二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.81 )
- 日時: 2013/08/06 17:42
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
「——!」
刹那。
こちらに向かっていた炎球が雲散霧消した。
「っ、助かった、のか……?」
とりあえず自分の五体が満足であることに安堵する夕陽。締め上げられていた腕も解放されている。クロも無事だ。
まずは自分たちの確認。続けて、相手の確認。
「……! 《戦攻竜騎ドルボラン》!」
まず、背後にいたはずの巨漢の男。彼は大砲などのあらゆる重火器を内蔵した球形のドラゴンへと変貌していた。
「んでこっちは、《金属器の精獣 カーリ・ガネージャー》か……!」
民族的に装飾された女子。彼女は青い体、いくつもの目玉をつけた象の下半身に、何本もの腕がある女性の上半身という魔人となっている。
「……霊崎、下がってて。事情は後で説明する。だからとりあえずここは、僕がなんとか——」
とデッキを取り出しながら前に出る夕陽。しかしクロはそんな夕陽を押し退ける。
「ってちょっと、霊崎?」
「……相手は二体、こっちは二人。同時に戦う方が効率的」
「いや、そうじゃなくて……とにかく危険だ、下がって」
クリーチャーと戦うなんて事態は夕陽も初めてだが、対人のデュエルでも過酷なのだ。一般人であるクロにやらせるわけにはいかない。
しかしクロも頑なで、退こうとしない。
「危険だ、ここは僕に任せて」
「大丈夫。最低限自分の身くらい自分で守れる」
といった具合に押し問答が続いたが、最終的には夕陽が折れた。
「……! 分かったよ! でも、無理しないでね。特にシールドはできるだけ守るんだ、割られるとプレイヤーもダメージを受けるから」
最後にそれだけ言っておく。クロは首肯し、ガネージャーの方へと向かう。
そして夕陽は、ドルボランと向き合った。ドルボランは意味もなく咆哮している。
『グオォォォゥ! ちょこまかと逃げ回りやがって! 最初からこうして叩き潰せばよかった!』
「喋れるのかこいつ……」
見れば、夕陽の目の前にはいつもと同じ五枚のシールドが展開されている。
「クリーチャーとデュエマって、なんか妙な気分だな……」
『グオォォォゥ!』
「まともに話も通じなさそうだし、なんか面倒なことになってきたけど」
ふぅ、と軽く息を吐き、夕陽は五枚のカードを手にする。
「カードゲームに持ち込めば、こっちのものだ」
「…………」
クロは目の前に展開される五枚のシールド、目の前に浮かぶ五枚の手札、すぐ横に積まれる山札を順番に見つめ、これから自分がなにをすべきかを認識した。
『やれやれ、最終的にはこういう形に持ってくるつもりでしたが、とんだ邪魔が入ってしまいましたね』
表情を変えず、睨むようなガネージャーを一瞥するクロ。
『標的はあの少年だけだというのに、素直に引き下がっていればよかったものを。障害となるものは排除するのが我々、貴女も私に排除されるのです!』
「できるのなら」
そして、クロは目の前の五枚のカードに、手をかける。
『グオォォォゥ! 《アックス・ドラゴン》を召喚! 《黒神龍ジャグラヴィーン》を破壊だ!』
「ブロッカーが……!」
腕に戦斧を装着した龍が《ジャグラヴィーン》の白骨の体を断ち切る。
「でも、《ジャグラヴィーン》がやられたことで、墓地からこいつが復活する! 出て来い《黒神龍グールジェネレイド》!」
黒神龍グールジェネレイド 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 6000
自分の《黒神龍グールジェネレイド》以外のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーをバトルゾーンに戻してもよい。
W・ブレイカー
現在、夕陽のシールドは五枚。場には今しがた召喚した《グールジェネレイド》と《コッコ・ルピア》のみ。
対するドルボランは、《コッコ・ルピア》《フレイムバーン・ドラゴン》に《アックス・ドラゴン》と、ドラゴンを展開してきている。
同じドラゴンを並べるデッキでこうも差が出るのは、ドルボランの戦術にあった。
(召喚時の効果でこっちのファイアー・バードが焼かれたからな……ドラゴンの癖に防御的だ)
加えて言うなら、夕陽のデッキは墓地を介してドラゴンを復活させるため、どうしてもワンテンポ遅れてしまう。それも手数が違う要因の一つだろう。
『《フレイムバーン・ドラゴン》でシールドブレイク!』
「くっ……S・トリガー発動《デーモン・ハンド》! 《アックス・ドラゴン》を破壊!」
とりあえずW・ブレイカーの《アックス・ドラゴン》を破壊して勢いを削ぐ。だがドルボランはそれ以上の攻撃をせずターンを終えた。
