二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.44 )
- 日時: 2013/07/23 22:19
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
部屋に戻ったおれは間に休みを挟みながら、一人で調査を進めていた。
モノクマの言動が気にならない訳ではないが、それについて考えたところで答えが出るはずもない。
ならば、おれのできることをするしかないだろう。
「……やはり、妙だな」
前回はシャワールームだったため、おれは今回は机とベットを重点的に調べることにした。
そこで分かったことは、いままでにも見られたように、どの設備も新しいことだった。
ベットのシーツも布団も、あまり使われていないのかしわさえ寄らず、新品同様の状態を保っている。
絨毯も、壁も、机も何一つ汚れがない。
(……あとは、引き出しか)
ベットの隣にある机に戻り、全ての段の引き出しを取り外して床に置く。
それから、中身をすべて取り出して確認したものの、入っていたハサミなどの道具でさえ真新しい。
引き出しが入っていた奥の方も覗いてみたが、特に変わったところはなさそうだ。
「……ん」
確か、一番下の引き出しだったか。
手のひらに収まるほどの、透明な液体が入った瓶が目に入る。
(もしかして……これが不動の言っていた毒なのか?)
プラスチックの蓋を慎重に開け、あおぐように臭いを嗅ぐ。
甘い香り……アーモンドに似ているような臭いだ。
刺激はなく、鼻腔にすっと染み込んでくる。
「っ!?」
しかし、そのすぐ後にむせかえりたくなるような息苦しさを覚えて、おれは即座に蓋を閉めた。
ビンを絨毯に下ろし、離れたところで呼吸を整える。
(毒とみて間違いないな……)
少なくとも、臭いで何かしら体調に異変を感じれば、まずおれたちの体に害のあるものになる。
他にそれらしいものがなければ、おそらくはこいつで間違いない。
これが全員の部屋にあるというのなら、早いところ処分すべきだろう。
先ほどのモノクマの件もある。
悪いことにならなければいいが……。
毒と思われる小瓶をポケットに押し込み、散らかしたままの部屋を後にする。
そして、おれが廊下に出た直後だった。
『ピンポンパンポーン…』
「あー、あー…!マイクテスッ、マイクテスッ!
校内放送、校内放送…!」
「っ!!? モノクマ……ッ」
まるで妨害でもするように、廊下に設置されたスピーカーからモノクマの声が流れ始める。
わざわざ放送を流すということは、何かしら企んでいるはずだ。
おれは昼食時のことを思い出し、言い様のない寒気を覚える。
その悪い予感は……見事に当たった。
「えー、今から大切なお話がありますっ。
生徒の皆さんは至急、小ホールにお集まりください。
10分を過ぎても来ない悪い子には問答無用でエクストリームなおしおきなので、遅れないようにねッ。ではでは、ヨロシクぅッ」
一方的に述べた後、プツンと音を立ててスピーカーが切れる。
(一体…何をさせる気だ……)
正直なことを言えば、行きたくはないが……行かなければ殺されるのは目に見えている。
それに、逆に発想を変えれば、皆が集まるため、すぐに毒の件を伝えることができるメリットもある。
嫌な感覚は拭えないが、行くしかない。
おれは心を落ち着かせるように大きく深呼吸をすると、重い足取りで小ホールに向かっていった。
- Re: originalダンガンロンパ ( No.45 )
- 日時: 2013/07/25 07:52
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
重い小ホールの扉を開け、足を踏み入れる。
途端に、先にきていたメンバーたちの視線が一斉におれに集中した。
その中には、昨日の報告会以降、ずっと姿を見ていない不動の姿もある。
……どうやら、おれで最後だったようだ。
小ホールを見渡した後、皆の顔色を伺う。
程度の差はあれ、先ほどのことが尾を引いているのか、皆の表情はどことなく引きつっていた。
しかし、彼、不動だけは違った。
腕を組み、鋭い視線でおれを睨みつけると不敵な笑みをみせる。
「はっ、ポリ公か。相変わらずちんたらしてるようだな」
「……ああ。すまないな」
「ふん。だったらどうにかするんだな。そのうち殺されるぞ」
そうして彼は腕を組んだまま吐き捨てるように言うと、まだ何もない舞台の方に視線を戻した。
「おい、これで全員そろっただろ。早く出てこい、クソ野郎!!」
暴言とも言える不動の声が小ホールに轟く。
数秒も経たない内に、教壇からモノクマがとびあがった。
「うぷぷぷぷ…なーんだ、みんなちゃっかり揃ってるねっ。やればできる子なんだね」
「前置きはどうでもいい。とっとと要件を言え。
俺様は一秒でもここにいるのが嫌なんでな」
「まあまあ。そう急かさないでよ、不動クン。
ではでは、本題に入る前にちょっとしたクイズをしま〜すッ」
「はぁ? クイズ?」
「オマエラ、警察にはどんな役割があるか知ってる?
あ、これは失敬失敬、当の警察管がいたよね。
では”超高校級の警察官”の速水クン、答えてください」
「……第一に治安維持、第二に事件の捜査、犯人の逮捕。第三に、暴動の鎮圧。
ここでは、あんたたち犯罪者から、皆を護ることだ」
「へぇ、そぉ〜ですか、うぷぷぷ、うぷぷぷぷぷっ!
ブヒャヒャヒャヒャッ、アーハッハッハッハッ!!」
「…っ!? なにがおかしいっ!!」
「なにがおかしいって? 大外れだからだよ。
まったく的を狙ってない大外れっ。本当に警察官してるのキミぃ?
実は履歴書も嘘っぱちだったりしてない? ねぇ、そうなんでしょ?」
「Shut up!!(黙れ)」
驚異から市民を守り、それを未然に防ぐ者。
その役目を果たす警察、FBIの存在はおれにとって今でも憧れであり、誇りだ。
当然、おれ自身もそうであることに誇りを持っている。
だが、やつはおれを馬鹿にしたどころか、そもそもその存在さえ否定した。
それは、おれにとって大切な仲間を侮辱し、名誉を傷つけたも同然だった。
残念ながら、そこまで言われて黙っていられるほど大人ではない。
おれは次の瞬間になると、拳を固く握りしめた。
「それ以上おれたちを侮辱するなら、あんたをっ」
「せ、刹那くんっ。ダメ! ダメだよっ!!」
「っ!?」
背中に衝撃が走り、おれは思わず顔だけを後ろに向ける。
そこには、今にも泣きそうな顔でおれの背中にしがみついている米倉がいた。
「米倉……?」
「刹那くん…っ」
米倉の青い瞳に涙が浮かぶ。
そこで、おれはようやく我に返った。
右足が大きく一歩を踏み出している。
その方向は舞台で憎たらしく笑っているモノクマへ向かっていた。
あと少し米倉が遅かったら、間違いなくおれはモノクマを殴っていただろう。
そのあとは……考えたくない。
「……すまない。ありがとう」
「うんっ」
米倉がおれの背中に顔を埋め、こくこくと頷いてから、回していた腕を離す。
ふと周囲を見ると、他の皆は驚いた様子でおれを覗いていた。
どうやら……ずいぶんと見苦しい姿を見せてしまったようだ。