二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.37 )
- 日時: 2013/07/16 16:16
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
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│ 石 米 東 花
│ 蕗 倉 雲 月
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│ │ │ 安 雅 不 │
│ │ │ 積 動 │
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│ │ │ 北 笹 大 │
│ │ │ 条 川 山 │
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│ 間 │
│ 宮 │
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│ 速 御 篠 ア
│ 水 剣 田 ヤ
│ メ
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希望ヶ峰学園に来て二日目。
朝日のない部屋で、早々目が覚めてしまったおれは昨晩書いたノートの内容を確認することに勤しんでいた。
昨日、明らかになったことや疑問はさておき、現時点で調べられそうな箇所に検討をつける。
おれがまだ直に調べていないのは、食堂と他の個室だ。
おそらく、なにか手掛かりがあるとすれば……16人目の無人の部屋が怪しいだろう。
もしかしたら、なにもないかもしれないが、誰の目にも触れられていない場所だ。
何か残っているかもしれない。
キーンコーンカーンコーン………
『オマエラ、おはようございます! 朝です、7時になりました!
起床時間ですよ〜! さぁて、今日も張り切って行きましょう〜!』
……朝か。
おれはモニターに映ったモノクマの映像を睨みつけると、ノートをそっと閉じた。
(シャワーを浴びるか……)
昨晩入り損ねたことと気を紛らわすことも兼ねて、着替えを手にシャワールームに入る。
ご丁寧にも、クローゼットに入っていた着替えはどれも同じで、おれにぴったりのサイズだった。
なぜ犯人がこんなことを知っているのか、理由は分からない。
ただ、考えても事件に直接的な関係はなさそうなので、その件については保留することにしていた。
熱いシャワーを浴び、手早く洗髪、洗顔、着替えを済ませる。
そうして、濡れた髪をタオルで拭きながら、着用済みの服を持ってシャワールームから出た、そのときだった。
ピンポーン
「ん?」
「速水刹那、僕だ。起きているか?」
「ああ」
反射的に身構えるものの、すぐに聞こえてきた声に、肩の荷を下ろす。
安積だ。
タオルを首にかけ、手持ちぶさたになった手でドアを開ける。
予想通り、そこにいたのは顔を強ばらせた超高校級のボクサー、安積闘真だった。
「ん、濡れているな? シャワーを浴びていたのか?」
「ああ、昨晩に入れなかったんでな……。何か用か?」
「朝食ができたから呼びにきたんだ」
「……一人か?」
「ああ? 食堂に石蕗優一人では心配だからな。大山力也に待機してもらっている。
それに、僕は僕らをここに閉じ込めた卑怯者に負けるほど弱くはないからなっ!!」
何かあったのか。安積は有無を言わせない勢いで言い切ると、拳を強く握りしめる。
現状からすれば、安積の持論に賛成することはできないのだが……ひとまず、彼を一人にさせるべきでないことは明らかだった。
今の安積が犯人に出会ったとしたら、入学式のときのような事態を招くだろう。
「……そうか。それなら、おれも一緒に回らせてくれ。一人では危険だ」
「ああ、もちろんっ! 君と一緒なら心強いよっ!!」
張りつめた安積の頬が緩み、すぐさま笑みに変わる。
それに、内心おれは胸をなで下ろすとコートを着てから、部屋の外に出ていった。
昨日と同じ蛍光色のライトに照らされた廊下では、朝の清々しさというものはまるで感じられない。
それどころか、未だにこの悪夢のような現状が現実であることを思い知らされる。
「おー、刹那じゃん。おはよーっ」
「……」
廊下に出たところで声の方向、一階への階段のある方向に顔を向ける。
そこには、大きく手を振っている花月と深く頭を下げている東雲がいた。
「二人はさっき僕が起こしたんだ」
「そうなのか。おはよう、花月、東雲。よく眠れたか?」
「正直あんまり眠れてないわ。朝からおつかれさん」
「いいや、気にしないでくれ。僕が好きでやってることだ。食堂で会おう」
「オッケー、じゃあなっ」
花月と東雲の姿が階段に消える。
その姿を見送ってから、おれたちは皆を起こしに回ることにした。
安積の話によると、既に起きていたのがアヤメ、大山、石蕗、花月と東雲の五名。
まだ起こしに向かっていないのは御剣、篠田、北条、笹川の四名。
起こしにいったが留守なのか、起きていないのか分からないのが、不動、間宮、雅、米倉の四名、だそうだ。
「まずは他のメンバーから起こしていくつもりだ。
最後に間宮式、雅歌音、米倉澪をもう一度回る。これでどうだろう?」
「ああ、それで問題ない」
「よしっ。では、早速いくぞ。まずは御剣隼人からだ」
御剣隼人はちょうどおれの隣の部屋にあたる。
近いところから順次回っていくつもりのようだ。
「分かった。いこう」
頷き返し、安積が踵を返す。
こうして、おれは安積と共に皆を起こしいくことになった。
- Re: originalダンガンロンパ ( No.38 )
- 日時: 2013/07/18 07:44
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
—御剣隼人と北条花梨の場合
「御剣隼人、起きないか!! 朝だぞ!!」
ピンポーンピンポーンピンポーンッ!!!!!
