二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.85 )
- 日時: 2013/08/07 08:11
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
見た目や口調が豪快なわりに、バウンス呪文で自身を戻し、召喚時の効果を使い回すという器用な立ち回りを見せる《ドルボラン》。残りのシールドは三枚、場には《コッコ・ルピア》が一体。
対する夕陽の場は、《ドルボラン》の効果により一掃されてしまい、クリーチャーはゼロ、前のターンで《コッコ・ルピア》が攻撃し、シールドも残り三枚だ。
「どんどんクリーチャーが消されて、《アポロン》を出すこともままならない。かなりやばいな……僕のターン!」
とにかく、なにか逆転に繋がるカードを引けないかと、そのドローに一縷の望みを託すが、
「っ、ダメだ……くそっ、呪文《プライマル・スクリーム》! 効果で山札の上四枚を墓地へ送り、墓地の《コッコ・ルピア》を回収! そのまま召喚!」
手札もなく、息切れしている夕陽ができるのはこれが精一杯。ターンを終え、《ドルボラン》が遂に牙を剥く。
『グオォォォゥ! 雑魚をいくら呼ぼうと、俺様の前では無意味! 《スクラッパー・ドラゴン》召喚!』
「なっ……! ガチンコ・ジャッジで勝てば《地獄スクラッパー》を撃つあいつかよ……!」
ただでさえフィールドアドバンテージを大きく削られているというのに、これ以上クリーチャーを除去されてはたまったものではない。
「各プレイヤーの山札の一番上を捲って、コストが大きい方が勝つガチンコ・ジャッジ……僕のデッキもドラゴンが多いし、勝てる見込みはあるよね……?」
状況が状況なのでいまいち強気に出れない夕陽だが、ここまで来ればもう、自分のデッキを信じるだけだ。
『グオォォォゥ! 行くぞ、ガチンコ・ジャッジ!』
「ああ、もうっ! やるしかない!」
激しい《ドルボラン》の咆哮と共に、両者同時に山札の一番上を公開する。
《ドルボラン》が捲ったのはコスト6の《アクア・サーファー》。対する夕陽が捲ったのは、
「——っ! 《アポロン》、こんな時に出るのかよ……!」
同じくコスト6、《太陽神話 サンライズ・アポロン》。
ガチンコ・ジャッジでは引き分けの場合、その効果を発動させたカードのプレイヤーの勝利、つまりこの場合は《ドルボラン》の勝ちとなる。
ガチンコ・ジャッジに負けた夕陽は、一瞬にして《コッコ・ルピア》を破壊される。
『言っておくが、この程度はまだ序の口! 本番はここからだ! 行け《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》!』
蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン 水文明 (7)
クリーチャー:ポセイディア・ドラゴン/サムライ 6000
ブロッカー
各ターン、このクリーチャーがはじめてタップした時、アンタップする。
このクリーチャーはブロックされない。
「おいおい、《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》て……」
ブロックされないブロッカー。つまり夕陽はもう、ブロッカーを出してもすり抜けられてしまい、逆にこちらが攻撃しようにもブロックされて阻まれてしまう。
そして遂に攻めの姿勢を顕著に現した《ドルボラン》による攻撃が、開始された。
『グオォォォゥ! まずは俺様で攻撃だ! W・ブレイク!』
《ドルボラン》が内蔵する重火器が一気に解放され、無数の銃弾、光線、爆炎、流水が放たれる。
「ぐぅ……!」
『まだだ! 行け《コッコ・ルピア》!』
最後のシールドは《コッコ・ルピア》が破壊する。これで夕陽を守るものはなくなった。次の《ドルボラン》ターン、《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》で確実に決められてしまう。
——だがそれも、《ドルボラン》に次があればの話だ。
夕陽の最後のシールドが光の束となり、収束する。
「っ、来た! 《ドルボラン》! なにも召喚時の効果を使い回すのはお前だけじゃない。そんでもって、使い回すために手札に戻す必要もない! S・トリガー《インフェルノ・サイン》!」
夕陽が発動するのは、コスト7以下のクリーチャーを復活させる呪文《インフェルノ・サイン》だ。
「蘇れ《バベルギヌス》! そのまま《バベルギヌス》を破壊し、墓地から《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を復活! さらに《バルキリー・ラゴン》の効果でデッキからドラゴンをサーチ、手札に呼び込む!」
《インフェルノ・サイン》で《バベルギヌス》を復活させ、その効果で今度は《バルキリー・ラゴン》を復活させる。一見するとまどろっこしいように見えるこの一連の流れも、当然ながら意味がある。
「まだ終わらないからな、《バベルギヌス》が死んだことで、墓地から蘇れ《グールジェネレイド》!」
《バルキリー・ラゴン》に続いて《グールジェネレイド》も墓地より這い出て来る。これで夕陽の場には大型ドラゴンが二体並んだわけだが、これだけではまだ足りない。《ドルボラン》のシールドは三枚なので、とどめまでは届かないし、なにより《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》という存在がある。
だが、そんなことは夕陽も分かっている。だからこそ《バベルギヌス》蘇らせたのが《バルキリー・ラゴン》なのだ。
「さあ僕のターン、さっきサーチしたこいつを召喚だ! 邪魔なブロッカーを焼き払え《爆竜 GENJI・XX》!」
『なにっ!? 《GENJI・XX》だと!?』
爆竜 GENJI(ゲンジ)・XX 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド/サムライ 7000
K・ソウル
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
決して高くはないコスト、高めのパワー、スピードアタッカー、恵まれた種族、突破力に優れた能力……複雑な効果こそないが、単体としては非常にハイスペックなクリーチャー。
そしてこの時、重要なのはすぐに攻撃できるスピードアタッカー。そしてブロッカーを焼き払う能力。
「行くぞ! まずは《爆竜 GENJI・XX》で攻撃! 効果発動で《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》を破壊だ!」
『俺様の《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》が……!』
《GENJI・XX》は凄まじいスピードで突貫し、X字の衝撃波を二発飛ばす。一発は《蒼神龍ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》を破壊し、二発目はシールドを二枚粉砕した。
「《グール》で最後のシールドをブレイク!」
漆黒の炎が放たれ、《ドルボラン》を守るシールドがすべて吹き飛んだ。もうこの巨龍を守るものは、何もない。
「これでとどめだ! 《バルキリー・ラゴン》でダイレクトアタック!」
《ドルボラン》の断末魔と共に《バルキリー・ラゴン》のとどめの一撃が叩き込まれた。
『グオォォォゥ! まさか、この、俺様があぁぁぁぁ!』
《バルキリー・ラゴン》のダイレクトアタックで、ドルボランは弾け飛ぶように爆ぜる。
「——ベタな台詞だな」
爆発するドルボランの姿を眺めながら呟く夕陽。手元に戻って来たデッキをケースに収めると、何かが足下に舞い落ちる。
「ん? なんだ、これ? ……《ドルボラン》?」
それは紛うことなく、さっきまで夕陽が戦っていたクリーチャー《戦攻竜騎ドルボラン》のカードだった。
「やっぱカードが実体化して襲い掛かって来たってことかな……それより、これ貰ってもいいのかな? 今までは重いから敬遠してたけど、意外と強いんだな、こいつ」
戦って初めてその強さに気付く。少なくとも今回の一戦で、一考の余地は生まれた。
さりげなく《ドルボラン》を鹵獲し、懐に収めている夕陽は、ハッと思い出す。そうだ、《ドルボラン》のことよりも今は気にすべき相手がいたのだった。
「霊崎、大丈夫か……?」