二次創作小説(紙ほか)
- Re: 魔天使マテリアル 〜秋時雨の降る夜〜 ( No.295 )
- 日時: 2013/09/06 21:14
- 名前: 楓七 ◆AoQvVmjntM (ID: Ouicm1PF)
- プロフ: マヤ≫頑張ってるなー小説
『夢見星伝説』 〜心は闇に委ねて〜
嫌だ…。
だんだんと 手を差し伸べてくれなくなる
だんだんと離れていく
透き通った 綺麗なガラス玉が落ちていく。
「そんな…」
その光景はみすぼらしい。
落ちてしまう最後の一秒 零点五秒 零点一秒 零点零零一秒だって 見逃さない。
全てがスローモーションに見える。
足がすくむ 腰が抜ける 心が割れてしまって前が向けない。
私のこれを使わなくては
嫌だ。
私はこんなもの 使いたくない。
こんな
————破魔の笛————
という アーティファクトなんて 触りたくもない。
でも これを使わなくては いま使わなければ ガラス玉は元に戻せなくて。
嫌だ。
触りたくもない。
壊したい。
破魔の力なんて消えてしまえばいいのに。
早く消えろっ…。
こんな力を持っているからこうなるんだ。
仲間なんているからこうなるんだ。
助けなんて来るわけない。
これに負けるんだ。
いまここで
いまここが…私の。
死ぬ場所になってしまう
そんなことはないと思ってた。
いままでどおりになんとかなるって。
助けがくるって そう思ってた 頼ってた。
でも 来なかった。 自分の胸が最後まで貫かれるまでに あと10秒もない。
その間に助けはこない。
助けなんていない。
この笛を吹いておかなければ なかまは死ぬ。
私を仲間と思ってくれてもいなかった 仮の仲間が
私を疎ましく思っていた 私の 仮の一番の存在が
涙も出ない
笛を吹いたところで人生一つが 変わるのに。
笛を吹けば ここにいる全員の人生一つが 変わってくれるのに。
「破魔…破魔の力が必要だ…。」
今の私は 今すぐに 破魔の力なんて捨てて
破光の力を手に入れる。
闇に身体をゆだねて
闇にすべてをゆだねる
そんな存在になって 闇に溶け込んでいくのだ。
いま破魔の笛を吹けば 変わるのに。 状況は一転するのに。
私は光になれるのに。
それが出来なかった———……。
ただ一つだけのことが できなかった。
破魔の笛は 仮の姉弟に手を叩かれ落とされて
鈍い音を立てて 破魔の笛の敏感な部分が 割れて
(これで いいんだ。 二度と破魔の笛は 吹かなくていいんだ)
そう思って 心を闇にゆだね…。
ふわりと 風に乗せて
「闇よ 私に命をゆだね」
闇は 私のすぐ目の前まで下りてきて
やった これで 闇に転じられる!
そう 闇の階段を登ろうとすると、黒い手に 連れて行かれる。
( 闇の手ね ありがとう 私を闇まで完全に連れて行ってくれる)
そう思った時に、下から 手があらわれて
茶色い ガシッと掴んだ 土の手は 静かに 自分を引き戻して行く。
(嫌だ 私は光になんてなりたくない)
叫んでもムダ。
そう 分かってる
くすんでいく 黒い闇の出口に さよならを告げて 光へ連れ戻されていく
私は 光に心をゆだねることはできない・・・。それでも