二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.28 )
- 日時: 2013/07/08 01:29
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
騒がしくも何事もなく平和な昼食が終わった後。
片付けを石蕗たちと済ませたおれは米倉、安積、笹川とともに自室前に戻っていた。
「こんな標識、おれたちがきたときはなかったぜ?」
ドットのプレートをいぶかしげに睨み、笹川が唸る。
「しかしまぁ、ドットとはレトロチックだなぁ。おれはこういうの嫌いじゃないぜ。
この時代のゲームはクソゲーも多いけど神ゲーも多いし、古きよき時代ってやつ?」
「全く……君はゲーム以外に話題はないのか?」
「24時間毎日つぎ込んでるからな」
「それだから目を悪くするんじゃないかっ!これを機に卒業したらどうなんだ!?」
「うるせぇやつだな。そんなに口うるさいから、彼女できないんだぜ」
「なっ? 僕は男子校の出身だとさっき言っただろうっ!?
君だってその口癖を直さないと、いい伴侶に恵まれないぞっ!」
「はあぁっ!?大きなお世話だっての!!」
また、始まったか。
おれは無言のまま、素早く安積と笹川の間から立ち退く。
どういうわけか、さっきからなにかとこの二人はこうして不毛な論争を繰り返している。
あのときのように手を出すまでは今のところ発展していないので、止めはしていない。
おれとしては彼らを見守るばかりだ。
「仲良しだね、あの二人」
「そうだな」
同じく熱く弁を振るう二人から離れた米倉が、笑みをこぼす。
初めて会ったばかりのはずが、あそこまでになると以前どこかで会っていたのではないかと疑うほどだ。
御剣の言う痴話喧嘩、と思われても仕方ないだろう。
言えば、確実に双方から否定されるだろうが。
「不動くんも、いつかああやって打ち解けられたらいいね」
「……そうだな」
なかなか決着のつかない二人の横で、おれは辺りを見回す。
やはり、この廊下におれたち以外の人影はない。
食堂に残った石蕗と大山、雅、篠田を除いて殆どは食事が終わってすぐ部屋に帰っていったから、部屋にいるはずだ。
結局、昼食が終わってからもしばらく待ってみたが、不動だけは一向に姿を見せなかった。
来なくてよかった、と数人が言っていたにしろ、やはりこの極限下で独りっきりなのは危険だ。
仮に犯人に接触すれば、ただではすまないだろう。
とは言え、彼がどこへいるのかは、おれにも皆目見当もつかなかった。
もちろん確認がてら、部屋をノックしてしばらくインターホンも押し続けたが、返事はなかった。
他のみなも、あの報告会以降、だれも不動を見かけていないらしい。
最終手段(あまりすべきことではないのだが)として、モノクマを呼び出して尋ねてもみたが、はぐらかされてしまった。
ただ、部屋にはいない、ということだけは言っていたため、まだこの寮内をうろついていることは分かる。
しかし、この限られた空間で、14人のだれの目に触れられないのは、どうにも考えにくいのだが……。
「……それじゃあ、おれは先に」
「うん、バイバイ刹那くん!また後でね」
「あ、ああ。またな、速水刹那」
「今度会うときは、こいつをおれの前にひざまずかせるとこを見せてやんよ」
「だれがひざまずくかっ!!」
また別の話題で火がついた二人をよそに、米倉に会釈する。
そうして、米倉が手を振るのを傍目に自分の部屋に入った。
やるべきことは、確認だ。
「シャワールーム……だな」
部屋に入ってすぐ手前の扉をくぐり、中に足を踏み入れる。
材質は分からないが、黒いタイルが一面に敷きつめられたそこには、右手にトイレと洗面台、左手にシャワーが設置されていた。
シャワーの床下には、明らか高級感のある洗髪料とボディソープが、洗面台には大きな鏡と、櫛、歯磨き用品が一式と石鹸がおかれている。
どこもやはり新品のような輝きだ。
使われた様子もなく、辺りを注意深く見ても、髪の毛一つない。
