二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.60 )
- 日時: 2013/08/08 21:20
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
速 花 北 間 安 笹 雅 大
水 月 条 宮 積 川 山
(厨房)───────────────────────────────(入口)
不 石 御 米 ア 東 篠
動 蕗 剣 倉 ヤ 雲 田
メ
【 捜 査 開 始 】
—花月の死体前
直前までここにいたこともあって、東雲を運んだ御剣と篠田、雅以外のメンバーは食堂をうろついていた。
やはり、身近な人間が死んだショックに加えてはじめての捜査の為か、捜査もかなり難航している様子が伺える。
時間も残されていない現状では、やはり慣れているおれがやるしかないだろう。
まずおれは情報を得るために、生徒手帳からモノクマファイルを選択した。
そこには、被害者の情報が短的にまとめられていた。
被害者:『超高校級の歌舞伎役者』 花月 京
死因:毒を服用したことによる毒死
死亡時刻:12時頃
死体発見場所:1F食堂
備考:目立つ外傷はなし
あくまで必要最低限……か。
死因と時刻が特定されているのはありがたいが、この情報だけで犯人を絞るのは厳しい。
やはり、皆から情報を集める必要がある。
「安積、大山、調べてもいいか?」
「もちろんだ。頼む」
「ああ、任せろ」
安積と軽く拳をぶつけてから、俺は花月の遺体を見て回る。
モノクマファイルを信じるのであれば、凶器は毒とみてほぼ間違いないだろう。
花月の遺体を見ても、触って確認しても、特に外傷らしいものはなさそうだ。
しいて言えば最期にもがき苦しんだのか、彼の喉は青く滲んでいた。
−「おはよう刹那っ!」
安積と全員を呼び集めていたとき、花月は一人、東雲の部屋の前で待っていた。
—「菊はおれが守るって約束したからな。出てくるまでここでおれが待つよ」
そう言い、白い歯を見せて笑っていた彼は泡を吹き、虚ろな瞳をしている。
あの明るくて、元気に満ち溢れている雰囲気は当然、一切感じられなかった。
何度見ても人の死は慣れない……慣れたくもない。
だが、悲しんでいる余裕は残されていない。
花月の無念を晴らすためにも、生き残るためにも、犯人を特定しなければ。
「これは……湯呑、か?」
力なく横たわった花月の右腕近くに、割れた湯呑が転がっている。
それを中心に周囲のフローリングの床には、透明な小さな水たまりが点々と作られていた。
おそらく、湯呑みに入っていた飲み物なのだろう。
「ああ……。花月は……いつも……それで……茶を、飲んでいた」
「”いつも”?」
「多分……そうだった、と思う」
いつも花月が使っていた湯呑か……。
それなら、花月を狙う際、利用できるかもしれない。
犯人が愉快犯である場合を除けば、だが。
「そういえば、不動正治がさっき妙な薬を使っていたぞ」
「妙な薬?」
「詳しいことは分からないが、毒の有無を確認できるとか言っていた」
「何か分かったか?」
「湯呑から陽性が出たらしい。そう言っていたな、大山力也」
「ああ……。そう、だ」
湯呑から陽性反応があったということは、毒が湯呑から検出されたことを意味する。
これで……凶器ははっきりすることができたな。
おれは今のことをノートにメモし、そのまま見張りの二人に向かい直る。
「念のため聞きたいんだが…二人は今朝から今まで、何をしていた?」
「何をって……僕は今朝から君と一緒にみんなを回って説得して、ほぼ全員が向かったところで食堂にきたんだ」
「おいは……朝は石蕗と一緒に瓶に入ったジュースを運んでいた。そのあとは、賞味期限を見たり、種類ごとに分けるのを手伝っていた」
「ふむ……。ありがとう、引き続き頼む」
「ああ、僕らに任せておけっ」
「頼りにしている」
おれは簡潔にまとめると、先程から花月の周囲をぐるぐる回っている間宮に近づいた。
「間宮、なにをしているんだ?」
「なにか落ちてないかな〜って。……なにもなかったけど〜」
白衣を床に引きずりながら、間延びした口調で間宮が答える。
扉前のときと違い……意外と彼は冷静なようだ。
「間宮、今朝から事件が起こる前まで何をしていたか覚えているか?」
「ん〜? 今朝はアインシュタインの計算をやって〜、インテグラルと無限大について考えてる途中で〜
アヤメに呼ばれてここにきたよ」
「それから後はどうしたんだ?」
「ノートにいっぱい数式考えたんだ〜。ほら」
そう言って間宮が見せてきたノートは隅々まで計算式の列が並んでいた。
間宮曰く、自分で式を作ってひたすら解くという遊びらしい。
「これはルートつきの指数を使った問題で〜、こっちが…」
「すまないが、その話は後にしてくれ」
「え〜、せっかくこれからがおもしろいのに」
「それよりも今は学級裁判、だろう?」
「あ…。そっか。そういえば速水〜」
「ん?」
「雑巾がないんだけど、知らない?」
「雑巾?」
「うん。花月の周りの椅子とか机、びしょびしょでしょ〜?
