二次創作小説(紙ほか)

Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.73 )
日時: 2013/08/14 08:46
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html

 一階に向かうと、一階の階段の裏手に地下に繋がる階段が現れていた。
何度も通ったが、このような通路は見かけたことがない。
おそらく、モノクマが今まで隠していたのだろう。

 階段の先に向かうと、紅い箱を取り囲むように黒い槍が突き刺さっているような装飾が施された、エレベーターと思しきものにぶちあたった。
既にその中には東雲を残しておれたち以外のメンバーの全員がそろっている。
 初めての捜査に次いで初めての裁判。
大半のメンバーの不穏な様相だ。


「本当に……やるしかないのかよ」


 各自の不安を先駆けて御剣が言う。
それに、おれはこう答えるしかできなかった。


「仕方ない……おれたちの命がかかってるんだ」
「でも嫌だよぉ……。みんなを疑うなんて」
「だったら死ねよ、マヌケ」
「うう……それも嫌だよぉ」
「不動くん、そんなこと言ったらダメだよ。歌音ちゃんは仲間なんだよ」
「そのお仲間を信じた結果がこれだろ?
 それに、いつから俺様がてめぇらの仲間になったって?」
「おい。もっとマシな言い方できないのかよっ!!」
「事実だろ。あのカマはおまえ等の誰かに殺されたんだからな」
「あら、自分は犯人じゃないって言うのね」
「当然だ。俺様は犯人じゃないからな」


 ぼそりぼそり、と不動を中心にざわめきが起こる。
よく見ると、ほとんどのメンバーは彼に対して疑いの眼差しを向けていた。

こいつが花月を殺した犯人ではないか。と。

 先入観に任せた議論が進まなければいいが……。
おれがそう危惧する内に、エレベーターが大きく揺れる。
どうやら目的地に着いたらしい。


「ここは……」


 重々しく開いた扉の先に広がっていたのは、他の場所と違い異質な場所だった。
 部屋は円形で下には赤い絨毯が引かれ、壁には白黒のモノトーンカラーのブロックで埋め尽くされている。
所々、壁に赤いカーテンを携えたアーチ型の窓が並んでいるが、ここは地下。窓本来の意味をなさない。
代わりに、天井にぶら下がったシャンデリアが煌々と照らしているため、部屋は昼間のように明るくなっていた。

 中心には16台の教壇が円形に並んでおり、幼稚園児がクレヨンで書いたような平仮名のネームプレートが置かれている。
教壇は学校で見かけるようなものではなく、裁判所で証言台に使われるものだ。
お遊びのような物言いの割には、随分と手が込んでいる。


「あれ、なにかな?」


 米倉が指差した方向にある教壇。
東雲とアヤメの間の席に、ちょうど花月の身長程の高さの看板が掲げられていた。
看板の先には遺影と言うべきか、花月の顔写真が飾られ、大きく×印がつけられている。


「おそらく……あれは花月の席だったんだろう」


 相変わらず、趣味が悪い。
恐らくはだれもがそう思ったときだった。


「やぁやぁ皆さんお集まりですか!? うんうん。無事に揃ってるね」
「わっ、出たぞ」
「なにを〜人をゴキブリみたいに! いや、この場合はクマをゴキブリのように、かな?」


 ちょうどおれと正反対の石蕗の教団の後ろ側にある一回り高い位置の玉座からモノクマが飛び出してくる。


「学園長さん、ちょっと聞きたいことがあるのだけど」
「はい、なんでしょう?」
「あそこの花月の写真。あれは一体どういう意味?」
「ああ。あれはね、死んだからって仲間はずれにするのは可哀相でしょっ! 
 友情は生死を飛び越えるんだよっ」
「どの口が友情を語るんだが……」
「では、あちらの空席はなんでしょうか?
 名前もありませんし、私たちは15名です。なぜ16席もあるのでしょう?」
「ああ。それは深い意味はないよ。ただ単に16名が収容可能なだけ」


