二次創作小説(紙ほか)
- Re: 幽遊白書 - 光影の少女 - ( No.4 )
- 日時: 2013/08/22 01:08
- 名前: べるりん ◆LL2ucVkJQE (ID: AzZuySm.)
「は??今なんて言いましたかおねーさん??」
ぼたんって言う案内人が発した言葉に私と裏飯屋は耳を疑った。
003:選択技
「だからね、あんた達の死は予定外なんだ。霊界にとって」
「……は??ひ??ふへほ??ちょ、待っ、ぱーどぅん??」
「ぱーどぅん発音悪ッッ!?つかうっざ!!はひふへほ超うざいんですけど篠倉杏樹さん!!?」
「英語2点をなめんなよっ!!」
「いやおめぇソレ威張って言えることじゃなぇから」
英語50点以上と言うか10点以上もとったことないですけど何か??
いいんだよジャパニーズで。英語なんぞ我には必要ない。
…って一回hgrnに言ったら殺されかけたなぁ……。
「おーい篠倉杏樹ちゃーん。ダメだイっちゃってるよ。とにかく話を戻すと、まさか浦飯幽助、アンタが身を捨てて子供を助けるなんてお釈迦様でも思わなくってさ」
「てめぇ喧嘩売ってんのかコルァ」
「んで、篠倉杏樹ちゃん。アンタ本当はあの場面で足が動かなくて、子供も猫も助けられないはずだったんだよ。ソレがどー言う訳か動いちゃって。お釈迦様もびっくり仰天さ。だからまだ極楽にも地獄にも、あんたらの行き場はないんだよ」
「よかったね裏飯屋くん。地獄行き、まだ決まってないらしいよ!!」
「テメェこそよかったなぁ、メスブタちゃん。人間に化けてました詐欺してたのに地獄行き決まってねぇってさ」
「てんめぇ殴るぞ」
「……お前ホントに女か??」
まぁまぁ、とぼたんちゃんが宥めてくる。
裏飯屋……ホントに苛立つわ。なんつーかうん、腹・立・つ!!!
「ってゆーか行き場がないってどゆこと??」
「んーっ…ショックを受けると思って黙ってるつもりだったんだけど……実はあのコ達と猫ちゃん、奇跡的にかすり傷ひとつ負わずに助かるはずだったんだよねーっ」
「「…………ハ??ひ??ふ??」」
「へほ。浦飯幽助の助けた方の子はボールがクッションになって。篠倉杏樹の助けた方は、柔らかい土があって…って書いてあるね」
「と、いうことは」
「 ま さ か の 無 駄 死 に ?? 」
「そう。あんたらが死んだだけ無駄だったんだよねーっ」
ガァァァァァァァァァァンッッッ!!!!!!
え、ちょ、やバ、え、ちょ、え、あの、え、…泣いていい!!!?
隣を見れば裏飯屋くんもおんなじ心境のご様子。
「ショックかい??まぁそりゃそうだろーねーはははー。無傷で助かる子供を怪我させた上、本人は死んじゃうなんてバカみたいだもんね」
「「おねーさん殴っていいかい??」」
「あーっ落ち着いて!!そのかわりチャンスはあるって言ってるだろ。生き返るための試練を受けることができるのよ、あんたらは」
「しれん??シレン??shirenn??え、何それ無理」
「アキラメ早ッ!!?あたしもどんな試練か知らないけどアキラメ早っ!!!!」
「大事なことなので二回言いました」
「いやアンタのことだからね!!?」
だって面倒くさいじゃん??ぬぁー、私無理はできないんですハイ。
あー、でもなぁ…このままぽっくり行ったら“アイツ”うるさそうだし。
アイツ、葬式で泣いてくれるかな??なわけ…ないか。そんな奴でもないし。
「ま、まぁとりあえず…自分らの通夜でも見てきなよ。返事はその時聞くからさ〜」
「あ、ちょ、ちょっと!!」
ふわふわ〜っとぼたんはどっかに去っていった。
ギギギギギと壊れかけの金属品のようにぎこちない感じで裏飯屋君の方を見る。
裏飯屋くんも面倒くさそうな表情でこっちを見ていた。
「……………………………………………後で、会うか」
「……………………………………………ソ、ウデスネ」
バーイと手だけふって別々の方向へ行く。
通夜…って言っても、私は一人暮らし。両親は昨年に事故死した。
そんな私にあてがあるといえば幼馴染の楠恵梨香【クスノキエリカ】のみ。つってもコイツはかなり薄情。
と言うかテンソン低しさん。いっつも私を冷たい目で見てくる。
「あ〜…どうせ通夜なんか行われて、な…い……」
自分の目を、これまでにないくらい疑った。
私が住んでいる一軒家には明かりが灯り、大勢の人がいた。
クラスメイトや親戚、近所の見知ったおばちゃんや行き慣れた店のおじちゃん、そして——、
「……ハ、…hgrn……??」
ハゲッ、ハゲリン!!?hgrn!!!?hgrnがいるわな!!!??
