二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.82 )
日時: 2013/08/06 21:49
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 クロとガネージャーのデュエルは、現時点ではわりと拮抗していた。
 互いにシールドは五枚。クロの場には《光波の守護者テルス・ルース》と《曙の守護者パラ・オーレシス》。ガネージャーの場には《飛翔する啓示 ゼッツー》と《クゥリャン》。
 どうやらガネージャーのデッキは火・水の速攻寄りビートダウンデッキのようだが、序盤からブロッカーを並べ、クリーチャーをパンプアップさせてきたクロに対して攻められずにいる。
「私のターン、《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。効果で山札の上から三枚を墓地へ送り、墓地の《ミスト・リエス》を回収」
 またブロッカーを並べるクロ。しかも今回はそれだけでではなく、墓地肥やしとクリーチャー回収も同時にこなす。
 そんなクロを見て、ガネージャーは、
『プレイング自体はなかなかのようですが、デッキの構築に関してはいまいちですね。そのデッキは《シャングリラ》を切り札に据えたデッキでしょう、光と闇だけであの超重量級クリーチャーをどう出すつもりですか?』
 ガネージャーの視線の先には、マナに置かれた《「無情」の極み シャングリラ》があった。そしてガネージャーの言うように光と闇の構成では《シャングリラ》を出すことは難しい。
「……《シャングリラ》だけじゃないから」
 だがクロはつとめて冷静だ。ガネージャーの挑発にも動じない。
『……まあいいでしょう、私のターン』
 ここでガネージャーは、切れ気味の手札から動きを見せてきた。
『呪文《超次元エクストラ・ホール》! 効果で貴女の墓地のカードを二枚、山札に戻します!』
「…………」
 せっかく墓地を肥やしたのだが、それもすぐに妨害されてしまった。だがガネージャーの狙いは、そこではない。
 《エクストラ・ホール》によって発生した時空の歪が、だんだんと広がっていく。

『開け、超次元の門! 《時空の戦猫シンカイヤヌス!》』


時空の戦猫シンカイヤヌス 水文明 (4)
サイキック・クリーチャー:ブルー・モンスター 4000
M・ソウル
K・ソウル
このクリーチャーに覚醒した時、カードを1枚引く。
ループ覚醒—自分のターン中に火のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、このクリーチャーを《時空の戦猫ヤヌスグレンオー》のほうに裏返す。


『さらに残った1マナで《凶戦士ブレイズ・クロー》を召喚! この時《シンカイヤヌス》はループ覚醒する! 覚醒せよ《時空の戦猫ヤヌスグレンオー》!』


時空の戦猫ヤヌスグレンオー 火文明 (4)
サイキック・クリーチャー:フレイム・モンスター 4000+
M・ソウル
K・ソウル
このクリーチャーに覚醒した時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーは「パワーアタッカー+2000」と「スピードアタッカー」を得る。
ループ覚醒—自分のターン中に水のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、このクリーチャーを《時空の戦猫シンカイヤヌス》のほうに裏返す。


 出て来てすぐに覚醒する《シンカイヤヌス》、その力はまだ止まらない。
『《ヤヌスグレンオー》の効果発動! 《ゼッツー》にスピードアタッカーとパワーアタッカー+2000を与える! 行きなさい《ゼッツー》!』
 《ゼッツー》は二つ名の通り飛翔し、両翼の砲門から無数の光線を乱射する。その光線の勢いはかなりのものだ、ちょっとやそっとのブロッカーでは止められないだろう。
 そして事実、《ゼッツー》自身の持つパワーアタッカーと、《ヤヌスグレンオー》によって付加されたパワーアタッカーで、《ゼッツー》の攻撃時のパワーは6000。クロのブロッカーでは止められない。
 なので一枚くらいならと、いつもの感覚でその攻撃を通してしまったが、
「……っ」
 破砕されたシールドの破片がクロに降り注ぐ。彼女の着ていたブラウスには血が滲み、数本の銀髪が舞った。
「……こういうこと」
 夕陽が言っていた意味を、ここで理解するクロ。
 ともあれ、《ヤヌスグレンオー》の能力は厄介だ。だがそれでも隙は存在する。
「私のターン……《雷鳴の守護者ミスト・リエス》を召喚。《テルス・ルース》で《ゼッツー》を攻撃」
 パワーアタッカーは、基本的に殴り返しに弱い。なので返しのターンに《ゼッツー》を破壊し、殴り手を減らしておく。またパワーアップされれば面倒だ。
「ターンエンド」
『私のターンです』
 パワーアタッカーの弱点を突いて殴り返す。それ自体は常套手段で、悪い策ではないが、この場この状況では根本的な解決になっていない。
『《熱湯グレンニャー》を召喚、効果で一枚ドロー。水のクリーチャーを出したので《ヤヌスグレンオー》を《シンカイヤヌス》にループ覚醒! 効果でさらにもう一枚ドロー。《虚空の力 レールガン》を召喚しまたループ覚醒、《ヤヌスグレンオー》!』
 クリーチャーの展開と共に目まぐるしく姿を変える《時空の戦猫》。厄介なのは《ヤヌスグレンオー》の方だが、1ターンに火と水のクリーチャーを一体ずつ召喚するとなると手札も必要になるため、やはり二体で完結した能力を持つクリーチャーだ。
『《ヤヌスグレンオー》の能力で《レールガン》にスピードアタッカーとパワーアタッカーを追加! 《ブレイズ・クロー》と《レールガン》で攻撃です!』
「《ブレイズ・クロー》はブロック」
 《レールガン》の電磁砲を受け、クロの二枚目のシールドが吹き飛ぶ。だが《ブレイズ・クロー》だけは《ホネンビー》が止め、墓地へと埋めた。
 そしてクロのターン。クロには《ミスト・リエス》がいるため手札が切れることはまずないが、ガネージャーほどの突破力や瞬発力がないため、防戦一方となってしまっている。
「……呪文《ボーンおどり・チャージャー》で山札の上二枚を墓地へ。さらに二体目の《ホネンビー》を召喚して山札の上三枚を墓地へ送り、《ドクロンビー》を回収」
 墓地を肥やすだけ肥やし、ターンエンド、とクロは静かに手番を終えた。
『ブロッカーを並べるだけでは、私は倒せませんよ。《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚し、《パラ・オーレシス》を手札へ!』
 味方を強化し、クロの防御壁の核となっていた《パラ・オーレシス》が《テンサイ・ジャニット》の発生させる波に飲まれ、手札へと消えていく。
 しかも水のクリーチャーが登場したことで《シンカイヤヌス》にループ覚醒し手札を補充。そして、