 16席目……パンドラの席だったのか?
 おれは無名の教壇を眺め、思索する。
16部屋の件といい、やはり本来はやつもここにいたのではないか。
そう思えてならない。


「さてと、前置きはこれくらいにして、早速やっちゃおっか!!
 みんな首を長くして待ってるわけだしさっ!!」


 だが、おれはすぐに現実に引き戻された。
玉座を見ると、モノクマが嬉しそうに小躍りしている。
そこで、おれはこの場にいない人物の名前を挙げた。


「モノクマッ。それよりも、東雲はどうした?」
「東雲菊さん? ああ、彼女なら……ほら連れて来ましたよ」


モノクマが指差した方向を見ると、窓と思わしき赤のカーテンの中から東雲が現れる。


「菊ちゃんっ!」
「菊っぴっ、もう大丈夫な…の!?」


 米倉と雅が東雲に近づくも、二人の動きが途中で止まる。
おれたちも彼女の姿に、目を見張った。

 東雲の顔は蒼白というレベルではない。
まるで空の青を映したように真っ青だ。
それに加えて、ガタガタと震えており…今にも倒れそうにみえる。


「って、全然大丈夫じゃないじゃないかっ!!
 なにしたんだてめぇっ!!」
「そうだ貴様ァ!! 東雲菊に何をした!!
 場合によっては許さんぞっ!!」


 安積と笹川がモノクマに食いかかる。
しかし、モノクマはものともしない様子で首を再び横に曲げた。


「あり?なんでボクが怒られてんの?
 体調管理は本人の責任でしょ?」
「お前のせいだろがっ!!」
「貴様が動機なんて訳のわからないものを見せたからっ」
「え、違うでしょ?
 この中のだれかさんが花月くんを殺したせいでしょっ?」
「っそれは……」
「オマエラ物分り悪いよね〜。
 そんなんだからいつまでも閉じ込めておかなきゃいけないんだよねぇ、うぷぷぷぷぷぷ……」
「……なぁ闘真」
「なんだ、笹川辰美」
「あいつの正体分かったらぶん殴ろうぜっ!!」
「ああっ!! もちろんだ!!
 僕の渾身の一撃を食らわせてやるっ!!」


 二人とも……ずいぶん意気があってきたな。
 おれは安積と笹川から一度東雲の方へ視線を戻す。
どうやら、篠田、雅、米倉、御剣の四名が手や肩を貸して、東雲を教壇まで運んでくれているようだ。
おれの助けはいらないだろう。


「てめぇら、いい加減にしろ。
 こんな埃臭いところ、俺様は一秒でもごめんなんだッ」
「うるせぇぞクソ医者!!
 菊ちゃんがこんなに弱ってんだ、てめぇ治療しやがれっ!!」
「はっ。そんな女にしてやれることなんざないな。
 俺様は精神科医じゃないんでね」
「てんっめえええええええ、後で泡吹かせてやるから覚悟しろよっ」
「あぁ〜もうっ、うるさいったらありゃしないよっ。
 みなさん、自分の机に移動してください!! いますぐにっ!!」


 モノクマの命令におれたちは気が進まないまま自らの席に移動する。
円形という構造上、モノクマを含め全員の顔がよく見える。


 ……この中に、花月を殺したやつがいるんだ。
信じたくないが、そいつを見つけ出さない限りおれたちの命はない。


—「なぁ、刹那。頼みがあるんだけど」


 今朝、花月に呼び止められたときのことを思い出す。


—「なんだ?」
—「万が一、おれに何かあったら…菊のこと、頼んだ」


真剣に語っている花月は、今思えば自分の死をわかっているかのようだった。
当然、おれは否定した。

そんなことを言うんじゃない、と。
約束したのなら最後まで守り通してやれ、と。
だが、花月はそれを笑い飛ばした。そのことに触れず、たった一言。


—「お前が一番頼りになるんだ、頼んだからなっ!」


 そう言って、東雲がようやく出てきたため、そこで会話は途切れた。
 花月がどうしておれにそんなことを頼んだのか。
自分の死が間近に迫っているのを理解していたのだろうか。
今となってはわからない。だが、これだけは分かる。

おれたちは生き残らなければならない。
花月のためにも、約束のためにも。

全員の命をかけた、裁判が。始まる。


Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.74 )
日時: 2013/08/14 08:54
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html