「だーっ!! なんだよ朝っぱらからっ!!
しかもかわいいレディじゃなくてお前さんかよっ。ほんっとついてねえええええっ」
「早く出てくるんだ。もうご飯ができてるぞっ」
「やだねっ。どうせ時間なんてありあまってんだから、もう少し寝たっていいだろっ」
「そんな生活をしていたら、いつか後悔するぞっ!
起きるんだっ!!」
「うるせえ、ほっとけっ」
売り言葉に買い言葉、といったところだろうか。
どうも、御剣はテコでも出てくる気はないらしい。
安積が再びチャイムを何度も鳴らしているが、沈黙を保っている。
さすがに、いつまでもそうやっている訳にはいかないため、おれが別のメンバーを起こしにいくことを提案しようとした、そのときだった。
「あら、速水様、安積様、ごきげんよう」
「ああ…北条か。おはよう」
「朝から騒がしいですが、何かありまして?」
「御剣が起きてこなくてな。いま安積が起こしたのはいいんだが、もうしばらく眠りたいと」
「あら。それはいけませんわね。
私のボディガードの癖に、眠っているだなんて」
「げっ。そ、その声はまさか……花梨ちゃん?」
扉ごしから、凍りついたような御剣の声がもれる。
昨日から、北条と行動を共にしている間になにがあったかは知らないが、少なくとも穏やかでないことは理解できた。
「呆れましたわ、御剣様。やっぱりあなた様には私のボディガードなんて務まりませんわね。契約破棄させてもらいますわ」
「ちょちょちょっ、待ってくださいって。
すぐに起きますから、出ますからっ」
「だったら早く身支度を整えて出てきなさい。
一分も待たせたら即座に首を切りますわよ」
「わ、分かりましたっ。すぐに出ます、今すぐ出ますからっ!!」
バタバタバタッ……
忙しい足音がその場に響きわたり、おれは北条の方を見やる。
北条はロールした亜麻色の髪を揺らしながら、どこか退屈そうな様子で肩を落としていた。
「北条花梨、感謝する!!」
「別に、大したことじゃありませんわ。こちらの都合です」
「そうか。それじゃあ、また食堂で会おうっ」
「ええ、またのちほどお会いしましょう」
—笹川辰美と米倉澪の場合
「ふぁああ〜。なに、もうそんな時間?」
「笹川辰美、なんだその声はっ。だらしないぞっ!」
「相変わらず、朝からやかましいやつだな……。
おーい澪、起きろよー」
「…米倉がいるのか?」
「ああ? あ、そうそう、泊まり込みってやつ。
一人のベットで二人寝てさ。ほら、あそこにいるだろ?」
笹川がそう言って親指を向けた先には、ベッドの上にある白くて丸い塊があった。
一定の間隔を空けて膨らみ、縮むことを繰り返している。
どうやら、米倉はまだあそこで眠っているようだ。
「ほんと、澪の抱き心地は最高だぜ〜? 暖かいし柔らかいし」
「き、君はなんてことをしているんだっ!! そんなことをして恥ずかしくないのかっ!?」
「あぁ? 女子同士だし問題ねーだろが?