相変わらずてっぺんピカってるhgrnはスーツに身を包んでいた。
恐らく葬式を開いてくれているのは恵梨香の家。恵梨香の両親に礼をしてから、微笑む私の遺影が飾られている壇に向き直った。
「ったく…驚いたぞ。いきなり学校飛び出して、いつもどおりだと思っていたのに……」
「————」
「お前が事故にあったと聞いて驚いた。子供と猫を助けようとしたんだってな。…全く…、お前らしいよ。……本当に、」
————優しいお前らしい、死に方だよ。
後ろから見ていた私には、hgrn…橘先生の表情は見えなかった。
でもその肩は震えていて。
……そんなにも、私のこと、考えてくれてたの??
「っ…なんでよぉ……っ」
艶のある黒い髪腰まで流し、凛々しい黒い眼をした少女、それが恵梨香。
いつもは冷静な表情をしているはずの恵梨香。
なのに今は、…泣いている。なんで??なんで泣くの??
あんたはいつも、いつもいつも、その冷静な表情を崩すことなかったじゃん。
『恵梨香ァァ……風邪ひいたああ……まじ気分わるいぃぃぃ……』
『あっそ』
『え、それだけっすか!!?ちょ、待っ、死ぬぅぅぅぅぅ!!!!!』
あん時も。
『足骨折した。痛い。マジ痛いよ恵梨香様』
『どんまい』
『うん。…ってそれだけなんですかァァァ!!!??』
私に何があっても表情を変えなかった恵梨香。
————そんな恵梨香が。
「ヤダ…、なんで、なんで死んじゃうの……ヤダよ杏樹……!!またあのウザさ見せてよ……っ、また、またあの元気な声聞かせてよ……ッ、またあの笑顔、見せてよ……ッ!!!!」
うん、ウザさは余計だけど嬉しいよ。
初めて見た恵梨香の泣き顔は、凄く痛々しく思える。
つーか……コイツ美人だな。羨ましいぞゴラ。
「——よぉ、杏樹」
「いつから下で呼ぶようになった裏飯屋」
「っ…おまえなぁ…。まぁいいや……試練受けるか、決めたか??」
妙に清々しい表情で尋ねてくる裏飯屋。
え、何。コイツ意外とイケメソ。羨ましすぐる。
「決めたよ」
「……どーすんだ」
「受けない」
きっぱりと言い切ってやった。
一瞬目を見開いたあと、裏飯屋は泣いている恵梨香の方を見た。
そしてそれを見ている私の方を見て、何か笑ってる。
「……嘘つけ」
「ついた」
「おまっ…ことごとくウゼェな」
「どーも」
「褒めてねぇよ」
「——受けるよ。試練だろうがなんだろうが、受けてたつ」
それを聞いて小さく微笑んでいた空色髪桃色着物少女がいたことを、私は知らない。