二次創作小説(紙ほか)

Re: 【銀魂】 泥中之蓮 【書き直し】 ( No.3 )
日時: 2013/09/14 21:06
名前: べるりん ◆LL2ucVkJQE (ID: Cj5Qj.rN)

「そっちへ逃げたぞ! 追え! 絶対に逃がすなァァッ!!」


 白髪ハクハツの女が走っている。その後ろには黒いスーツに身を包んだ数十人の男。
 足場が悪いため、女は何度も何度も転びかけた。しかし足を止めることなく、必死に必死に前へ前へと進んだ。


(助けて……誰か……ッ)


 ——浮かんだのは、微笑む銀髪の男。


         第00訓 幽霊か人間かは第一印象では決めずに近くまで行って確かめましょう 


「銀さん、起きてますかー?? 銀さんってば、もう昼ですよ?? あとお客様来てますよ??」

「んだよ新八ィ……たまにはゆっくり寝かせろよ〜。気が利かねぇなぁ」

「いつもゆっくり寝てるだろうがァァァァ!!!! そんな事よりお客様です!! 早く起きてください!!」


 寝巻き姿の銀時はゆっくりと立ち上がり、のろのろと服を着替える。正直今、何もかもがどうでもいい気分だ。
 何故だろうかと考える。それは恐らくつい先程まで見ていた夢のせいだろう。誰かが必死に自分の名を呼んでいる気がした。返事をしようにも声が出なかった。しかし、所詮はただの夢なのである。


「ったく……なんだってんだ。あ、そうか、糖分が足りてねぇのか。そうかそうか、そうと決まれば」

「銀さんんんん!! お客様だって言ってるでしょーがァァァァッ!!」


 あ、忘れてた。銀時は急いで居間に向かった。
 そこにいたのはどこにでもいそうな奥様方三人衆だった。化粧が濃い女ばかりである。銀時はどっこらしょっとソファに腰掛けて奥様方を見た。


「お待たせしてすいませんねぇ〜。で、依頼の方はなんですか??」

「実はねぇ……ここから少し行ったところに橋があるじゃない?? そこに……いる、らしいのよ」

「い、いる?? 猫ですか?? 犬ですか?? あ、ふぃっしゅ?? ふぃっしゅですか??」

「銀さん、ちょっと黙ってて下さい」


 随分と言いにくそうな奥様方。銀時は正直耳を塞ぎたい気分だ。
 しかしそんなことをすれば自分が幽霊嫌いだとバレてしまう。否、もうすでにバレているのかもしれないが。プライドがあるのだ。

 だが奥様方はまだ幽霊だなんて言ってはいない。そこで銀時は勇気を出して聞いてみた。


「で……、いる……とは??」

「だから……そ、その、ね?? ゆ……幽霊ってヤツ??」

(ギャアアアアアアアアアアアッ!!)


 やっぱりそうきたかと銀時は内心でおたけびを上げた。正直言ってそう言う依頼は却下である。幽霊とかは実際に見たことはないが、とにかく無理だ。
 が、銀時は必死に平静を装った。そんな銀時の気も知らずに、新八と神楽は興味津々だ。
 

「幽霊って……見たんですか!?」

「ちょ、新八くーんッ!?」

「銀ちゃん、冷や汗がすごいネ。どうしたアルか?? もしかして……」

「べべべべべべべ別にっ、怖いとかじゃねェよォ!?」


 冷や汗だらっだらで銀時は答える。しらけた視線を神楽と新八は銀時に浴びせた。
 以前も幽霊騒動があったのである。その時はただの天人(あまんと)だったが、確かこの男はかなりビビっていたことを思い出したのだ。


「いや、私たちも信じてないんだけどねぇ……そんな噂がたってるのよ」

「だから万事屋さんに確かめてほしくって……」

「ですって、銀さん。この依頼受けますか??」

「ああああああ当たり前だろォォ!? ゆゆゆ幽霊とかァ!? いるわけねェしーッ!?」

「銀さん、声裏返ってます」

「えっと、あの……大丈夫でしょうか??」

「大丈夫ネ。この腐れ天パはダメでも、私が何とかするアルヨ。だから報酬用意しとけよババア共」

「神楽ちゃんんん!! お客様になんてこというのォォォォッ!!」


 ——そんなこんなで夜がやってきた。
 銀時、神楽、新八の三人は懐中電灯を片手に橋の近くまでやってきていた。あと少しで橋に到着する。
 ふと銀時は奥様方の情報を思い出す。


