二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【ミツバ編】 ( No.205 )
- 日時: 2013/12/16 23:18
- 名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: rBpxuBxx)
- プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11730486012.html
牡丹様
確かに辛いです…!
ミツバ編は好きなんですけど切なくて切なくて…!
—
蔵場当馬の首に刀を当てている栄蓮と土方。
二人の方をチラリと見て、蔵場はフッと笑った。
84訓 本当に信頼できる友をつくれ
「あなた方はいつぞやの…」
「武器密輸及び不逞浪士との違法取引の容疑でお前を逮捕する。神妙にお縄につけ」
「…フフ。友人の婚約者をためらいなくつかまえますか?」
蔵場の言葉に栄蓮が眉をひそめた。
「婚約者ァ? 悪いけど私達はアンタをミツバの婚約者だなんて認めないねェ」
「…これはこれは。この間は浪士20名をたった一人で殺ってくれたようで」
「どうも。…今日はアンタが殺られる番だよ」
ニィッと笑う栄蓮。その瞳は夜の光で妖しく輝いている。
「本当に太い神経をお持ちのようですねぇ…」
「…犯罪に手ェ染めながら真選組の縁者に手ェ出すたァ…てめーも太てェ野郎じゃねーか」
「それはそれは…どうも」
「「——!」」
二人の背後には、武器をかまえた浪士達が迫っていた。
—
容態が急変したミツバ。総悟と近藤は駆けつけてきた。
そして総悟はその場から一歩も動かず、眠るミツバを見守っていた。
「総悟」
呼びかけられ、総悟はのろのろと近藤の方を見る。
「いい加減お前も休め。昨日から一睡もしてねーじゃねーか。
俺と交代! 寝てきたから、俺!」
「…目の下、くま」
「……。メイクだコレは」
そう答える近藤。
そんな時、この場には不釣合いな大きないびきが聞こえてきた。…銀時である。
「いいなアイツは、ノー天気で。…つーかなんでいるの?」
「見舞いに来てくれてたんスよ…」
「そうか。八雲、お前も休め。疲れきった表情だぞ」
「いえ…俺は平気ッスから」
銀時の傍らに腰掛けながら微笑む八雲。
そうかと近藤は答え、ミツバのいる方を見ながら口を開いた。
「総悟。…トシと派手にやり合ったらしいな。珍しいじゃねーか、お前が負けるなんて」
「……。…今は、野郎の話はやめてくだせェ」
「詳しくは教えてくれんかったがな。言っていたぞ、今のお前には負ける気がせんと」
「やめろって言ってるんでェい!!」
静かな病棟に総悟の大きな叫び声が響いた。
「なんだってんだ、どいつもこいつも…。二言目にはトシトシって…。
肝心の野郎はどーしたィ。姉上がこんなだってのに姿も見せねェ。
昔振った女が死のうがしったこっちゃねーってかィ。…さすがにモテる男は違うときた」
「…やっぱりお前、疲れてるみたいだな。寝ろ」
「……。…軽蔑しましたか」
「寝ろ」
「邪魔ですかィ、俺は。…土方さんと違って」
「!」
「っ近藤さん!」
総悟の胸倉を掴んだ近藤に対して八雲が声を荒げた。
その時だ。向こう側から誰かが走ってくる。…山崎のようだ。
「局長ォォォォ!」
「や、山崎?! …なんでアフロ?!」
「んなこたどーでもいいんですよ! 大変なんです! 副長と栄蓮隊長が…!」
「「「!」」」
その言葉に近藤は総悟の胸倉を離し、山崎に近づいた。
「副長と栄蓮隊長がたった二人で取引現場へ…! 現場には多くの浪士どもが…!」
「ト…トシと栄蓮が二人で?! 山崎ィ! てめェなんでその件今まで黙っていた!!」
「す…すいません…! 副長にかたく口を止められていたんです!」
山崎の叫びに三人が反応した。総悟は何とも言えぬ予感を察する。
「親類縁者に攘夷浪士と関係のある者がいる事が隊内にしれれば、
沖田隊長が真選組での立場を失うと…!」
「…?!」
「トシの野郎…! ハナからてめー一人でカタつけるつもりだったな…! 無茶なマネを…!
栄蓮もそれについて行ったんだろう?!」
「は、はい…! ですが栄蓮隊長は先日浪士共と接触した時に負った傷がまだ…!」
「あんの馬鹿兄妹ィィィ…!」
総悟の瞳が見開かれている。…それはそうだろう。
お前なんて知らねェと土方に言われたはずなのに。
「あの野郎ォ! ……?!」
「お前は動くな、総悟。…傍にいてやれ。
それに…今のお前では足手まといだ。剣に迷いのある奴は死ぬ」
ギリッと近藤の腕を掴む総悟。その目つきは鋭い。
「俺達を信じろってかィ。…冗談じゃねェ、俺はあいつらに貸しつくるのだきゃあ御免こうむるぜ。
近藤さん…アンタは俺を誤解してる。俺はアンタが思う程キレイじゃねェ。てめーの事しか考えちゃいねェ」
「……」
「いつもアンタ達と一緒にいても溝を感じてた。俺はアンタらとは違う、って。
…だから姉上もアンタもアイツらの所へ…」
——ドカァァッ!
