二次創作小説(紙ほか)

Re: 怪盗レッド〜幼き頃の私達〜 ( No.353 )
日時: 2014/12/11 18:44
名前: 瑠璃 (ID: IjQjsni6)

第五話 >> 03

〜ケイside〜

「……前髪、いつもと違う、から」

なんと言えば良いか、分からなくて、
たどたどしく説明した。
話を聞いたら、友達に今日だけやってもらったらしい。
ふーん……なら、まあ、良いんだけど。
って、本当何がだよ。

「変?」
「別に……」

黙ってたから不安になったのか、アスカが問い掛けて来る。
別に、って何だよ。
興味無い訳でも、全然ないのに。
変どころか、それより寧ろ……

「こんな可愛いの、私には合わないよね」
「そんな事ない」

思わずはっきりと否定してしまう。
何か、言わないと……

「…………似合って、る」

やっと、言えた言葉。
似合ってるとかだけじゃ、補えきれないのに。
言えたのは……それだけで。
思わず、すっと目を逸らす。

「……ありがと」

それだけ、アスカに言われた。
その時の顔は、言葉に反して、とても綺麗な笑顔だった。

「アスカ」

先ほどと同じ、
無意識について出た呼び掛け。

「何?」
「いや、あの……その、髪さ、」

会話なんてここ数年、ろくにしていない。
うまい言葉が口から出ない。
これほど、今まで話さなかったことを、後悔した事もないだろう。

「その、髪型。……あんまり、他の人の前、ではしないで欲しい」

本当に辿々しい言葉。
自分でも、変なこと言ってるっていうのは、充分承知している。
きっと、アスカにも「何で?」って、言われるだろうと、思っていた。
案の定、アスカはきょとんとしていたし。
なのに次の瞬間、かぁっとアスカの頬が赤くなった。

「う、うん! うん!了解! うん、分かった!」

何が?

「大丈夫?」

つい言ってしまう。
かくかくと首を振り続けるアスカ。
自分から言っといてなんだけど。
分かった……って。

それでも、どこか幸せで。
久し振りに温かい気持ちになって。
不意に、頬が緩みそうになった瞬間、

「アスカ、ケイくん」

背中からおじさんの声。

夢の様な時間に、
終止符が打たれた。