二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】 生涯バラガキ 【煉獄関編】 ( No.68 )
- 日時: 2013/10/05 00:20
- 名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: VmEJEvT3)
切なげに微笑む道信。その手には鬼の面。
微かに漂う血の匂い。何よりも…その面は。
28訓 鬼にだって優しい鬼はいる
道信さんが…“鬼道丸”……。
だから血の匂いがするんだ。だから…そのお面を持ってるんだ。
あァ…いつもみたいに冗談でしょうって笑い飛ばしたい。
けど。…それをするには、道信さんがあまりにも真剣すぎて。
「…驚きましたか。そして…失望しましたか…?」
「…驚きはしました」
「…そう…ですか……」
あァァァ…夜空の星達はあんなにも綺麗だというのに…!
何でこんな重たい雰囲気にならなくちゃいけないんだァァ…!
「…私は昔から腕っ節だけが取り柄の人斬りでして。
ある日獄に繋がれ…首が飛ぶのをただ待っていました。
その時私に目をつけたのが…あの連中なのです」
「…………」
「今日お隣にいた方も警察のお方ですよね。
…昨日お客人が他にも来られました。
その人たちは…煉獄関を潰そうとしているようです」
「そう…ですか」
「…貴女もでしょう。……栄蓮さん」
真っ直ぐな道信さんの瞳。…信じられないなぁ。
こんな良い人が人斬りだなんて…本当に信じられない。
「…それは職務的に秘密です」
「…どちらにしろ。煉獄関には関わらないほうがいい。
それに…幕府を動かすような連中が絡んでいるんです。ただではすまないでしょう?
ですから…アレには関わってはいけないんです」
「……どうして」
「……え…?」
「どうして今、その話を私にしたんですか?
あくまでも私は警察です。話せばどうなるか…くらいはお分かりでしょう。
ただ黙っていればバレない確率の方が高かった。…なのに何故?」
質問をすると道信さんは黙り込んでしまった。
それから子供達の方をフッと見ると、小さい声で言ってくれた。
「私はもう…この子達を連れて江戸を出ようと思っているのです」
「……え? マジですか?」
「えェ。…ですから…貴女にだけは、言っておきたかったんです。
嘘偽りなくすべてを…貴女に知っておいてほしかったんだと思います」
「…………」
何これ? 口説き? 口説きですか?
「煉獄関で稼いだ汚い金…。そんな金ですがあるにはあるのです。
それを持って…子供達全員と暮らしたい…」
「…道信……さん」
「職務的に…今ここで私を殺さなくてはならぬのなら…どうぞ。
しかし私も子供達がいるので…遠慮はしません。
でも…ただ1つ願望を聞いてもらえるのならば…見逃して欲しい」
「…………」
「貴女とは私自身戦いたくありません。
そして…子供たちに胸をはれるような父になれた時……。
貴女に1番に…報告がしたいのです」
「ッ…!」
あァァァ…! ごめん、総悟、八雲ォォォ…!
私にはこの人を…斬ることも捕まえることもできないや…。
こんなにも…あったかい人だから。
「…さァて、今日はもう帰りますね!」
「……え…?」
ある程度の覚悟はしてたのか…道信さんが目を見開いてる。
だって私に貴方は斬れない。…ってか斬りたくもない。
第一、悪い人じゃ、ないもの。
「約束ですよ、道信さん。…必ずいいお父さんになって下さい。
報告…ずっと待ってますから。約束ですよ?」
「栄、蓮…さん……」
「その代わり! 何かあったら必ず協力します! 約束です!」
小指を差し出すと道信さんは小さく微笑んでから指を絡めてくれた。
よっしゃ! 約束約束! 絶対破らないようにしないとね!
