二次創作小説(紙ほか)

デュエル・マスターズ Mythology オリキャラ募集 ( No.74 )
日時: 2015/08/16 04:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

「これなら……呪文《リーフストーム・トラップ》! 《エコ・アイニー》をマナに送って、《光器ララバイ》もマナゾーンに!」
「ほう、そう来たか。光文明が柱になっているゆえに除去カードが比較的少なめなこのデッキはタップキルで相手を潰すのが基本。パワーの高い《ジャンヌ・ダルク》ではなく、タップキルの起点である《ララバイ》を選んだのは正解だ。私の昔の教えをまだ覚えていたか。そういう子供には好感が持てる」
「好感なんて知らない。ターンエンド」
「つれない子供には好感が持てんな、今のでプラマイゼロだ」
 軽く肩を竦め、深のターン。
「……昔の、従順だった頃のお前は、今のお前よりは好感が持てたな」
「知らない。わたしだって、昔のままじゃない」
「そのようだ。実際、私もあの時を境に変わったのだしな。たった一枚のカードを手にするだけで、大革命が起こったかのように変わってしまったよ。きっかけが小さいわりに、結果は壮大だ」
「……?」
 首を傾げる姫乃。深が何を言いたいのかが理解できない。いつも、誰に対しても妙に難しく感じる言葉を使う深ではあるが、今の発言は言葉が難しいというより、言葉そのものをぼかしているように感じられる。
 実際、深は言葉をぼかしていた。ただそのぼかしは、すぐに取り払われる。
「見せてやろう、光ヶ丘姫乃。お前の家庭を変えた私、そんな私を変えた、大いなる力を!」
 深は三枚のカードを重ねる。《墓守の鐘ベルリン》《破滅の女神ジャンヌ・ダルク》そして《光器クシナダ》。
 刹那、場が静寂に包まれる
(え……?)
 無論、実際に音が消失したわけではない、そんな気がするというだけだ。だがその感覚はあまりにもリアルで、姫乃にさらなる戦慄を教える。
「慈しめ、美の完成形。愛の抱擁と無欠の身で、あらゆる破滅を包み込め——神々よ、調和せよ。進化MV!」
 静寂の世界に一陣の風が吹く。キラキラと光る風、見えないのに、とても美しいと感じる風。
 目の間では、その風の源が、渦となり、三体のクリーチャーを包み込んでいる。やがて風はその勢いを殺し、停止する。

「《慈愛神話 テンプル・ヴィーナス》!」

 現れたのは、聖母のような女性型のクリーチャー。慈愛に満ちた微笑みを称えている。非常に美しい、滑らかな裸体に純白のヴェールを纏っており、その肌はどこか彫像のような硬い質感をも与える。
 その容姿を一言で表すのなら、女神像。金色の女神像が、純白の薄布を纏っている。



慈愛神話 テンプル・ヴィーナス 光文明 (5)
進化クリーチャー:メソロギィ/メカ・デル・ソル/アポロニア・ドラゴン 12000
進化MV—自分のメカ・デル・ソル1体と光のクリーチャー2体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD4:自分の他の光のクリーチャーはすべてブロッカーを得る。
CD8:自分のターンの終わり、または相手のカードの効果によって自分のブロッカーを持つクリーチャーがタップされた時、バトルゾーンにある自分の光のクリーチャーをすべてアンタップしてもよい。
CD10:このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、かわりに自分の「ブロッカー」を持つクリーチャーを2体タップしてもよい。そうした場合、このクリーチャーはバトルゾーンを離れない。
T・ブレイカー



