二次創作小説(紙ほか)

Re: originalダンガンロンパ キャラアンケート  ( No.95 )
日時: 2013/09/01 09:31
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html


 キーンコーンカーンコーン………

『オマエラ、おはようございます! 朝です、7時になりました!
 起床時間ですよ〜! さぁて、今日も張り切って行きましょう〜!』

 コロシアイ学園生活が始まって四日目の朝。
モノクマの放送後、起きたおれは最初に空の瓶とグラスを片腕にある人物の部屋に向かった。
おれの部屋からまっすぐ進んだところの右手側の部屋、安積の部屋だ。


「安積、起きているか?」


インターホンを鳴らし、呼びかける。
すると数秒も経たない内に扉が力強く開いた。


「速水刹那か、おはよう」
「おはよう、安積」


 安積……元気になっているようだな。
声の調子、見た目の様子からおれはそう判断する。
強いて言えば眠れなかったのか、顔に隈が少しかかっているくらいだ。


「調子は良くなったか?」
「まだまだ本調子まではいかないが……なんとか」


安積はそう言って頭をかき苦笑してみせる。


「だけど、いつまでもくよくよしていたら彼女に怒られそうだからな。
 それに、僕らしくもない」
「そうだな。きっと、笹川も今の安積を見れば安心するだろう」
「そうだといいがな……。では、食堂に行こう! みんな揃っているかもしれないからなっ!」
「ああ、そうしよう」


 安積は扉から出て施錠すると、食堂へ足を向ける。
 まだ完全に調子は戻っていないと言っていたが、その様子はいつもの威勢のいい彼と変わらない。
おれはそんな安積に安堵を覚えると、彼の後ろに着いて食堂に向かっていった。




「あ、せっちゃん、あづみんおはよ〜っ!」
「おはよう、雅歌音。そしてみんなっ」
「闘真くん、刹那くん、おはよう」
「おはよう」


 食堂には早くも数名が揃っていた。
眠れなかったのか、何人かは生あくびをしていたり、目に隈がかかっている。


「ふむ。みんな今日は早いじゃないか」
「そりゃ、あんま眠れなかったからな」
「そうだな。……空席がいやに目立つのが痛いが」
「……花月と……笹川が……いない……から、な」


 集まっているのは、アヤメ、大山、篠田、石蕗、北条、間宮、御剣、雅、米倉……。
おれと安積を合わせても11名だ。
今まで15名いたはずの食堂だっただけに、やけに広く感じる。
最も……それは今来ていない不動と東雲の分もあるのだが。


「ああ、そうそう。警察官さんとボクサーさんにも話さないとね」
「何のことだ?」
「実は、食事のことで話していまして……」
「ほら、昨日の一件があるでしょう?」
「……毒のことか」
「ええ、その通りですわ」
「なるほど……。何か決まったことはあるか?」
「ううん、これから決めるつもりだよ。二人も一緒に参加してくれないかな?」
「もちろんだ。参加させてもらう」
「おれも参加するが……少し待っていてくれ」
「あ……。刹那くん、手伝うよ」
「いい。昨日の食事を運んでもらった礼をしていないからな……」


 おれは米倉にそう言い聞かせてから、瓶とグラスを片付けるために一人、厨房に向かう。
 途中、花月の死体があった方を見ると、米倉の言った通り花月の遺体は消えていた。
それどころか、当時、散らばっていた湯呑みの破片や毒入りの液体も跡形もなくきれいになっている。
まるで、おれたちから花月という存在と、殺人事件があったという現実を忘れさせるかのようだ……。

 おれはそう思いながら、瓶を所定のゴミ箱に捨て、グラスを洗って片付ける。
そうして適当な席につくと、石蕗は袋に入ったサンドイッチとパックの牛乳をおれと安積に配ってくれた。


「話し合いの前に、お二人にはこれを……。今日の朝食分にしてください。」
「ありがとう。いただくよ」
「ああ、他のみんなはもう?」
「食べちゃったよ〜っ」
「雅は三人前くらい平らげてな……」
「だって〜、お腹すいてたんだもんっ!」
「昨日もわたしの分まで食べてたじゃないかっ」
「雅歌音。食べ過ぎはよくないぞっ! 人には適正量というのがあるんだっ」
「大丈夫だよ〜、これでも体重変わってないし。食べないと歌えないもんっ」
「確かに…そう言われると、雅は随分と細いわね。羨ましいわ」


