二次創作小説(紙ほか)
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.75 )
- 日時: 2013/08/14 09:01
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
周囲の人間の驚愕っぷりを気にせず、東雲……いや、神楽は鼻で笑ってみせると、苛立ちを込めて言った。
「ふん。妾と勝手に決めつけおって……。
妾がやってないと言ったらやっていないのじゃっ。
そもそもそんな毒殺なんぞ手間暇かかることをするくらいなら、これで殺ったほうが早いわ」
どこから取り出したのか、神楽は瞬時に苦無(くない)を両手に合わせて六本取り出してみせる。
それに再び笹川が叫んだ。
「おいいいいいいいいい、凶器取り出してんじゃねぇよっ!!」
「そ、それで殺るとはどういう意味だっ!?」
「もちろん、菊と妾の人格を入れ替えて闇討ちするに決まっておろう? そっちの方が証拠も残らぬ」
「さりげなくえげつないこと言ってるぞ菊ちゃ……神楽ちゃんっ!!」
「呆れましたわ。そんなことで疑いが晴れると思っていますの?」
北条が負けずと言い返すが、その声には焦りと戸惑いが混じっている。
どうやら、神楽の登場に皆、混乱しているようだ。
今なら…彼女の無実を訴えられるかもしれない。
おれは息を整えると、できる限り大きな声で言った。
「いや、東雲は犯人じゃない」
「え〜、どういうこと〜?」
「不動、お前は言っていたな。急須と茶葉からは毒は出なかったと」
「ああ。言ったさ」
「それってつまり……」
「東雲が毒をいれた可能性はない。運んだときにいれるとしても、
そのときの方が明らかに誰かに見られる可能性が高いからな」
「そち、よくぞ申した。ほれ、妾の言った通りじゃろう?
妾は京を殺してはおらぬ」
「じゃ、じゃあ一体だれがあのガキんちょを殺したって言うんだよ!?」
「あのさ〜、ちょっといい〜?」
「どうしたの、数学者さん?」
「犯人が毒を使ったんなら、みんなで毒を持ってくればいいんじゃないかな〜?」
「お、それはナイスアイディア。
だったら毒を使った奴が犯人になるんだもんな」
「ご、ごめん…それは」
「なんだ雅歌音。まさか、持ってこれないとでも言うのか!?」
「う、うん。トイレに行った時に落としちゃったから……」
「はぁ? ふざけてんのか、マヌケ?」
「だ、だだだだってぇっ。
まさかそんな物だと思ってなかったんだもんっ。ごめんなさいってば!」
「それで通じると思ってますの? あなたが犯人じゃないと」
「本当だってばっ。りんりん、信じて、お願いっ」
「勝手にヘンテコな名前を付ける貴方を信じろと? 冗談にもほどがありますわ」
「雅が嘘をつくわけないだろうっ!」
「ま、まゆゆん……」
「わたしは雅のことを信じるっ。雅が嘘をつける訳がないっ」
「わたしも。歌音ちゃんが嘘を言うとは思えないし」
「では、だれが犯人だというのです?」
「逆にこういうこともできる。だれかが“雅の毒”を使って犯行をしたと」
「な……」
おれの意見に皆が一斉に口をつぐむ。
毒の有無では判断できないと同時に、この観点から見れば、大半のメンバーが犯行を可能であるからだ。
「確かに、有り得るけど……本当に雅が落としたとして、本当にだれかがそれを拾ったのかしら?」
「念のため、おれが確認した。何もなかったから、だれかが拾ったことは間違いないと思う」
「……は? ちょいちょい待ったぁ!!
お兄さん、あんた女子トイレに入ったって言うのかい!?」
「……ああ」
「あら、いいじゃない。速水がおかしなことをする訳でもないし。
だれかを覗いたとかそんなことしてないんでしょう?」
「もちろんだ。そんなことはしていない」
「変態という名の紳士ってのはむしろお前だろ」
「なっ。そんな訳ないじゃないか辰美ちゃん。
ただボクとしては調査のために入るとしてもどうかと思ってさ」
「私たちがいいと言っているのです。速水様だけ特別に許可しますわ」
「……すまない」
「それで、刹那くんは歌音ちゃんのもの、結局見つけられなかったんだよね?」
「ああ。つまり、他の誰か、いや犯人が持っていったんだ。自分に疑いがかからないようにな」
「なるほど。
自分の毒を使った形跡がなかったとすれば、犯人だとは思われないからなっ」
「それでは…だれが犯人なんですか?
その言い方ですと、速水さん、安積さん、不動さん、東雲さん以外はだれでも可能みたいですが……」
「む、なんでそやつらは否定できるのかえ?」
「刹那くんと闘真くんはみんなを呼びにいってくれたから、食堂にいなかったし、
不動くんは食堂に来ていないから、毒をいれることができないんだよ。神楽ちゃんもそうだね」
「なるほどのぅ。そなたは良い娘(こ)じゃな」
「え…そうかな?」
「うふふ。話はそこまでにして、速水の意見を聞いてみたらどう?
