二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.54 )
- 日時: 2013/07/31 15:34
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
「お……い……? ……花月?」
「びっくり……じゃ、なさそうね」
三日目の午前12時、食堂。
おれも含め、数人がその場に硬直していた。
長テーブルの厨房側に近い、おれの隣の席で、小さな影が倒れている。
それは、ついさっきまで元気に話していたはずの「超高校級の歌舞伎役者」花月 京だった。
今は口から泡を吐き、真っ青な顔で大の字に倒れている。
「キョンキョン……? ねえ、どうしたの!? 起きてよぉっ!」
「雅、近づくなっ」
雅が花月の方に駆け寄ろうとするのを静止し、おれは頭を振る。
遅れて後ろの方でガラスの割れた音がした。
「嘘……どうして……? どうして、花月さんが!?」
「石蕗優、落ち着け。なにかの悪い冗談だっ!! こんなことは……っ」
落としてこぼれたジュースとガラスの破片をそのまま、石蕗がその場にがっくりと膝を落とす。
そして、安積が怒りで震えているところで、忌まわしい笑い声が流れた。
『死体が発見されました。一定時間後、裁判殺人を行います。
ヒャッハァ——————ッ!!! たっのしみだねぇッ、うぷぷぷぷぷっ!!』
その言葉は……本当に花月が死んだことを決定づけた。
同時に、このメンバーの中に花月を殺した犯人がいるということも……。
昨日のあれからは、ただいたずらに時間が過ぎていくだけだった。
ここから早く出たい。
しかし、そのためにはだれかを殺さなければならない。
その緊迫した状況のためか、ほとんどのメンバーは単独で行動していることが多いように思えた。
幸い、おれと大山と米倉はまだ繋がっていたため、各々の親しい友人たちを説得。
それ以外も、次第に落ち着きを取り戻したメンバーもおれたちと一緒に集まるようになった。
今日の昼、数も集まりつつあったおれたちは、一度食堂に集まって話し合うことになっていた。
発案は昨夜、個人的に安積を訪れ、おれの手紙を見せたのがきっかけだった。
安積も動機の手紙で悩んでいたが、おれの手紙を見て、自分だけではないことが分かり落ち着いたという。
そこから、全員で手紙を共有してはどうか、という案に発展し、一晩話し合って食堂で話し合うことを決めたのが今朝のことだ。
内容は、モノクマの用意した動機である手紙の中身を共有すること。
もちろん、無理に提示する必要はない。
一人でもだれかが提示すれば、理不尽なことが起こっているのが自分だけじゃないことが分かる。
それに、互いの腹の中を明かすことで、また信頼関係が築けるのではないか。
おれたちはその期待を胸に、今朝から部屋を回って食堂に集まるよう伝えてきた。
中には東雲のように部屋に閉じこもった者もいて、困難を極めたが……数名の説得でなんとか参加してもらえることになったのが、事件が起きる前だ。
ようやく実現されるはずが、まさかこんなことになろうとは………。
悔やんでも、悔やみきれない……っ。
「おいっ! 今の放送なんだって、わあああああああっ!!?
ちょ、ちょっと待てよ。もしかして、もしかして今モノクマが言ってた死体って……京?」
「……え?」
「はっ。騒がしいと思ったら……そういうことか」
今の放送を聞いたのか、笹川と不動、米倉も食堂に集まってくる。
「……きょう…くん……? いや……っ。いやあああああああああああああっ!!」
「お、おい菊ちゃんっ。しっかりしろっ」
「ほおっておきなさい。今はそれどころではなくて?」
「そんなことあるかっ!! 気絶しているレディをほおっとく訳にはいかないだろ!!」
北条の言ったことを気にせず、御剣が蒼白の顔でふらついていた東雲を受け止める。
おそらく、花月が死んだことで二重の意味でショックだったのだろう。
次の瞬間、東雲は完全に気を失って御剣の元に倒れ込んでいた。
「ねぇ、花月……死んだの?」
「そんな……一体、だれがこんなことをしたんだっ!!」
「そりゃあ、この中のだれかでしょッ」
場にそぐわない呑気で明るい声におれたちは一斉に声の方へ振り向く。
いつの間にか、長テーブルの中心にヤツ、モノクマが悠々とあぐらをかいて座っていた。
「なっ、なんだとぉっ!! お前、またふざけたことをっ!!」
「ふざけてなんかないって。だってボクはし〜っかり監視カメラで見ていたからね!
