悟を決めい、と《ケレス》はどこか窘めるような口調で、プロセルピナに宣告する。
 そしてかの神話は、大いなる大地の力を解き放つ。
「……《ケレス》の能力発動、CD4」
 すると、《ケレス》の身体が淡く発光し始めた。
「俺の場にある種族は、メソロギィ、ビーストフォーク、ジャイアントの三つ……よって、マナからコスト3以下のクリーチャーを場に出す。出て来い《青銅の鎧》」
 《ケレス》の力によって、マナゾーンから《青銅の鎧》が現れる。『神話カード』の力によって呼び出されたにしては貧弱なクリーチャーだが、《ケレス》の真価はここから発揮される。
「続けて、CD9を発動する」
 刹那。
 《ケレス》は大槌を振りかぶり、それを大地へと振り下ろした。
 まるで、土壌を耕すように。
 いや、事実、その一振りによって、男のマナはさらに肥えた。
「《ケレス》のCD9によって、俺の自然クリーチャーが場に出るたびに、山札の上から二枚をマナへ送る。《ケレス》自身と《青銅の鎧》がバトルゾーンに出たことで4マナ、《青銅の鎧》の能力と合わせ、合計五枚のマナを追加する」
 過剰とも言えるマナブースト。既に男のマナは十分すぎるほどにある。これ以上マナを増やしてどうするというのだろうか。
 普通なら、そんな疑問が浮かぶだろう。
 ただし、本当にマナを増やすだけなら、だが。
 耕された土壌は十分に肥えた。肥沃の大地には、新たな命が芽吹く。
 そして、実った作物を収穫するのだ。
「さらに呼び出した自然クリーチャー一体につき、マナゾーンからカードを二枚回収する。二体呼び出したから、四枚回収だ」
「う……マナ回収……」
 マナと手札の関係性は、切っても切れない関係だ。
 よく言われることだが、マナがあっても手札が枯れていれば意味がない、手札が多くてもマナが肥えていなければカードは使えない。
 ゆえにマナを増やすことと手札を増やすことは、同じくらい大事で、両方一緒に行使することで初めて、幅広いプレイングが可能となる。
 《ケレス》の能力は、それを如実に体現していた。クリーチャーを出すことがマナの増強に繋がり、同時に後続を呼び出すための手札を、マナ回収という形で補充する。
 これが《豊穣神話》の名を与えられた、《ケレス》の力。大地に恵みをもたらすことで土壌を肥やし、新たな生命を解き放つことで作物を収穫する。マナという肥やしで、命を生み出す豊穣の力。
 ゆえにかの神話は、《豊穣神話》と呼ばれるのだ。
「回収するカードは、《フェアリー・ギフト》《牙英雄 オトマ=クット》《光牙忍ハヤブサマル》《永遠のリュウセイ・カイザー》だ」
 男はマナを増やしつつ、手札を手に入れる。既になくなっていたマナも《ケレス》で新しく生み出しつつ、その増えたマナを使い、さらなるクリーチャーを呼び出す。
「呪文《フェアリー・ギフト》。次に召喚するクリーチャーのコストを3軽減し、4マナをタップ。《牙英雄 オトマ=クット》を召喚! マナ武装7、発動!」



牙英雄 オトマ=クット 自然文明 (7)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 8000
マナ武装 7:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに自然のカードが7枚以上あれば、マナゾーンのカードを7枚までアンタップする。
W・ブレイカー