『さあ、時は満ちました! 《グレンニャー》を私に進化!』


金属器の精獣(ジン) カーリ・ガネージャー 水/火文明 (4)
進化クリーチャー:マジカル・モンスター 6000
マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
進化—自分の水または火のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー


 ガネージャーこと《金属器の精獣 カーリ・ガネージャー》。彼女は《熱湯グレンニャー》を種にし、遂にその姿を現した。
『私が場に出た時、一枚ドロー! さらに《シンカイヤヌス》を《ヤヌスグレンオー》にループ覚醒し、《クゥリャン》を強化します! そして、攻撃です!』
 一気に攻撃手が増えた《ガネージャー》。彼女は《レールガン》と《クゥリャン》、そして《ヤヌスグレンオー》を引き連れ、特攻してくる。
「っ、二体の《ホネンビー》で《ガネージャー》と《レールガン》をブロック」
 《ガネージャー》の衝撃波と《レールガン》の電磁砲を《ホネンビー》が身を挺して防御。だが残る《クゥリャン》と《ヤヌスグレンオー》の攻撃は喰らった。これでクロのシールドは残り一枚。
「……私のターン」
 クロの場には《テルス・ルース》と《ミスト・リエス》の二体だけ。相手は複数並ぶ小型クリーチャーと、それを束ねる大型クリーチャー。総合的なアドバンテージは完全に向こうにある。
「とりあえず、流れを変えないと……《時空の守護者ジル・ワーカ》召喚。それと、私の墓地にはガーディアンが六体、3マナで《連隊の守護者ドクロンビー》を召喚」


連隊の守護者ドクロンビー 闇文明 (9)
クリーチャー:ガーディアン/アンノウン 12000
ブロッカー
自分の墓地にあるガーディアン1体につき、このクリーチャーの召喚コストは1少なくなる。ただし、コストは1より少なくならない。
T・ブレイカー


 普通に見れば特に効果のないただの大型クリーチャーだが、それでもこのサイズのクリーチャーが出て来れば十分な脅威だ。事実、《ガネージャー》ではどうしたって《ドクロンビー》を倒せない。
 だが、
『大型クリーチャーを出せばいいというものでもないでしょうに。私のターン、《弾丸透魂スケルハンター》を召喚してループ覚醒、一枚ドロー。さらに《ピーカプのドライバー》を召喚してループ覚醒、《ヤヌスグレンオー》の効果で《ピーカプのドライバー》をスピードアタッカーに』


ピーカプのドライバー 火文明 (2)
クリーチャー:ゼノパーツ 1000
このクリーチャーで攻撃するかわりに、タップして次のTT能力を使ってもよい。
TT—相手の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。


 現れたのは小さなドライバー。しかしその矮小な存在に、《ドクロンビー》は身を震わせる。
『《ピーカプのドライバー》で攻撃、の代わりにタップします。効果で《ドクロンビー》を破壊!』
 小さなドライバーが《ドクロンビー》を跡形もなく解体し、破壊してしまう。
 タップトリガーやアタックトリガーを持つクリーチャーは、場に出してから効果発動までタイムラグがあるものだが、《ガネージャー》は《ヤヌスグレンオー》でスピードアタッカーを付加し、その隙を消している。
 そして《ピーカプのドライバー》でこじ開けた穴に、《ガネージャー》は付け入るのだ。
『今度こそ葬って差し上げましょう!』
 《ガネージャー》が《レールガン》と《ヤヌスグレンオー》を引き連れて突っ込んで来た。
「《ジル・ワーカ》でブロック」
 《ガネージャー》の衝撃波を喰らってバラバラに吹っ飛ぶ《ジル・ワーカ》。しかしその力は死した時に発動する。
「破壊された時、《ジル・ワーカ》の効果発動、相手のクリーチャーを二体、タップする」
 《ジル・ワーカ》の二つの腕が分離し、《レールガン》と《ヤヌスグレンオー》の体を押さえつけた。
 なんとか凌ぎ切ったクロだが、状況はさほど好転していない。《ガネージャー》の場には多くのクリーチャーが並び、クロの場はボロボロ。
 《ガネージャー》が告げる終わりの時が、刻一刻と近づいていく——