二次創作小説(紙ほか)
- Re: 魔天使マテリアル 「さよなら、また会おう」 ( No.50 )
- 日時: 2013/10/16 09:34
- 名前: 瑠李 (ID: x2W/Uq33)
- プロフ: がっこがwww休みwwwなうwww
第三章
サーヤもとい、紗綾は首を傾け、綾香の顔を見る。
彼女もまた、即座に誰だかを察知したようだ。
「お母さん・・・?」
呟くけれど、紗綾が椅子から立ち上がる気配は無い。
何事かと思えば、ユウヤが読み取ったかのように説明を始めた。
「サーヤは今その椅子から動けないよ。何をしたってね。」
「な、んで・・・」
「いいの、お母さん。私はこのために来たんだ」
はっきりと言い切り、今にも消えそうな儚い笑顔を見せる紗綾に、綾香は一抹の不安を覚える。
綾香の心情を知ってか知らずか、紗綾は続けた。
「私は、お母さんを助けるためにここに来たの。何日か前、悪魔に言われて。 お母さんが生きてて、ここに囚われてるって知って・・・。」
「何で他の人も連れてこなかったの!?黎夜だって・・・」
「駄目だったんだ。私が一人で行かないといけなかったの。
私が行かないと、皆に危険が付き纏うから・・・・。それに私、今、破魔の笛に触れないんだ」
紗綾の胸元で揺れる破魔の笛は、一見何の変化も無いように見える。
でも、同じその笛を長年扱ってきた綾香には、なんらかの力が掛けてある事が解った。
途端、すべての糸が手繰り寄せられるように一つになる。
「じゃあ・・・」
「逃げてお母さん。これは取引。私がここに来る代わりに、お母さんが逃げる。もう決定したことなの。だからお願い。逃げてお母さん」
紗綾の必死の訴え。
これ以上の反対など、娘の気持ちを踏みにじることとなる。
綾香は今までこらえてきた嗚咽をもらし、紗綾に近づく。
ユウヤも止めはしなかった。
「ごめん・・・ゴメンね、紗綾・・・!貴方が生まれてから、一度も傍に居てあげられなかったのに・・・!ゴメンね・・・・!」
綾香は紗綾をきつく抱きしめ、拳を握り締める。
その後はもう、紗綾の顔は見なかった。
前を向いて、ひたすら走った。
綾香が部屋を出る前、ユウヤが、
「人間界に行くなら・・・ウィンドミルに行くほうがいい」
そう言っていた。
思惑があるのかも知れないし、何か罠があるのかも知れないけれど、綾香は走った。
枯れることなく涙を流しながら。