それに、規則正しい子を罰することなんてボクはしませんっ!!」
「ほお……で、あのネカマを殺した犯人はだれだ?」
「うぷぷぷ……それは今からみんなで決めることだよ」
「みんなで……決め、る?」
「どういうことだよっ!」
「うぷぷぷぷ。さて皆さん、寮の規則は覚えていますか?」
「寮の規則の六番目、仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。でしょう?」
「さすがは北条さんッ。よく覚えてますねぇ、手間が省けるよ」
「それで、これでどうしてわたしたちが犯人を決めることになるのかしら? 多数決でもするの?」
「んん〜〜ッ、惜しい! 最終的には多数決だけど、もっともっとおもしろい方法だよっ」
「おもしろい?」
「学級裁判の開幕で〜すっ」
「学級裁判?」
「うぷぷぷぷっ。まずはルールの補足からだねっ。耳の穴かっぽじってよ〜く聞けよ!」
あぐらをかくのを止め、モノクマが立ち上がる。
それから、やつはまるで台本を読むようにスラスラと話し始めた。
「誰かを殺した者だけがここから卒業できる、とは以前説明した通りですが……その際に守ってもらわないといけない約束があったよね?」
「自分が殺したってことをだれかにばれちゃダメ?」
「その通りっ。ただ殺すだけじゃダメ。他の生徒にもばれないように殺さないとダメなのですッ!
で、それがちゃ〜んとできてるか査定するシステムとして、殺人事件が起きた際、一定時間後に『学級裁判』を開くことにしましたっ」
「しました?」
「だってぇ〜、ただ単に多数決で決めちゃったらつまんないでしょう? 視聴者の皆さん的にも盛り上がりに欠けるしね」
「視聴者? だれのことだ」
「さぁ〜て、今回の学級裁判の議題は花月 京くんを殺した犯人はだれか!?ですっ。
学級裁判の場では殺人を犯した”クロ”と…それ以外の”シロ”との対決が行われますっ。
学級裁判で身内に潜むクロをオマエラに議論してもらい、その結果は学級裁判の最後に行われる投票により決定されます」
「そこで、オマエラが導き出した答えが正解だった場合、
秩序を乱した”クロ”だけがおしおきされるので、他の皆さんは共同生活を続けてください。
ただし、もし間違った人物を”クロ”にしてしまった場合は罪を逃れた”クロ”だけが生き残り、残った”シロ”全員がおしおきされることになります」
「そのおしおきって……どういうことですか?」
「もっちのロン、処刑に決まってるじゃーん!!」
「しょ、処刑ぃっ!? 冗談じゃないぜっ!!なんで何もしてないオレたちまでやられなきゃいけなんだよっ!!」
「さりげなく自分が犯人じゃないって言ってるよね、それ。ちなみに処刑の内容としては、
電気椅子で十万ボルトしたり、マグマの海に沈めたり、グングニルの槍で串刺しにしたりてんこ盛りだくさんっ!」
「…つまり、犯人を特定できれば犯人のみが処刑。犯人を特定できなければ、犯人以外の全員が処刑ということでいいんだな?」
「うんうん。ポリスくんは賢いね〜。ついでに、付け足すと犯人が特定できなかった場合、共同生活は強制終了となります。
以上が学級裁判のルールなのですッ!! 裁判員制度みたいなもんだねぇ。
ただし判断は慎重にねッ。なんたってオマエラの命がかかっているんだからっ。
今のことはルールに追加しておくからしっかり確認するようにっ!
言っておくけど、ボクは本気ですからッ。あ、いつでも本気だったね。ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
クロが処刑されることは百歩譲ったところであったとしても、間違えば他の生徒たちが全員処刑されるとは…無茶苦茶なルールだ。
まるで、おれたちを見世物にしているような……。
そういえばやつは視聴者と言っていたが、それが関係しているのか?
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.55 )
- 日時: 2013/07/31 15:37
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
「あ、そうそう。速水くん以外は捜査なんてできっこないだろうから優しいボクが必要な情報をまとめてみました。
その名も…ザ・モノクマファイル〜ッ。といいたいところですが、重いし紙代がかかるのでオマエラの生徒手帳にまとめて送信しときました。
いやはや、技術の進歩ってすばらしいよねぇ〜」
「ただめんどくさかっただけだろ、それ」
「うぷぷぷぷ…ま〜ね〜っ。それじゃ、捜査ガンバッテちょうだいっ!! いつやるか……今でしょっ!!」
いつやるか……今でしょ!!
