二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.86 )
日時: 2013/08/07 15:30
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 状況は圧倒的にクロの劣勢。シールドは残り一枚で、バトルゾーンには《光波の守護者テルス・ルース》と《雷鳴の守護者ミスト・リエス》のみ。
 対する《ガネージャー》はまだシールド五枚フルにあり、場も《時空の戦猫ヤヌスグレンオー》を核とし、高火力の《虚空の力 レールガン》ブロッカーをすり抜ける《弾丸透魂スケルハンター》、ブロッカーを破壊する《ピーカプのドライバー》、その他にも《クゥリャン》や《斬隠テンサイ・ジャニット》がおり、それらを率いるのが《金属器の精獣 カーリ・ガネージャー》だ。
 シールドの差は四枚、クリーチャーの差は五体。この状況を切り抜けるのは困難を極めるだろう。
 だがクロは、それでも諦めない。勝負は投げ出したら終わりだ。
「……《リバース・チャージャー》発動。墓地の《ジル・ワーカ》を回収して、手札の二体目と一緒に召喚。《ミスト・リエス》で《ピーカプのドライバー》を攻撃」
 クロの最優先事項は、《ガネージャー》の攻撃手を減らし、攻撃を凌ぎ切ること。とりあえず次の《ガネージャー》のターンを凌げれば、勝機は見える。
 場には二体の《ジル・ワーカ》、手札には保険として《光牙人ハヤブサマル》もいる。とりあえずはこれで次のターン《ガネージャー》の攻撃をすべて対処できるはずだ。
 少なくとも、フィールドだけを見れば。
「ターンエンド」
 静かに手番を終え、《ガネージャー》のターンがやって来る。
『私のターン。まずは《グレンニャー》を召喚して《ヤヌスグレンオー》を《シンカイヤヌス》にループ覚醒、《グレンニャー》の能力と合わせて合計二枚ドロー』
 ガンガン手札を補充し、ループ覚醒の種を集める《ガネージャー》。弾切れはまずありえないだろう。
『まだ終わりませんよ。ただクリーチャーを召喚するだけなのも芸がありませんし、ここはこの呪文を発動させましょう』
 そう言いながら《ガネージャー》は、手札のカードを一枚、表向きにする。
『呪文《超次元エナジー・ホール》。開け、超次元の門!』
 時空の門が開き、《ガネージャー》に一つの知識が与えられる。
 それと同時に、中から二つの影が飛び出した。
『カードを一枚ドローし、コスト5以下になるようにサイキック・クリーチャーを呼び出します。さあお出でなさい! コスト2《マシュマロ人形ザビ・ポリマ》、コスト3《ギル・ポリマのペンチ》!』
 出て来たのは、どちらも軽量サイキック・クリーチャー。効果もなく、単体だと大した力はないが、この二体はこの二体が揃うことで真価を発揮する。
『次のターンでこの二体はリンク覚醒します。それまで貴女が生き残っていればの話ですが』
 《ギル・ポリマのペンチ》が登場したことで《シンカイヤヌス》はまた《ヤヌスグレンオー》にループ覚醒し、《ギル・ポリマのペンチ》にその能力が適用された。
『一斉攻撃です! 私で攻撃!』
 先陣切って突撃してきたのは《ガネージャー》だ。手に持つ杖を振りかざし、衝撃波を放つ。
「《ジル・ワーカ》でブロック」
 その攻撃を遮るのは《時空の守護者ジル・ワーカ》。破壊されれば二体のクリーチャーをタップできるため、《ガネージャー》のクリーチャー軍団を一時的に無力化するには最適だ。
 そう、思っていたが、
「……!」

 次の瞬間、《ジル・ワーカ》は水流に飲み込まれていた。

『ニンジャ・ストライク4《斬隠テンサイ・ジャニット》……まさか《ジル・ワーカ》だけで私を止めようなどと思っていたのですか? ならば浅はかとしか言いようがありませんね』
 手札に戻される《ジル・ワーカ》。相手の場にはケタケタと笑っている《テンサイ・ジャニット》、そして攻撃を繰り出す《ガネージャー》の姿が見えた。
 クロの最後のシールドが、破壊される。
「っ……!」
 終わった。考えるまでもなく分かる。《ガネージャー》の場にはブロックされない《スケルハンター》がいるのだ、シールドがゼロになった時点で奴がアンタップされていれば、どうしたって止められない。とどめを刺される。
 ——そう、アンタップされていれば。

「S・トリガー発動……《大行進・スパーク》」


大行進・スパーク 光文明 (6)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべてタップする。
このターン、自分のガーディアンが相手プレイヤーを攻撃できない効果はすべて無効になる。(ただし、召喚酔いは無効にならない。また、この効果でクリーチャーを攻撃することはできない)