「これか?」
違和感を覚えつつも、鏡の真横に貼られた紙に、おれは目を細める。
笹川の話によれば、これにシャワールームの使用についての注意事項が書かれているらしい。
「……なるほど」
子供のいたずら書きのような文字を追い、おれは独り頷く。
笹川の報告通りだ。女子のシャワールームにはカギがかかることと、夜時間には水が出ないことが遠まわしに書いてある。
「確か夜時間は……」
電子生徒手帳を開いて校則のページを開ける。目的の項目はすぐに見つかった。
—2.夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。
シャワールームは夜時間に使えない。
つまり、夜10時から朝7時までは使用できないことになる。
「あとは……例の毒、だな」
不動の言っていた部屋にある毒。
あの言動からすると、どの部屋にもあるものということになるのはずだ……。
どうして不動が全員の部屋にあると断言したのか、理解はできないがまずは判別が先だ。
後ろ向きな発想かもしれないが、何が起こるか分からない。 誤飲という可能性だってある。
早く見つけだして、全員が処分しなければ。
- Re: originalダンガンロンパ ( No.29 )
- 日時: 2013/07/08 08:53
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
シャワールームに毒物らしいものがないことを確認し、おれはいったんシャワールームを出る。
そのタイミングを見計らったように、チャイムが鳴った。
「だれだ?」
「おれおれー!花月だけどー!」
花月?
扉を挟んでも聞こえてくる声におれは、たじろぎながら扉を開ける。
「どうした?」
「ちょっと探し物しててさ。手伝ってくれないか?」
「探し物、とは?」
「菊の鞠。菊の母さんの形見なんだけど、どっか無くしちまったらしくて。な、菊?」
「は、はい……」
花月の背後から僅かに東雲の顔が覗き、こくんと頷き返す。
「分かった、手伝おう。ただ、少し調べものをしたい。その後でもかまわないか?」
「いいぜ。あ、そうだ刹那。ちょっと菊のこと見ててくれ。他の奴も呼びにいくからさっ」
「は?」
「…え? 京く……っ!」
おれの返事も聞かず、東雲の言葉も待たず、花月は彼女を置いて廊下の奥に消える。
確かあの方向には安積と米倉の部屋があったはずだ。
あの二人なら、まず快く引き受けてくれるだろう。
だが……
「…………」
「…………」
………参ったな。
花月がいない今、完全に思考停止状態の東雲に、どうしてやればいいか分からず、おれも押し黙る。
おれも彼女が自分を苦手なのは初対面で分かっているから、別にそう気に留めてはいない。
(本当は多少は気にしているが、怖がられるのは慣れている)
しかし、どうして花月はよりにもよっておれに東雲を見てるよう言ったんだ。
彼女がおれを苦手なことを知らないのだろうか。
「……おれが怖いか?」
「………はい」
辛うじて聞き取れるくらいの小さな声に、おれはため息をつく。
怖い顔と小さい頃から散々言われてきたが、元からこの顔だ。
努めて直るのなら、とうの昔に直っている。
「……悪いな。もとからこの顔なんでな。努力はするが、慣れてもらえるとありがたい」
「………」
返事の代わりに東雲は、ぺこりと頷く。
彼女がやると、まるで日本人形がお辞儀をしているようだ。
「話は変わるが、花月とは知り合いなのか?」
「……はい。京くんは……幼なじみです。
同じ町で生まれて、育ったんです。日本の文化が生まれた町で」
「日本の文化が生まれた町?」
「……はい」
しばらく日本に帰っていなかったせいか記憶が曖昧になっているが、確か祇園や大文字で有名な場所だったはず……。
「……京都、か?」
「はい……そう…です」
小さく微笑む東雲におれは内心胸をなで下ろす。
まだ目線を合わせそうにないが、自己紹介のときよりは多少なりとも、心を開いてくれたのかもしれない。
