二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【紅桜編】 ( No.130 )
日時: 2013/11/04 23:33
名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: F80.MhYN)
プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11667099112.html

 Sora様

そんなに笑っていただけましたか?(´∀`)
二人の猿芝居は書いてるのも楽しかったですw

有難う御座います! 気をつけますw

 —


 裏口から屯所を抜け出した栄蓮。
 以前掴んだ高杉達の場所へ足を進めている途中、一台のバイクがとまった。


 53訓 走馬灯を見始めるといよいよヤバイ状況だ


「よォ、瞳孔女ァ。最悪な顔色して何処行くんだよ?」
「て…、天パ…ッ!」


 天パァァァァ! や…やっぱり生きてたァァァ…ッ!
 つーかバイク乗せてくれるかな? マジ死にそうなんだけど!


「オイ、コイツも乗せていいか? …つーか乗れっか?」
「結構キツいけど…乗ればいい」
「あざっす!」


 天パと女の子が乗ってるバイクに何とか跨る。それと同時に発車した。
 あ…でも何かすぐにでも落ちそう…。が…頑張れ私ィィ…!


「んで…その様子じゃあオメーも無事じゃなさそうだなァ!」
「まァねー…ちょいとやられちったァ〜」
「…紅桜…か?」
「まァねー…ちょいとやられちったァ〜」
「おんなじ台詞なんだけど」


 包帯グルグルじゃァァァ! 今にも傷口が開きそうでっす!
 つーか風圧ゥゥゥゥ! 何か傷にくるゥゥゥゥ!


「で…アンタもやられちゃったわけか! 紅桜に!」

「まァなー…ちょいとやられちったァ〜」

「私とおんなじ台詞なんだけどォォォ!」

「違うしィィ! “ね”と“な”が違うしィィィ!」

「どんだけ細かい違いだァァァ! グッホォォ傷に響くゥゥ…!」

「ギャァァァァァァ! おまっ、こんなところで傷口開かせんなァァァァ!
 ウボェェェ俺も来たァァァァァァ!」

「人のこと言えないだろうがァァァ!!」


 グホォォォォッ! マジ痛いわァァァァァ!

 あ…何か船が浮いてるんだけど! もしかしなくてもアレじゃね?! 
 グホォォとか言ってる場合じゃないんだケド!


「…瞳孔女ァ…。オメー…そんな体じゃ死んじまうんじゃねェの?」
「ひ…人のこと言えないでしょ…? アンタこそ死んじゃうかもよォ?」
「バッカオメェ…俺が死ぬわきゃねーだろォォ…?」
「ど…どうだかねェ…? だ…大体私だって死なないし? 生きるし?」


 八雲助けて…ンで屯所に連れて帰る…!
 だ、だって…ね? 近藤さんが…言ってたからね…?


『あと…行くんならお前も八雲も無事で、なんて言ってねーよな!
 絶対に帰ってこいよなんて言ってねーよな!』


 まァ思いっきり言ってるわけですが! わざとなわけですが!
 …もう来ちゃったから、絶対に帰らないといけないんだ。


「んじゃあ誓えっかァ? ぜってーに生きて帰れるって誓えっかァ?」
「あったりまえだコノヤロォォ! アンタこそ誓えっかァァ?」
「あったりまえだコノヤロォォォ!」
「んじゃあまァ…破った方の負けだぞコノヤロー? 破ったら一生罵る!」
「安心しろ、俺がオメーを一生罵ってやる」
「何で私死ぬ前提だァァ!」


 絶対死なないもんね! 意地でも死なないもんね!


