二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【ミツバ編】 ( No.203 )
日時: 2013/12/16 00:17
名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: KHOJpGst)
プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11729917553.html

 牡丹様

かきながら何度泣きそうになったことか…((
そ、尊敬だなんて…! 滅相もございません(´Д`)

分かりました! 是非見に行きますね! そして全力応援←

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 参照≒「コメント返信数200突破and参照数3900突破感謝イラスト!」です!
 本当に有難う御座います…!(´∀`)

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 栄蓮達の間に一波乱あったその頃。
 総悟にミツバを頼まれていた八雲は病院にやって来ていた。


 83訓 兄妹は互いに支えあって生きていく


『 実は…ミツバ殿の嫁ぎ先の転海屋、攘夷浪士と黒いつながりが… 』


 …坂田さんと一緒に、ついさっきザキから聞いてしまった言葉。

 なんだよそれ…。転海屋、蔵場当馬は…攘夷浪士に武器を売っている闇商売人。
 三番隊の隊士数名を重傷に追い込む原因となったあの武器をまわした張本人。


「…さん。八雲さん。…八雲さん!」
「あ…すいません」


 イカンイカンイカン。変な素振りを見せるな、俺。
 例え旦那をしょっぴかなくちゃいけなくても…。…いけなくても…。

 …………。どーすんだよ隊長ォォォォォォ?!


「銀さん、八雲さん。山崎さんと何を話していたんですか?」
「あ? なんでもねーよ、気にすんな。なァ、八雲くん」
「そっスね。男同士の話なんて【ピー】とか【ピー】のことばっかりッスよ」
「もうっ、八雲さんったら」


 嘘だけども。…つかなきゃいけない嘘も、あるんだ。


「男の子って幾つになってもそうなのね。集まってはつるんで悪巧みばかりして。
 あの人達もそう…。男同士でいる時が一番楽しそうで、結局女の子の入り込む余地なんてないの」

「…………」

「だからこそ…そんな輪に悠々と入れている栄蓮が、ちょっと羨ましいの」

「あの人は女として見られてないッスから」

「あらまぁ」


 クスクスと笑うミツバさん。…こういう人を女っていうんだ!
 …幸せに、なってほしいなぁ。


「八雲さん。屋敷前で…私に“恨んでるか”って聞いたわよね?」
「あ…はい」
「何? 八雲くん何したの? 襲ったの?」
「ンなわけないだろーが」


 何を言うかこの天パ野郎は。俺がミツバさん襲うわけねーだろ。


「私は八雲さんのこと…少しも恨んでなんかないわよ?」

「え…。でも…、隊長は俺のせいで江戸に行くことになったわけですし…。
 二人の仲を裂いたのは…俺……」

「私が押したの、栄蓮の背中を」


 え…? 押した…? ミツバさんは、隊長と一緒にいたかったんじゃ…?


「勿論私も栄蓮と一緒にいたかった。でもね…聞いてしまったの。近藤さんから、色々なことを。
 八雲さんのことも聞いた…。八雲さんが求めている人も、分かってた」

「ミツバさん…」

「栄蓮は優しいから…傷ついてる八雲さんのために、きっと江戸に行くんだろうって思ってたの。
 でもね…毎晩毎晩眠れないくらいに悩んでたみたいなの」

「……」

「大きな隈を目の下に作って…。あぁ、そんなに真剣に悩んでくれてるんだ、って思ったの。
 だからこそ…引き止めるわけにもいかなかった」


 隊長が…。あの頃、そんなにも…。


「なによりもね…私も八雲さんに、幸せになってほしかったの」

「……」

「その為には栄蓮が必要不可欠だって気づいてたから。
 だからね…私が彼女の背中を押したの。行きなさい、って言ったの。私が、こうなる事を選んだの」

「ミツバさ…」

「だから八雲さんが責任を感じる必要なんてないわ。…ね?」

「…ッ」


 なんで…なんでこんなに、優しいんだ。俺、なんかに。
 あの時の俺なんて尚更だよ。ただの人斬りだったのに…。


「八雲さん…もっともっと、幸せになってくださいね」
「っ…ありがとう、ございます…」
「私も…この年まで体のこともあってそーちゃんには心配かけてしまったから…。
 そーちゃんを安心させてあげなきゃ。…幸せに、ならなきゃね…」


『 ミツバ殿の嫁ぎ先の転海屋、攘夷浪士と黒いつながりが… 』


 …………。…俺の幸せを、こんなにも願ってくれてるミツバさん。
 この人のために…俺は何ができるんだろう。


「ッケホ…ケホケホッ…」
「…! オイ、大丈夫か? もう休んだほうが…。身体カラダにさわるぞ」
「ゲホッ…大丈夫、です…。ッ八雲、さん…。栄蓮に、伝えて、ほしい、ことが…ゲホゲホッ!」
「そんなことよりもミツバさん…! もう休んでください…!」

「お願い、です…。栄蓮に…“そーちゃんを、お願いします”…って…!」

「な…何言って…。じ、自分で伝えないと。ね、ミツバさん…!」


 そのあいだにもミツバさんの咳はひどくなっていく。
 ちょ…これ、まずい状態じゃねーか…?!