彼なら犯人に近づく方法を知っているんじゃないかしら?」
不動でもない。東雲でもない。毒の有無でも判断がつかない。
だとすれば、一体だれが犯人なのか。
おれはそのことを知っている。
しかし、今ここで犯人の名前を指名したとしても、納得ができないだろう。
大多数の人間がそれに納得すること。
単に犯人が分かってもそれに皆が納得しなければ、正しい犯人に投票することは不可能だ。
おれは間を少し置いた後、もう一度慣れない大声を張り上げた。
「みんな、聞いてくれ。だれができるかについて考えず、
犯人がどうやって毒を仕込ませたのか、それを考えるべきだと思う」
「よしっ。では、そのことについてみんなで話し合おうっ。
だれか、その方法について意見を述べてくれっ!」
安積の後押しで皆が顔をあげる。
数名は未だに、東雲が犯人でないことに納得がいかない様子だったが、頷いてくれた。
ここからが、本番だ。
おれは玉座の上で笑うモノクマを睨みつけると、再び議論の嵐へ身を投じていった。
「ん〜やっぱり犯人は[急須]とかに仕掛けたんじゃないかな〜?」
「実は毒殺じゃなかったりして?」
「アホかマヌケ。どう考えても毒殺だろう。無くした分際でうぜえんだよッ!」
「あううう、ごめんなさいってば〜っ!」
「もしかして、僕が触る以前から[湯呑]に毒が含まれていたんでしょうか?」
「……[布巾]、か?」
「あ〜、もう分かんねぇよっ!! [どこにも毒なんか含まれてなかった]んじゃないか!?」
「大山、お前の考えに賛成だ」
おれは大山の意見に賛同し、皆に説明を始める。
「毒は布巾に含まれていたんだ」
「布巾?」
「犯人は食器を拭くための布巾に毒を仕込ませたんだ。
グラスを拭いた、濡れた布巾にな」
そうして、ポケットの中からハンカチを取り出した後、犯人が恐らくやったと思われる行動を実演してみせた。
「まず毒の瓶をポケットにしまっておき、ある程度グラスを普通に拭く。
そして、グラスを入れたまま、米倉が湯呑を洗っているのを見計らって、瓶を布巾の中に忍ばせて毒をしみこませたんだ。
その後、毒をポケットに入れ直し、湯呑を毒のついた布巾で拭いて東雲に渡した。
これなら、急須からも茶からも毒は出ず、湯呑だけに毒が検出されることになる」
「それができるのは……一人だ」
「だ、だれだよ犯人はっ」
「速水刹那、それは本当か!? 花月京を殺したのはだれなんだ!?」
「それは………」
おれは一度大きく深呼吸をし、犯人を見据える。
「あんただ……笹川」
- Re: originalダンガンロンパ (非)日常編開始 ( No.76 )
- 日時: 2013/08/14 09:17
- 名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
- プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html
一瞬の沈黙。
そして数秒後、雷が落ちたように裁判所は騒然となった。
「ええええええええええええええーっ!?!?!?
タッツーがキョンキョンを殺したの!?」
「おいおい、何かの悪い冗談はやめてくれよ。
どうしておれが京を殺さなきゃいけないんだ?」
「それはおれにも分からない。だが、花月を殺したのはあんただと間違いなく言える」
「ちっ。随分な言いようじゃないか。それ以上は冗談で済まないぞ」
「そうだぞ、速水刹那っ。
笹川辰美がどうして殺したと断定できるんだ!! 説明しろっ」
「笹川が怪しいと思ったのは、事件直後だ」
「事件…直後?」
「笹川は入口付近で言ったな。死んだのは京?と」
「それがどうかしたのか?」
「初日にアヤメが言っていたことを思い出して欲しい。
食堂に入ってきたおれと安積のことを花月と御剣だと思ったといったな」
「ええ、確かにそう言ったわ。…ああ、分かったわ。
速水の言いたいことが」
「それってなに〜?」
「視界が悪いのよ。厨房から入口までは結構な距離だし、そうなるとなかなか誰が誰かよく分からないの。なのに笹川は……」
「ああ。厨房側に倒れていた花月を一発で当てた。
明らかにゲームで視力が衰えているというのにな」
「なっ。それだけで犯人だって決めつけんのか!?」
「そんなことがあるはずがないっ!!」
「闘真…?」
「速水刹那! 犯人がここに、ましてや彼女が犯人なはずがないっ! 犯人はモノクマのやつだっ!! 違うのか!?」
「およ?」
「安積……」
「笹川辰美は確かに粗相は悪いかもしれない。
だからって犯人と決めつけるだなんておかしいじゃないかっ!!」
「………」
安積が言いたいことは分かる。
おれも、本当はこんなこと言いたくない。だが、言わなければおれたち全員が殺されてしまう。
「あるんだ、安積。他にも笹川が犯人だと思われる所は」
「なっ…そ、それはなんだ!?」
「間宮、言っていたな。ランドリーには雑巾と“布巾が一枚”しかなかったと」
「え…うん、そうだよ〜」
「それがどう関係するというんだ!?」
「石蕗が言っていたんだ。この食堂には食器用と調理器具を拭くための二種類の布巾がある。
そして当日、笹川はそれぞれの布巾を使っていたんだ。米倉、間違いないな?」
「う、うん。衛生的によくないから、二つの布巾を別々に使っていたよ」
「なら、ランドリーにどうして一枚しか布巾がないんだ?」
「!!」
「ここからはおれの推測だが、おそらく、犯人は間違えたんだ。
毒の布巾を処理したのをカモフラージュするために、本来ならもうひと組ある方の布巾を使うはずだった。
だが、犯人は慌てていたのか、食器を拭くための布巾と台拭きを間違えていた。
そして犯人は毒のついた布巾をトイレで処理し、残りの布巾をランドリーで洗濯し始めたんだ。
一方が台ふきであることに気づかずに……な。」
「それで……なんだって言うんだ!!」
「闘真っ」
「認めない。僕はこんなこと……認めないっ。僕たちの中で犯人がいるだと!?