SETUNA,s MEMO

被害者:『超高校級の歌舞伎役者』 花月 京 
死因:毒を服用したことによる毒死
死亡時刻:12時頃
死体発見場所:1F食堂
備考:目立つ外傷はなし

コトダマ1:凶器は毒。湯呑から検出された。

台拭き1:カウンターにあった台ふきがなくなっていた。

コトダマ2:急須、茶葉からは毒が検出されなかった。

不動の証言:毒は空気に数時間晒すと消える

コトダマ3:役割分担。石蕗が湯呑の準備。米倉が洗い、笹川が拭いたあと、その湯呑で東雲が茶を入れた。

台拭き2:台ふきは一枚のみしかない。台ふきがあった棚には他の布巾と掃除用具が入っていた。

石蕗の証言:朝、石蕗たちよりも早くに食堂にきていた者はいなかった。

アヤメの証言:食堂に入ってきた順番

メモ:雅の毒の瓶がなくなった。無くした場所は二階の女子トイレ。
   無くしたのが夕方頃のため、だれかが持っていった可能性あり。

雅の証言:昨晩、食堂で不動と会っていた。十時までいたと思われる。

間宮の証言:もう一枚の布巾と一緒に雑巾をランドリーで見つけた。




「まずは学級裁判の簡単な説明から始めましょう」


 一番にモノクマが話し出す。
どうやら、学級裁判のルールを再確認するためのようだ。


「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます。
 正しいクロを指摘した場合は、クロだけがおしおき。
 正し、間違った人物をクロとすると……
 クロ以外の全員がおしおきされ、みんな欺いたクロだけが卒業できますッ」

「だれが花月様を殺したか、当てればいいのですわね?」

「オレじゃないぞっ!」

「わたしも違うよっ!!」

「本当に……犯人が……ここに…いる、のか?」

「もちろんですっ。さぁはりきっていきましょーーっ」


 花月を殺した犯人……見当はついているが……。
 おれは皆を見渡す。
不安に満ちた面々のなかで先に話し始めたのは、不動に険しい表情を向けた御剣だった。


「つーかさ。ぶっちゃけ、不動が犯人じゃねーの?
 こいつだろ怪しい野郎わっ!」

「どうしてそう思うんですか?」

「昨日の夜、オレは一人で【食堂】に入ってくそいつを見たんだ!!
 そんときに【毒を入れた】に違いないっ!!」

「うん、最もだよね〜。夜だったらだれもいなさそうだし」

「はっ……なるほどな」

「あら、ずいぶん余裕ね?」

「当たり前だ。俺様じゃねぇからな」

「ごまかすな、不動正治っ。君以外には考えられないぞ!
 そもそも、君にはアリバイというものがないじゃないかっ!!」

「アリバイ?」

「そうだ!! 【だれも見てない】以上、お前さんが犯人で決まってるんだ!!」

「それは違うっ」


【 論 破 】


「御剣、聞いてくれ、不動にはれっきとしたアリバイがあるんだ」

「なっ…じょ、冗談だろうっ!?」

「冗談じゃないさ。雅、そうだろう?」

「え? わたし?」

「昨日の晩、お前は不動に会っていたな? 食堂で」

「あっ。うん。そうだよ!
 まーくんと食堂で会って、送ってもらったんだ」

「送ったァ? 寝言を言うんじゃねぇッ。
 俺様が帰ろうとしたところで勝手にてめぇがついて来ただけだろうっ」

「えー。でも部屋の近くまで一緒だったよ!?」

「それはてめぇの部屋が隣だっただけだろうがっ!!
 いい加減、勘違いさせるようなことを言うんじゃねぇッ!!」

「うん、ツンデレ乙」

「辰美ちゃん、それ何?」

「あいつ怖いからこれが終わったらこっそり教えてやるよ」

「……とにかく不動は雅に見られている以上、毒を入れるタイミングはなかったはずだ」

「当たり前だッ。そもそも、俺様が毒を入れたところでネカマが死ぬわけねぇだろ」

「どういうことですの?」

「…おいポリ公、答えてやれ。同じことを何度も説明するは面倒だ」


 不動が例え毒を入れたとしても、殺人が起きない理由。
それは……不動が言っていたあれのことだな。


「毒を長時間、空気にさらすと効力がなくなることだな?」

「はっ。そうだよ。俺様が食堂を出たのは午後10時。
 事件が起きたのが今日の0時だ。その頃にはとっくに毒なんざ消えている」

「け、けど嘘をついてるかもしれないぞ!! 空気に晒すと毒が消えるなんてっ」

「いえいえ。それはボクが保証しましょう」
 ボクが配った毒は空気に触れると段々毒の力が弱くなるものなのです。不動くんはさすがだねぇ。
 短時間で同定するものまで作っちゃうんだから」

