二次創作小説(紙ほか)

Re: 魔天使マテリアル×妖怪ナビ・ルナ  Ⅲ ( No.234 )
日時: 2013/12/08 16:23
名前: ルイ (ID: x2W/Uq33)

ルナとタイが顔を見合わせ、それぞれ破妖剣、護神剣を出す。
相変わらず、二振りの剣の持つ妖力があふれ出すほどのもので、これぞ伝説のこの手の内にあるのが相応しいと思えてくる。

「絶対倒す!」

ルナとタイが先陣を切り、走り出した。






「…あら…もう来たの…?」


二人が剣を振り下ろそうとした瞬間、深いフードを被った人物が、ゆっくりとこちらに振り向いた。
声からして、女。
女の纏う禍々しい空気に、ルナたちは気おされた。

進みたくても、どうしてもこれ以上足が動かない。

女から噴き出すように流れるのは霊力か、妖力か。
…否、どちらでもないような気がする。


まるで、深い闇……、憎悪のような。


女の瞳が見えた。
それは漆黒、光を通さない色。
自分達とまるで正反対の彩色。

その瞳は細められ、軽いでは済まされない殺気がにじみ出ている。


「また…ワタシをコロソウトスルノ?」


壊れたような声を発する、女。


「また…って…」

ルナが眉を寄せ、いぶかしげに女を見た。



「ワタシは明歩 ニンゲンダッタ ワタシの親ハ ニンゲンにコロサレタ。ワタシ達ノシアワセをウバッテオイテ 暢気ニ生活シテルヤツラがユルセナイ。ワタシは…ニンゲンがニクイ!」


瞳にこれでもかと言うほどの憎悪を滲ませ、狂ったような表情をして言う女、明歩。

…彼女は先ほど、「ワタシはニンゲンダッタ」と言った。
それはそう、つまり、彼女が既に人間ではない、と言うことを指す。

人間と言う生き物の心は弱く、弱っていれば悪霊に漬け込まれる。





       「寂しいの?」



          ——ええ——

             「憎いの?」



                      ——ええ——



       「壊してしまいたい?」





 




       ——ええ——







女、明歩は既に、壊れてしまっている。
人間と言うには、あまりにも醜い心を持ってしまった。

悪霊に漬け込まれた人間ほど醜いものは無いし、悲しいものも無い。




明歩の両親が人間に殺され、それを見ていた明歩の精神が崩壊してしまったということなのだろう。

攻撃しようと刀に手を掛けていたルナとタイが、目を反らした。
戦う気が失せてしまうほどの、壮絶さだった。



「ネェ?キミタチもワタシを殺しにキタノ?」

「違っ……」



ルナが否定しようとする。
でも、それは明歩に届くことは無かった。


ザンッ!!


数瞬前までルナの立っていた場所の地面は、明歩によって切り裂かれていた。
そう、そこにルナが居たままだったら、確実にルナは死んでいただろう。





狂気に溢れた明歩の漆黒の瞳が、ギギギ…と震え、動いて、ルナを、タイを、捉えた。