近藤が総悟を思い切り殴り飛ばした。その手が赤く腫れる程に。
総悟は銀時が眠っているソファに思いっきりぶつかった。
「イテテ…。ずいぶんと俺には手厳しいな、近藤さんは」
「そりゃお前がガキだからだ。トシや栄蓮がお前と同じこと言ったら、俺ァ奴らも殴ったよ。
…俺達ゃそういう仲だろう、総悟」
近藤は座り込んでいる総悟を真っ直ぐに見つめた。
「誰かがねじ曲がれば他の三人がぶん殴ってまっすぐに戻す。昔からそうだった。
だから俺達は永遠に曲がらねェ。ずっとまっすぐ生きていける」
「……」
「てめーが勝手に掘った小せェ溝なんて俺達は知らねェよ、そんなもん。
——何度でも飛び越えてって、何度でもてめーをブン殴りにいってやる」
拳をつくり、力強い声でいう近藤。総悟の瞳が見開かれた。
「そんな連中…長ェ人生でもそうそう会えるもんじゃねェよ。
…俺達ゃ幸せもんだぜ。そんな悪友を…人生で三人も得たんだ。いや…いまや四人だ」
そう言って総悟に背中を向ける近藤。八雲も同時に立ち上がり、それに続いた。
「総悟。…もし俺が曲がっちまった時は、今度はお前が俺を殴ってくれよな」
その言葉を残し、立ち去っていく近藤。八雲は小さく微笑んでから近藤と共に立ち去る。
「……」
ハァー、と総悟は息を吐いた。ソファにもたれ天井を見上げる。
「…惚れてたんですよ、本気で。冷たくつっぱねられながら…それでも、ずっと。
野郎の帰りを待ってた…ずっと。ようやくフッ切って幸せつかみかけたと思ったら…。
またアイツだ。何度姉上の邪魔をしやがる。…ひでー奴だ」
「…カァーコー…」
「ひでー奴だよ、ホント……」
眠り続ける銀時に語る総悟。フッとその視線が床におちた。
「…わかってまさァ、俺の姉上がひでー奴に惚れるわきゃねーってこと位。
ホントは…わかってた。いつ死ぬともしれねー身で、野郎が姉上を受け入れるわきゃねーってこと位」
「…カーコー…」
「わかってた…野郎が姉上の幸せを思って拒絶してたこと位。
分かってた…。野郎も姉上の幸せを願ってること位…」
「…んがっ…」
「わかってたんですよ、俺ァ…。でも癪じゃないですか。…野郎は、気に食わねェ。
——気に食わねェ野郎のままでいいんでィ」
静かな廊下に、その声は響いた。
「…それに加えて…栄蓮まで。でもね…やっぱり、分かってたんでィ。
近藤さんが頼んだことも…栄蓮が簡単に決めたんじゃねーってことも…八雲がどんな思いしてたかも…」
「…グゥー…」
「分かってたんですよ…。…姉上が背中を押したことも、その理由も。
…姉上がああ言わなければ、こうなってはいなかったかもしれないなんてことも」
拳をつくる総悟。自嘲気味に彼は笑った。
「全部全部…分かってた。…でもね。あん時姉上は泣いてて…本当の本当の気持ちなんて見えてた。
だから…栄蓮には、姉上の本当の思いに答えて欲しかった…。
姉上と一緒に…平和なところで、笑って暮らしててほしかった…」
「グガー…」
「…なにがなんでも…姉上の傍に、いてあげてほしかった…」
人一倍姉思いの総悟は、いつだって姉のことを考えていた。
そして…栄蓮のことも同じくらいに考えていたのだ。
ずっとずっと仲良く遊んで、喧嘩してきた仲だからこそ。
「…さて、と。旦那、長い話聞いてくれて有難うございやした。
野郎には大事なもん色々と持って行かれたが…いかなきゃならねェ。
近藤さんには死ぬと言われたんでねィ。最後かもしれねェ…地蔵にでも全部喋っときたかったのさ」
「——その大事なもんに、アイツらも入っちまってんだろ」
「だ…旦那!」
銀時はのっそりと起き上がる。…その目の下には、大きな隈。
「ふわ〜…よく寝た。…さて、眠気覚ましに一丁行くか。
てめーのネーちゃんにも友達だってウソぶっこいちゃったし。最後まで付き合うぜ、総一郎君」
「…旦那、クマ」
「…チンピラにやられた」
(姉上、俺ァ幸せもんだ)
(長ェ人生でもそうそう会えるもんじゃねェ)
(そんな悪友を、人生で五人も得たんだ)