二次創作小説(紙ほか)
- デュエル・マスターズ Mythology オリキャラ募集 ( No.73 )
- 日時: 2013/07/27 08:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
「《バルガザルムス》でシールドをブレイク! その際に、デッキの一番上を捲って……ドラゴンじゃないからマナに!」
「《ベルリン》でブロックだ」
「まだだよ! 《緑神龍グレガリゴン》と《緑神龍ガラギャガス》でWブレイク! さらに《バルガザルムス》の効果でマナチャージと、ドラゴンを手札に!」
「二体の《パーフェクト・マドンナ》でブロック」
ことごとく止められてしまう姫乃の攻撃。
現在、どちらもシールドは五枚。姫乃の場には二体の《コッコ・ギルピア》と《エコ・アイニー》。それと《緑神龍バルガザルムス》、全く同じ能力を持つ《グレガリゴン》に《ガラギャガス》といったように、かなり多くクリーチャーを展開できている。
対する深の場は《光器クシナダ》《光器ララバイ》に、《パーフェクト・マドンナ》が二体。かなり守りを固めている。
「私のターン。《地獄門デス・ゲート》を発動、《コッコ・ギルピア》を破壊し、墓地からコスト2以下のクリーチャー……《墓守の鐘ベルリン》を復活」
「う、うぅ……」
地獄の門より出でし悪魔の手に引きずり込まれる《コッコ・ギルピア》。その《ギルピア》を生贄に、墓地から《ベルリン》が復活する。
「さらに《ララバイ》の効果発動。光のハンターをバトルゾーンに出すたびに、相手クリーチャーをタップする。二体目の《ギルピア》をタップ、そして《クシナダ》で攻撃だ」
「あ……」
《クシナダ》の光線に貫かれる《ギルピア》。緑の鳥は、墓地へと埋葬された。
「ごめん、《ギルピア》……わたしのターン!」
反撃したいが、手札も尽きてきた姫乃。だがここで、最も欲するカードを引けた。
「《雷鳴の守護者ミスト・リエス》召喚! これでクリーチャーが場に出るたびに、わたしはカードを引ける。《バルガザルムス》で《クシナダ》を攻撃! 《グレガリゴン》《ガラギャガス》でシールドをW・ブレイク!」
「……《バルガザルムス》と《グレガリゴン》の攻撃はブロック。守れ《パーフェクト・マドンナ》」
マナチャージと手札補充を行いつつ、シールドを割る《ガラギャガス》。しかし、
「S・トリガー発動《デーモン・ハンド》。《ミスト・リエス》を破壊したいところだが、そろそろ攻撃手を潰したい。《ガラギャガス》を破壊だ」
悪魔の手に捕縛された《ガラギャガス》は、一瞬で地獄の底へと葬り去られてしまう。
「私のターン。私も《ミスト・リエス》を召喚。さらに《ベルリン》を召喚。《ララバイ》の効果でお前の《ミスト・リエス》をタップ」
「えっ、そんな……」
「《ベルリン》で攻撃《ミスト・リエス》を破壊だ」
出て来て早々、墓地へと向かう《ミスト・リエス》。だがある程度、手札は潤った。
深のデッキはブロッカーばかり。それも起動が遅い。今のうちに、攻めるだけ攻めておきたいところだ。
「《光神龍セブンス》《緑神龍ジオグラバニス》を召喚! 《バルガザルムス》と《グレガリゴン》でシールドをブレイク!」
「無駄だ《パーフェクト・マドンナ》でブロック」
だがそれでも、《バルガザルムス》の効果でマナチャージと手札補充ができる。デッキも大分減ってきた、マナも十分なので、これ以上は必要ないかもしれないが。
「……分からんな」
深は次のカードをドローしたところで、呟く。
「昔のお前は、もっと臆病だった。内気で奥手で、従順なただの少女だったはずだ。なのに、なぜ今、こうして私の前に立ちはだかっている?」
「言ったはずです。わたしは、友達と約束している、その約束を果たすためです」
「違う、それは建前だろう。他人の事情のみで動く人間などいない。選択権があるのなら、最終的に自分に利益のあることのみをするのが人間だ。その利益が、実利的なものであるかどうかは置いておくとしてな。それともお前は、友人と果たす約束に、命を賭けるほどの重要性があると思っているのか?」
「…………」
黙り込む姫乃。正直、命を賭けた戦いなんて言われてもピンとこない。しかし深の言うように、夕陽たちと交わした約束だけが、自分の行動原理ではない。
はっきりとその感情はあるが、言葉にするのは難しい。それでも、なんとか、独り言のように言葉を紡ぎ出す。
「わたしは……きっかけにのっかっただけ」
「なに?」