陰りがあるとは言え、彼女はわずかに微笑みを浮かべていた。
「早く……帰りたい、です。静かな…あの町に………」
「そうか……。すぐにここから出られるよう、おれも尽力しよう」
「……はい。あの…速水……さん…」
何か言うことでもあるのか、東雲がおずおずと顔を上げる。
そして、言葉を話そうと息を大きく吸い込んだそのときだった。
「ふふ、速水は手回しが早いのね」
不意にだれかの声が右手側からかかり、東雲がビクリと肩を震わせて声の方に向く。
おれも、おそらくは呆れた顔でそちらを向いた。
姿を見ていなくても、しゃべり方で十分だれか分かる。
”超高校級の俳優”のアヤメだ。
「……どういう意味だ?」
予想通り、視線の先にいたアヤメにおれは嫌な予感を覚える。
あからさまに、アヤメの顔はどこか企んでいるような笑みだ。
手回しが早いという言い回しといい、東雲とおれを交互に見比べていたり、
こちらとしては、あまりいい気はしない。
「あら、だって米倉がいるのに、今度は東雲に手を出すんだもの。
あなたって、結構罪な男なのね」
「……誤解だ。警察として、みなを守ることは当然だろう。
それに、東雲も、ましてや米倉にも手を出したつもりはない」
「ふふ……そうでしょうね。でも、東雲は違うみたいよ?」
「ん?」
くすくすと口元に笑みを浮かべる彼女と同じように、おれも東雲の方を見下ろす。
元が白い肌のせいもあるだろう。
東雲は誰がみても分かるくらい顔を真っ赤にさせて、何かを呟いていた。
声がこもっていてうまく聞き取れないが、
口の動きからして……違います、と言っているのが分かる。
「うふふ……東雲はかわいいわよね」
「……やめてやれ」
彼女が気の毒だ。
アヤメにそう告げるものの、あら、ダメ?と言うだけで、彼女に反省の色はまったくない。
それどころか、ちょっとした挨拶よ、とにこやかに返されてしまった。
「わたしの周りは年上ばかりだから、こういうかわいい子がいるとからかいたくなるの。
特に、純粋そうな子は余計ね」
「はぁ……」
この状況下で、そうできるのはさておき、だれかをからかうというのが、おれには理解できない考えだ。
相手を困惑させるのは、どうにも気が引ける。
「うふふ……でも、速水みたいなクールなタイプも好きよ。
反応も新鮮だし、この中で一番頼りになるもの。もてるでしょう?」
「そう言ってもらって嬉しいが、生憎、そんなことはない。」
「あら、どうして?」
「おれは仕事で一ヶ所に留まることがなかったし、職場は男性が多かったからな。
そもそも、女性に会う機会がなかった」
「へぇ、意外ね」
「そういうアヤメはどうなんだ?共演していた男性俳優との仲が報道されていたが……」
「あら、知っていたのね」
「大々的なニュースだったからな」
聞いたのはここに入学する前だったが、
テレビでも、新聞でも、雑誌にも取り上げられた有名な話だから、覚えている。
内容は彼女が、ハリウッド映画で共演した男性俳優と二人っきりで食事をしていた、という話だ。
二人を見かけた者によれば、彼らは仲むつまじく、良い雰囲気だったらしい。
「そうね……。確かに彼はとても素敵な人だけど、付き合おうなんて思ってないわ」
「と、いうと?」
「彼が誘ってくれたのよ。パスタのおいしいお店があるって。それで、食べに行っただけ」
「……二人っきりで、か?」
「あら、ダメかしら?」
「いや。そういうものは、特別な相手だけだと思っていた」
「ふふ……速水は思っていたよりもお堅いのね。こういうの、別に普通よ。
今回は彼が有名だっただけ。それに、彼にはもう将来を決めた相手もいるの。問題ないわ」
婚約者がいるなら、むしろ普通は遠慮するものじゃないのか……。
おれはそう思ったが口に出さず、東雲に目を遣る。
彼女はどう思っているのか分からないが、少なからず、同意はしてないらしい。
アヤメの話にきょとんと目を見開き、その場で固まっている。
「ふふ、遠慮したほうがいいって思ったでしょ?
