二次創作小説(紙ほか)

Re: originalダンガンロンパ ( No.14 )
日時: 2013/07/03 16:58
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

 長くなりました。
本日のところはこれにて更新を終わります。

なにか質問や希望がありましたら遠慮なく書き込んでください。

Re: originalダンガンロンパ ( No.15 )
日時: 2013/07/04 09:20
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

『誰かを殺した生徒だけがここから出られる…』


 おれはモノクマの言っていた言葉を飲み込む。
幸い、まだおれはそれを受け止めるだけの余裕はあった。
しかし、他のみなはその言葉で完全に思考が止まっているように思えた。
あたりに漂った重い空気が、それを物語っている。


「しっかりしろ。おれたちがこのまま、こうして疑心暗鬼に睨み合っていては相手の思う壷だ」


 できるだけ声音を落とすように努めて、おれは全員に語りかけた。
 みなの顔が一斉におれの方に向く。
その表情はどれも怒り、不安や恐怖といったものに支配されていた。


「まずは出口を探そう。それに、ここがどこなのか調べるんだ。そうすれば、あいつの目をかい潜って逃げることができるかもしれない」


『逃げることができるかもしれない』

 その言葉に、希望を見出だしたのだろう。
みなの顔には光が戻っていた。


「……そう、だな。ありがとう、速水刹那。
 その可能性を忘れるところだった」
「ああ……。まだ、全部……決まってない、な」
「そうね。案外抜け道も用意されてるかもしれないし」
「具体的なことはどうお考えですか?」
「手分けしてここを調べるんだ。何があるか分からない。
 できるだけ、複数に分かれて探索しよう」
「それで犯人を見つけたら、即刻ボコボコだな!!」
「いや、相手が何を持っているか分からない。
 犯人とおぼしき人物がいても、一人で追いかけず、必ずだれかを呼んでくれ。いいな?」
「うん、分かった。えへへ、刹那君は頼りになるね」
「じゃあ、早速行きましょうか?」
「ちょっと待った。その前に、電子生徒手帳を確認しようぜ。
 モノクマの言ってた“校則”ってやつに従わなきゃ、首ちょんぱだろ?」
「首ちょんぱって……そんなえげつない言葉使いなさんな」
「だが、あいつならそうしかねないぞ。
 わたしたちに向かって殺し合え、なんて言ったくらいだからな」
「じゃ、その校則ってのを確認しよっかー」


 気の抜けた間宮の声に頷き、おれたちは手元にある電子生徒手帳を起動させる。

『速水 刹那』

 すると、最初におれの名前が浮かび上がった。
モノクマの言ったとおり、ここには持ち主本人の名前が表示されるらしい。


「えと……どうすれば、いい……ですか?」
「ん?菊は機械はダメか。じゃあ、教えてやんよ。みんな分かるか?
 右サイドの電源ボタンを入れて起動させたら、上から三番目の規則って書いてあるとこにタッチして開くんだぞ」
「えーと……こう?辰美ちゃん?」
「澪、それはみんなのプロフィール画面だろ。
 だからいったんメニュー画面に戻って……」
「さすが“超高校級のゲーマー”だな。もう使いこなせるのか」
「おれにはこれくらい朝飯前さ。さて、後分かんねーやつはいるか?」
「わ、悪い、笹川。わたしのも見てくれ」
「おいのも……頼む」
「了解。待ってろよ。見れるやつは先に見てていいんじゃないか?」
「言われなくとも、俺様はとっくに目を通している」
「私も、一足先に見ていますわ。非常に読んでいて気分が悪くなりますけど」


 まだ電子生徒手帳が上手く使えないやつは笹川に任せて、おれは表示されたメニュー画面の中から、“校則”と書かれたアイコンを選択する。

画面上に浮かび上がる箇条書きの文章。
これが“校則”だろう。おれは確認を終えると文字をたどっていった。



1.生徒たちはこの寮内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は2階に設けられた個室でのみ可能になります。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4.寮内を調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラ・鍵のかかった扉の破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7.なお、校則は順次増えていく場合があります。