「わたしだって、貧しい暮らしのままでいいだなんて思ってない。お腹は減るし、ご飯は味気ないし、ぐっすり眠れないし、お風呂も二日に一回しか入れないし、トレイに行くのもためらうし、楽しいことはないし……いいことなんて、なにひとつない。こんな生活は嫌だ、って何度も思ったよ。でもその現実は変えられないし、変えられるとも思わなかった」
表面ではそうと悟られないようにしていたが、それはすべて偽りの姿。見た目や言動以上に姫乃は強い少女だが、それ以上に弱い少女でもあった。
「おとうさんもおかあさんも、わたしのことなんて見てない。三人家族なのに、あの家にいるのはいつもわたし一人。寂しいし、辛いし、悲しいかった。もしかしたらずっとこのままなのかもしれないって思って、絶望すらした」
けど、と姫乃は続け、
「最初はただの偶然、次はちょっと必然、その次は……分かんないけど、空城くんは、わたしにきっかけをくれた。空城くん自身にはそんなつもりはなかったみたいだし、偶発的に発生したきっかけで、ただの利害の一致、みたいなものだけど……それでも、変えられるきっかけには変わりない」
それが今だよ、と締めくくる。
「……うん、そうだよ。わたしは今のままでいいだなんて思わない。あなたを倒して、空城くんたちのデッキを取り返して、カードの力も解いて、そして……おとうさんやおかあさんの目を覚まさせる!」
力強く叫ぶ姫乃。それとは対照的に、深の反応は冷めていた。
「なにが、目を覚まさせるだ……彼らは元から、私の信者だ。覚めるもなにもない」
「それでも! なにかは変わるはずだよ! だから、わたしが変えなくちゃダメなんだよ!」
「……はぁ」
諦めたように息を吐く深。
「お前も、結局は私利私欲のために動く人間の一人というわけか。良いだろう、ならば昔、お前に教え忘れたもの——絶望を、ここで教えるとしよう。呪文《ヘブンズ・ゲート》!」
「っ、それは……!」
《ヘブンズ・ゲート》。手札から光のブロッカーを二体、タダで場に出す呪文。光のコントロール系デッキ、それも多くブロッカーを詰め込んだデッキなら、入っていてもおかしくはない。
「闇に身を堕とした戦乙女よ! 破滅の時間だ。数多の敵を葬るべく、戦場へと駆れ! 《破滅の女神ジャンヌ・ダルク》!」
破滅の女神ジャンヌ・ダルク 光/闇文明 (7)
クリーチャー:メカ・デル・ソル/デーモン・コマンド/ハンター 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分の光のハンター1体につき、相手は自身の手札を1枚選んで捨てる。
「……わたしの使ってた《ジャンヌ》とは違うんだね」
そう呟く姫乃。安心したような、少し寂しいような、相反する二つの感情が入り乱れる。
だがそんな思いに浸っているのも束の間、すぐに《ジャンヌ・ダルク》の“破滅の時間”が訪れる。
「《ジャンヌ・ダルク》の効果により、場の光のハンターの数だけお前の手札を破壊する! 私の場には二体の《ジャンヌ》と二体の《ベルリン》、そして《ララバイ》がいる。《ジャンヌ》は順番に出るため、合計で九枚の手札を墓地へ!」
普通、九枚ものハンデスは手札をすべて捨てろと言うようなもの。そして実際、わりと溜まっていた姫乃の手札は一瞬で全て消し飛んだ。
しかし、
「まだ! 手札から捨てられた時《無頼聖者サンフィスト》が場に出る!」
姫乃の手札から飛び出したのは、黄色いアーマーを装着した二体の獣人。
無頼聖者サンフィスト 光/自然文明 (3)
クリーチャー:ビーストフォーク/イニシエート 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
相手のターン中、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。
「ふん、今更そんな雑魚が二体出て来たところで無意味だ。二体の《ジャンヌ》が現れたことにより、《ララバイ》の効果で《バルガザルムス》と《ジオグラバニス》をタップ。《ララバイ》で《バルガザルムス》に攻撃!」
「《サンフィスト》でブロック!」
《ララバイ》はハンティング能力を持つクリーチャー。深の場には《ララバイ》自身を含めた五体のハンターがいるため、パワーは7500。《ジャンヌ・ダルク》に次ぐパワーだ。
(光のハンターが出るたびに相手クリーチャーをタップする《ララバイ》、思ったより厄介だよ……)
分かっていたことだが、深の強さを改めて認識する姫乃。
その強さに些かの戦慄を覚えながら、彼女のターンが訪れる。