それで拭こうと思ってたんだけど、いつもカウンターの上にあったやつがなくなってるんだ〜」
ここ、ここ、とダボダボの白衣の腕で間宮が示す。
それは、花月が倒れた際にこぼれた毒入りの飲み物を指していた。
「いや…ふかなくてもいい。あれが重要な証拠になる可能性もあるし、そもそも危険なものだ。
だから、現場にはできるだけ触れないでくれ」
「そうなの? うん、わかった。それじゃあ、別の場所を探してみようかな〜……」
「そうしてくれ。おれも調べよう」
「うんっ。じゃあね」
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.61 )
- 日時: 2013/08/08 21:21
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
何か思いついたようにスリッパをパタパタ鳴らしながら、間宮が食堂を出て行く。
その後ろ姿を見送った後、おれは椅子に深く腰を下ろしている彼女に近づいた。
「北条、なにをしているんだ?」
「なにをしているように見えます?」
「……座っているようだが?」
「ええ、おっしゃる通りですわ」
「……調査はしないのか?」
「もうヘトヘトですので、こちらで休んでいるのです」
何を言っているんだ……?
おれは北条の言葉に思わず押し黙った。
先ほど、篠田を圧した(おした)ときに自分の命がかかっていると言ったはずだが……まさか何もしない気か?
「……自分の命がかかっているんだぞ。休んでいる場合か?」
「大丈夫ですわ。強力な味方がいますもの。これ以上の労力は無駄にしかなりません」
「あんた……本気か?」
「あんた、とは失礼ですわね。それに、何度も同じことを言わせないでくださります?
私は無駄なことが嫌いですの。私がやらなくても速水様が答えてくださるのでしょう?」
北条はほくそ笑み、扇で自らを扇いでいる。
どうも…彼女は自分で捜査をする気がなさそうだ。
一人が捜査をしないということはそれだけ手に入る情報も少なくなる。
失敗の許されない、限られた時間の中では致命的なものになりかねない。
「どうしてもか? 仮におれが犯人ならどうする気なんだ?」
「ありえませんわね。あなたが毒を入れる暇がないことぐらい存じております。そうでしょう?」
北条は髪をかきあげると、至極どうでも良さそうにおれを睨みつける。
……どこからその自信があるかは分からないが、確かにおれは犯人ではない。
同時におれは悟った。
彼女に…何を言っても無駄だと。
「では聞かせてもらえないか。今朝から今まで、何をしていた?」
「私は朝から部屋で待機していましたわ。特に用事もありませんでしたので。
それで、お昼近くになって貴方がたが食堂に集まるようおっしゃられたので、足を運びました。
そして、間もなく花月様が毒でお亡くなりになった……。以上ですわ」
「分かった……協力、感謝する」
「ええ。がんばってくださいませ」
北条が満面の笑みで更に深く腰掛ける。
それに一種の不信感を覚えながら、おれは不動のいる厨房の方へ向かった。
—厨房内
厨房には不動の他に、アヤメ、石蕗、笹川、米倉の五名が、それぞれ分かれて何かを調べている。
その中で、おれはまず不動の元に足を運んだ。
「……ほお」
「不動、何か分かったのか?」
「ポリ公か………」
不動はおれを一別した後、試験管の透明な液体をて早く振り混ぜる。
おそらく、安積が言っていた毒を検出するための薬品だろう。
しばらく操作をしているようだが…試験管の中の色は変わらないようだ。
「あのアホのファイルにも書いてあったが、花月のやつは間違いなく毒で死んだ。
それで、今試してみたが……おもしろいことになった」
「おもしろいこと?」