でも、さっきも言った通り、わたしは遠慮なんかしないわ。
だって遠慮したらせっかくの好意が無駄になるでしょう?」
「それは、そうだが……」
「それに、そうやって悩んでたら一瞬のチャンスを逃すことになるわ。それで、後悔したくないのよ」
最後の言葉をやや強調し、アヤメは腕を組む。
「ところで、あなたたちに聞きたいのだけど……わたしたちって今日、初めて会ったのよね?」
「ん? ああ、そのはずだが……」
神妙な面立ちに変わった彼女に一瞬気圧されたものの、おれは思ったままのことを口にする。
予定では今日が希望ヶ峰学園の入学式。
それ以前にオリエンテーションや説明会は一切なかったはずだ。
もしかしたら、だれかは下見がてら来ていたかもしれないが、おれは今日が初めての登校になる。
ここに来る以前でどこかで会ったことはまずないだろう。
「そう。東雲はどう?」
「……わたしも……初めて…です。知ってるのは………京くん……だけで……」
「どうしたんだ、急に?」
「なんとなくよ。強いて言うなら、女の勘かしら?」
「女の勘、か……」
女に備わっている第六感と、同僚がぼやいていたあれか。
おれは女性とは無縁のため、あまり知らないのだが、よく当たるらしい。
ただ、さすがに今回ばかりはそれもはずれだと思うが……。
- Re: originalダンガンロンパ ( No.30 )
- 日時: 2013/07/08 08:54
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
「おーい、菊ー、刹那ーっ!」
「あ……京くん」
花月が戻ってきたらしい。
東雲がわずかに微笑み、先ほど、花月が走り去った廊下に振り返る。
花月はそこから飛び出して、手を振りながら、こちらに駆け寄ってきていた。
「待たせたな。みんな手伝ってくれるってよっ」
花月がそう言って後ろを親指で指し、白い歯をみせる。
花月の後ろにいるのは……安積、笹川、篠田、雅、米倉の5名。
おれとアヤメ、花月と東雲を合わせて計9名と、かなりの大人数だ。
広い廊下とはいえ、ここまでの人数になるとさすがに窮屈だろう。
「速水刹那、また会ったな!」
「ああ。花月に頼まれたのか?」
「うん。菊ちゃんの大事なものを探してほしいって」
「まぁ、暇だしな。一人よりはみんなでいる方がマシだろ。
一部は違うようだけどな」
「一部?」
「りんりんとしぃちゃんとまーくんのこと〜」
「えと……不動さんと……どなた…です…か?」
「北条と間宮と不動のことだ」
だれのことか分からないおれたちに篠田が解説する。
それで、おれは笹川の言っている意味を理解した。
「御剣は?」
「んー。なんつーかな。あんま誘いたくなかったから省いた。
それに、さっきのやつらは団体行動無理そうだから、頭数に全然いれてない」
聞くところによるとどうも、花月が個人的に御剣、北条、不動は外していたらしい。
間宮は本来呼ぶつもりだったが、インターホンに出ないので諦めたそうだ。
彼のことだから、おそらく数式を解いているのだろう。
「そういえば、アヤメここにいたのか。
部屋にいなかったから、てっきり食堂にいると思ってたぞ」
「あら、確かにさっきまで食堂にいたわよ。
喉が渇いてジュースを飲んでいたの。石蕗が今晩のメニューを考えていたわ」
「石蕗か……。あいつも手伝ってくれそうだな」
「ビッグも手伝ってくれると思うよ〜っ!」
「ビッグ?」
「大山のことだ。大きいから、らしい」
「なるほど」
また篠田の通訳におれは納得する。
なんとも単純明快な由来だ。
「なあ。アヤメも暇なら手伝ってくれないか?」
「あら、いいわよ。ちょうど他にやることもないし……」
「じゃあ、頼んだっ」
「ええ。…それにしても、ここじゃ窮屈ね」
「これだけの人数がいるとそうなっても仕方ないだろう」
「えへへ〜、おしくら饅頭みたいだよね〜。 まゆゆんやわらかーい♪」
「こ、こら雅っ!! どこ触ってるんだ」
「胸」
「はっきり言うなっ!!」
「いったぁ〜っ!? まゆゆんひど〜いっ!」
篠田が軽い拳骨を雅の頭に落とし、雅がブーブーと抗議の声を上げる。
それに間を入れず、今度は笹川が吹き出した。
「ぷっ。おーい、とーま、お前いま顔真っ赤じゃないかよっ!