「んじゃあ…」
「行きますか」


 —


「…はっ…はッ……」


 弱々しい呼吸音が暗い室内に響く。
 首をカクリと曲げて俯き、八雲は力なく座り込んでいた。


 床には溜まりに溜まった血が広がっている。
 もう視界もぼやけていて、上手く焦点が定まらない。


「…ぇ、…れ……ぃ、…ちょ……」


 出血量が多すぎる。力も入らないものである。
 それでも。…それでも、八雲が求めているのは。


「——愛しの隊長さんに…最期に会いたい?」
「……!」


 暗い部屋の中に入ってきたのは晴香だ。
 ギンッと鋭い目つきで晴香を睨みつける八雲。フッと晴香は笑った。


「まだそんな目をする力は残ってたのね? 我が弟ながら尊敬するわ?
 普通もう死んでるわよ?」

「ぅ…る……せェ…。
 …ンで…俺を…こんな…とこ、に…連れて、き…た……」

「そうねェ…。殺すついでにちょっとお話がしたかったの」

「ハッ…! テ、メェと…話、す…こと、なんざ…ッねぇよ…!」

「あら冷たい」


 荒い息を繰り返す八雲に近づき、晴香は視線を合わせようとしゃがむ。
 鋭い八雲の目線が真っ直ぐに晴香にぶつけられるが、それでも尚彼女は微笑む。


「両親は元気? 殺したつもりはないんだけど?」
「どう、かな…ッ…! 精神的に…死んじ、まったよ…ッ」
「あらら…狂っちゃったの?」
「そういう…こった…!」


 晴香に斬りつけられた両親は、あまりのショックに自我を失った。
 体の傷は癒えても心の傷は癒えず、八雲は日々暴力を振られた。

 以前までの優しい両親からは想像できぬことだった。


「で…そのまま貴方は壊れていったの?」
「ハ、ハッ…それだけ、なら…よかった、かな…!」
「…………」
「売ら、れた…んだよ…俺ァ…。そっからは、地獄、だァ…」




『 父上…母上…? 父上! 母上ェ!! 待ってください!! 俺を…俺を置いていかないで!!』

『 暴れんなこのガキィ!! オメーは売られたんだよ! 
  ——捨てられたんだよ、親に!! 』

『 !! そ…んな…… 』




「何度叫んでも…あの人達は、…振り返らなかった…。ただ…受け取った金だけを、…見てた。
 …その目は、もう、常人の目じゃ…なかった。た、だ…とち、狂ってた、よ…」

「…精神的にショックが大きかったのねェ?」

「ッ…壊したのは…テメー、だろ…。
 お袋と親父壊したのは! 家族ぶっ壊したのは!! テメーだろうがよ!! うっ…ゲホゲホッ…!」

「あんまり叫ぶと余計苦しくなっちゃうわよ?」

「る…せェ…」




『 今日から俺がお前の世話をする。お前は俺の言うことを聞け。…でないと、死ぬぞ 』
『 …殺せばいい。……殺してくれれば、いい。生きてる意味もねェ 』
『 オメーじゃねェよ。…オメーの両親だ。捨てられても尚…お前まだ、両親への思い捨てれてねぇだろ? 』
『 なっ…! 』
『 図星だろ? さァ…どうするよ? 』


 悲しそうに八雲の瞳が伏せられる。思い出したくも、ないのだろう。
 出血は止まらない。それどころかひどくなっているようだ。


「あら…そろそろホントに死んじゃう?」
「…お…れ…ァ……死ね、ね…ェ」



『 八雲…あの男を殺してこい。心配ない…お前ならやれる 』
『 オイ八雲、今日はあの女だァ…ついでに金も奪ってこい 』
『 今日はあの家の者を全滅させてこい… 』


 間違っても、自害はできなかった。
 そんなことをすれば…両親がどうなるかも分からない。

 だからただ、八雲は言いなりにしかなれなかったのだ。


『 そういや…お前知ってるかァ、八雲? 』

『 …ンだよ 』

『 オメーすげェ有名人だぞ? 何せ“蒼紫アオシの化け物”とか呼ばれてるらしいからな。 
  みんながみんな、オメーを化け物扱いだァ…。哀れだなァ? 』

『 …!! 』


 彼の世界が、絶望に染まりきった。

 周囲の人間からもそんな風に扱われるようになってしまった。
 …もう、すべてがどうでもよくなった。


 人を、頼れなくなった、瞬間だった。


「そろそろ終わりかしらねェ…? “蒼紫の化け物”サン?」
「その…名で……呼ぶ…な……」
「私が親を斬った理由も教えてあげたかったんだけど…もう無理そうねェ?」
「る…せ……ェ…」



『 ふぬぉっ?! 何?! めちゃくちゃイケメンじゃねぇか?! コレが蒼紫サン?! 』
『 蒼紫サンって何でィ近藤さん。栄蓮、コイツ名前なんてーの? 』
『 え? あ…えっと……ワッチュアネィィム?! 』
『 発音ワリーんだよバカ 』
『 ンだとコラ馬鹿兄さんんんんん!! 』




 —— 隊長……



「あら…ホントに終わりみたい。…じゃあ最後は…私がやってあげるわ。
 楽ーに…行かせてあげる」

「…………」

「…ホントに終わりかしら」


 鞘から刀を抜き、一瞬哀れみを含んだ視線を八雲に送る晴香。
 一度瞠目を、そして思いっきり刀を振りかざした。


(…さようなら、八雲)



 一気に、刀が振り下ろされる。





 ———ドォォォォォォォンッ!!!


「ッ?! 何……ッ?!」
「は、晴香さん! 大変です! 今何者かが船に侵入してきました…!」
「…まさか…それって……」
「恐らく——ぐあああっ!!」


 ザシュッ、と肉の裂ける音がやけにはっきり晴香の耳に届いた。


 ポニーテールが風になびく。
 血の滴り落ちる、白銀の刀。


 これまでに見たことのないくらいの、形相。


「ははっ…。アンタ…似蔵が殺したとか言ってたけど…満更でもなさそうね…」
「——ったり前でしょ。…死ねるわけねーじゃん?」


 頬に返り血をつけたまま、ニィッと栄蓮は笑った。



「 八雲、返せ 」





( その声音には、一切笑いは含まれていなかった )