『何でもその幽霊みたいなモノは白髪らしいです。しかも毎日深夜に現れるものですから、皆気味悪がっちゃって……』

(ヤベエ、消えてえ。帰りてえ。気を失いてえ……)

「……銀ちゃん、息が荒いネ。キモイアル」

「うっうるセエエエエエエッ!! アレだよ、なんつーか……アレなんだよ!!」

「何なんですか」



 その時だ。背後から足音が聞こえる。ギクリと三人は固まった。
 ふっと銀時は肩に何かがのった気がした。イヤ流石にそんなベジータな。あ、間違えた。ベタなことがあるわけナイナイと思いながら自分の肩を見ると、


 ——人の手がのっていた。


「ギィィィィィヤアアァアァアアアアァァアァァァァッ!!!!!」

「どぅぉぉわあああぁあぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁっ!!!??」


 二人の絶叫が響いた。キーンと耳が痛くなり、新八と神楽は耳をふさいだ。
 一方銀時は放心状態である。そしてもう一人、真選組鬼の副長と恐れられる土方十四郎も。恐らく土方は銀時がいきなり叫んだことに驚いたのだろう。一緒に来ていた沖田総悟は銀時達に気がついたようだ。


「あれ、旦那じゃないですかィ。あとチャイナとメガネ」

「て、てめ、サド!! 何でこんなところに居るアルかァァァァァッ!!」

「お、落ち着いて、神楽ちゃん。こんばんは、沖田さん」

「どーも……。こんな深夜に、アンタら何してるんですかィ??」

「いえ、実は——」


 新八はこれまでの過程を沖田に説明する。
 我に返ってそれを聞いていた土方は、常日頃から開き気味の瞳孔をさらに開かせた。そして目の前で自分を睨みつけてきている銀時を見る。


「じゃあテメェらも幽霊を確認しに来たのかよ」

「何?? おたくも?? 警察はよっぽど暇なんですね〜??」

「るっせェ!! しょうがねぇだろ、住民から頼み込んできやがったんだ。ったく、こっちは忙しいってのに……」

「土方さん土方さん、土方さんの肩に白い手が……」

「○×■☆※&△♪◎◆ッ!?」

「嘘でさァ。と言うかそろそろ時間ですぜィ。行きやしょうか」

「てんめェェェ……総悟ォォォォ……」


 プクククッと笑っている銀時と沖田を睨む土方。
 後ろからそんな三人を見て溜息をつく神楽と新八。五人はのんびりと橋へと向かいながら、時間を確認した。


「……そろそろだ」

「ななななな何、おおおっ多串君ビビってんの?? どど瞳孔がいつもより開いてるけどどど??」

「ううううううるっせ……ェ……」


 土方が橋の方を見てフリーズしている。四人もそちらを見た。
 闇の中ではよく栄える白い髪。服は見えない。川岸にいるようだがしゃがんでいるのか、それとも本当に幽霊なのか足は見えない。
 完全にフリーズしている四人。が、一人は違った。


「そーご、いっきやーすっ」


 次の瞬間。深夜にも関わらず、ドカーンッという爆発音が辺りに響いた。
 白髪の人物がいたところはいまや黒煙におおわれていて見えない。四人はまた別の意味でフリーズした。


「そォォォォごォォォォォ!? なァにやってくれてんのお前ェェェェェッ!?」

「何って、バズーカうちやした」

「知ってらァァァァァッ!! 本当に幽霊かまだわかんねェだろォがァァァッ!! 人間だったらどーすんのォォォッ!?」

「だーいじょうぶですって(多分)」

「ちょ、その()なに!? ()の中の言葉言ってみ総悟!?」
 

 黒煙がゆっくりと晴れていく。
 ギギギギギ、という効果音がつきそうな感じで五人はそちらを見た。幽霊ならダメージを喰らわずにたっているはずだ。てゆか立っていてくれェェェェェ!!


「「「「「あ」」」」」


 ——ぐったりと川岸の地面に倒れている白髪の人物が見えた。
 そしてちょっと見えるあの赤い液体はなに?? なんかかなりたまってるけど何アレ?? あ、トマト?? トマト持ってたんじゃね?? 



「……そォォォォォォごォォォォォォッッッ!!!!!!!!」

「ひでーや土方さん。普通うちやすかィ??」

「テメェだろがこのボケェェェッ!! 何してくれてんだアアアアア!!」

「ちょっと……本当にマズくないですか、あれ」


 ——新八の言葉を合図に、全員が橋の下に飛び降りた。