モノクマは釘をさすように、再度言うと煙を撒き散らして消えていった。
理不尽なルールに困惑したおれたちと、二度と動かなくなった花月を残して。
しばらくの間、だれもが口を開かなかった。
おれや不動はともかく、それ以外の皆は人の死に慣れていない。
それどころか、この中に花月を殺した犯人がいるという事実に、疑いの視線を向けている者も少なくない。
疑念が疑念を膨らませる、最悪の状況だった。
それでも、彼、不動だけは相変わらず平静のままだった。
「ちっ……いつまでこうしてんだてめぇら」
舌打ちを交え、刺のある台詞をおれたちに浴びせてくる。
その行為が、ままならない状況に苛立っていた皆に油を注いだのだろう。
何人かの表情に怒りが浮かび上がっていた。
「なにをっ。お前さんが一番怪しんだぞっ!
毒の在り処も知ってる、ガキと仲が悪い、しかも動機だってあるっ」
「はっ。だったら俺様が犯人だって言うんなら証拠を集めてどうにかすることだなッ。
言っとくが、俺様はやっちゃいない。殺すなんてのは、菌をそこら中にばらまく行為だからな。
寒気がするぜ、気色悪ぃ」
「なっ! おい、お前。いくらなんでも京に失礼だろっ!」
「失礼? はっ、死んだやつに失礼もあるか。本当に失礼な輩はこのネカマを殺したやつだろ?」
「それは……」
「生き残りたいなら必死でやれ。そうでなけりゃ、何も言う権利はねぇ。俺様の邪魔をすんなッ!」
「あの〜、ちょっといい?」
「あぁ?」
「まーくんってさ、もしかして励まそうとしてくれてる?」
「へ……?」
「な、何を言うんだ雅っ。よりにもよってこの男がどうしてそんなことを」
「だって、まーくん、わたしたちががんばって捜査するように、って遠まわしだけど言ってるもん」
「あら、つまり自分を囮に、わたしたちに捜査をするように言ってるってことかしら?」
アヤメの解説に一同は目から鱗と言わんばかりに、不動を見る。
雅の言う通り、言葉の裏を返せばそう聞こえなくもない。
現にただ立ち尽くしているだけのおれたちが、彼の言葉で動き出そうとしているのだから。
「っ……このままクズどもと死ぬのは御免だ。それだけだッ」
不動は一度、忌々しいものを見るような視線で雅を見下ろすと白衣を翻し、 かつかつと靴音を鳴らして一人花月の亡骸へと向かう。
それから、彼はおれの方を睨みつけて言った。
「見張りを用意しろ。だれかが証拠隠滅する前にな。…だろ、ポリ公」
「ああ、そうだな。だれか、見張りをしてくれないか? 二人いてくれるとありがたい」
「……僕がやろう。僕は推理とかは無理だ」
「おいも……見張り……やる……」
「ありがとう、頼んだ」
安積と大山の二人は頷き花月の死体の前に移動する。
それから、おれは皆を見渡した。
「この状況だ。お互いに信じられないかもしれないが、まるっきり信じないのはよくない。
いくら経験者とはいえ、おれも皆の力がなければこの事件を解き明かすことができない。
だから……ある程度の協力は必要だ。だれを信用をするかは、皆に任せる」
「そうですわね。いつまでも死人のことを気にしていても仕方ないですもの」
「北条、その言い方はないだろう! さっきから、目に余るぞっ!!」
「私は本当のことを言っているだけです。篠田様、他人を気遣うのも誠によろしいですが、自分の命がかかっていることをお忘れなく」
「っ」
「篠田、今は犯人を突き止める方が先だ。喧嘩をしている場合じゃない」
「……わかってる」
「じゃ、だったら早いところ始めようぜ。犯人捜しってやつを」
「……やるしか、ないんですね」
「まじかよ……。ああぁっ、仕方ねぇやってやんよっ!」
やるしかない。
皆は口々にそう呟いていた。
自分を奮い立たせるかのように。
おれも…やるしかない。
生き残るためにも、これ以上犠牲を増やさないためにも。
おれは、鬼になろう。