二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【真選組動乱編】 ( No.277 )
日時: 2014/01/25 20:37
名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: abkT6QGo)
プロフ: http://ameblo.jp/hanabi1010/entry-11754862285.html

 Dr.クロ様

毎度すいません…!(´Д`)


 牡丹様

お久しぶりです! 幸せだなんて…最高だなんて…嬉しいです!!(´∀`)
牡丹様も更新頑張って下さい!


 Sora様

八雲「いやあの、柳生編のこの人の馬鹿さを思い出してください」
栄蓮「……」
八雲「知能低い以前にもうなんつーか…考えがバカッスから」
栄蓮「KILLよ?(´言`)」


松菊様とかかっこよすぎじゃないっすかアレ。
ギャグオーケイシリアスオーケイとかナイスすぎです(`・ω・)b


栄蓮「脳内お花畑はうちの作者ですよ!」
八雲「作者が馬鹿だからうちの隊長も馬鹿になるんスよ」
栄蓮「KILLよ?(´言`)」
八雲「このくだりさっきもなかった?」


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 爆発が起きたその時、伊東と土方は電車の中にいた。
 そしてその爆風により意識を飛ばし…ふと伊東は、今目を覚ました。


 111訓 天才がいるとしたらそれは努力の天才だ


『 天才とはいつも孤独なものだ。僕には理解者がいない。
  僕はこんな所でくすぶっている男ではない 』

『 … 』

『 誰もそれを理解出来ない、誰も僕の真の価値に気づかない。
  ならば自らで己が器を天下に示すしかあるまい 』

『 … 』


『 真選組を我がものにする。それを地盤に僕は天下に躍進する。
  この伊東鴨太郎が生きた証を天下に…人々の心に刻み込んでみせる 』


 河川を進む船の中、高杉とお酌をしている晴香に伊東は言った。
 ぐいっと酒を飲み干して、ククッと彼は笑う。


『 …悪名でもかまわねーと? 
  そのためなら恩を受けた近藤を消すこともいとわねーと? 』

『 …恩? 恩ならば近藤の方にあるはずだ。
  あのような無能な男の下に僕が仕えてやったのだ 』

『 … 』

『 感謝こそされど、不満を言われる覚えはない 』

『 クク…。伊東よ、お前自分以外の人間は皆バカだと思っているクチだろう。
  だがそんなバカな連中に理解されぬのを不満に思っている 』


 チラリと伊東が晴香を見れば、彼女はこちらを見てにっこりと微笑んできた。
 まるで妖艶な悪魔の誘い。一歩間違えれば引き込まれそうになる甘い笑みである。


『 理解されたいと思っている。自分を見てもらいたいと思っている。
  己が器をしらしめたい? そんな大層なモンじゃあるまいよ。

  …お前はただ、一人だっただけだろう 』

『 … 』

『 お前が求めているのは自分を認めてくれる理解者なんかじゃねェ。
  お前が欲しいものは… 』



 ハッと我に返る伊東。キョロリと周囲を見回す。

 爆発によりどのくらい気を失っていたのかは分からない。

 しかし今伊東の身は、隊服の一部がなんとか電車内の部品に引っかかることで保たれていた。
 それが外れれば…足元に広がる遥か水の中へドボンである。


「…ここは…」


 ふと近くを見ると、重具にうもれている隊服が見えた。
 そして…そこにある、伸びている血まみれの腕。


「土方…。…そうか…僕は…勝った…!
 僕はついに土方に勝っ…」


 ボタボタと、血がたれている。
 …三分の二以上を失っている伊東の左腕から。


「ッうわァァァァァァァ!!」


 混乱した伊東は必死に身を捩った。
 
 その時だ。バラバラバラ、という音が耳に入ってきた。
 ふと伊東が視線をあげると…それはこちらに銃口をむけている攘夷浪士。


 ああ、僕が裏切られたのか、なんて伊東は思った。


「や…やめてくれ」


 ——ズガガガガガガッ!

