二次創作小説(紙ほか)

Re: 怪盗レッド〜幼き頃の私達〜 ( No.270 )
日時: 2014/05/28 07:40
名前: 瑠璃& ◆eLkrjSIK9U (ID: a6RsoL4B)

第九話 >> 04

私も一杯一杯だった。
問いたい事は、山程あった。
すぐそこに居る。多少、いつもより遠いけど、聞こえないなんてことは無い。
お父さんとおじさんは、話をしているし、
少し離れてる。
だから、私から声をかければ良いんだ。
頭では理解しているのに。
口が、身体が、言う事を聞いてはくれない。

ケイー
って、たった一言呼べば良い。
いつもみたいに呼べば、おしゃべりな口が勝手に話してくれるはずだから。
なのに、なのにー

「アスカー」

ふいに呼び止められる。
誰が呼んだかなんて、分かってる。
立ち止まり、条件反射の様に振り向こうとする、身体を無理矢理止める。
手が伸びてきて、服の裾をキュッと掴まれる。

こんな仕草をケイは、時々するようになっていた。
いつだったか、杏子さんが、

『アスカちゃんに、心を許してる証拠よ。
私や圭一郎さん以外の人にやってるの、見たことないもの』

そんな風に教えてくれた。
その時は、誇らしくて仕方が無かった。
なのに、今はー

「アスカ……」

小さく掠れていた声だった。
後から思えば、
ううん。この時、私、本当は分かってたんだと思う。
ケイの最後の意思表示だった、って。
それは、小さく小刻みに震える手を見て、分かった。
いつもだったら、必ず、手を取っただろう。

どうしたの? 何かあったの?
私? 私はいつも通りだよ。ケイこそ、どうしたの?
ほらー、寒いの? 震えてるよ?
大丈夫だよ。
そう言って、手を取って歩く。

そう、すれば良い。
分かってる……けど!
どうしても、そうは出来なくて。
必死にケイが掴んでいる、服を引っ張る。

「……離して」

驚く程に、冷たい声が出た。

「……!」

ケイがびくっとして離れる。
ギュッと唇を噛み締める。
そして、離れていたお父さん達に駆け寄る。

「おとーさん! おじさん!」

2人の間に入り込んだ。
ケイを1人残して……