二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【ミツバ編】 ( No.198 )
- 日時: 2013/12/11 22:55
- 名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: 8AaSXZDw)
- プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11727470083.html
土方が栄蓮に呼びかける。が、全く返事がない。
一声かけてから入ると、グッスリと眠っている栄蓮が目に入った。
80訓 弱ってる奴にはちゃんと声をかけてやれ
——ボタボタと落ちている鮮血。絶望に沈みきった瞳。
チャキ、と少年は刀をかまえた。栄蓮はハッとなる。
『 っ?! 』
一瞬のことだった。腹に向かって刀を突かれる。
ギリギリのところでかわした栄蓮に対して少年は舌打ちをする。
『 アレ…? 』
栄蓮がそう呟いたので少年が微かに反応した。
今刀を向けられたということも気にせず、栄蓮は少年の腕をがっと掴んだ。
『 テンメ…ッ?! 』
『 怪我してるけど…ねェ、大丈夫? 』
『 は…? 』
ボタボタと血を流しているその細腕。体中からも血は微量だが流れている。
呆気にとられて思わず刀を落としてしまう少年。
『 …ウチの道場に来て? とりあえず治療しよう! 』
『 お前…何言って…。俺のこと…聞いたことねェのか…? 』
『 え? 何が? 何それ? 』
『 “蒼紫の化け物”って…ここらではすんげー…有名なのに 』
その言葉に栄蓮は兄からの注意を思い出した。ふっと遠い目になる。
『 あー…そういや聞いたことあるある 』
『 なんで…逃げねェんだよ 』
『 は? 何言っちゃってんの? 何で逃げるの?
怪我してる人助けんのは普通じゃないの? 』
きょとんとした顔で言う栄蓮に、少年は目を見開く。
これまでにそんな事を言われたことがなかったからだ。
『 俺ァ…テメーを…テメーらを…殺しに…来たんだぞ…?
だからさっきの奴らも逃げたんだ…。俺は、人斬りだから。…化け物、だから』
『 あ、そうなの? …でもさ? いや、私が思うになんだけどね? 』
にっこりと栄蓮は微笑む。優しい優しい笑みだ。
持っていた手拭いで少年の頬についている血を優しく拭いながら栄蓮は言った。
『 アンタ、化け物なんかじゃないじゃん? 』
『 え… 』
『 哀しい目をした、でもどこか優しげな…“人間”でしょう? 』
『 ア…ンタ… 』
ポロリと。少年の瞳から涙が零れおちた。
え、と少年が一番戸惑っているようだ。
『 な…なんで…ッ、なんで、涙なんか… 』
『 ホラ、化け物なんかじゃないじゃん 』
『 …っ 』
『 本当の化け物にそんな綺麗な涙は流せないもの。…さ、行こう? 』
—
『 たっだいまー 』
『 お帰り栄れ…ってうおォォォォォ?! だ…誰だァその人ォォォ?! 』
『 あとで説明しますから今は治療してあげてくださいイイイ! 』
『 わ、分かった! 』
——数分後。近藤によって包帯やガーゼを巻かれた少年は、無表情で座っていた。
その周りにいるのは、栄蓮、近藤、土方、総悟、ミツバである。
『 で…栄蓮。コイツ誰でィ? 』
『 少年 』
『 俺のこと馬鹿にしてんのかィ?! 』
『 …… 』
『 もしかして…“蒼紫の化け物”か? 』
紫色の髪と青い瞳を見てそう思ったのだろう。土方が問うた。
少年は一度土方をひと睨みすると、コクリと頷いた。
『 ふぬぉっ?! 何?! めちゃくちゃイケメンじゃねぇか?! コレが蒼紫サン?! 』
『 蒼紫サンって何でィ近藤さん。栄蓮、コイツ名前なんてーの? 』
『 え? あ…えっと……ワッチュアネィィム?! 』
『 発音ワリーんだよバカ 』
『 ンだとコラ馬鹿兄さんんんんん!! 』
『 ちょ、栄蓮。落ち着いて? 』
『 ざ…り、……くも 』
小さな小さな、掠れた声で少年が自分の名を言う。
しかし聞き取ることができず、全員が耳を向けた。
『 かざ、きり…や、くも 』
『 八雲かァ。いい名前じゃないか 』
栄蓮は八雲の顔を覗き込んだ。八雲も栄蓮の方を見る。
『 ねぇ…なんで化け物なんて呼ばれてんの? 』
『 …人殺すからだろ 』
『 え、マジでか? 人殺すの? 』
『 いや…さっきお前を殺そうとした 』
『 え、マジでか?! 』