 伊東にむけて銃弾が連続して発砲された。
 伊東の身を保たせてくれていた服の部分が切れ、その身が落下し始める。


(やめてくれ。僕は…こんな所で死ぬ男じゃない…。
 やめてくれ。僕はもっと出来る男なんだ。っもっと…もっと…)







『 母上ェェ! 見てくださいっ、僕、学問所の試験で満点を… 』
『 鴨太郎 』


 喜びは母の厳しい一声によってとめられた。
 病弱な兄の看病をしながら、母は鴨太郎を諭す。


『 静かになさい。兄上の身体にさわるでしょう 』
『 も……申し訳ないです……… 』


 鴨太郎を拒絶するかのように、パンッと閉められる障子。
 ぎゅっと鴨太郎は試験を握った。


( もっと…もっと頑張らねば。
  もっと頑張れば、きっと僕を見てくれる )


『 ——うむ。見事だ、鴨太郎! まったく…たいしたものだ!
  お前は我が学問所始まって以来の神童だ! 
  みんなも、鴨太郎に負けるなよ! 』


 学問所でも鴨太郎は頑張った。人一倍努力した。誰よりも頑張った。
 しかし振り返れば…そこにあるのは、冷たい視線。


『 調子に乗ってんじゃねーぞ! 』
『 勉強しかできないボンボンがよ! 』


 蹴られた。殴られた。貶された。受け入れられなかった。
 それでもやはり鴨太郎は。


( もっと…もっと頑張らねば…。
  もっと頑張れば…きっとみんな認めてくれる… )



 —— ドカアッ!


『 一本! お見事! 大したものだ、鴨太郎! 』


 道場にて。誰よりも練習した。誰よりも頑張った。
 そうでなければ上手くなれるはずもない。


『 この齢にしてこの剣筋…、…“努力した”な。
  鴨! 江戸へゆけ! 我が名門北斗一刀流の道場に推挙してやる! 
  こんな田舎ではお前の才気が潰れてしまう 』

『 … 』

『 お前ならかの剣豪、宮本武蔵を越えるのも不可能ではないぞ! 』


『 …いこーぜ… 』
『 …ああ… 』


 それでもやはり誰も彼を見ようとはしなかった。
 あるのは蔑んだ視線だけ。侮蔑した、吐き捨てるような視線。


( …なんで… )


『 まったく…よりによって跡取りの鷹久がこれ程病弱では』
『 我が伊東家はどうなるものやら…双子の弟、鴨太郎はあんなに元気に育ったというのにな… 』


 残念そうな、親の話し声。少し開いている障子の隙間から中を覗きこんでしまった鴨太郎。


『 次男がどれだけの才覚を持っていようと宝の持ち腐れ。
  鷹久は鴨太郎に全て奪われてきたのよ。
  私のお腹の中にいる時に、鴨太郎が鷹久の全てを奪っていってしまったに違いないわ 』

『 !! 』



『 あんな子、生まれてこなければ良かったのに 』



 冷たい母親の声だけが、鴨太郎の耳に入った。
 
 父が母を咎めているが、そんなのは彼の耳には入らない。
 零れる涙を拭いながら、フラフラと鴨太郎はその場から去る。




( …なんで…、…なんでみんな、僕を見てくれない )


 こんなに頑張っているのに。

 僕はなにも、悪くないのに。
 
 もっと僕を見てくれ。

 もっと僕を誉めてくれ。


「僕を…一人にしないでくれ…っ」


 落ちていくその身。必死に伊東は手を伸ばした。

 届かない。何にも。
 何にも、届かないのだ。



『 …女隊長? 』

『 ああ、土方栄蓮って言うんだ。すんげぇ剣の才を持ってるんだ。
  伊東くんもぜひ会ってみるがいい 』

『 … 』


 特にそんな興味は湧かなかったのだ。
 ただほんの少し。本当にほんの少しの好奇心だった。


『 ぶははははは! 兄さんすげェェェ! 』
『 ……、…? 』
『 何がすげェだァァ! テメーがめちゃくちゃ攻めてくっからだろーが! 』
『 栄蓮隊長ナイスゥ! 副長がザ・ヨガてきなポーズになってるゥ! 』
『 ぎゃはははははは! 栄蓮隊長サイコォォォォ! 』



 自分よりも場違いなはずのその人物。
 自分よりも学問はない筈のその人物。
 自分よりも馴染める筈ないその人物。


 そんな人物が、自分よりも多くの人物に。
 自分よりも多くの笑顔に囲まれていた。



(…ああ…、…そうか…)


 ふっと伊東は微笑した。今更になって、気づいたというのか。


(羨ましかったんだ…、…僕は)


 見ていて苦しかった。
 自分にはない物を持っているその女。
 男だらけで、自分よりも場違いで、受け入れられるはずがないのに。

 だからこそ受け入れられている女に、…栄蓮に。


(嫉妬、していたのか…。…見ていられなかった…)


 ——だから目障りだなんて、思ったのか。


 自分の感情に気づいたときには全て遅い。
 落ちていく。本当に誰もいない場所へ。
 暗く冷たい、水の中へ。


(ああ…一人にしないでくれ)


 お願いだから、


(この手を…握ってくれ……)



 ——ガシィッ、と、その手を温かい手が力強く握った。


( どうして、お前は )