 クロの手元に収束した光を源に、眩い閃光が発せられる。
『なっ……なにっ!』
 その閃光を受け、《ガネージャー》のクリーチャーはすべてタップされた。即ち、攻撃できなくなった。
 クロとしてはベストなタイミングで出て来たS・トリガーだが、フィールドだけを見れば《ガネージャー》の有利は変わらない。たかだか一度、攻撃を凌いだ。
 だがそれは、クロにとってはただ攻撃を凌ぐ以上の意味がある。
「私のターン……マナの《シャングリラ》と墓地に落ちた《漆黒の守護者ハラッカダン》二体を進化元に」
 マナと墓地のカードを三枚重ね、手札から抜き取ったそれを、最後に乗せる。
 そして現れたのは、一切の感情を排し、痛みと苦しみを無にする理想郷を創らんとする守護者。

「召喚……《「無情」の極 シャングリラ》」


「無情」の極 シャングリラ ≡V≡ 無色 (11)
進化クリーチャー:ガーディアン/ゼニス 17000
超無限進化・Ω—ガーディアンを1体以上自分の墓地、マナゾーン、またはバトルゾーンから選び、このクリーチャーをそのカードの上に重ねつつバトルゾーンに出す。
メテオバーン—このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚選び墓地に置いてもよい。そうした場合、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。相手はそのクリーチャーを自身の山札に加えてシャッフルする。
T・ブレイカー
このクリーチャーがタップされている時、相手のクリーチャーは攻撃できない。
エターナル・Ω


『な……っ、《シャングリラ》!?』
 あからさまに動揺を見せる《ガネージャー》。それもそうだろう、攻撃を封じる《シャングリラ》が出てしまえば、《ガネージャー》のデッキは根本から瓦解する。そうでなくとも、このサイズのクリーチャーは十分な脅威だ。
『まさか超重量級クリーチャーである《シャングリラ》を、そのまま出してくるなんて……!』
 《ガネージャー》の言うように、《シャングリラ》の弱点はとにかく高いコストだ。《シャングリラ》をメインに据えたデッキならコストを踏み倒して場に出すものだが、クロのデッキカラーではそれも簡単ではない。
 そして実際クロも、速攻気味の《ガネージャー》相手に《シャングリラ》を出す余裕はないと思い、一枚目はマナへ置いていた。ブロッカーを並べて攻撃を防ぎ、最後に一気に攻めるつもりだった。だがその作戦は通用しそうになかったため、急遽作戦を変更したのだ。
 即ち、《シャングリラ》を場に出すためのマナが揃うまで、ひたすら《ガネージャー》の攻撃を耐え切ること。途中からバウンスを絡めたせいで苦労したが、結果的に《シャングリラ》の召喚には成功した。
「《シャングリラ》で《ガネージャー》を攻撃、その際にメテオバーン発動で《ヤヌスグレンオー》を超次元ゾーンに戻す。さらにアタックチャンス《無情秘伝 LOVE×HATE》」


無情秘伝 LOVE×HATE(ラブアンドヘイト) 無色 (9)
呪文
アタック・チャンス—《「無情」の極 シャングリラ》
クリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出す。
バトルゾーンに自分のゼニスがあれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。相手はそのクリーチャーを自身の山札に加えてシャッフルする。


 《シャングリラ》の攻撃と共に、愛憎を示す言葉が虚空に描かれる。そしてその言葉を引き金に、次なる無情が姿を現す。
「メテオバーンで墓地に送った二体目の《シャングリラ》を召喚、追加効果で《スケルハンター》をデッキに戻す」
『くっ、う、アァァァ!』
 直後、《ガネージャー》が消し飛ばされる。全身ボロボロになりながら、なんとか身を退くも、彼女の勝機はほぼ完全に消えている。
「二体目の《シャングリラ》で《ギル・ポリマのペンチ》を攻撃、メテオバーンで《ザビ・ポリマ》を超次元ゾーンに」
 一気にガネージャーの場を蹂躙する《シャングリラ》。それでもまだ彼女の場にはクリーチャーが残っているが、それも無意味。
『《シャングリラ》がタップされている時、攻撃できない……!』
 なすすべなくターンを終え、クロのターンが訪れる。
 そこに広がっているのは、無情の二文字だけだった。
「二体の《シャングリラ》で攻撃、シールドをすべてブレイク」
 ついでと言わんばかりにメテオバーンが発動し、ガネージャーの僕がまた消える。同時にシールドもすべて吹き飛び、S・トリガーもない。ガネージャーを守るものは、なにもない。

「《雷鳴の守護者ミスト・リエス》で、ダイレクトアタック——」