 校則は以上……か。
おれは、最後に一度すべてに目を通してから顔を上げた。
見ると、他のみなも一様に渋い表情を浮かべている。


「これ、違反したらやっぱり殺されちゃう?」
「だったら破ったらどうだ?俺様も気になるところだ。
 供養は死んでもやらないがな」
「えー。せめて線香一本はあげてよ〜っ」
「突っ込むとこそこ!?」
「雅、絶対破るんじゃないぞ!
 そんなことで死ぬなんてわたしはごめんだからな」
「わわっ。まゆゆんごめんごめんっ。絶対破らないから、怒らないで」
「ちっ」
「おいおい、なんでそこで舌打ちするんだよ。可愛いレディが死ぬ姿なんて見たくないだろ?」
「こいつのどこが可愛いレディなんだ?うるさいだけのクソガキだろ?俺様は」
「それ以上は止めろ。きりがない」


 おれが不動と雅の間に入り、制止する。
すると、不動は腕を組んで呆れたように息をついた。
赤い蔑んだ彼の視線が向けられる。

おれは、別にそれでどうともしないが……まいったな、こいつは。


「あの、ちょっといいですか?校則の6番目の項目ですけど……これって、どういう意味なんでしょう?」
「後半の『他の生徒に知られてはならない』の部分よね?わたしも気になっていたの」
「……卒業したいなら、誰にも知られないように殺せ、という事ではありませんか?」


 確かに文面通りに受け取れば北条の言った意味だろう。
だが、これには他の意味も含まれている気がする。


「な、なんで……どうして……です?」
「そんな事、気にしても仕方ねぇよ。与えられたルールは守らないと命を落とす。それだけ気にしてりゃいい。
 あんな狂人の考えを理解するだけ時間の無駄さ、菊」


 笹川が東雲と一緒にルールを眺めながら、おれに視線を映す。


「……にしても、まさかお前が警察官だったとはな。正直、驚いたぜ」
「なっ!?」
「え?ちょっと待て!?どういう意味だ?」
「ああ。プロフィールにも大方目を通したんだが、そこにあったんだよ。速水刹那は“超高校級の警察官”ってな」


 笹川の言葉に全員が一斉に静まり返る。
その沈黙を破ったのは……一人の嘲笑だった。


「はははっ。警察官が捕まってるとは……とんだ喜劇だな?速水刹那っ!!」
「待って!刹那君だって知らない内に事件に巻き込まれたんだよ!仕方ないよっ!」
「仕方ない?仕方ないわけあるかっ!偉そうなこと抜かしやがって!事後じゃ何もかも遅いんだよ!!」
「っ」


 おれは何も言い返せず、声を荒げる不動を見る。
先ほどの件もあるのだろうが、おそらくは挑発の意図が大きいだろう。

 警察官であるおれが、犯人に捕まっている。
本来ならば、犯人を逮捕しなければならない立場で、これ以上の挑発はない。
だが、ここで何かを言えば、彼に言い訳と指摘されるだけだ。
 これ以上、無駄に争うわけにはいかない。
そのため、おれは不動の好きなように言わせておいた。


「税金で養ってもらってるいいご身分が、ずいぶんなザマだなぁ?ああ?」
「…………」
「おい!何か言い返さないのか!?」
「…………」
「ちっ。だんまりかよ……。もういい、てめぇらのお遊びに付き合ってられるか」
「どこへ……行く?」
「出口を探すんだよ。一人でな」
「おいおい。そりゃ、危ないだろう」
「他人を殺すしか脳のない、馬鹿な連中と一緒に行動するよりマシだ。役立たずの警察の言うことなんか、聞けるか!」
「君というやつはっ!!」
「まーくん待って!一人で、怖くないの?」
「っ。怖い……?はっ。教えてやろうか?一番怖いものってやつを」


 既に背を向けて歩き始めた不動は白衣をひらめかせながら、おれたちを赤い瞳で睨みつけた。


「この世界で一番怖いものは………人間ひとだ」


そう言って、凄んだ視線を戻すと不動は一人、小ホールを出ていった。
どこか重みのある、その言葉を残して。


Re: originalダンガンロンパ ( No.16 )
日時: 2013/07/04 09:21
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