「はい、…約束です。…有難う御座います、栄蓮さん」
「どういたしまして? いつ頃江戸を出られるのですか?」
「もう明日の夜頃には出ようかと考えております」
「明日…! 仕事をとっとと切り上げてお見送りに来ますね!」
「有難う御座います。子供達も喜びますよ…!」
ここで私がこの人を斬れば…あの子達の親がいなくなっちゃうからね。
「では、今日はコレで失礼します」
「はい。…よろしければまァ、明日」
「えぇ。お邪魔しました!」
「栄蓮おねーちゃんバイバァ〜イ!」
「バイバァ〜イッ! 明日も来てねぇ!」
「おーぅ! また明日ねー!」
ヨシ…とりあえず煉獄関自体をぶっ潰す方法考えないとね。
—
「…ハァァァァァァァァッ?! ちょ、ふざけろよォォォッ!」
「うるせェェェッ! つーかふざけろよって何だァァッ!
だーから! テメェは今日1日任務だッ!」
「嘘でしょォォォッ?!」
…翌日。なわけなんだけど。
今日に限ってかなり大変そうな任務が入ってるゥゥゥッ?!
ヤバイよコレェェッ! 絶対夜に間に合わないパターンだよォォォッ!
「ちょ、兄さんお願いィィィッ! 今日だけは無理ィィィッ!」
「アホか! この任務はなァ、かなり重要な任務なんだァァッ!」
「それよりも重要なことがあるのォォッ!」
「アッホッかァァァッ!! 任務優先だァァァッ!!」
ノォォォォォォォォォォォッ! 最悪ゥゥゥッ!
しかも私1人だけの任務らしいけど…何それ?! 何それ?!
絶対間に合わないじゃんかァァァッ…!
うぅぅぇぇぇ…とりあえずとっとと行ってみよーッッッ!
—
——道信は首を伸ばして周囲を見回した。
時刻は既に夜。子供達も既に馬車に乗り込んでいる。
しかし…肝心の栄蓮が来ないのである。
(…何か…あったのか……?)
仕方がない…と道信は目を閉じた。そろそろ出発しなくてはならないのだ。
今も煉獄関の連中がこちらに向かってきている。
それを何とかとめてくれているチャイナ服の少女と眼鏡の青年。
2人にも感謝の気持ちを表しながら、道信は馬を走らせた。
「わわわわわわ!」
「先生ェ! 何をそんなに急いでるの? …先生ってば! アレ…?」
「……先生…何で泣いてるの?」
——もっと早くに…あんな奴らと出会いたかった。
心の底から…道信はそう思えた。
「先生ェ! 栄蓮おねーちゃん結局来てくれなかったよねェ?!」
「栄蓮さんも忙しいんだろう。仕方がないさ」
「残念! 最後におねーちゃんに会いたかったなぁ!」
「僕も〜!」
俺も、私もと上がる声に道信は微笑む。
そして今度は栄蓮に対し…内心で心の底から感謝を述べた。
「——甘いわ。
…ワシらから逃げられるとでも思うてか?」
「…ッッ!」
ドッ、と胸を貫かれる道信。そして勢いよく引き抜かれる。
血が勢いよく溢れ出した。
「ククク…これで貴様も終わりだ…」
そう言って去っていくその相手。きっと煉獄関の者だ。
溢れ出す血を片手でおさえながら、グゥッと道信はうつむいた。
「先生! これからどこに行くの?」
「僕たち先生と一緒ならどこへでも行くけどね!」
「…そーだなー。私もお前達と一緒なら…どこへでも行くさ…。
ッ…けど、先生……そんなに遠くには…ッ行けそうに…ないな……」
『約束ですよ、道信さん。…必ずいいお父さんになって下さい』
「アレ? 先生? ひょっとしてまた泣いてるの?」
「何かまた嬉しいことでもあったの? ホントに先生は泣き虫なんだから!」
『報告…ずっと待ってますから。約束ですよ?』
「……そーだな。ホントにそうだ。
——幸せ者だよ……、…私は……」
グッタリと動かなくなる道信。
そんな道信を見て子供達は何かを察したようだ。
「…先生…?」
「道信…先生…?! …道信せんせェッ!」
( …申し訳ありません )
( 約束…守れそうに、ないです )