『 気づいてなかったのかよォ?! 』
『 ブッ…がっはっはっはっはっ!! 』
二人のやりとりを見ていた近藤が大きな声で笑い始める。
ギョッとして栄蓮と八雲は近藤を見た。
『 なかなかいいコンビじゃないか、お前たち! 』
『 いや… 』
『 どうだ? 君もうちの道場に来るか? 』
『 ちょ、何言ってんだ近藤さん?! 人斬りだぞ?! 』
『 俺にも…こいつが。…八雲が悪い奴には思えないんだ 』
ちょっと微笑みながら言う近藤。八雲の瞳が見開かれた。
その言葉に土方も黙ってしまう。
『 どうする…? なかなか剣の筋もいいんだろう、きっと? 』
『 近藤さん、相手人斬りですぜ 』
『 あ、それともご両親とかに迷惑かな? 』
『 …親は、いねぇ 』
小さな声で言う八雲。ハッとその場にいた者達の瞳が見開かれた。
『 …親に捨てられて、ある男に人斬りとして育てられた 』
『 そ、うか… 』
『 でも俺はこんな所にいねぇほうがいい。…助けてもらう義理もない。
…邪魔した 』
立ち上がって去ろうとする八雲。その手を土方が掴んだ。
が、次の瞬間物凄い勢いでそれを振り払う。その表情は恐怖に満ちている。
『 お、前… 』
『 触んな…ッ! 俺に触れギャアアアアアアアッ?! 』
『 え、普通に触ってよくね? 普通にいけね? 』
『 何してんだ栄蓮んんんん! 』
ガッシィッと栄蓮が八雲の手を掴んでいる。
が、近藤は八雲の様子に気づいた。
『 八雲…お前、栄蓮はなんか大丈夫そうだな…? 』
『 あ…そういや、さっきもちょっと触られた… 』
『 なんでだ…? 』
『 ……。…恐くないんだ 』
『 え? 』
どこか泣きそうな声で八雲は呟いた。ぎゅ、と拳がつくられる。
『 なんでだろうな。…俺にとって…他人は、恐いものなのに 』
『 …… 』
『 このアバズレ女だけは…恐く、ねぇや 』
『 誰がアバズレだァァァ?! ってちょ、どこ行くのォォォ?! 』
—
『 …… 』
翌日、栄蓮は縁側でぼんやりと空を眺めていた。そんな時、隣に近藤が腰を下ろす。
『 …… 』
『 八雲のこと…考えてるのか? 』
『 …はい 』
『 ハハッ、俺もだ! 』
豪快に近藤が笑う。栄蓮も微笑んだ。
『 なァ、栄蓮。お前さ…八雲に出会った時、何か言ったか? 』
『 え? んーと…何か自分のこと化け物とか言ってたから…
人間でしょって言ったり… 』
『 あ、それだな 』
『 へ? 』
『 八雲についてちょっと調べたんだけどな…。アイツ、本当に化け物扱いされてるみたいなんだ。
だから…お前が“人間”だって言ってくれたとき…よほど嬉しかったんだろうな。
そんな事を言ってくれたお前だから…触れられても恐くなかったんだろう 』
近藤が穏やかな表情で言う。栄蓮はきょとんとしている。
その時、近藤の雰囲気が一瞬で変わった。
『 なァ、栄蓮。俺…八雲にな、幸せになってほしいと思うんだ 』
『 近藤さん… 』
『 “人斬り”ではなく…もっといい立場で、活躍して欲しいんだ 』
『 そうですね 』
『 だから…俺は八雲も江戸に連れて行こうと思っている 』
その言葉に栄蓮は少々驚く。が、とても嬉しそうに笑った。
『 いいと思いますよ、それ! 八雲には言ったんですか? 』
『 今日の朝、探して無理矢理会いに行ってな。絶対連れて行くからなァァって言っておいた! 』
『 近藤さん? それ全然八雲行く気ないんじゃないんですか? 』
『 恐らく…男とやらに何か弱みを握られてる 』
え、と栄蓮の瞳が見開かれた。近藤は至って真面目だ。
『 俺の見た感じなんだけどな。…で、だ。…栄蓮、頼みがある 』
『 へ? なんです…っええ?! 近藤さんんんん?! 』
近藤が栄蓮に対して土下座しているのだ。
額を床にこすりつけるほどに、深く深く。
『 本当に…本当に、すまない。本当にすまない、頼みなんだが…。
今の八雲には…きっとお前が必要だ、栄蓮 』
『 ちょっ、近藤さん?! 』
『 俺に対しても、まだ…いまいち心を開いてくれない。
だが…栄蓮。お前に対して八雲は、希望のようなものを抱いているようだ。
たった一言が…八雲の心に大きく響いたんだろう。
だからきっと…八雲にはお前が必要だ 』
『 へ… 』
『 栄蓮。…共に江戸へ、行って欲しい 』
( 土下座をしたまま、近藤はそう言った )
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