「ゲホッゲホゲホ…! ゲホッ、ゴホッ…!! …コフッ……!!」
「?! 血…?!」
「!! オイッ!!」


 —


「ミツバ殿の容態が、急変したみたいです」
「「!」」


 …なにそれ……。…っなにそれ…! なんで…なんで今なの…?! 

 今、私と兄さん、ザキは…取引が行われている現場に来ている。
 ここで…転海屋、蔵場当馬を捕まえなければいけない。


「かなりマズイみたいで…家族の者はそれ相応の覚悟はしておけと…医者が…。
 …副長、行ってあげてください。こんな時に仕事なんざ……」

「……」

「それも…よりによってミツバさんの婚約者をしょっぴこうなんて…、酷です。あまりにも…。
 ミツバさんや沖田隊長の気持ちも考えてやってください…」


 …ザキが言ってることは、きっと間違ってないんだけど。
 きっと。…きっと兄さんは、いくつも先のことを見据えてるんだ。

 もし今見逃したとして、その後真選組はどうなる?

 
 ミツバは…どうなる?



「副長が間違ったことをしてるなんて思っちゃいませんよ。
 今奴等をほっときゃ…いずれその武器で俺達の仲間が殺られちまうともしれない」

「……」

「でも今やるべきことは…こんな事じゃないでしょう…。
 土方さん。栄蓮隊長も…今いるべき場所はここじゃないでしょ?」

「ザキ…」


 兄さんをチラリと見れば…何故か笑ってる。
 でも…普通の笑みじゃ、なくて。


「フン…俺達が薄情だとでもいうつもりか? …そうでもねーだろう。
 てめーの嫁さんが死にかけてるってのに…こんな所で商売にいそしんでる旦那もいるってんだからよォ…?」

「っ…兄さん…」


 一瞬。…本当に、一瞬だけど。背中に…ゾッて、何かが走った。 
 “鬼の副長”って言われてる兄さん。…こういう時、本当に分かる。

 こういう…本気で怒っている時の、表情を見ると。


「山崎。お前この件誰にも他言しちゃいねーな?」
「……。…ハ、ハイ…」
「知ってんのは隊内じゃ俺と栄蓮とお前だけだな?」
「……。…ハイ」
「んじゃ、引き続きこの件は極秘扱いで頼むぜ」
「え…ちょ、兄さん…?!」


 一人で歩いていく兄さん。…まさか、あんの馬鹿兄さん…?!


「ふ…副長ォォォォ!!」
「一人で行くってかあのバカ兄さんは…! …ッザキ!!」
「は、はい?!」
「……。…ミツバのこと、お願いね」


 そうザキに言えば、ザキの瞳が見開かれた。
 ごめんね。今いるべき場所は、ここじゃないのかもしれない。きっと兄さんも、そう感じてる。

 でも兄さんが選んだのなら…。その痛みと重み分け合うのが、兄妹でしょう?


「ちょっ…栄蓮隊長! 二人だけでは厳しいです!」
「行ってきまーす」
「ちょっとォォ?! っ栄蓮隊長ォォォォ!!」


 —


 走って兄さんに追いつけば、兄さんは驚いたようにこちらを見てきた。
 …そんなビックリしなくてもよくね?


「おま…なんでいるんだ?!」
「なんでって…私三番隊隊長だし。責任とらなきゃだし」
「……。お前、今からやろうとしてること分かってんのか?」
「……」
「アイツの旦那…しかもこんな時に、しょっぴこうとしてるんだぞ?」


 …兄さんも、同じのくせに。惚れた女の旦那、しょっぴこうとしてるくせに。
 

「…後悔は、するかもしれない。…でも。
 ここで殺っとかないで…あとからミツバが大変な目にあうのもイヤ」

「……」

「それに兄さん…総悟の立場、考えてるんでしょ?」

「…ったく。なんでこんな時だけはンな鋭いんだバカ」

「誰の妹だと思ってるんですかー?」


 喋りながら進んでいけば…どこかで見たことのある後ろ姿が見えた。
 私と兄さんは気配を殺して近づき、その背中をとる。


 ジャキ、と二本の刀を蔵場当馬の首にあてた。


「……おやおや」

「——転海屋、蔵場当馬だな」
「——御用改めである」


「「神妙にしてもらおうか」」



( 全ては大切な姉弟のため )