 他愛もない会話を聞きながら、おれと安積はサンドイッチを胃に入れる。
それから再度、おれたちは話し合いを始めた。


「じゃあ、毒を処理してもしばらくの間は自炊ってこと〜?」
「そうだな。他のメンバーたちにも疑いがかかることを考えると、自分で作るのが一番得策だろう」
「よしっ。それでは“しばらくの間自炊”ということで問題ないな」
「まあ…仕方ないよなぁ……」
「うう〜ツッチーのご飯………」
「雅、ワガママを言うな。石蕗が困っているだろう」
「これが解禁されたら、腕によりをかけて作りますから……ね?」
「う〜、は〜い……」
「それじゃあ、決まりだな」


 まず決まったのは、残った毒の瓶を集め、本日までに焼却炉に入れて処理すること。
そして、もう一つは毒の一件があったため、しばらく食事は各自で自炊すること。
 最初の方は無論だが、二番目の件の理由としては、万が一のとき‐毒を処理していない者がいた場合‐のことや、各々が安心をして食事を摂るためだ。
 なによりも一番避けたい事態は、疑心暗鬼による共倒れ。
 調理をだれかに任せるよりも、各自で自炊をする方が平穏に過ごせるだろう。


「それじゃあ、次は……」
「いやっほおおおおおおおおおおっ!!」
「ひゃあっ!?」


 おれたちが次の議題に移ろうとしたところで、何かが落ちるような音と共に長テーブルがズシンと揺れた。
 震源地を見ると、モノクマが食堂の長テーブルの中心あたりで、仁王立ちのポーズを決めている。
……どうやら、やつは上から落ちてきたようだ。
想定外の登場に驚いているのか、皆の表情は固まっている。


「グッモ〜ニングッ!! 皆さんっ!!」
「…………」
「ありゃありゃ? 爽快な朝だっていうのに、オマエラ全然元気ないね。
 なになに、ひょっとして今の刺激がちょ〜っと強すぎちゃってビックリ仰天してるとか?」
「……前置きはいい。何の用だ?」
「相変わらず速水くんはリアクション薄いね。悲しいねったら悲しいねぇ…。
 せっかくオマエラにイイコトを教えてあげようと思ったのに」
「いい……こと?」
「そう!! きっと目が飛び出るくらいびっくりするに違いないよ!!
 でも、実際目が飛び出ると気持ち悪いけどねッ!!」
「それで、学園長さん、イイコトってなにかしら?」
「はい、実は新しいエリアに行けるようにしましたっ」
「新しいエリア…ですか?」
「そうそう。いつまでも一階、二階だけだと窮屈でしょう?
 ってなわけで三階とか行ける範囲を広くしてみましたっ」
「いいことって……もしかしてそれだけ?」
「それだけって、それだけですけど?」
「なんだよっ。出口とかそんなんじゃねえのかよっ!」
「うっぷぷぷぷ! そんな都合のいいことあるわけないじゃーんッ!!
 ってなわけで、ボクも新鮮なサケでも食べましょうかね。ではでは、また後でお会いしましょう〜っ」


モノクマが片腕を上下に振り、器用にもおれたちの方を向きながら後ろ側に走って食堂を出て行く。
 後でまた、というのが気にかかるが……とりあえず、おれたちのすべきことは決まったようだ。


Re: originalダンガンロンパ キャラアンケート  ( No.96 )
日時: 2013/09/19 17:40
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html

「新エリア……だな」
「それじゃ、またグループに分かれて行動する〜?」
「そうだな、今回も皆グループを組もう。いいな?」
「ええ、メンバーは好きに組んでいいのかしら? それとも、あんまりいない人と組む?」
「そうだな……。今回は好きにメンバーを組もう。できれば、三人以上が望ましい」
「は〜いっ! わ〜いっ、久しぶりににまゆゆんと一緒だ〜っ!」
「こら、雅っ! いきなり抱きつくなっ!!」
「そこ、遊びじゃないぞっ! それでは皆、グループを組んでくれ」


 安積の指示に頷き、早速各自でグループを結成し始める。


「では、速水刹那。僕と一緒に行くか?」
「ああ。米倉も一緒に来るか?」
「うんっ。えへへ……なんだかこのメンバー、懐かしいね」
「そうだな。初日以来だ」


「それじゃ、わたしはお嬢様とホストさんと一緒に行こうかしら?」
「別に私は構いませんが…どういう風の吹き回しでして?」
「おもしろそうだからよ」
「……ふんっ。気に食わないですが、まぁいいですわ。御剣様、行きますわよ」
「分かりましたよ、花梨ちゃん。アヤメちゃんもよろしく」
「ええ、よろしくね」
「アヤメ、僕も一緒にいっていい〜?」
「あら、もちろんよ。一緒に行きましょ」
「ちっ。せっかくハーレムになるとこを……」
「何か言った〜?」
「いえいえ、なんでも」


