二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.41 )
- 日時: 2013/07/20 09:36
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
朝食を済ませた後、今回は各自、自由行動をとることになった。
まだ見ていないところを調べるのもよし、誰かと共に過ごすのもいい。
この場合、おれは間違いなく前者の人間だった。
新しい関係を築くことが苦手なこともあるが、一刻も早くこの現状を打破したい。
その気持ちが大きかった。
「……やはり、開かないか」
二階の西側、皆の部屋が集まっている寝室の一角にある名前も、プレートも存在しない扉の前でおれは肩を落とす。
ここにも鍵がかかっているらしく、ドアノブを回して押しても引いても扉はびくともしない。
校則で捜査は自由と謳われているが、実際施錠されてる場所が多いだけに、モノクマの思いのまま制限されている点は否めないだろう。
(わざわざ施錠するということは、なにかあるのか……?)
おれの予想が正しければ、この部屋は本来おれたちとクラスを共にするはずだった16人目、超高校級の怪盗の部屋になるはずだ。
相変わらず、どうしてやつがこの場にいないのか分からないが…各国の警察や防犯技術者たちが総動員しても捕まえられなかったやつだ。
入寮式でも15名と名言しているところ考えると、モノクマといえど、やつを捕まえられなかったのかもしれない。
あるいは、入学する予定だったが拒絶したのか……。
色々と考えられることはあるが、これ以上この場にいても進展がないことは明らかだろう。
(別のところを調査するか……)
ほぼ調査が終わった現段階では、改めて一度調査した場所をやり直すのもいいかもしれない。
特に…不動の言っていた部屋にある毒の件については。
「刹那くんっ」
「…米倉?」
足音が聞こえたと同時に廊下の角から長い金の髪を揺らして、米倉が現れる。
慣れない運動をしたせいなのか、彼女の息は少し荒かった。
「どうした? 急いでいるようだが……」
「はぁ…はぁ…うん。みんなが扉を一生懸命なんとかしようとしているから、刹那くんにも手伝ってもらえないかな…って…」
呼吸を整え終え、米倉が顔をあげる。
「わたしじゃ、邪魔になるから…こうしてみんなを呼びに行ってるの」
「なるほどな。だが、こんなところに一人でいるのはあまりよくないぞ」
「あっ…ごめんなさい。次は気をつけるね。……あれ? でも刹那くんも一人だよ?」
申し訳そうに首をもたげていた表情から一転し、米倉は小犬を思わせるような仕草で首を傾げてみせる。
そういえば、確かにおれも単独行動をしていたな……。
他人に注意しておいて、自分ができていないことにおれは内心苦笑する。
言い訳を言わせてもらえるのであれば、一人の方が調査に集中しやすいためだが、
そうは言えど、それが自分の言う”危険な行為”には違いない。
「そうだな…おれも気をつけよう」
「うん、お互い様だね。あ、ところで刹那くん。話を戻すけど、受付前に来てもらってもいいかな?」
「そうだったな。もちろんだ。
それに…いきなりあんたに約束を破らせるわけにもいかないからな」
「あっ…。ありがとう、刹那くん。それじゃ、行こう」
「ああ」
米倉の隣に並び、おれはできるだけ歩幅を合わせて歩き出す。
どうしてか、こうして歩くことが自然な気がしてならなかった。
‐受付横、玄関前
扉の前には思っていたよりもかなりの人数が集まっていた。
安積を始め、大山といった力の強い者や御剣、花月などの男子や笹川といった扉を懸命に叩いているグループと、
アヤメ、東雲、北条、間宮といった彼らを見守るグループが混在している。
「みんなー、刹那くんが来てくれたよーっ」
「おーっ。サンキュー米倉っ!」
「刹那か。ありがたいね」
「喜んでもらえるのはありがたいが…あまり過度な期待はしないでくれ」
「いやいや、そこんじょそこらの男どもに比べりゃ、かなりありがたい存在だからな」