「……きれい」
 思わずそう呟いてしまう姫乃。だがそう言ってしまうのも無理はない。それほどの美が、《ヴィーナス》にはあるのだ。
「そうだろう。これが、私たちの象徴、我々【慈愛光神教】そのものだ!」
 そして声高らかに言い放つ深。
 【慈愛光神教】の象徴、シンボル。過去は実利と救済の双方を求める集団だった。だが今は、ただ貪欲に『神話カード』を蒐集する組織となってしまったと思っていたが、もしかしたら一概にそうとも言い切れないのかもしれないと、《ヴィーナス》を見て思った。
(……いや、もしそうでも、わたしのするべきことは変わらない。変わるため、変えるためには、思いだけは変えちゃいけない……!)
 何度も揺らぎそうになる姫乃の心、しかし揺れるたびにその決意をまた固め直していく。
「《ヴィーナス》でT・ブレイク!」
「あ……《サンフィスト》でブロック!」
 少々反応が遅れたが、《ヴィーナス》の光の波動を、《サンフィスト》が体を張って防ぐ。
「ターンエンド。そしてこの時、《ヴィーナス》の効果が発動する」
 深の言葉の直後、攻撃してタップ状態だった《ヴィーナス》がアンタップされた。
「……っ」
「《ヴィーナス》はターンの終わりと、相手のカード効果で自分のブロッカーがタップされた時、光のクリーチャーを好きな数アンタップできる」
「……防御に抜かりはない、ってことかな」
 ややこしいテキストだが、要するに《ヴィーナス》がいる限り、深のターンの終わりに光のクリーチャーはアンタップされる。さらにこちらが深のブロッカーをタップしても、光のクリーチャーがアンタップされるということだ。
「てことは、タップ系の呪文は使えないんだ……わたしのターン! 《口寄の化身》を召喚して二枚ドロー!」
 自分の場にある種族の数だけドロー出来る《口寄の化身》で、逆転の一手につなげようとする姫乃。
「さらに呪文《父なる大地》を発動!」


父なる大地 自然文明 (3)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。その後、相手のマナゾーンから進化ではないクリーチャーを1体選び、相手はこれをバトルゾーンに出す。


「《ヴィーナス》をマナへ!」
「……残念だが、それは叶わないな」
 《ヴィーナス》の身体に乾いた樹木が巻きつく。樹木は少しずつ《ヴィーナス》を大地へと取り込んでいくが、突如《ヴィーナス》が輝き、その光で樹木を弾き飛ばした。
「えっ? な、なんで……?」
「CD12……《ヴィーナス》は場を離れる時、自分の光のクリーチャーかブロッカーを二体タップすることで、場に留まる。《ベルリン》と《ミスト・リエス》をタップだ。さあ、お前はどのクリーチャーを私の場に出す?」
「う……じゃあ、《邪脚護聖ブレイガー》を場に出すよ……」
 深のマナは、序盤に重いクリーチャーをチャージしていたために引っ張り出したくないクリーチャーばかり。後は呪文くらいで、一番実害のなさそうなのが《ブレイガー》だけだった。
「ターンエンド……」
 このターンの行動も無意味に終わり、深のターン。そこでさらなる脅威が姫乃に襲い掛かる。
「呪文《クイック・スパーク》を発動、コスト6以下のクリーチャーをすべてタップ! さらに《魔光王機デ・バウラ伯》で《ヘブンズ・ゲート》を回収だ!」
「……!」
 眩い閃光が放たれ、姫乃の場の《ジオグラバニス》を除く全クリーチャーがタップされてしまった。これはこれで、かなりピンチだ。
「《ヴィーナス》で《セブンス》を、《ジャンヌ》で《バルガ・ザルムス》を攻撃!」
「っ、《セブンス》! 《バルガザルムス》!」
 ドラゴンをブロッカーにする《光神龍セブンス》と手札を補給できる《緑神龍バルガザルムス》を同時に破壊される姫乃。手札もクリーチャーも失い、どんどんアドバンテージの差を広げられる。
「ターンエンド。そしてこのターンの終わりに、私にクリーチャーはすべてアンタップされる」
 攻撃後の隙もなく、すぐさま防御態勢を整える《ヴィーナス》とブロッカー軍団。全くつけこめない。
「わたしの、ターン……」
 力なくカードを引く姫乃。この状況を打破するカードはこのデッキに入っていただろうか、少なくとも一枚二枚のカードで何とかできるとは到底思えない。
「……ターン、終了」
 そして事実、姫乃が引いたカードではどうしようもない。何もせずにターンを終える。
「私のターン……遂に万策尽きたか。しかし、私に《ヴィーナス》を出させ、ここまで粘ったことは評価しよう。お前は私に負けたところで失うものはなにもない。恐れるな、お前はただ、静かに《ヴィーナス》の力を、その身で感じればいいだけだ」
 静かに告げられる、深の言葉。それは神の啓示のようであったが、神は神でも死神。死神のお告げは、死の宣告に他ならない。
 その宣告が今、現実となって姫乃に刃を向ける。