「じゃあ、わたしたちはビックとツッチーとこと合体するねっ」
「大山、石蕗、いいか?」
「ああ……分かった」
「よろしくお願いします」


 そうして出来上がったグループとその担当は、おれと安積と米倉が三階。
アヤメ、北条、間宮、御剣のチームが二階。
大山、篠田、石蕗、雅のチームが一階となった。


「それでは、探索を開始するっ。
 今から2時間後にまたここに集まろう。くれぐれも単独行動は控えるようにっ」
「分かりました」
「それじゃあみんな、また後でね」
「うんっ。またねあややっ! みんなもまたねっ」
「ああ…気をつけてな」


 挨拶を交わし、グループ毎に食堂を出て行く。
こうしておれたちは二度目の捜索にとりかかった。




「ここが……三階か」


 つい昨日までシャッターが降りていた二階にある登り階段を行くと、赤い光で照らされた空間が広がっていた。
一階や二階と違い、それほど部屋がないためか、廊下が広々と取られている。
その分、角や廊下の中央といった至るところに監視カメラが設置されていた。

 正面にはエレベーター、奥に四階に続くであろう階段を見つけたが、シャッターが下ろされているため、今は行けないようだ。
左手側には、巨大なモニターとその上にはスピーカーが取り付けられている。
モニターとスピーカーはおそらく、モノクマアナウンス用だろう。
これほど巨大な装置でやつの声を聞くのだと考えると……頭が痛い。


「……手前の扉は開いているみたいだぞ」


 安積がまず階段近くの左手側の扉を開ける。
扉の先に広がっていたのは、深い暗闇だった。
目を凝らすと奥の方に巨大なスクリーンが辛うじて見える。


「これは……映画館?」
「いや、視聴覚室だろう」


 電源と思われるスイッチを入れ、部屋を見渡した後おれは確信する。
赤色のライトで照らされたそこは、明らかに30数名は収容できそうな教室らしきものが広がっていた。
壁は防音素材でできており、教室にはモニター付きの机とシンプルな黒いオフィスチェアーが、真ん中に一定の間隔を空けて整然と並べられている。
どうやら巨大スクリーンの映像がこの机にも送信されるシステムのようだ。
そして……いつもの如く、ここにも監視カメラとモニターがある。


「この機械……何か入ってるよ?」
「フィルムか?」
「多分……」


最前列より更に先には、折りたたみ式のテーブルとその上に米倉が映画館と間違えた投影機、パソコンが置かれていた。
一足先に最前列に向かった米倉が不思議そうに投影機の中を覗く。
それから、彼女は目を大きく見開くと身を退いた。


「え……?」
「どうしたんだ? 米倉澪」
「これ……」


 米倉の顔から血の気が失せ、投影機に入っているフィルムを指差す。

一体、何が書いてあったんだ?
おれは米倉の元に向かい、指差したものを見る。
そこには衝撃的なことが書かれていた。


「……”希望ヶ峰学園生徒等のコロシアイフィルム”?」
「なっ。ど、どういう意味だ!?」


 フィルムの内容を読み上げると、安積が間髪を入れずに尋ね返す。
おれはそれに首を横に振った。


「分からない……。が、少なくともおれたちのものではなさそうだ」


 フィルムの下に書かれた日付を見ると、去年のものになっている。
この日付は……確か、希望ヶ峰学園の生徒が多数失踪したと思われるものだ。
だとすれば……このフィルムは希望ヶ峰学園が隠蔽したと思われる事件のものか?


「……とりあえず、今はおいておこう。他の場所がまだ残っている」
「あ、ああ……」


 おれはフィルムをそのままにし、二人を連れて視聴覚室を後にする。
内容が気にならないことはないが……仮に殺し合いの映像であれば今の二人には刺激が強すぎる。
せめて見るにしても、一度皆に相談してみた方がいいだろう。

Re: originalダンガンロンパ キャラアンケート  ( No.97 )
日時: 2013/09/19 17:41
名前: 魔女の騎士 (ID: lMEh9zaw)
プロフ: http://akanohadou.web.fc2.com/oridann-character.html


 次に、おれたちが訪れたのは視聴覚室の隣の部屋だった。


「……真っ暗だな」
「そうだな……」


開けてそうそう、鼻につく埃臭さと広がっている暗闇におれたちは目を細める。
どうやら、棚と思しきものが列を成しているようだが、何の部屋かはこれでは見当もつかない。


「これ、スイッチだね」


 米倉が中に入り、入口隣にあった電源のスイッチを入れる。
スイッチの音が響いた直後、淡い橙色の光が点いた。
まず細かい埃が飛散している様子が目に入り、次にその埃が舞う世界でいくつもの段ボールが載った鉄製の棚が映る。