「おいおい辰美ちゃん、そりゃないでしょ」
「事実ですわ」
「花梨ちゃんまで……」
「御剣隼人、手を休めるなっ!」
「だーっ!! 分かってるっての!!」
御剣ががっくりと肩を落とす隣で安積の叱咤が飛ぶ。
見ると、安積や大山がそれぞれジャブ、つっぱりを繰り出し、
かたやもう一方では御剣、花月、笹川がパイプ椅子を持ち寄って叩いているが、
出口を塞いでいる扉は乾いた音が鳴るだけで、傷一つついていない。
「ぜぇ…ぜぇ……。やっぱ全然びくともしねえな」
「ああ……。傷も…ついて……ない」
「ぜえ…ぜえ…。ほんっと、まじで装甲厚いときてんなこれ。超○金Zかよ」
「はぁ…なんのこれしきっ」
長い間やっていることに加えて、手応えもないためか、
扉を破壊しようとしているメンバーはかなり体力を消耗している様子だ。
見た目に違わず、この扉が丈夫であることが伺える。
「すまない、少しの間どいてもらえないか?」
「あら、何か策があるの?」
「一応、な」
一時前衛にいる皆には休んでもらい、おれは扉の前に立った。
遠くから見ても、おれの身長をゆうに越える大きさだと分かるが、間近であるとより一層、大きく見える。
まず、おれは確認のため、扉に触れてみた。
指先をとおして、冷たい金属の感触が伝わってくる。
(……本物の鉄だな)
過去にFBIの潜入捜査で、何度かこういう扉に当たったことがある。
このような扉がある場合、第一の選択としては爆弾を用いた爆破や、レーザーカッターなどによる切断が選ばれるが、あいにくそのような道具はない。
となれば、現状で選べる最もな選択肢としては最も装甲が薄い部分を探すこと。
当然、それでも物理的にほぼ不可能に近いが、それでも闇雲に打ち込むよりは確実だろう。
「………」
「刹那くん、どう?」
「……そうだな」
手の届く範囲で扉に触れたり、耳を当てて試しにノックしてみるものの……特に装甲が薄い場所はない。
鍵穴と思しきものも存在していないことから、この扉は玄関の前に設置されたものか、玄関を取り壊して設置されたものであることが分かる。
こうなると、残念ながら人の力でどうなるものではない。
「…かなり厳しいが、やってみよう」
結果はほぼ予想できるが、念のためおれは扉からある程度、距離をとって意識を集中させる。
そうして、おれは踵からの回し蹴りを数回、叩き込んだ。
カーン………カーン……
鉄扉が鈍い音を立て、脚に衝撃が走る。
その後も何度か試してみたが、予想通り、まるで手応えがない。
「おおおっ。すっげーっ! やっぱ本場は違うな!!」
「喜んでる場合でして?」
「こうなったら全員で体当たりだ!!」
「おいおいおいおい、そもそもお前さんの拳とか大山のつっぱりとか今の速水の蹴りでもどうにもならなんだぜっ!?
今さらそんなのどうにもならないってのっ!!」
「そんなの、やってみなきゃ分からないじゃないか! 諦めたらそこで終わりだぞっ!!」
「それはそうかもしれないけど、物理的に破壊するのは無理じゃないかしら?
安積も聞いていたでしょう。速水がかなり厳しいって言うことは、つまりほとんど無理ってことじゃないかしら?」
「む……。やはり…そうなのか?」
「ああ……。正直、人の力でどうにかなるものじゃない」
- Re: originalダンガンロンパ ( No.42 )
- 日時: 2013/07/21 08:08
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
「おおおっ。すっげーっ! やっぱ本場は違うな!!」
「喜んでる場合でして?」
「こうなったら全員で体当たりだ!!」
「おいおいおいおい、そもそもお前さんの拳とか大山のつっぱりとか今の速水の蹴りでもどうにもならなんだぜっ!?
今さらそんなのどうにもならないってのっ!!」
「そんなの、やってみなきゃ分からないじゃないか! 諦めたらそこで終わりだぞっ!!」
「それはそうかもしれないけど、物理的に破壊するのは無理じゃないかしら?