「“どうてい”……ねぇ?」

「なっ、なんだ笹川辰美」

「いや、なんでもないって」

「え〜と……薬がそれだって分かるやつだよね〜。試験薬みたいなの」

「そう…か。それで……不動は……毒があると……分かったんだな?」

「今頃気づいたのか。そうだ、俺様は毒を検知する試薬を調合したんだ。
 そして、読み通り湯呑から毒が検出された」

「湯呑? それって花月がいつも使っていた、あれのことか?」

「え…? ……じゃあ犯人って、菊?」

「……え?」

「だってほら、菊がお茶用意しただろ。
 石蕗は本当に出しただけだから毒入れる隙なんてなかったし」

「お、おいおいマジかよっ」

「灯台下暗し、とはこのことですわね」

「ち……ちが……」

「東雲菊!!どういうことだっ!!
 お前と花月京は幼なじみじゃなかったのか!?」

「幼なじみだからこそかもしれないわよ。
 いつも花月があの湯呑を使用してたことも、ジュースよりもお茶を飲むことを知っていたのなら、
 飲んだんじゃないかしら。全部わたしの予想だけど」

「っ……がう」

「みんな待てっ!」


 皆から責められ、東雲が大きくふらつく。
それから、数秒も経たない内に彼女は膝をつき自らを抱え込むように丸くなった。
おれが間に入って止めようにも、議論は止まらない。


「あらあら、認めましたわよ。」

「本当に……東雲さんが?」

「そんなっ。嘘だよね菊っぴ。嘘だって言ってよ!!」

「はぁっ……はぁっ……。………だ…め…かぐ……っ」

「東雲っ!?」


 過呼吸を起こした東雲がその場に倒れこむ寸前、おれはとっさに腕を出して抱きかかえる。
目を閉じた東雲はおれの腕の中でぐったりと身を寄せていた。
元から弱っていた上に皆から追い討ちをかけられたことで更に弱ってしまったのだろう。


「はぁ……はぁ……」

「議論を一時中断するべきだ。
 このままでは、東雲がもたない……っ!?」


 彼女の思わしくない容体に、議論の中止を持ちかけた、そのときだった。
 東雲の過呼吸が急にとまり、彼女の黒い眼が開かれる。
そして、彼女はおれを押しのけて自らあっさり立ち上がると、口の端をにやりとあげた。


「妾がやったと申すのかえ?」


 想像だにしなかった東雲の唐突過ぎる変化に、一同が固まる。
それから、笹川の悲鳴があがった。


「わー!? なんか菊がおかしくなってんぞ!?」

「どうした…東雲?」

「東雲? ああ、妾のことか?」

「妾……? 一体何を言っているんだ!? 東雲菊!?」

「妾は東雲菊ではない。妾の名は神楽(かぐら)。東雲菊のもう一人の人格じゃ」


 もう一人の人格……? 何を言っているんだ……。
おれだけでなく、皆も同じように口々に呟いている。
そんなおれたちの困惑を汲んだのか、モノクマは説明を始めた。


「説明しましょうっ。東雲さんはあんまりにも厳しすぎる稽古によって自分で別の人格を作ってしまったのです。
 そうして生まれたのが“超高校級のくの一”通称、神楽さんなのですっ!!」

「”超高校級の……くの一”?」


 ”超高校級のくの一”。
 確かデータベースに載っていた女の忍者のことだ。
影の暗殺者として名高く、何人ものボディーガードがついても夜の闇に紛れて襲いかかりターゲットを殺害するという。
無論、その性質上、彼女の姿を見たものはいない。

 おれが知っていたのはその情報と、学園内にいるということだけだ。
名前もましてやどの学年すら不詳だったため…気にしないでいたが。
同学年の生徒の二重人格の片側だとはだれが想像できただろう。