そんなこと、ありえないんだ!! 絶対にっ!!」
「安積……!!」
安積が引き下がる様子はない。
むしろ、笹川が犯人でないと、躍起になって反論してくる。
やるしか……ないのかっ!!
【トークバトル開始】
「嘘をつくなっ!!」
「嘘じゃないっ」
「僕たちの中に犯人がいるわけないっ!」
「いるんだっ、安積。」
「【証拠は何もない】じゃないか!!」
「いや……あるさ!!」
— 成 功 —
「証拠はトイレに流した毒入の布巾だ」
「でも……それは……流されて……いるんじゃ?」
「ああ……それは」
「安心しろ。それは俺様が保証してやる」
おれが取りに行くことを述べようとした途端、不動が青い試験管を掲げてみせた。
毒を検出するための、あの液体だ。
急須と茶葉を検査していたときと違い、その色は青く色づいている。
「一階のとあるトイレの水に毒の試験薬を入れたら、微量だが反応があった。
トイレによくある物質でこの薬で同定できる物質はない。毒なんてそうそうあるもんじゃねえからな」
「…ありがとう。
笹川、もしお前が犯人でないというのなら教えてくれ。どうしてランドリーに洗濯されている布巾が一枚だけだったのか。
どうしてお前の行ったと思われるトイレから毒の反応が出ているのか、教えてくれないか?」
「……」
「笹川辰美!! なぜ答えない!! 言い返せばいいじゃないかっ!!
おれはやってないと…そうだろ!? 言ってくれ!!」
「安積、もう………」
「嘘だ、嘘だっ! こんな…こと、認めない。僕は、認めないぞ……っ!!」
「……なら、おれが引導を渡そう」
おれはひと呼吸おき、全員を見渡す。
それから、おれは事件の全貌を語った。
First.Action
「犯人は昨日の夜。雅が落とした毒の瓶を見つけたんだ。
そして事件に備えるためにそれを拾った。
いざというとき、自分が犯人でない証拠にするために。」
Second. Action
「当日の朝、犯人は食堂に来て花月の湯呑に目をつけた。
湯呑で茶を飲むのは花月のみ、だから狙いをつけやすかったんだ。
犯人は布巾にあらかじめ用意していた毒を染み込ませ、湯呑を拭くフリをして毒を塗ったんだ。」
Third. Action
「花月が恐らく茶を飲む前、犯人はトイレに向かった。
毒のついた布巾を流して、証拠を隠滅させるためだ。
その後、工作としてランドリーに向かったが、犯人は自分のミスに気付かなかった。
同じ食器を拭くための布巾ではなく、台拭きをランドリーにかけていたんだ。
その両者が致命的な証拠になると気づかないままな。
そして、花月は知らぬうちに茶に含まれた毒を飲んで死んでしまった」
「そうだろう……笹川辰美!」
「笹川、これがおれの推理だ。間違えているのなら、はっきりと言ってくれ」
「笹川辰美!!」
「辰美ちゃん……っ」
「………。ひでえよなぁ、刹那も。そんなの言えるわけないって、分かってんだろ」
「…っ。そんな、なぜだ!! なぜなんだっ!!!」
「嘘…タッツー、どうして?」
「おいモノクマ。始めようぜ、投票タイムってやつをさ」
「うぷぷぷ…。議論の結論が出たみたいですね。ではそろそろ投票タイムといきましょうか!
オマエラ、お手元のスイッチで投票してください!
あ、念のために言っておくけど、必ず、誰かに投票するようにしてくださいねっ!
こんなつまらない事で、罰を受けたくないでしょ?」
「っ!!」
「闘真、ちゃんと入れろよ」
「どうして、どうして君が……っ!!」
「さあ、張り切っていきますよーッ!! 投票の結果クロとなるのはだれか!?
その答えは正解か不正解か——!? どっちだ————!?!?」
VOTE‐投票という意味の単語が載った看板のついたスロットが回る。
スロットにはおれたちの部屋のドット絵と同じ絵が回っていた。
絵柄が時間を追うごとに一列ずつ止まる。
その絵柄は彼女の……笹川辰美の絵柄で全て止まった。
『Amaizing!』という表示がされ、ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が裁判所に舞い落ちる。
こうして、おれたちの初めての学級裁判は幕を閉じた。
‐学級裁判閉廷