二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ ( No.5 )
- 日時: 2013/07/03 12:50
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
(しかし、なんだあれは?)
おれは目の前の巨大な鉄板の扉を見る。
米倉が玄関ロビーと言っていたことを考えれば、おそらくこれが出口に繋がっているはずだ。
そう思ったところで、不動が声をあげた。
「おい、本題に入るぞ。仲良く“はじめまして”ばかり、やっている場合じゃないからな」
「そういえば、さっき言っていたな。この状況とお前も、という台詞。あれは、どういう意味だ?」
「刹那君、言ってたよね?色々あって寝ちゃったって。それってわたしたちも一緒なんだ」
「一緒だと?」
「希望ヶ峰学園の玄関ホールに入った直後に、いきなり気を失ってさぁ。そんで、気づいたらなんか自分の部屋っぽいとこで寝てたって訳!刹那もそうなんだろ?」
「ああ。だが、ここにいる全員が揃って気を失うということはそもそも考えられないことだが……」
「だから、お手上げってこったな。まるで質の悪いゲームの世界だぜ」
笹川の言葉に一同に全員が肩をすくめてみせる。
「だが、異常なのは、気を失った件だけではないぞ。君たちもここや、廊下の窓を見ただろう?至る所に、鉄板が打ち付けられていた。あれは一体なんだ!?」
「それと、わたしの荷物が見つかってないのよ。鞄はともかく、スケジュール帳がないと困るのだけど……」
「わたしの……鞠も……ありません」
「オレの持ってきたとっておきのドンペリもないんだ。せっかく祝いに一杯やろうとしてたのに」
一人、おかしなやつが混じっていたが、おれは無視することにした。
「それに、妙なのは、この玄関ホールもだ!奥の入り口が妙な鉄の塊で見事に塞がれてしまっているじゃないか。僕が入ってきた時にはあんな物なんてなかったぞ?」
「ひょっとして、なんか犯罪チックなことに巻き込まれたとか?」
「犯罪って…。もしかして、誘拐、とかですか?」
「みんなで希望ヶ峰学園から連れ去られて人質にとられました……なんてオチか? 最悪過ぎんだろ。オリエンテーション的なもんじゃないのか?」
「オリエンテーション?」
「そういえば、中学校では入学して間もない頃にそんなことやってたよ!学校に早く慣れるようにって」
「学校に慣れる……。ありえませんわ」
「ああ。この企画を立てたやつが目の前にいたら、泣かせてやる」
「ちょいちょい、お兄さん。マジで怖いから止せって」
「でも、ドッキリなら安心だよね! ねっ、まゆゆん!」
「なっ!?あ、あのなぁ、雅。わたしをそんな名前で呼ぶな!」
「え?どうして?まゆゆん可愛いのに」
「わたしもかわいいと思うよ」
「こらこら澪、そう言ってやんな。まゆゆんが恥ずかしがるだろ?」
「おい笹川!!」
そうして、いつの間にか異常事態から、雅が付けた篠田のニックネームについての論争が起こりそうなその時だった。
突然“それ”は始まった。
『ピンポンパンポーン…』
「あー、あー…!マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送…!」
「!?」
おれは突如鳴ったチャイムに周囲を見回した。
どうやらこの声はシャッターの閉まった受付の窓口上部にあるスピーカーから出ているらしい。
それは場違いな程、脳天気で明るい声……。
例えば、事故現場で鳴り響く笑い声のように、思わず眉をしかめたくなるような不快感、といえばいいだろうか。
とにかく、おれはその声に強烈な不快感を抱いていた。
「大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは……。
えー、新入生の皆さん。今から、入寮式を執り行いたいと思いますので、至急小ホールまでお集まりくださ〜い。って事で、ヨロシク!」
ぷつりと音声が切れ、静寂が訪れる。
見ると、そこにいるだれもが困惑した面立ちだった。
「小ホール?っていうか、なんだ?今のって…?」
「入寮式、と言っていたが……」
花月と篠田がそう呟いたところで、ガタンとおれたちの右手側の扉が重々しく開く。
扉の右にある立て札を見ると、それには確かに『小ホール』と書かれていた。
「奥が……見えない」
「本当、真っ暗だね〜」
扉付近にいた大山と間宮が興味深そうに扉の先を眺める。
本当に真っ暗だ。何があるのか、まるで予測できない。
もしかしたら、何か罠があるかもしれない。
「はっ。俺様は先に行くぞ」
「おいおい、そりゃ危なくねぇか!?」
「だったら一生そこで突っ立ってろ」
「でも、一人は危ないよ〜っ!まーくん待ってーっ!」
「だれが待つか。そしてマヌケ、てめぇは一回死ねッ!!」
「雅!まったく仕方ないやつだな」
不動のあらぶった声に引き続いて雅が行き、篠田がその後に続く。
にしても……まるで懲りてないな、雅は。
「入寮式?入寮式って言ったよな?」
「辰美ちゃん、どうしたの?」
「だっておれたちは希望ヶ峰学園に来てただろ?普通は入学式って言うんじゃないか?」
「確かに、そうですよね」
「なんだ。ってことはドッキリかよ。ビビって損したぜ。よし、行くか!」
「あ……。京くん、わたしも……行きます」
「僕もいこーっと」
「では、私も先に失礼しますわ」
ぞろぞろと暗闇に入り込んでいく面々を横目に、おれはしばしその場を動けずにいた。
本当ならFBIであるおれが最初に動くべきなのだが、どうにも頭に浮かんだ“嫌な予感”が頭から離れなかった。
そう考えていたのは、おれだけでもなかったらしい。
「本当に、大丈夫なのかな…?」
「今の校内放送にしたって、おかしいからな…」
安積、大山、笹川、石蕗、御剣、米倉、アヤメ、そしておれがその場には残っていた。
「でも、ここに残っていたとしても、仕方ないわ。それに、あなたたちだって気になるでしょ?今、何が起こっているか」
「そう……だな」
確かにそうだ。
炎の中に自ら身を投じるような危険が待っていたとしても、手がかりのない今となっては、行くしかない。
「この中だな」
先に入った者を追いかけるようにして、おれ達は歩きだした。
やはり、全員不安らしく、あの放送から沈黙を保っている。
それは無理もない。
もちろん、おれも多少なりとも不安を感じるが、経験上ある程度は慣れている。
ただ、こういう場合、彼らにどう声をかければいいか、それが分からなかった。