それともなにか、嫌らしいことでも想像したのかな、闘真くん?」
「なっ! そっ、そんなこと、断じてあるかっ!!」
「安積、その辺で……」
本当に仲がいいのか、悪いのか。
おれは再度口論になりそうな二人の間に割ってはいると、笹川に要件を告げた。
「笹川、米倉を起こしたら食堂に向かってくれ。朝食ができている」
「あいよ。やっぱ、刹那は話が早くて助かるわ。
また後でな、お二人さん」
「むうっ!」
「安積、行こう」
「……ああ。分かった」
—篠田眞弓と雅歌音の場合
「すぴー……むにゃむにゃ……。もう食べれないよぉ……」
「悪い……雅は後で引きずっても連れていくから、今は見逃してくれ」
篠田はそう言って、彼女のベットで大の字で眠っている雅を一別する。
彼女の話によると、先ほどのモノクマのアナウンスが流れてから何度も起こしにかかっているものの、まったく起きないらしい。
現に雅は今も寝言を呟きながら大きく寝返りをうっている。
なにも変哲もない日常なら苦笑するところだが、この状況下だ。
あそこまで熟睡できるとかえって羨ましい。
「分かった。……大変だな」
「ああ。……まぁ、なんとかするさ。わざわざありがとう」
「どういたしまして。それでは、また食堂で」
「了解した。またあとで」
- Re: originalダンガンロンパ ( No.39 )
- 日時: 2013/07/18 07:38
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
—間宮式の場合
「間宮式、起きるんだ!」
「…やはり、起きないな」
「やはり? それはどういうことだ?」
「昨日、おれと米倉が迎えに行ったときもこうだったんだ。
そのときは数式を解くのに夢中になっていて、まったく気づかなかったんだが」
「じゃあ、今回もその可能性があるんだな。そのときはどうしたんだ?」
「モノクマを呼んだ。やつはマスターキーを所持している。
それでどこの部屋でも開けられるらしい」
「では、今回もそうするしかないのか?
僕としては、あんなやつに頼るなんて御免だが……」
いかにも不服そうに安積は顔をしかめてみせる。
できることなら当然、おれもやつを呼ばずに事をすませたい。
だが、そいつはおれたちを見透かしたかのようにやってきた。
「ああ、なんて君たちはおバカさんなんでしょうっ」
「モノクマッ!?」
背後から話しかけられ、とっさに振り返る。
白と黒のクマのぬいぐるみ。
間違いなくモノクマがそこにはいた。
「この学園でボクほど頼りがいのある存在はいないのに……
ほんっと、君たちは頭が悪いねえ。呼んだらすぐこうやって来てあげるのにさ」
「だれが、貴様みたいな卑怯者にっ!!」
噛みつかんばかりに安積が叫ぶ。
朝から気になっていたが、安積はどうもやつに強い敵対心を抱いているようだった。
拳を強く握りしめ、モノクマをギラギラとした瞳で睨みつけている。
「やれやれ。強がっちゃって。
まあ、ボクがここで助けちゃうと今後の君たちのためにならないしねぇ〜。
愛のムチとはいえ、生徒が困っているのを見ているだけっていうのは辛いね〜っ」
「なっ! お前のようなやつに生徒呼ばわりされる筋合いは」
「安積、落ち着けっ」
モノクマの挑発にのりそうな安積を後ろに押し込み、前に出る。
性質(たち)の悪いこいつのことだ。
安積が自らにとびかかってくるように仕向けているのだろう。
モノクマに対する暴力は校則の五項目に違反。
違反した者には容赦のない”おしおき”。つまり、思いのまま殺すことができるという意味だ。
警官としても、友人としても、見過ごすわけにはいかない。
「悪いが、用が済んだのなら、とっとと出払ってもらえないか?