「ありゃあ……ダメだな。完全にオレたちとは相容れなさそうだ」
「だなー……。おれ、あいつ苦手だわ」
「むしろ、あいつが苦手じゃないやつがいるのか?」
「あー……わたしは平気、かも」
「え?どうしてですか?」
「なんだろう。まーくんってああだけど、なんか訳がありそうっていうか……うーん……」
「雅歌音、止めておけ。同情しても彼には無駄だ」
「そうだな。したら最後、潰しにかかってきそうなタイプだな」
「それでも……やっぱり、心配だから行ってくるよ!それじゃ!」
「あっ。歌音ちゃん!」
「雅!?待て!!」


 雅が、それを追うようにして篠田が小ホールを出ていく。
おれたちは二人の背中を見送ってから、互いに顔を見合わせた。


「というか、すまん。ここまでのことになるとは思わず……迂闊だった」
「いや。隠していたおれが悪い。いずれは、ばれることだったからな」


 笹川が頭を下げようとするのを制し、おれは頭を抱える。
それから、確認のため電子生徒手帳のプロフィール画面を開いた。
 たどっていくと、確かにおれ個人はもちろん、他のみなの身長、体重、出身校などの情報とともに超高校級の能力が記載されている。
もちろん、おれのところは”超高校級の警察官”の文字が躍っていた。

 まさか、電子生徒手帳に他人のプロフィールが書かれているとは……考えもしなかった。


「隠していた?どうして隠していたの?」
「こういう事件が起こったとき、警察官が中にいるとなれば騒ぎも大きくなるだろう?
 不安に思う人間もいる。だから、敢えて話さなかった」
「なるほど。私たちの暴走を防ぐため、ですわね?先ほどの野蛮な方を出さないために」
「それじゃ、刹那くんは全然悪くないよ。わたしたちのために嘘をついてくれてたんだから」
「いや……。だが、捕まってしまったのは事実だ。不動にああ言われても仕方がない」
「でも、あいつだって捕まってんだろ?」
「みんな……同じ、だ」
「それに、警察がいるんなら心強いぜ。正直どうなるかと思うけど、お前がいるならなんとかなるかもだろ?」
「僕も、頼りにしてます」
「わたしも」
「僕もだ!速水刹那、だから君は気にする必要はない」
「ああ……。みな、ありがとう」


 おれの身分がばれたことは不覚だったが、おかげで結束は強くなったのだろうか。
こう捉えてくれると、おれとしてもありがたい。
残念ながら、不動はどうにもできなかったが……。


「それでは当初の予定通り、何人かで分かれましょう。今いない三人は考えずに」
「そうだな……三人ずつ別れよう。一組がこの体育館。もう一組が一階。
 あとの二組は二階でそれぞれ分かれて行動しよう」
「オッケー。分かったぜ」


 花月の声を合図におれたちは近くにいた者同士で、三人の組を作り始めた。
 まず……


「速水刹那、僕と一緒に行こう!」
「ああ」
「刹那くん、わたしもいいかな……?」
「ああ、一緒に行こう、安積、米倉」


 一組目はおれ、米倉、安積。


「よーし!おれたちは二階行くぞ!」
「は、はい……京くん」
「はは。暴れて怪我すんなよ?」


 二組目は花月、東雲、笹川。


「それでは私たちはこちらを調べましょう」
「りょーかい」
「ええ。いいわよ」


 三組目は北条、間宮、アヤメ。


「なんだぁ?野郎ばっかりじゃないか、ここ!!」
「いや……か?」
「そりゃ、オレとしてはレディの一人や二人は」
「御剣隼人、文句を言うな!!」
「けっ。わーったよ。行ってやるさ男どもと!!」
「あはは……。それでは、僕たちは一階を探してみますね」


 四組目は御剣、大山、石蕗。
 これで全員分かれたな。


「もう一度言う。犯人を見つけても決して深追いするな。何かあったら、必ず他の組の人間にも知らせてくれ。
 一通り調べ終わったら、ここに集まろう」
「はい」
「それじゃ、探索を開始するぞ!」


 安積の言葉に一同は頷き、早速割り当てられた場所に向かう。
 出口はあるのか?ここはどこなのか?一体、何があるのか?
おれたちには知らなければならないことが多い。


(……みな、無事でいてくれ)


 先ほど出で行った三人の無事も祈りつつ、おれは警戒をしながら安積と米倉を率いて二階への階段を上っていった。