 原生林を生み出す英雄《オトマ=クット》。
 その能力は、自然のマナを身に纏うことで発動するマナ武装。本来ならば単色構築にしなければ発動の難しい能力だが、男のマナは大量にあり、7枚くらいなら多色絡みで十分足りている。条件はクリアされているのだ。
 それにより、男のマナが三度起き上がった
「マナを7枚アンタップだ」
「また、マナがアンタップ……!?」
 《ボルバルザーク・エクス》よりも制約がきついが、しかし男が再びマナを使えるようになった事実に変わりはない。
 《ケレス》の能力は後続を呼び出すことを支援すること。当然ながら、マナの再復活は、その支援をさらに後押しする。
「《オトマ=クット》が出たことで、《ケレス》の能力が再び発動する! マナを増やし、マナゾーンから《超次元フェアリー・ホール》《威牙の幻ハンゾウ》を回収だ。そして呪文《超次元フェアリー・ホール》! 《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンに!」
 超次元の門が開かれ、今度はサイキック・クリーチャーが呼び出された。
「《プリンプリン》の能力で《ヴェルヘルム》を指定。そいつの攻撃とブロックを禁じる。そして《プリンプリン》は自然文明も持つサイキック・クリーチャーだ」
「っ、てことは……」
「《ケレス》の能力によりマナを追加し、マナゾーンから《霞み妖精ジャスミン》《光牙王機ゼロカゲ》を回収する」
 当然ながら《ケレス》の能力はサイキック・クリーチャーにも適用される。
 《プリンプリン》を呼び出した男は、このみの《ヴィルヘルム》をロックしつつ、《ケレス》の能力を誘発させ、まだマナと手札を増やしていく。
「《ジャスミン》を召喚。即破壊し、マナを追加! 《ケレス》の能力発動! マナを二枚追加し、マナゾーンからカードを回収!」
 《ケレス》と組み合わせることで、マナ数を実質的に一枚増やせる《ジャスミン》によって、男のマナは残り8マナ。
 男は最後にそのマナをすべて支払い、このみを討つ準備を完了させる。
「これで締めだ。《永遠のリュウセイ・カイザー》を召喚!」
 最後に現れたのは、自軍をすべてスピードアタッカーにする、《永遠のリュウセイ・カイザー》。
 自然のクリーチャーではないので、マナが増えることも、マナ回収されることもないが、今まで展開してきたクリーチャーが、これでこのターンに攻撃可能となった。
 このみのシールドは残り二枚。手札に《ハヤブサマル》を握ってはいるものの、《ヴィルヘルム》がロックされてしまい、《リュウセイ・カイザー》を返り討ちにすることすらできない。
「さあ行け……! 《グランズ・ケレス》で攻撃!」
 刹那、《ケレス》の筋肉が膨張する。
 ボロボロの外套は破け、丸太どころか巨木のような身体が剥き出しになる。そして筋骨隆々な巨神の姿が、そこにはあった。
 そして《ケレス》は、杖の代わりにしていた大槌を、振りかぶる。
 老木の如く大地を肥やし、知識を与えていた姿はそこにはなく、そこにあるのは、大いなる恵みによって偉大なる活力を注がれた、力漲る武神の姿であった。
『覚悟せよ、萌芽の娘。そして——プロセルピナ!』
 叱咤のような怒号が轟き、《ケレス》の大槌が、このみへと振り下ろされた。
「まずい……っ! ニンジャ・ストライク! 《ハヤブサマル》を召喚! ブロックだよ!」
「無駄だ! 《ケレス》のCD11によって、俺の自然クリーチャーは相手のブロックを貫通する!」
 《ハヤブサマル》が《ケレス》の大槌を受け止めようとするが、その槌に触れた瞬間、跡形もなくバラバラに砕け散ってしまった。
 どころか、砕かれたパーツの一部がこのみへと飛んでいき、そのシールドを突き抜ける。
「いた……っ」
 飛ばされたパーツが頬を切る。それだけではない。粉砕されたシールドの破片までもが、このみに襲い掛かる。
「う……っ……!」
 服を貫き、皮が破れ、肉が切れ、血が飛沫く。
 髪が舞う。見れば、髪紐も千切れてしまっていた。
 豊穣神の一撃は、人ひとりにはとても大きい、大きすぎる一撃だった。《ハヤブサマル》を盾にしても、砕かれたのが一枚であったとしても、偉大なる大地から恩恵を受けた豊穣神の鉄槌は、たった一撃で、このみの小さくも実った身体を蹂躙する。
 しなやかな枝を剪定するように、腕を。
 大地を掴んだ根を千切るように、脚を。
 身を支える幹を切り倒すように、胴を。
 熟れた果実に刃を入れるように、胸を。
 萌える花々を散らすかのように、頭を。
 自らの土地にない異端の植物を抹消するかの如く、《豊穣神話》の鉄槌は、抉るように彼女の身体に傷を入れる。
「い、痛い……っ」
「まだ終わりじゃねぇよ。《オトマ=クット》で、最後のシールドをブレイクだ!」
 このみのシールドは、まだ残っている。《オトマ=クット》がその牙を剥き、彼女の盾を食い千切った。
 とても、荒々しく。暴君のような、凶暴な龍として、彼女の最後のシールドを、破壊する。
 ——しかし、
「……っ! S・トリガー、発動! 《グローバル・ナビゲーション》!」
「ちぃ……っ」
 砕かれた最後のシールドは、このみの身体に届く前に、光の束となり、収束した。
 その光は、獣の遠吠えのような鼓笛の音となり、突風を巻き起こす。
 その突風に飲み込まれた《リュウセイ・カイザー》は土へと還り、逆にこのみのマナゾーンからは、遠吠えに呼応した仲間が呼び寄せられる。
「アンタップ状態の《リュウセイ・カイザー》をマナゾーンへ! そして、あたしのマナゾーンから、《レヴィヤ・ターン》を手札に!」
 《リュウセイ・カイザー》がいなくなったことで、男のクリーチャーはスピードアタッカーを失い、このターンの攻撃ができなくなった。
「……ターン終了だ」
 男は静かにターンを追える。
 とりあえずこのターンは凌げた。だが、それだけだ。
 このみの場にいるのは、《エコ・アイニー》《エッグザウラー》、攻撃できない《ショパン》と、《プリンプリン》にロックされた《ヴィルヘルム》。
 男のシールドは三枚。加えて、手札には《ハヤブサマル》《ハンゾウ》《ゼロカゲ》と、多数のシノビを握っている。
 《ケレス》の能力はクリーチャーを展開し、強化するだけではない。
 シノビを回収するという形で、防御も固めている。攻防一体、とまでは行かないまでも、その力は防御にも応用できるものではあった。
「ど、どうしよう……」
 いくら考えても突破方が分からない。夕陽や、汐や、姫乃、流や——他の仲間なら、こういう状況からでも、逆転の一手を考え抜くことができるのかもしれない。
 しかし自分は、彼らほど頭がよくない。いつもいつも直感でプレイしているだけに、直感が働かなくなると、途端にどうすればいいのか分からなくなる。
 なにが正解なのか。考えても分からない。
 やがてこのみは、思考することを、なにかを思うことを止めそうになる。
 彼女が本当に、なにも感じなくなる——その時だ。
 花開くかのように、一筋の陽光のような希望が差した。

「——このみー!」