二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.48 )
- 日時: 2013/07/28 19:01
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
「……ねぇ、速水の説明は正しいと思うわ。どこが間違いだというの?」
「うぷぷぷぷぷ……。それはね、引き立て役だよ。
悪の組織やダーク—ヒーローのね。あいつらがやられることで悪役は引き立てられるの。分かる?
そんな安直な役割しかない警察を当てにするなど、お約束と言えどもどうかと思いますぞ」
「はっ。俺様は最初からあのポリ公に期待なんかしちゃいない。
ここの馬鹿どもと一緒にするんじゃねぇぞ」
「うぷぷぷ、さすが不動くん。天才外科医はやはり一味も二味も違いますなぁ」
「そんなことはどうだっていい。早く要件を言え。全員を呼び出して……何の用だ」
「そうそう。すっかり忘れるところでした。
学園生活が始まってはや一日が過ぎた訳ですが、
まだ誰かを殺すようなヤツは現れないよね!
おまけにボクを仲間外れにするほど仲よくなっちゃってさぁっ!!
うぷぷぷっ、おかげでボク的には退屈なんだよねぇ〜っ!!」
「そりゃけっこうなこった。こちとら犯人と仲良くなりたくないんでね」
「そうだっ。 モノクマ、お前の目論み通りにはさせないぞっ!!
何を言われても、僕らはみんなを殺したりなんかしない。絶対だ!!」
「あぁ〜、無駄な正義感に目覚めちゃって……やってられないよ、ホント。
あ、わかった! ピコーンと閃いたのだ!」
モノクマはそういい、右手を握り拳にして左の掌をポンと叩いた。
「なにを……だ?」
「場所も人も環境も、ミステリー要素は揃ってるのにどうして殺人が起きないのかと思ったら…足りないものが一つあったね!!」
「足りないものって…それは、なんですか?」
「ずばり、”動機”だよ! うぷぷぷ、だったら簡単だねぇ。
ボクがみんなに”動機”を与えればいいだけだもの」
「どういう意味だ、それは!?」
「ところで、オマエラに見せたい物があるんだけど…」
「まゆゆんの質問に答えてよっ!」
「うるさいなぁ…今からそれを言うんだから、静かにしてよね。
一回きりだかんね?
オマエラに見せたいのはちょっとした”お手紙”だよ…。
あ、プリントじゃないよ。ホントに外の世界から直筆のお手紙なの!!
しかもできたてホヤホヤのねっ!!」
「お手紙…です…か?」
「おいおい。一体何が書いてあるってんだ?」
「それはみなさん、ご自分でお確かめくださーい。
ではでは……。ウプププ……これでぇ〜すっ!!」
おかしくてしょうがないと言わんばかりに笑いながら、扇のように白い紙束を広げる。
おそらくあれが手紙、だろう。
全員分あるようで、ご丁寧に一枚の白い封筒に一人の名前が筆字で記されている。
「さぁ、みなさん。自分のをお取りくださーいッ!
ちゃんと読まなきゃ罰金だけじゃーすまないよぉー?」
モノクマが舞台から飛び降りおれたちに手紙を差し出す。
それに、渋々みなは自分の手紙を引き抜き、おそるおそる封を開けていった。おれも、気乗りしないまま封を切った。
封筒に入っていたのは、一枚の短い手紙だった。
シンプルな便箋で横に赤の罫線が引かれ、沿うように英文が続いている。
おれは、思わず目を疑った。
おれは、この文字を知っている。
走り書きで、いつもより崩れてはいるが、これはFBIでおれとずっと組んでいた先輩の字だ。
彼は、おれがFBIに正式に勤める前からよくしてもらっていて、
何度も一緒に危険を乗り越えてきたかけがえのない相棒でもある。
そういえば、ここに来るときもおれのことを心配して、止めた方がいい、と申告してきたのも、先輩だったな……。
おれはそんなことを思い出しながら、短い手紙の文字を追い始める。
そして、すぐに思い直した。
これが、殺人を促す動機となるくらいなら、とんでもないことが記されているに違いない、と。
それでも、おれは読むのを止めることができなかった。
「……どういう、ことだ?」
”ジャン、助けてくれ。
仲間の大半が、やられてしまった。
もうおれも、長くない。
絶望に、殺される”
先輩の手紙はそこで終わっていた。
よく見ると下の方には黒い斑点がまばらに散らばっている。
触ると、容易く黒点がきれいに剥がれ、ぱらぱらと宙に落ちていく。
そこで、おれの背筋は凍りついた。
この斑点は、おそらく……血だ。
かなり時間が経っているが、間違いない。