安積も聞いていたでしょう。速水がかなり厳しいって言うことは、つまりほとんど無理ってことじゃないかしら?」
「む……。やはり…そうなのか?」
「ああ……。正直、人の力でどうにかなるものじゃない」
痺れる脚を休め、おれはため息をつく。
そこでずっと黙り込んでいた間宮が口を開いた。
「ん〜…やっぱり、スイッチを探したほうがよくないかなぁ〜?」
「そりゃそうだけど……こういうのってラスボスが持ってるもんじゃないの?」
「ラスボス?」
「モノクマさんの……ことじゃない、ですか?」
「なるほど。だったら、どっちにしてもこの扉から脱出するのは難しいってことだよな……。
あ〜あ、どうしろってんだよっ」
頭をかきその場に花月がどさりと座り込む。
それに続いて、今まで必死に扉を破ろうとしていた他の皆も、同じようにため息をついてその場に座り込んだ。
確かにあのモノクマが、簡単におれたちを出すとは到底思えない。
自由を許されているとはいえ、いわばおれたちは人質。
余程、足手まといにならない限り、人質を手放すのは犯人にとって、圧倒的にリスクが大きいはずだ。
特に希望ヶ峰学園の生徒とあれば、警察としても余計に犯人に手を出しにくい状態だろう。
(もしかしたら、おれたちが気づいていないだけで、まだ見落としがあるのか……?)
だとすれば、もう一度この寮内を洗いざらい調べ直した方がいいかもしれない…。
そう思い、おれは皆の方へ視線を戻す。
疲労と期待が裏切られたことも重なったためか、全体的に沈んだ空気が流れている。
かといえ、気休めの言葉をかけることもできず、おれはただ彼らを見守ることしかできなかった。
「お〜いっ、み・ん・なぁーっ!」
しかし、そんな沈んだ空気を打ち破るかのように、明るい声が玄関前に響き渡った。
…この声は、雅の声だ。
「雅歌音と篠田眞弓か。どうした?」
「お昼ができたので呼びにきた。 デザートも用意してあるぞ」
「おおおおおっ。さっすが優だぜ、いい仕事すんなっ!」
「じゃあ、早速腹ごしらえだなっ。行こうぜ」
- Re: originalダンガンロンパ ( No.43 )
- 日時: 2013/07/21 19:13
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
その後、玄関から食堂にまっすぐ向かったおれたちは、
それぞれ席について石蕗が腕を振るった料理をいただいていた。
美味い料理を食べると気分が和やかになる、とよく言うが、その通りだろう。
沈んでいた皆の表情も先ほどと比べると、幾分か元気が溢れているように思えた。
「んんん〜っ。やっぱツッチーの料理美味しー♪ このオムレツ、卵がふわふわ〜っ」
「なあなあ優、お代わりある?」
「すみません、余分に作っていないので。少し待ってもらうことになりますけど、いいですか?」
「もっちろん! 頼んだ!!」
「あ〜っ、キョンキョンだけずるーいっ! ツッチー、わたしもわたしも〜っ!」
「二人とも、石蕗がご飯を食べ終わるまで待て。石蕗が食べられないだろう?」
「篠田さん、大丈夫ですよ。慣れていますから」
篠田に一礼し、石蕗が席を立つ。
そして、彼はエプロンポケットからペンとメモ帳を取り出し、ウエイターのように注文をとり始めた。
「他に何かご注文はありませんか?」
「それでは、紅茶をいっぱいお願いしますわ。ミルクティーで」
「はい、ミルクティーで」
「石蕗優、栄養ドリンクは作れるか?」
「栄養ドリンクですか? はい、できますよ。どういったものがいいでしょう?」
「大豆と野菜と……あと疲労回復に役立ちそうなものを入れたやつにしてくれ」
「はい。それじゃあ、食後にお出ししますね」
「優〜、おれこの蒲萄ゼリー追加で」
「はい。蒲萄ゼリーですね。オムレツが二つ、ミルクティーが一つ、栄養ドリンクが一つ………
以上でご注文はよろしいですか?」
「ああ……それで…全部、だ」
「分かりました。では少々お待ちください」
全ての注文内容を確認し終え、石蕗がペンとメモを片付ける。
それを合図に一時中断となった食事が再開される…はずだった。
「ちょ〜っと待ったあああーっ!!」
「ぶはっ!?」
「モノクマ!?」
長テーブルの厨房側の端、ちょうどおれの前である空席(‐今も行方の知れない不動のものだ)辺りからモノクマが飛びあがる。
当然、その予想外の登場に食堂内は騒然となった。
「ねぇねぇ、ちょっとちょっとおかしくない? なんで学園長のボクの分がないわけ?