こちらはいま取り組み中なんだ」
「ちぇっ、ひどいなぁ。そうやってまたボクをないがしろにするんだから。
でも、先生負けないぞぉっ!! それじゃ、まったね〜っ!」
「っ。待てっ!! のわっ!?」
どこからともなく白い煙が噴出し、モノクマの姿が視界から消える。
それから数秒も経たないうちに煙は晴れ、目の前には蛍光色のライトに照らされた廊下が広がっていた。
……どうやら、やつは撤退したようだ。
ひとまず、無事であったことに胸をなで下ろし、おれは再び間宮の部屋の扉に向き直る。
モノクマを追い払えたなら、後の問題は間宮がいることを確認するだけだ。
「あら、二人とも。こんなところにいたのね」
「アヤメ・ローゼン!? 君がどうしてここにいるんだ?
先に食堂にいただろう?」
「ええ。でもあなたたちが来ないから、一応きたのよ」
「……一人で、か? あまり感心しないな」
「うふふ、そうかもね。ところで、どうかしたの?」
「間宮が部屋から出てこないんだ。チャイムも鳴らしているが、返事もない」
「あら、いけない子ね。それじゃ、わたしに任せてもらえる?」
「別にかまわないが……どうするんだ?」
「見ていれば分かるわ」
アヤメはおれたちにウインクを投げると、インターホンを押す。
それから、彼女はひと呼吸おくと空気が震えるような声でこう叫んだ。
「間宮、世紀の大発見よっ!! 新しい数式が見つかったんですってっ。
いまから食堂でその話があるそうよ、早く起きなさいっ!!」
「アヤメ、それ本当っ!!!?」
アヤメの迫真の演技から間を置かず、目を輝かせた間宮が飛び出してくる。
ちょうど今起きたところなのだろう。
寝癖で髪があちこちにはね、サイズの大きい白衣は紙のようにくしゃくしゃになっている。
「一体どんな式なの!? 常識が覆るくらいすごいのっ!?」
「うふふ。残念、嘘よ」
「……えっ?」
アヤメの笑みに、彼は全て悟ったらしい。
間宮は最初ぽかんと口を開けていたが、すぐさま崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。
「…アヤメの嘘つき〜っ」
うつ伏せのまま、じたばたと手足を動かす。
……まるでだだをこねる幼い子どものようだ。
「間宮、いくぞ」
「そうだ間宮式! いつまでもうつ伏せってないで、早く行くぞ!
君で最後なんだ!!」
「や〜だぁ〜。もう動けないよ〜。眠いよ〜」
「わがままを言うんじゃないっ!」
「い〜や〜だぁ〜っ!」
「むっ…。まいったな」
「……ああ」
相当騙されたのがこたえているのか、間宮は喚くばかりで絶対に動こうとはしない。
とは言え、この場に置いていくわけにもいかないので、どうしたものかと安積と顔を合わせた、そのときだった。
「あら、朝ごはん食べないの?
それじゃ間宮の分のご飯、わたしが食べちゃおうかしら」
「え……」
「今日の朝ごはんはフレンチトーストなんだけど……食べないのなら仕方ないわよね」
「フレンチトーストっ!?」
「石蕗がせっかく作ってくれたもの。わたしがおいしくいただくわ」
「まっ…待ってっ!」
「あら、なあに?」
「僕フレンチトースト食べるからっ。だから、食べないでっ」
「本当?」
「うん、食べるっ!」
「じゃあ、朝ご飯にいきましょ」
「うんっ」
先ほどまでテコでも動かなかった間宮が自ら立ち上がり、アヤメの後ろについていく。
その光景におれたちはただ呆然とするだけだった。
「さすが超高校級の俳優だな」
「いや…あれは俳優であるかどうかは関係ないと思うが」
そんな会話を交えながら、おれたちも二人に続き一階の階段に向かって歩き始める。
確か雅の話では、二人がお似合いという話だった気がするが、
どちらかと言えばあの二人は母親とその子どもという方がしっくりくる。
(とにかく……大事がなくてよかった)
見ていて微笑ましい後ろ姿を見ながら、久しく穏やかな気持ちで食堂に戻っていった。