どうやら……この部屋は倉庫のようだ。
縦に並んだそれを見ておれは確信する。


「これは……倉庫、かな?」
「そうらしい。なにがあるか調べよう」
「よし、それじゃあ手前から調べていくぞっ」


 それから、おれたちは段ボールを一つずつ下ろし、中身を確認し始めた。

もしかしたら脱出に役立つものがあるかもしれない。
そんな淡い期待をわずかに抱いたが、やはりそのような物をモノクマが用意しているはずがなく……調べて分かったことは、棚ごとで入れられているものが異なる、ということだった。

 手前から左手側の列は、缶詰、レンジでできるご飯やレトルト食品といった保存食。
真ん中の列は体操着や小さな黒板、チョーク、ペンといった学校に関するもの。
右手側の列は大きめのビニール鞄、青いビニールシート、レインコート、懐中電灯といった日用品だ。
工具もこの部類のものらしく、工具箱が一箱置かれている。


「……普通のトンカチとノコギリと……これは物差しか? あとはペンチとドライバーだけだな」
「これで、あの扉や窓を開けるのは難しそうだね」
「……そうだな」


あの太いネジや鋼鉄の扉を開けようと思えば、この道具では歯が立たないだろう。
これらを用いて脱出、というのは諦めるしかない。

まだ完全に調べ終わってはいないが、時間もあるため、おれたちは次の部屋を探しにいった。




 倉庫の隣の部屋に鍵がかかっていたため、今度は二階から三階に出て右手側にある細い廊下に入った。
こちらには左右に一つずつ扉があったが、左の方は施錠されていたため、鍵の開いていた右側の扉の方へ向かった。


「ここは……?」
「自習室じゃないか。ほら、問題集や大学の赤本が揃っている」


 先に部屋に入った安積が興味深そうに周囲を見渡す。
 ここにも監視カメラとモニターがあったが、三階廊下とは違い、部屋は緑色の光で照らされていた。
手前には、プラスチック製の四角テーブルとパイプ椅子、区切りがついた机で占められ、奥の方の棚には題名は分からないが、本がずらりと並んでいるのが見える。


「なるほど……。日本ではこういうところで自習をするのか」
「日本……? ああ、そういえば、君はアメリカで育ったんだな」
「刹那くんのところは、自習室ってないの?」
「自習室というものはないな……。静かに勉強ができる場所があれば、そこで自習するくらいだ」
「へええ。やっぱり、日本とは違うんだね」
「そうだな」


 国が違えば、文化も違う。
当然ながら当然ではあるが、実際目の当たりにするとその差は大きいようだ。


「念のため、ここも調べよう」
「ああ。了解した」


 安積が周囲を、米倉とおれは本棚を調べ、何か変わったところがないか探す。
本棚に入っているのは、参考書、大学受験用の問題集の他、記憶術といった啓発的なもので埋めつくされていた。
 おれは試しに一冊を取り出し、本棚の奥を眺める。
だが、特に変わった場所は見当たらない。ただ冷たいアルミ板の板だけがそこにはあるだけだ。


「ん?これはなんだ?」


 安積の疑問の声に、おれは手にとっていた本を元に戻して振り返る。
見ると、彼の手にはちょうどバレーボールより少し小さいくらいの赤いボールのようなものが握られていた。
よく確認すると、その球には上面には鮮やかな花の模様が、下面には三角形を組み合わせたような文様があしらわれている。

この球……どこかで聞いたことのある気がするが……。

おれが記憶を辿っている間、米倉が思いついたように言った。


「それ……もしかして、菊ちゃんの鞠じゃないかな?」
「こんなところに?」
「だが、確かに花月が言った通り、ボールみたいで花の模様が描いてある」
「そういえば……そうだが」
「届けてあげようよ。そうしたら、菊ちゃんのか、そうでないかも分かるし」
「それもそうだな」


結論が出たところで、自習室に掛けられていた時計を見遣る。
そろそろ、約束の時間だ。一度戻って報告するのがいいだろう。


「そろそろ戻ろう。もうすぐ約束の時間だ」
「そうか。では、一旦食堂へ戻ろう。他の二組が何か見つけているといいが……」
「そうだな」


 希望ヶ峰学園生徒のコロシアイフィルムに東雲の鞠……。
大きな不安とかすかな期待を胸に、おれたちは自習室を出ていった。