全然来てない不動くんの分はちゃっかり用意してるのにさ」
「お前の分なんざ用意してるわけないだろっ。それにお前さんは機械だろうがっ」
モノクマの登場のときに吐き出したのか、付け合わせのスパゲッティのソースを顎鬚にまで散らした御剣が指摘する。
それに引き続き、他のメンバーも次々に声を荒げた。
「そーだそーだっ! お前の分なんてないぞ」
「っていうか、ここにおれたちを閉じ込めといた張本人にだれが飯なんて用意するかよっ!」
「ショボーン……。ひどいっ、みんなひどいや。ボクの繊細なガラスの心が粉々に砕け散ったよ」
「砕け散って結構ですわ」
しかし、その中でも特に郡を抜いていたのは、超高校級のお嬢様、北条花梨だった。
扇子を広げ、口元を隠しながら、汚らわしいものを見るような視線をモノクマに向ける。
「それよりも、早く私の視界からさっさと消えて下さりませんこと?
さっきからくどくどくどと……ぬいぐるみの分際でうっとおしいですわ。
せっかくのお食事がまずくなりましてよ。 貴方、どう責任をとってくれまして?」
そして、彼女は静かに、
しかしこれ以上の追撃を許さないと言わんばかりに侮蔑を含んだ言葉を容赦なく浴びさせていた。
一方モノクマは押し黙り、ギギギ…と機械音を鳴らして北条に顔だけを向ける。
もとが無表情なだけに、それがかえって不気味さを際立てていた。
「うおおお…やっぱこいつまじこえええ」
「何か言いまして、花月様?」
「いや、なんもないです」
北条の雰囲気に気圧されたのか、隣にいた花月が椅子を大きく引いて身を遠ざける。
そこまではいかないものの、彼女の周囲にいる御剣、間宮、米倉も引き気味だ。
「花梨ちゃん、そこまで言わなくても……」
「ま、まあ…でも、そもそも悪いのこいつだしなっ。花梨ちゃんの言う通り」
「うぷっ。うぷぷぷぷっ」
「え?」
「うぷぷぷぷっ。うぷぷぷぷぷっ。うぷうぷっ」
「な、なんだ貴様っ! なにがおかしいっ!!」
突然、御剣の言葉を遮って、モノクマが震えだした。
同時に、耳を塞ぎたくなるような不快な笑い声が食堂に木霊する。
まるで、壊れた機械のように。
まるで、おれたちを嘲笑うかのように。
「うぷ、うぷぷぷぷぷぷぷっ! あーはっはっはっ!!!」
やつはただ、不気味に、ひたすら高らかに笑い続けていた。
「揃いも揃ってボクをそんなにぞんざいに扱って……。
オマエラはいわば檻で飼われてる実験ネズミなんだよ?
つまり飼い主であるボクを怒らせたら、どうなるか分かるよね?
君たちもただじゃ済まないよ? マジでやっちゃうよ? マジでやっちゃっていいんですね!?」
「どういう意味だ?」
「うぷぷぷ……。ざ〜んねんッ!! もうボクは怒ったんだからッ!
穏やかな心を持ちながら激しい怒りに目覚めたクマの恐ろしさ、舐めるなよっ!!
あははははははははははっ。あーははははははははははっ!!」
おれの質問の意味に答えず、壊れたように笑いながらモノクマが床下に消える。
単に負け犬の遠吠えとも捉えられるが……あの様子を見ると、それだけではすまない気がしてならなかった。
どうにも、悪い予感がする。
「なんだか、すごく怖かったね……」
「あ…あんなの、ただのはったりだろっ。実際、いちゃもんつけてくるだけだし」
「そうだ。それに僕たちには絆がある。
この結束が破れない限り、あいつの思い通りなんかなるものかっ」
「ええ。相手は所詮機械ですもの。
高みの見物だけしかできない能無しがどうこようと、問題ありませんわ」
「あら。二人とも随分心強いわね」
「褒め言葉として受け取っておきますわ。では、石蕗様、早いところ注文のものをお願いします」
「あ…はい。分かりました」
安積や北条はそう言い切ったものの、他の皆は言い表せない恐ろしさを感じたのだろう。
あれほど和やかだった空間は、どこかぎこちないものに変わっていった。
二日目の昼食が終わり、おれは調査のため一度自室に戻ることにした。
他の皆は思うことがあったのか、昼食後は各々散り散りになっていった。
このとき、おれが気を効かせて皆の気分を少しでも落ち着かせるべきだったのかもしれない。
だが、このときのおれは知る由もなかった。
徐々に固まってきた絆が、モノクマによって容易く引き裂かれることを。