「湯呑に毒が入ってるってことは、茶に入ってる可能性が高い。だが、この茶葉と急須からは一ミリも出なかった」
そう言って、不動は急須と茶葉の入った缶を見遣る。
聞くと、あれらが花月の茶を淹れたときに使われたものだそうだ。
状況的にも、湯呑に毒があったのは間違いない。
だが、肝心のこれらに毒が含まれていないのは……妙な話だ。
「まったく…か」
「そうだ。ここまで言えば分かるだろ。ついでに言っておくと、この毒は空気に晒すとアウトだ。
朝一で仕掛けたところで、ほぼ無理だろうな。昼前には、毒なんてすっかり消えてるだろう」
空気に晒すと、毒の効力がなくなる……。
殺人に使うとすれば、直前に使う必要がある、ということか……?
「不動、最後にひとつだけいいか?」
「なんだ」
「今朝から事件が起こるまで、何をしていた?」
「はっ、アリバイか? 何もしてねぇよ。部屋で掃除していただけだ」
「証明できる人物はいるか?」
「部屋にいているわけねえだろ」
「……それもそうだな。すまない」
「ったく、調子にのんなよ。ポリ公がッ。俺様はもう行く。大体の目どころはついたからな」
不動は不服そうに顔を歪めると、靴音を立てて厨房を出て行った。
「おーい刹那っ」
不意に名前を呼ばれたので、その方向に振り返る。
笹川と米倉だ。二人とも食器棚の近くで手を振っている。
「なにか用か?」
「あのね、みんなのアリバイを聞いて回ってるみたいだからわたしたちも言ったほうがいいかなって」
「そうだな……。二人は何をしていたんだ?」
「おれはお前らにもだけど、澪に頼まれてね。今日の昼から来るようにってやつ」
「ああ」
「でも、お腹が減ったから結局朝から食堂に行ったんだけど……優くんと力也くんがもう来ていて。
それで、一緒にお手伝いをすることにしたの」
「手伝いか……何を手伝ったんだ?」
「ジュース用グラスの準備。澪が洗って、おれが拭く係だな」
「なるほど。他にだれか手伝っていたのは?」
「えーと……そういえば、菊が京の茶をいれてたな。京はジュースがあまり好きじゃないからって言って」
「では湯呑も東雲が用意したのか?」
「ううん。湯呑は優くんが用意してくれたよ。それをわたしと辰美ちゃんで洗ってから出したの。
汚れは何もなかったけど、使う前は洗ったほうがいいって優くんが言ってたから」
「なるほど……。食器を拭いたときに使った布巾が見当たらないが?」
「それなら、トイレにいった後、ランドリーに持ってったぜ。洗濯しなきゃいけないだろ?」
「トイレ? それじゃあ、事件直前にいなかったのは……」
「うん……。お昼の話し合いの前にトイレに行こうって、辰美ちゃんが言ってたからついていったんだ。
それからランドリーに行ってから戻ってきたら、京くんが………」
「……そうか」
「ほんっと、だれが毒なんて入れたんだろうな。よりにもよって、京のやつに……」
「うん。菊ちゃん…ショックだろうな……。隼人くんと眞弓ちゃんと歌音ちゃんに運ばれたみたいだけど、大丈夫かな」
気絶までしたことを踏まえれば、幼なじみであり、慕っていた花月を失った東雲の心情は計り知れない。
時間の都合が合えば、後で様子を見に行くか……。
「それじゃあ、おれはこれで」
「うん。がんばろうね、刹那くん」
「おれらじゃ、あんまり役に立たねーかもしれないけどな」
「いいや、そんなことはない。お互いがんばろう」
会釈し、おれは笹川と米倉に別れを告げる。
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.62 )
- 日時: 2013/08/08 21:21
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