なんかやましい想像でもしたのか?」
「な、なっ!? そ、そんな訳ないだろうっ!! 言いがかりはよしてくれっ!!」
「ふーん……。その割には随分慌ててるようじゃん?
ま、女性耐性のないお前にはハーレムなんてもんがそもそもダメか」
「は、はー…れむ…? …ど、どういう意味だっ!?」
「ああん、それも知らないのか?
男一人が複数の美少女に囲まれてるってこと。ギャルゲーの定番だぜ」
「ギャルゲー? 辰美ちゃん、それはなに?」
「おっといけねぇ。よい子の澪に、そんなこと言っちゃ駄目だな。
もうちょっと大人になったら話してもいいぜ?」
「ほんとっ?」
「おう。そーだなぁ…結婚して子どもができたくらい?」
「君は一体何を教える気なんだっ!?」
「なにって、ギャルゲーについてだよ。
とーまは出血多量で死ぬから言わねーけどなっ」
……ずいぶん賑やかだな。
各自がそれぞれ話す言葉に耳を傾けながら、おれはふと花月の方に視線を戻す。
東雲が彼の耳元で何かつぶやいているようだ。
「うんうん…。そうだな、まず食堂に行くか。
それじゃみんな、食堂いくぞー」
案内人のように花月が先頭に立ち、全員に呼びかける。
それに従い、おれたちは列になって再び食堂へと戻っていった。
食堂にたどり着いたとき、テーブルに肉、野菜、果物といった大量の食材と、
その傍らで、石蕗と大山がそれらを手にしている姿が目に入った。
「ツッチ〜ッ、ビッグ〜ッ! なにしてるの〜?」
雅が駆け込み、二人の間に割ってはいる。
二人は驚いた様子をみせたが、おれたちを見てすぐに穏やかな表情を浮かべた。
「食料の仕分けですよ」
「仕分け?」
「鮮度の……善し悪しを……みている……。
ほとんど…石蕗がやって……おいは…運んでいるだけ、だ」
「いいえ、とても助かります」
「あ? でも、食料はなくなったら補充されるって話だろ?」
「あ、はい。そうなんですけど、食材を無駄にしたくないので……」
「なるほど、いい心がけだな」
「せっかく頂いてる命ですから。ところで、皆さんどうかしたんですか?」
「あ、そうそう。ちょっと手伝って欲しいんだけど」
花月が大山と石蕗にも事情を説明する。
これだけの食料の仕分けをしているとなると協力は厳しいかと思われたが、彼らはそれらならと快く承諾してくれた。
「サンキューッ! みんな、ほんとありがとなっ!」
「ありがとう………ございます………」
「いいや。探し物はみなで探した方が見つかりやすいからな! 気にしないでくれ」
「うん。菊っぴの大事なものだもん!早く見つけちゃおう」
「それで、東雲は心当たりがあるのか?」
「……いえ」
「あら?心当たりがないの?」
「なんか、ここに連れ込まれた辺りから無くしたみたいなんだよな?」
「…はい」
「えーと……それじゃあここにはないかもしれないってこと?」
「或いは……まだ行けない場所に落ちている可能性もあるな」
玄関ホール横の受付小ホール横、ランドリーと焼却炉を挟んだ奥の通路そして、三階。
おそらく、この中で一番確率の高いのは受付辺りだと考えられるが……。
そうであったとしたら、現時点で取り戻すことは不可能だ。