二次創作小説(紙ほか)

Re: originalダンガンロンパ ( No.4 )
日時: 2013/07/03 12:48
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)

 おれは次に、白いシェフの格好をした水色の髪の男に話しかけた。


「僕は石蕗 優(つわぶき まさる)。料理人です」


 石蕗 優。
一流のグルメたちの舌を唸らせ、彼のいるレストランは連日行列ができる程の”超高校級の料理人“だ。
特に創作料理が得意で、石蕗優のオリジナルランチがそのレストランの一番人気メニューらしい。


「速水刹那だ。よろしく頼む。石蕗でいいか?」
「はい。速水さんと呼ばせてもらっていいですか?」
「ああ、かまわない」
「よかった。何か食べたい物があれば言ってください。といっても、こんな状況でそんなことを言うのもどうかと思いますが……」
「いや、気にしていない。むしろ楽しみにしている」
「はい」


 笑顔で頷いた石蕗を背に、おれは次に亜麻色の髪を巻いたドレス姿の女に話しかけた。


「ごきげんよう。わたくしは北条 花梨(ほうじょう かりん)。自分でこういうのもなんですが、”超高校級のお嬢様“ですわ」


 北条 花梨。
何人もの使用人がつき、固有財産で島一つさえ持っている宝石業者の大富豪である北条家の一人娘から”超高校級のお嬢様“と言われている女性だ。
教養が高く、外国語では英語を始めイタリア語、フランス語、ドイツ語を習得し、またバイオリンの腕も相当なものだという。
 ただ……この北条家に関して言えば、あまり良い話がない。
いわゆる金の亡者というのか、賃貸料の安い発展途上国の人々を酷使し、件数は少ないが質の悪い宝石をわざと高く売りつけたことが報告されている。


「速水刹那だ。よろしく頼む。北条と呼んでいいだろうか?」
「ええ。かまいませんわ。代わりに私も速水様と呼ばせていただきますわよ。ところで速水様」
「なにか?」
「私の下で働く気はありませんか?」
「……言っている意味がよく分からないが」
「そのままです。ちょうど動きの早そうな腕っ節の強い男が必要だと思いまして」
「悪いが、おれは遠慮させていただく」
「そうですか、残念ですわ」


 微かだが、ちっ、と舌打ちの音が聞こえた気がする。
どうも、彼女も一筋縄ではいかない女のようだ。敵に回すと、厄介なタイプかもしれない。
おれはそんなことを思いながら、次にこの中で一番大きい浴衣姿の男に話しかけた。


「おいは……大山 力也(おおやま りきや)。”超高校級の力士“だ」


 大山 力也。
 中学生で170cmの巨体を生かして最年少で相撲界に入り、その後初陣で優勝候補をつっぱり一撃で倒した”超高校級の力士“だ。
話によると、彼は気さくで、相撲ファンの間では彼との会話を楽しみにしている者も多いと聞く。


「速水で……いいか?」
「かまわない。おれも大山と呼ばせてもらっていいか?」
「ああ……。おいは、喋る、苦手だ」
「別に、おれは気にしていない」
「そう、か。……ありがとう」
「いや。これからよろしくな」
「よろしく、だ。速水」


 なるほど。片言であるが、穏やかで優しそうだ。
老若男女問わず、話しかけやすいだろう。
おれは一人納得すると、大山の影に隠れて遊んでいた女性に話しかけた。


「あ、わたし、雅 歌音(みやび かのん)っていうの!よろしくね!!」


 雅 歌音。
 小学6年生にして世界を飛び交う有名な合唱団の熾烈なオーディションを勝ち抜き、以後オペラや独唱の舞台で活躍している”超高校級のソプラノ歌手“だ。
彼女の歌は動画に上げられていたので聴いてみたが、音楽に詳しくないおれでもとても上手いのがよく分かる。


「速水刹那だ。よろしく頼む」
「じゃあ、せっちゃんねっ!」
「……せっちゃん?」


 なんのことか一瞬分からず、おれは思わず聞き返す。


「せっちゃん、とはおれのことか?」
「うんっ!あ、わたしのことはなんでもいいからね。好きに呼んじゃっていいよ〜っ!ただまーくんみたいにマヌケとかそういうのはなしねっ!!」
「あ、ああ。まーくん、とは?」
「あっちの子」


 雅はそう言って黒髪の白衣の男を指差す。
指された男はかなり、いや、相当機嫌が悪そうだ。


「ちっ……。おい、マヌケ。だれがその名前で呼んでいいっつった?ぶっ殺すぞ」
「あー!またマヌケって言った!」
「てめぇがふざけたことぬかすからだ、マヌケ。そして人の話はちゃんと聞け。耳が腐ってんのか?ああ?」
「ううー。せっちゃん、まーくんが怖いよー。行ってきてー」
「はぁ……」


 確かに、彼の言葉は随分と乱暴だろう。しかし、それに油を注ぐ雅も問題だと思うのだが……。
後ろに隠れている雅を一度覗き、おれは仕方なく彼のもとに向かった。


「ちっ。おい、一発しか言わないからよく聞けよ。俺様は不動 正治(ふどう まさはる)。“超高校級の医者”だ」


 ……不動 正治?
おれは一瞬耳を疑った。

 不動 正治。
外国に留学し、日本でいえば中学を卒業する前に医師免許を獲得した天才児。
診療はもちろん手術、薬の処方も的確で、どんな病気でも治す奇跡の名医とも聞いている。

だが、その彼がまさかこんなやつだとは……。


「速水刹那だ。よろしく頼む」


 何を話せばいいか分からず、とりあえずおれは手を差し出してみせる。
しかし、不動はおれにただ鋭い視線を返しただけだった。


「俺様は消毒液に浸した無菌の綺麗な手以外に触れるのが嫌いなんだ。どっか行け」
「はあ……」


 奇妙なことを述べるやつだと思いつつ、おれはすぐ隣で渋い表情をした赤いジャージを着た短髪の男に向き直る。
おそらくこいつで最後のはずだ。


「ああ。僕で最後だな。初めまして。僕は安積 闘真(あづみ とうま)。“超高校級のボクサー”と呼ばれている」


 安積 闘真。
中学生頃に始めたボクシングで才能が開花し、アマチュアから今やライト級のプロボクサーとしてオリンピックの出場を期待されている“超高校級のボクサー”だったな。
彼の戦い方は素早さを生かした高速のジャブと、相手の攻撃を避けることにある。
相手に攻撃を当てず、自分は的確にダメージを与えて点を稼ぐ。言わば、蝶のように舞い、蜂のように刺す、といったところだ。


「速水刹那だ。よろしく頼む」
「ああ。速水刹那、僕のことは好きに呼んでくれてかまわない」
「では、安積、と呼ばせてもらう」
「了解した。……」


 安積は一度おれを見ると、手を差し出してきた。
握手のつもりだろう。おれはその手をとって応えた。


「ふふ。遅刻はしたが、君はなかなか骨のありそうな男だな。こちらこそよろしく頼むよ」
「ああ」


 安積闘真か……。
どうにも初めて会った気がしない、不思議なやつだ。


(これで全員だな)


 おれは安積と堅く結んだ手を離し、改めて同期の生徒たちの顔を見回す。やはり、超高校級の者たちとだけあって皆、どこか特徴的だ。
もっとも、それは向こうからすれば、おれにも当てはまるのだろうが。