それに、内容からすれば、この血の主は先輩である可能性が高い。
だが、おれはにわかには信じられなかった。
おれが日本を離れたのはつい先日、一ヶ月前だ。
この短期間の内に、こんな状況になるほどFBIは脆弱ではない。
そんなことはそこにいたおれがよく知っている。
なにより、あのFBIの屈強なメンバーたちがやられただなんて、考えにくい。
- Re: originalダンガンロンパ ( No.49 )
- 日時: 2013/07/29 07:47
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
「お前、一体なにをしたっ!?」
「さぁ? ボクはお手紙を預かっただけですので」
白々しいことをっ。
おれは思わず手紙を強く握り潰すと、首を傾げているモノクマに鋭い視線を投げた。
そもそも、これはこいつが仕組んだものだ。当人が知らないはずがない。
「は? ……ちょ、ちょっと、待てよ!! 嘘だろ? 嘘なんだろっ!?」
「え…えっ? な、なにこれっ!?」
ほどなくして、他のメンバーたちからも驚きと悲鳴に近い声があがる。
そして、手紙を読み終えた後、皆の顔は一様に真っ青だった。
おれも…おそらくはそんな顔をしていただろう。
普段の落ち着いている状態であれば、嘘であると跳ね除けることができたかもしれない。
だが、最初に馬鹿にされて冷静さを欠いてしまったおれに、そこまで思考を巡らせる余裕もなければ、嘘の割には出来過ぎているこの手紙に、本物ではないかと思わざるを得ない状況でもあった。
「モノクマ、貴様はおれたちに何をさせたいんだ…」
「ボクがオマエラにさせたい事…? ああ、それはね……」
絶望…それだけだよ……」
モノクマはそういうと、たまらない様子で小躍りし始めた。
「うぷぷぷぷぷっ。
さて、手紙の詳しい内容を知りたかったらオマエラが自分たちの手で突き止めるんだね。
この寮に潜む謎…知りたければ好きにして。ボクは止めないさ。
だって、オマエラが必死に真実を求める姿も面白い見世物だしさッ!!」
「くだらねぇ」
モノクマの高笑いが始まると思われた直後、バリッと紙を引きちぎる音が割ってはいる。
見ると、不動が真っ二つから細切れに手紙を引き裂いていた。
想定外の出来事だったのだろう。モノクマが慌てた様子で腕を上下にふりはじめる。
「あああああぁーッ!!? な、なんてことをっ!?」
「はぁ? 何が悪い? ちゃんと読んでやったんだ。その後、俺様の手紙をどうしようが俺様の勝手だろ」
「え……えぇ、そりゃそうですけど。それは不動君にとって大事な人からの手紙じゃ」
「大事な人ぉ? 笑わせるな、このクズがッ!!」
険しい目つきのまま、不動は散り散りに破った手紙を宙に投げ捨てる。
彼の赤い瞳は激しく燃え盛っている炎のようにギラギラとしていた。
「俺様は帰る。こんなしょうもないことで、二度と呼ぶんじゃねぇぞッ!!」
紙だけが火の粉のようにハラハラと散る中、不動が帰っていく。
そのあまりにも堂々とした態度に、モノクマもポカーンと突っ立っていた。
おれでさえ、そうだった。
「なっ、なんだなんだなんなんだよおっ!! 調子に乗っちゃってさぁッ!!
ふーんだっ!! ボクもう知らないんだからっ!!」
喚き散らしながら、モノクマが床下に消える。
いつもであれば、清々する気分だろう。
しかし、この手紙の一件の後ではそうもいかなかった。
「……ッ」
「お、おい菊っ。一人じゃ危ないぞっ。待てよっ」
「こんなの嘘、こんなの嘘だって。嘘じゃなきゃやってられないって!! ちくしょおおおおおおっ!!」
「え、ええ……どうして、どうしてこんなことになっちゃったの?
分からないよぉっ!!」
「……こんなこと、あるわけがっ」
「おいおい、なんなんだこれはよぉっ!!」
「……冗談じゃありませんわ」
「どういうことだっ。一体、どうして……っ!!」
数名が小ホールを飛び出し、口々に否定、悲しみの言葉を述べる。
毒の件を伝えようにも、そこに口を挟む余地がない。
「おじいちゃん……っ。おじいちゃあん……」
「米倉……」
力なくその場に崩れ落ちた米倉がさめざめと泣き始める。
だが、おれ自身もとても他人を気遣えるほど精神的に余力がなかった。
……仮にも警察官であるおれが冷静にならなければいけないのに。
「もうやだよ、この学校!! ここから出させてよぉおおおおっ」
「すみません……部屋に戻ります」
暗い顔をしてまた一人、また一人と小ホールから出ていく。
そうして、小ホールはおれを含め、三人を残してだれもいなくなった。