「僕のターン、《魔龍バベルギヌス》召喚!」
魔龍バベルギヌス 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/グランド・デビル 1000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、プレイヤーをひとり選ぶ。そのプレイヤーのクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、そのプレイヤーの墓地から、《魔龍バベルギヌス》以外の進化ではないクリーチャーを1体選び、バトルゾーンに出す。
《魔龍バベルギヌス》。クリーチャー一体と引き換えに、どんなクリーチャーでも蘇らせることのできる魔界の死龍。
「効果で《バベルギヌス》を破壊! そして《偽りの王 ヴォルフガング》を復活!」
偽りの王(コードキング) ヴォルフガング 火文明 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー6000以下のクリーチャーを3体まで破壊する。
W・ブレイカー
一度に相手の中型以下のクリーチャーを三体も破壊できる《ヴォルフガング》で、次のターンからドルボランの場を殲滅する作戦に出た夕陽。
「さらに《グール》で《フレイムバーン》を攻撃!」
《グールジェネレイド》の漆黒の炎が、《フレイムバーン》を焼きつくし、抹消する。
「ターンエンド!」
『グオォォォゥ! 俺様のターン!』
ドルボランは自動的に行われるドローをし、再び咆哮する。
『グオォォォゥ! 行くぞ! 俺様を召喚!』
「遂に出やがった……!」
現れたのは、ドルボランこと《戦攻竜騎ドルボラン》だ。
戦攻竜騎ドルボラン 水/火文明 (8)
クリーチャー:アースイーター/アーマード・ドラゴン 6000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊する。その後、バトルゾーンにあるパワーが6000より大きい相手のクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻す。
W・ブレイカー
『そして俺様が場に出た時、俺様の効果が発動! グオォォォゥ! 《コッコ・ルピア》、俺様の炎に焼かれろ!』
続けて《ドルボラン》が内蔵している重火器が放たれ、《コッコ・ルピア》が破壊された。
『まだ終わらんぞ! 次は《ヴォルフガング》よ、消えろ!』
今度はどこからともなく水流が放たれ、《ヴォルフガング》が押し流されて手札へと戻ってくる。
「焼き鳥にされた……僕のターン!」
カードを引く夕陽。しかし《コッコ・ルピア》がやられてしまい、手札からドラゴンを召喚しにくくなってしまった。
「手札も切れてきたし、もう攻めるしかないか。《グール》でW・ブレイク!」
その際、夕陽は手札から一枚のカードを掲げる。
「そしてドラゴン・ゾンビが攻撃したことで、アタック・チャンス! 《邪龍秘伝ドラゴン・ボーン》発動、墓地からドラゴン・ゾンビを復活させる!」
あらかじめ何体かのドラゴンを墓地へ送っていたため、復活させるクリーチャーはそれなりにいる。この状況を一気に引っくり返せるようなクリーチャーこそいないが、手数を増やすなら十分だ。
「《偽りの名 ドレッド・ブラッド》!」
同時に《グールジェネレイド》は漆黒に燃える炎を放ち、ドルボランのシールドを二枚破壊する。
だが破壊したシールドが光の渦となり、ドルボランの正面で収縮していく。
「やば、S・トリガーか……!」
やってしまったと言うような顔をする夕陽。だが、踏んでしまったものは仕方ない。
『グォォォゥ! 発動《スパイラル・ゲート》!』
出て来たのは水文明を代表するS・トリガー《スパイラル・ゲート》。問答無用でクリーチャーを手札に戻す呪文だ。
「くっ、召喚したばかりの《ドレッド・ブラッド》か? いや、復活が容易な《グール》?」
どちらでも被害はそう変わらないが、どちらを戻されてしまうのか。
と、思ったが、
『《スパイラル・ゲート》、俺様を戻せ!』
「え?」
渦に巻き込まれ、手札へと帰っていったのは《ドルボラン》だった。
普通に考えて自分のクリーチャーを戻して手数を減らす行為はデメリットしかない。だが夕陽は、すぐにドルボランの意図に気付く。
『俺様のターン! グオォォォゥ! 再び俺様を召喚! 《グール》を破壊、《ドレッド・ブラッド》を手札に!』
「やっぱりか!」
わざと自らをバウンスすることで、召喚時の効果を使い回す作戦。豪快な割に意外と器用な立ち回りを見せるドルボランだった。
そしてこれで、夕陽の場には何もなくなってしまった。
「流石にやばいな、これは……!」