次に、おれは一面に並んだ瓶ジュースの前で立ちすくんでいる石蕗に話しかけた。
「石蕗…話を聞いてもいいか?」
「あ…はい。ぼくでよろしければ……。あまりお役に立てないと思いますけど」
「いや…そんなことはないさ。今朝から事件が起こるまで何をして過ごしていたんだ?」
「ぼくは話し合いをするなら喉が渇くだろうと思って、朝から大山さんと一緒にジュースを運んでいました」
「そこのジュースだな……」
「はい……。不動さんが以前、毒があることをおっしゃっていたので……。
皆さんが気にされないように、まだ蓋の空いていないジュースを持ってきたんです」
「そうか……。念のため聞くが、石蕗が食堂に来たとき、だれかいたか?」
「いいえ。食堂が開くと同時にきたので、ぼくと大山さん以外はだれも来ていなかったと思います」
食堂が開くのは午前7時。それと同時に石蕗が入り、彼よりも先に食堂に来た者はいない……。
不動の証言と合わせると、犯人が毒を入れられるのは七時から事件が起こる前までになるな。
「でも……結局、花月さんは……」
「今はそれを気にしていても仕方がない。続きを教えてくれないか?」
「……はい。その間、笹川さんと米倉さんがいらっしゃったので、お二人にジュースを注ぐためのコップを洗って拭いてもらいました。
ぼくたちは、種類ごとに分けたり、賞味期限を調べて早い順に手前から並べていったんです。けっこう乱雑にしまわれていたので」
「それで、花月が倒れた、と」
「はい。ようやく仕分けが終わったので、ジュースを運び始めたのですが……そのときに」
「了解した。最後に、一つ。間宮がカウンターにあった雑巾がないと言っていたが、その件で何か知らないか?」
「雑巾? 皆さんがよくこぼされているので掃除用に置いてあるものですけど……なくなっているんですか?」
「ああ」
「困りましたね……。台ふきは一枚しかないので」
「台ふきは一枚しかないのか」
「はい。それ以外の食器、器具を拭くための長い布巾は二枚ずつあるんですけど…台ふきだけは一枚だけなんです。困りましたね……」
「いつぐらいから無くなったか覚えているか?」
「すみません……。ジュースの方に気を取られていたので。確か最初にぼくが入ってきたときはあったと思います。
カウンターの下の棚から取り出したので」
「その棚、他に何か入っていないか?」
「食器と器具を拭くための布巾と、掃除をするためのゴム手袋、洗面台の中にセットする網があります。これです」
石蕗が大きく扉を開き、中身を取り出しながら説明していく。
おれも一緒に確認してみたが、先の石蕗の説明と違いはない。
強いて言えば、台ふき以外の布巾が一組なくなっているが……それは、笹川がコップを拭くために使ったからだろう。
「……分かった。長くなったな、すまない」
「いえ、そんな。ぼくができることなんてこれくらいですし……」
「そんなことはない。あまり気に病むなよ」
「……はい」
目の前で殺人事件が起こったためか、随分と顔色が悪い。
まるで…事件が起こったのは自分のせいだと言わんばかりだ。
決して石蕗が悪い訳ではないのに……。
(もう三十分経過している……)
正確な時刻は不明だが、そろそろモノクマが退屈している頃だろう。
早く犯人に繋がる証拠を集めなければ。
コトダマ1:凶器は毒。湯呑から検出された。
台拭き1:カウンターにあった台ふきがなくなっていた。
コトダマ2:急須、茶葉からは毒が検出されなかった。
不動の証言:毒は空気に数時間晒すと消える
コトダマ3:役割分担。石蕗が湯呑の準備。米倉が洗い、笹川が拭いたあと、その湯呑で東雲が茶を入れた。
台拭き2:台ふきは一枚のみしかない。台ふきがあった棚には他の布巾と掃除用具が入っていた。
石蕗の証言:朝、石蕗たちよりも早くに食堂にきていた者はいなかった。